<憑依>彼女からの誕生日プレゼント~砕かれた絆編~(中編)

”彼女から憑依薬をプレゼントされた”

そこから始まった”欲望”と”悲劇”-。
最後に待ち受ける運命は…?

※「彼女からの誕生日プレゼント」の後日談(中編)デス!
先に本編をお読み下さい!

————————

文彦は、まるで別人のような雰囲気で、
彼女の雪菜がゲームセンターに入って行ったのを見て、
不安そうな表情を浮かべたー。

イヤな予感がするー。

”憑依薬が実在すること”
”良一郎が失踪していること”
”元カノである雪菜がまるで別人のようになっていること”

そして、今ー
良一郎の行きつけであったゲームセンターに雪菜が入って行ったことー
さらには、雪菜の今の格好が、前に良一郎が街で見かけて”いいな”と言っていた
通りすがりの女性に似ていたことー

それらを思い出して、文彦の不安はピークに達していたー。

”まさか…”
良一郎が、雪菜に憑依しているのではないかー。

そう、思ってしまったのだー。

友人の守から聞いた雪菜についての噂も気になるー。

「--とにかく行くしかない」
文彦は意を決すると、ゲームセンターの中に足を踏み入れたー。

賑やかなゲームセンターの店内ー。
雪菜の姿を探すと、
雪菜は、ちょうど、ダンスゲームをプレイしていたー。

「--!」
元々、ロックバンドが好きな一面を持っていた雪菜ー。
だが、”音ゲー”と呼ばれるようなゲームをプレイしているのは
見たことがないー。

「--ふぉ~~~!最高だぜ!」
雪菜と一緒にゲームセンターに入っていた男の一人が叫ぶー。

雪菜は、激しく身体を動かしながら、
ゲームをプレイしているー。

生足を露出したショートパンツに肩出しー
髪の一部分を赤く染めた雪菜が
興奮した様子で「ふぅ♡完璧!」と、嬉しそうに声をあげたー。

「---…(あの動き…)-」
親友の良一郎は、音ゲーやダンス系のゲームが得意だったー。

今の雪菜は、まさにー
”良一郎好みの雪菜”
そんな風に、見えたー。

「--最高じゃん!」
男の一人が言うと、雪菜は「でしょ?」と、得意げに微笑んだー。

そこにー
文彦がやってくるー。

文彦に気づいた雪菜は、少しだけ驚いた表情を浮かべたー。

「---雪菜 話がある」
文彦が言うと、雪菜の周りにいた男が「誰?」と
雪菜に聞くー。

特別、柄の悪い感じではなく、
雪菜と一緒に遊んでいた男2人は”普通”な感じだったー。

「--わたしの”元カレ”」
クスッと笑う雪菜は、”少し待ってて”と二人に言うと、
まるで別人のような服装のまま、ゲームセンターの一角に
やってきたー。

「--何の用?」
雪菜が言うと、
文彦は呟いたー。

「--ここ、良一郎の行きつけだったゲームセンターだよな」

その言葉に、雪菜は

「う~ん そうだね~!それで?」

と、答えたー。

”良一郎が雪菜に憑依しているのではないか”
そう感じた文彦は、さらに続けるー。

「-今の雪菜の格好さー
良一郎が前に”いい”って言ってた格好に
そっくりだよなー」

文彦が遠回しに言うと、雪菜は
「ふ~ん!そうなんだ~」と、わざとらしく笑ってみせたー。

「-わたし、もっと踊りたいからもういい?」
雪菜がダンスゲームのある方向を見ながら言うー。

文彦は”このままじゃ、何の成果もあげられないまま帰ることになる”と
思い、咄嗟に叫んだー

「待てよ!良一郎!」
とー。

”良一郎が雪菜に憑依している”などという”確信”はない。

しかしー
万が一、良一郎が本当に雪菜に憑依しているのであればー。
この言葉はかなりダメージを受ける言葉のはずだー。

逆にー
雪菜本人の意思ならー
雪菜にはさらに嫌われるかもしれないがー

それでもー
メリットのほうがでかいと判断して、文彦は叫んだー。

「-----…」
背を向けてダンスゲームの方に戻ろうとしていた雪菜が
振り返るー。

「---…良一郎、なんだろ?」
文彦が言うと、
雪菜は「--わたしは雪菜だけど?頭おかしいんじゃない?」と、言い放ったー

だが、その顔からは笑顔が消えて、
動揺しているようにも見えたー

「--そうかそうか…
おかしいと思ってたんだー
雪菜が急に俺に誕生日プレゼントとして
憑依薬を渡してくるなんてー。

お前が、お前が仕組んでたんだな?」

文彦が続けるー。

雪菜から誕生日プレゼントに憑依薬を渡されてー
そのまま使わずにー、と思っていた文彦に
”憑依されたがってるんだよ!雪菜ちゃんは”と
言ってきたのは良一郎だー。

良一郎の目的は分からないが、
文彦は自分がはめられたのだと、そう思っていたー。

「--わたし、雪菜だけど」
雪菜が低い声で言うー。

「-違うだろ!良一郎だろ!?」
文彦が叫ぶー

「-わたしは雪菜!」
雪菜が大声で叫んだー。

「--嘘だ!」
文彦が大声で叫び返すー。

しかしー
雪菜は頑なに自分が良一郎であると認めなかったー。

”まさかー
気づくとはなー”

雪菜は、良一郎に憑依されているー
それは”事実”-

だが、良一郎は狡猾だったー。

”認めなければ、証拠がない”

そうー
”誰が誰に憑依した”などという話はー
現場を押さえられない限り、証拠は”ゼロ”-。

「---良一郎だろ?答えろ!」
文彦が言うと、雪菜は低い声で呟いたー

「-わたしは、雪菜だ」
とー。

脅すような口調でー。

「--…くそっ…お前、、そんな奴だったなんて…!」
文彦は、相手が”良一郎に憑依された雪菜”である前提で
話を進めるー。

「--元カノに”そんなやつ”なんて、ひど~い!」
雪菜が甘い声を出して笑うー。

「--ふざけるな!良一郎!雪菜を返せ!」
雪菜の肩を掴む文彦ー。

雪菜の本心は分からないー
文彦からすれば”どの時点”から雪菜が
憑依されているのか、分からないー。

良一郎がいなくなったのは、”雪菜に振られる直前”

そうなるとー

雪菜に振られたのも、雪菜の本心じゃないー

…の、かもしれないー。

だが、今更そんなことを考えたところで、
どうにもできないー

まずは、良一郎を雪菜からー

「--女の肩を勝手に触って…
”えっち~!”って叫んであげよっか?」

雪菜の肩に触れている文彦が、
はっとして手を離すー。

「-”元カレ”なんだから、あんまり調子に乗らないでよね」
雪菜はクスッと笑うと、そのまま立ち去っていくー。

「--……雪菜にそんなことさせて…!
お前は…お前は!」
文彦はなおも食い下がるー

けれどー
雪菜は振り返ってほほ笑んだー。

「-わたしは雪菜。 何度言えば分かるの?
憑依なんて、”非現実的なもの”あるわけないじゃないー。

憑依とか、そういうのが好きだからってー
現実と創作の区別がつかなくなっちゃうのは、だめ!」

雪菜はそれだけ言うと、男二人の方に向かって歩いて行ったー。

よく見たらあの二人は、
別の高校の、良一郎の中学時代の友人だったはずだー。
一緒によくゲームセンターに行っていたはずー。

雰囲気から、雪菜に憑依した良一郎は、
自分が良一郎だと言わず、二人に接触したのだろうー。

「--------」
文彦は、悔しそうな表情を浮かべるー。

”良一郎が雪菜に憑依している”
確率は90%ぐらいだと、文彦は考えていたー

だが、雪菜が認めない以上ー
”100%”と断言できないー。

それにー
今の雪菜が言う通りー

”元々憑依や入れ替わりが好き”な文彦は、
周囲にもそのことを話してしまっているため、
みんなそのことを知っているー

今の状況で騒いだとしてもー
”彼女に振られて、現実との区別がつかなくなったやばいやつ”
扱いされてしまうのがオチだー。

どうすることもできないー。

再び、雪菜とは思えない格好で、
雪菜はダンスゲームを始めて、
ノリノリで騒いでいるー。

「---くそっ…」
文彦は、”こういう話、見たことあるよなー”と
頭をフル回転させながら対策を考えるー。

憑依や入れ替わりが好きな文彦は、
当然”彼女が憑依されて奪われてしまう”というお話も
何度も目にしたことがあるー。

そういうお話では、どうやって彼女を取り戻していただろうかー。

”まさか…本当にこんなことになるなんてー”

「----考えろ…俺…」
文彦は、大はしゃぎの雪菜たちを横目に、
”何とかならないか”と必死に考えるー

だが、浮かんでくるのは
”バッドエンド”のみー。
彼女が憑依で奪われるようなお話はー
大抵の場合、最終的にその彼氏は悲惨な末路を
辿っていることが多いー…

ような気がしたー。

「--くそっ…雪菜…」

”本当に自分は振られたのか”

そう、考えてしまうー。

自分を振ったのは、
雪菜なのか、雪菜に憑依した良一郎なのかー。

「---何か…何か方法はあるはずだー」

そんな風に考えていた文彦は、
突然”あること”を思いついたー

「-----------!!!!」

ハッとする文彦ー
雪菜は、ダンスを踊り終えると、「興奮しちゃう♡」と、
言いながら男たちと楽しそうに話していたー

完全に”女子大生”として楽しんでいるー。

「--俺が、雪菜の彼氏であろうと、なかろうとー
雪菜の身体は、お前のものじゃない!」
文彦はそう呟くと、ゲームセンターから飛び出したー。

文彦がゲームセンターから飛び出していくのを
横目で見ていた雪菜は”諦めたのか”と、小声で呟きながら
クスッと笑ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰宅した文彦は、
すぐに自宅のパソコンを起動して、
慌ただしく何かを調べ始めるー。

”唯一の希望”

それが、頭の中に浮かんだのだー。

”そう簡単”ではないかもしれないー
けれど、”光”を手にしてみせるー。

そう思いながら、文彦は、必死に、その日から何かを調べ始めたー

大学ではー
相変わらず、雪菜は文彦とはかかわろうとはしないー。
周囲は、雪菜が急に文彦から離れたり、
急に性格が少し変わっても

”彼氏と別れたから”として、
あまり気に留めていない様子だったー。

「ーどうしたんだよ?難しい顔をして」
友人の守が声を掛けてくるー。
文彦はため息をつきながら、
「いや、別にー」と呟くー。

守も文彦が”憑依とかが好き”ということは知っているが、
それでも、いきなり”雪菜が憑依されている”なんていえば、
頭のおかしな奴扱いされてしまうのは、目に見えているー。

”俺が、雪菜を助けるんだー”

助けたその先にあるのは”何”か。
それは分からないー。

実際に、良一郎の罠だったとは言え、
文彦が雪菜に憑依してしまったことは
”紛れもない事実”

だからー
嫌われていても仕方がないし、
このまま復縁できなくても仕方がないー

けれどー
それでもーー

「ーーーーーー!!!!!」
数日後、文彦はようやく”それ”を見つけたー。

文彦が探していたのはー
”憑依薬”

ネット上で、連日必死に探し続けてー
良一郎が手に入れた憑依薬を見つけたのだー。

バイトで貯めていたお金を散財して、憑依薬を手に入れる文彦ー

「俺はこれで、雪菜を救って見せるー」

そう呟くと、文彦は、雪菜と自分が写る写真を見つめながら、
寂しそうに微笑んだー。

<後編>へ続く

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コメント

毎週土曜日の作品だけ、私の1週間のスケジュール上
書置きなので、(予約投稿)
その都合上で、続きはまた来週になります~!

またまた少し間が空いてしまいますが、
楽しみにしていてください…!

※現在、新サイトに移転した都合上、予約投稿の土曜日は0時更新にしています。

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