<憑依>きみとひとつに②~浸食~

女子大生・春菜は、
春菜のことをゲームのヒロイン”リアンちゃん”だと思い込んで、
執拗に迫ってくる大学の先輩に憑依されてしまったー。

次第に支配されていくー。
そんな、恐怖の物語ー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーやっぱり、異常はありませんねー」

”頭の中”で、死んだはずの景義の声が聞こえた
春菜は、病院の人にそのことをすぐに伝えたー。

病院の先生や看護師の人たちは、
首を傾げながらも、
”検査”をしてくれたー

だが、脳には何の異常もなく、
病院側でこれ以上できることはなかったー。

「ーーーー…きっと、強いショックを受けられているのだと思いますー。
 でも、一緒に階段から転落して亡くなられた方は、
 あなたのせいではありませんー。
 
 あなたが先に転落して巻き込んでしまったならともかく、
 あなたはただ、巻き込まれただけなのですからー」

優しそうな医師にそう呟くー。

「もしも仮に、藤谷さんの中で、
 亡くなられた木村さんの声がするというのであれば、
 それは、”そう感じてしまっている”だけです。

 事故を起こしたり、何か大きな出来事があると、
 人間、精神的にも強い負担がかかるものですー。

 大丈夫ですよ。
 怖くなった時には、深呼吸してー。
 実際に、木村さんがあなたの中にいたりすることはありませんからー。

 時間が経てば、だんだんとそういう風なこともなくなると思いますよー」

春菜は、その言葉に「ーー分かりましたーありがとうございますー」と、
頭を下げるー。

自分にとって、ストーカーのような存在だったとは言えー、
”同じ大学に通う先輩”が、自分と共に階段から転落して
死亡したのだー。

無意識であっても、精神的なショックは強いのかもしれないー。

「ーーー大丈夫」
春菜は、病院の先生の言葉を信じて、
”頭の中の声”は、聞こえている気がするだけだと、
そう思うことにしたー

”ぐふふふふ…リアンちゃんー。僕はここにいるんだよー”
景義の声がするー。

けれど、春菜はそれを無視して、帰宅すると、
疲れ果てた様子でそのまま部屋に倒れ込んだー。

色々なことがありすぎてー
疲れたー。

そう思いながら、寝息を立て始める春菜ー

「ーーーー…」
だがー
そんな春菜が、すっと立ち上がると、
ニヤリと笑みを浮かべたー

「ーーわたしは…リアンーーー」
勝手に、少し前にサービスが終了したスマホのゲームの
ヒロインの名前を名乗り始める春菜ー

鏡の前まで歩いていくと、ニヤニヤ笑みを浮かべながら
春菜は再度呟いたー

「ーわたしはリアンー…わたしは、リアンー♡」
何度も何度も、そう呟くと、
やがて、「僕がリアンちゃんなんだー」と、嬉しそうに
春菜は呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ー昨日は大変だったねー。
 大学もちょっと騒ぎになってたけどー」

友達の美姫が近づいてくるー。

春菜は腕の痛みを少し気にしながらも
「う、うんー」と、申し訳なさそうに美姫のほうを見るー。

「そんなに申し訳なさそうにしなくてもー。」
美姫は笑いながら「あの頭のおかしな先輩のせいだし、
あの先輩が死んだのも、自業自得でしょ?」と、呟くー。

「ーーーーうん」
春菜は、表情を曇らせるー

翌日になった今日もー
やはり”景義”の声が聞こえるー。

それに、酷く寝不足のような感じもするー。
昨日の疲れがまだ抜けきっていないー…

そんな、感じだろうかー。

「ーーーーそれにしても、あの先輩、
 気持ち悪かったよね~…
 春菜のこと、”リアンちゃん!”なんて言っちゃってー…
 普通、ゲームキャラと現実の人間間違えたりしないでしょ?

 こういったらアレだけどー…
 こうなって…良かったのかもー?」

そんな美姫の言葉に、
春菜は今まで感じたことのないぐらい、激しい怒りを覚えて
急にカッとなってしまったー

「ーーーおい!!!!」
春菜が乱暴な口調でそう叫ぶと、美姫の服を掴んで、
壁際に叩きつけるー。

「ーーそこまで言うことねぇだろ?あ?」
春菜の鬼のような形相に、美姫は心底驚いて
「は…春菜…?」と、震えながら呟くー

春菜はすぐにハッとしてー
「あ…!」と、美姫から手を離すと、
「ご…ごめんー」と、謝罪の言葉を口にするー

「ーーひ…人が死んだんだから…そう言い方ないよねって…
 思ってついカッとなってー」
春菜はそれだけ言うと、
美姫は「わ…わたしこそごめん…無神経だったー」と、
謝りながら、春菜のほうを見つめたー。

”ーーー…わたし今ー…まるで…自分のことのようにー…”
春菜の不安が急速に膨れ上がっていくー。

「ー…わ…わたし…疲れてるみたいー…
 今日は…も、もう帰るねー」

春菜が足早に大学から立ち去ろうとするー

「えっ!?か、帰るって!?
 ま、まだ午前中だよ!?」
美姫の言葉にもー
春菜は反応せず、慌てて逃げるようにして
大学から立ち去ってしまうー。

”ぐふふふふー
 リアンちゃんー…
 僕のために怒ってくれるんだねー”

”やっぱりー
 リアンちゃんは、僕のこと、好きなんだー”

「ーーー静かにしてー…」
春菜は、早歩きをしながら、そう呟くー

”リアンちゃんー
 僕も大好きだよー”

”こうして、きみとひとつになれて、
 嬉しいよー”

「ーーうるさい」
春菜が、ボソッと呟くー

”ーリアンちゃんのためなら、僕は何でもするよー
 リアンちゃんは、僕の女神なんだからー”

”あぁ…リアンちゃんー、リアンちゃんー”

「ーーうるさい!!!!!!!!!黙って!」
春菜は街中で急に怒鳴り声をあげたー

周囲の通行人が驚いて春菜のほうを見るー

春菜はハッとして、頭を下げると、
そのまま逃げるようにして立ち去っていくー

帰宅した春菜は、慌てて
部屋の中で何かを見つけると、
そのまま出かけようとするー。

だがー
その時だったー。

「お届け物ですー」

”身に覚えのないお届け物”が届いたー

春菜はそれを見て、突然笑みを浮かべるとー
ダンボールを迷わず開封してー
中から”リアンちゃん”に着せていたゴスロリの衣装そっくりの服を
手に取って、笑みを浮かべたー

「ーーはぁぁ…リアンちゃんは、やっぱりコレが似合うよぉ…♡」
春菜は顔を赤らめながらそう呟くと、
何事もなかったかのように、また普通の表情に戻り、
そのまま当初の予定通り、外出したー

”何なのー…?
 先輩の声が…頭の中でずっとー”

春菜が向かった先はー
”心療内科”だったー。

「ーーー先輩のー先輩の声が、聞こえるんですー…
 わたし…わたしー!」

診察した医師は、春菜に「落ち着いて下さいー」と、
声を掛けると、
春菜の話をしっかりと聞いてくれたー。

でもー
結論は、昨日、階段から転落した際に運び込まれた病院の
先生と同じ結論だったーー。

「ーーお薬も、出しておきますからー。
 不安を和らげる薬ですー」

その言葉に、春菜は、
昨日の事故のせいで、精神的に病んでしまったのかと、
不安に思いつつもー
そのまま帰宅したー

「ーーーー…」
その薬を飲んでも、心は晴れないー。
春菜はため息をついて、そのまま眠りについたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーーーぐふふふふ…僕は…わたしは…リアン…」
春菜は、嬉しそうにそう呟きながらー
”ゲームで着せていた服”そっくりの服を着て
笑みを浮かべていたー

くるくると回転して、鏡に映る自分の姿を嬉しそうに見つめる
春菜ー

「ーーあぁぁ…リアンちゃんー…
 ひとつになれて、嬉しいよー」

春菜はそう呟くと、鏡に何度も何度もキスを繰り返したー。

「ーーぐふふふ…
 だんだん、リアンちゃんが僕のものになってるのを
 感じるよー」

階段から転落して、春菜に憑依してしまった景義は、
確信していたー。

「ーだんだん、僕の支配が強まってるー」

とー。

「ーえへへへへ…僕がリアンちゃんになっちゃうのかぁ…
 僕が、リアンちゃんと一つになっちゃうのかぁ…♡」

下品な笑みを浮かべながら涎を垂らす春菜ー。

「ーおっといけないいけない…
 わたしはリアン…うふふ♡」

”リアン”のような仕草をしながら笑みを浮かべると、
春菜は満足そうに、顔を赤らめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

美姫は、大学で春菜を見かけて驚くー。

春菜が”金髪”になっていたからだー。
まるで、死んだ景義が言っていた
ゲームのヒロインのキャラ・リアンと同じようにー

「~~~~~……」
春菜が何やらぶつぶつと呟いているー

”わたしはリアンー”
”わたしはリアンじゃないー”

そんな内容のようにも聞こえたー

美姫は、そんな春菜の姿を見て、
一瞬声を掛けるのもためらったが、
すぐに深呼吸をして、春菜に声をかけたー。

「ーーー…美姫ー」
振り返った春菜は驚いたような表情を浮かべていたものの、
すぐに微笑んで、いつものように美姫のほうを見つめたー

「ーど…ど、どうしたの…?その紙ー?」
戸惑いながら、春菜に”金髪”になった髪について確認する。

「ーーーあ…こ、これー?みんなも朝から驚いててー」
苦笑いする春菜ー。

「ーーそれはそうでしょ!今まで普通に黒だった春菜が
 金髪とか…何があったの!?ってなるしー」

美姫が言うと、
春菜は「ーーう…うん」と、戸惑った表情を浮かべるー

”ーー自信を持てよー。きみはリアンちゃんだー
 誰よりも可愛いんだ”

頭の中に景義の声が響いてくるー

「ーーー…わたし、この方が可愛いでしょ?」
春菜が、その声に影響されたのか、
自信に満ち溢れた表情で言い放つー

「ーーう…うんー…
 で、でもー…」
美姫は、そんな春菜の雰囲気に違和感を感じるー

「ーーーあのキモイ先輩が言ってたー
 リアンってキャラみたいな髪の色にしてー
 急にどうしたのー?」

美姫は不安そうだー。

「ーーーリアンみたいな?
 わたし、リアンだけどー?」

「ーーえ?」

美姫は、春菜の言葉に一瞬耳を疑ったー

「ーーーえ……あ…ご、ごめんー
 わたしってば、何言ってるのかな」

春菜は急に動揺したような雰囲気になって
そわそわした様子を見せ始めるー

「ーーね…ねぇ… ちょっと?大丈夫ー?」
不安そうにする美姫ー

春菜は「だ、大丈夫大丈夫ー…あの先輩の件とかもあって
ちょっと疲れてみたいー」とだけ言うと、
そのまま足早に美姫の元から立ち去ってしまったー

「ーーは…春菜ー…」
春菜のおかしな雰囲気に、一人残された美姫は
思わず戸惑いの表情を浮かべることしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーはぁ…はぁ…はぁ…
 うるさいー…うるさいってば!」

大学の人通りが少ない場所にやってくると
春菜は頭を抱えながらそう叫ぶー

「ーうるさくないよー」
春菜は一人、笑みを浮かべるー

「ー感じるよー
 だんだんリアンちゃんと、僕が一つになってきているのをー!
 だんだん、僕の支配が強まってきているのをー!
 うふ…うへへへ…」

春菜は、”景義”の言葉を口走ると、
突然、奇妙な笑い声をあげ始めるー

「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁ♡」
顔面崩壊とも言える、不気味な表情で笑うと、
春菜はゆっくりと立ち上がるー。

「ーリアンちゃんー…うへへへへへ…」
ゆらゆらと歩き出す春菜ー。

「ーーー不思議だなぁ…
 僕がリアンちゃんに取り憑いちゃってからー
 だんだん、リアンちゃんの全てが僕のものになっていってるー

 不思議だなぁ… えへへへへへ」

春菜は歪んだ笑みを浮かべながら、
そのまま女子トイレへと向かい、
”お楽しみの時間”を始めるのだったー。

③へ続く

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次第に支配されていく身体…!
逃れることはできるのでしょうか~?

続きはまた明日デス~!

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