<憑依>彼女からの誕生日プレゼント②~決断~

彼女から渡された誕生日プレゼントは
”本物の憑依薬”

本物憑依薬を前に、”憑依好き”の彼氏の決断は…?

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「---♪~~~~」

自宅ー
大好きなロックバンドの曲を聞きながら、
嬉しそうに「最高♡」と、呟く雪菜ー。

「--ふぅ♡」
興奮した様子で音楽を聴き終えると、雪菜は
ヘッドホンを机の上に置いて、
スマホを確認したー。

少しだけ表情を曇らせる雪菜ー。

”TSF”が大好きな彼氏ー。
雪菜からしてみれば、TSFというジャンルのどこがおもしろいのか、
あまりよくわからなかったー。
けれど、それは彼氏の文彦からしても同じことー

たぶん、文彦からすれば
同じように”雪菜が好きなロックバンドグループ”のどこが良いのか
分からないだろうー。

趣味は、人それぞれー。
雪菜は、それをちゃんと理解しているー。

だから、文彦がTSF好きであることも、自由だと思うし、
それに悪い感情を抱いたりはしないー。
女性が乗っ取られる作品を見て、喜んでいる文彦を
気持ち悪い、とも思わないー。

現実とフィクションは別物だからだー

けれどーー

「----」
雪菜は、少しだけ笑みを浮かべながら
スマホを再び手にすると、
”憑依薬、もう捨てた?”と、彼氏の文彦に対してメッセージを送ったー。

メッセージを送り終えた雪菜は
再び好きな音楽をかけ始めるー

「あ~、この曲、マジで最高!」
好きなバンドグループの曲を聞いてるときだけ
別人のように豹変してしまう雪菜は、
口調まで荒々しくなって、興奮した様子で曲を聞き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”憑依薬、もう捨てた?”
そのメッセージに、文彦は”まだだよ”と返事を返すー。

正直、迷っているー。

色々な意味でー。

文彦は、これまで色々なTSF作品を見て来たー。
”憑依”や”入れ替わり”が文彦の趣味の中心だー。

だがー
”現実世界で憑依してみたい”と考えたことはあまりなかったー。

TSF好きにも、色々な人間がいるが、
文彦は”創作としてのTSFを楽しむタイプ”だったー。

だから、こうして”本物の憑依薬”を目の前に置かれてしまうと、
戸惑ってしまうー。

そんなこと、想像したことも、なかったからだー。

そんなつもりはなかったけれどー、
いざ、本物の憑依薬を目の前に置かれてしまうと
色々妄想してしまうー。

”人生”を壊すようなつもりはないし、
誰かに憑依するとしても、”ほんのちょっと”にとどめるつもりだが、
つい”欲”が出てしまうー。

それにー
雪菜の意図も分からないー

”本物の憑依薬”を文彦に誕生日プレゼントとして渡して
何を望んでいるのかー。

単純に、”彼氏への誕生日プレゼント”なのか、
それとも、何か別の目的があるのかー。

リアクションを楽しんでいるだけにも思えるし、
何かを試しているような感じすらするー。

しかも、この”憑依薬”が本当に本物なのかもわからないー。
実はただの水だったり、実はただの炭酸飲料だったりするのであれば良いが、
”毒”だった場合は大変だー。

親友の良一郎は
”雪菜ちゃんが毒を盛るわけねぇだろ”と言っていたがー…

「-----------」
はぁー。

今日も、決めることが出来なかったー。

”捨てるか”
”飲むか”

文彦は”なんか逆に、誕生日プレゼントで悩みが増えているような”と
苦笑いしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--お前に、憑依されたいんじゃね?」

翌日ー
いつものように、親友の良一郎と昼を食べていると、
良一郎は、そう呟いたー。

「--え?」
思わぬ反応に首を傾げる文彦ー。

「--ははは、そんなことあるわけないだろ?」
文彦が思わず笑いながら返事をすると、
良一郎は「いや、でもなぁー」と、ラーメンを食べながら、
考え込むー。

「-自分の彼氏に憑依薬をプレゼントして、
 憑依薬をどうするか何度も聞いてくるってことは、
 お前のこと、誘ってるんじゃね?

 ほらー
 雪菜ちゃん、どちらかというと、そういう方面、苦手なタイプだろ?

 お前ともほら、まだしたことなさそうだしー」

良一郎の言葉に、
文彦は「ま、、まぁ、したことないけど、別にそれはー」と、戸惑いの
表情を浮かべるー。

「-自分から誘えるタイプじゃないと思うし、
 お前も誘えるタイプじゃないと思うし、
 だから、憑依薬をお前にプレゼントしたんじゃないのか?

 きっかけが、欲しくてさー。

 それにー
 お前なら、憑依した相手の身体で犯罪したり、
 そのままずっと乗っ取り続けたりすることはないだろ?」

その言葉に、文彦は「ま、、まぁ…そうだけど」と呟いたー。

「ーただ、試されてるだけな気もするけどなぁ・・・
 本物の憑依薬を手に入れても、俺が悪用しないかどうか、ってさ」
文彦がそう言うと、
良一郎は、ラーメンのスープを一口飲むと、
「ま、確かにそれもあるかもな」と、頷くー。

「でもさー。
 お前が悪用しないかどうか、確かめるために
 わざわざそんなリスク冒すか?」

良一郎が言うー。

”文彦”を試すためだけに、そこまでのリスクを冒すかどうかー。

確かに、それにも一理あるー。
文彦は”本物の憑依薬”があるなんて夢にも思っていないし、
自分で探すこともしなかっただろうー。
いつも雪菜に言っている通り、あくまでも”創作”として
楽しんでいるだけだからだー。

だからー
”わざわざプレゼント”しなければ、
文彦が憑依薬を悪用する心配なんて、絶対にないー。
手に入れようとも思わないし、手に入れることなく、一生を終えただろうー。

それにー
文彦に憑依薬を渡せば、雪菜も”自分が憑依される可能性がある”ことぐらいは
理解しているはずだー。

もしも”文彦が、本当に憑依薬を手に入れたら悪用するのではないか”と
疑っているのだとしたら、
文彦に憑依薬を渡すのは、おかしいー。

自分自身が憑依されて乗っ取られたらー
…と、いうことを当然雪菜は考えるはずー。

「---」
色々なことを考えながら、難しい表情を文彦が浮かべていると、
良一郎はラーメンのスープを全て飲み終えて、笑みを浮かべたー。

「--まぁ、そう難しく考えるなよー。
 ”自分が憑依できるリスク”を冒してまで、雪菜ちゃんが
 お前に憑依薬を渡したってことは、答えは2つに一つだろー。

 ”その憑依薬は偽物”か、
 ”お前に憑依されることを望んでいる”かー。

 もちろんー
 人生壊されるようなことは望んでないと思うから、
 もし憑依するなら、ちょっと遊ぶ程度にしておけよな?」

良一郎の言葉には、説得力があったー。

文彦は「そうだなぁ…」と頷くと、
雪菜のことを考えながら、また、色々なことを考え出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学での1日が終わるー。

雪菜と一緒に歩きながら家を目指す文彦ー。

雪菜は楽しそうに、”いつものような話題”を口にしているー。

とても優しい、穏やかな感じの雪菜ー。
バンド趣味を楽しんでいる時だけは別人のようだがー、
それもまた、ギャップがあって、いいー。

「--あ、あのさ!」
文彦が言うー。

「--憑依薬ー!」
文彦の言葉に、雪菜は「あ、うん どうかした?」と首を傾げるー。

「--あれって…どうして…どうして、俺にくれたのかなーって…?」
文彦が言うと、雪菜は「本物の憑依薬を手に入れたら、文彦は
どうするのかなって」と、笑顔で答えたー。

そして、「もう捨てた?」と、ほほ笑む雪菜ー。

「あ、いやー  その…」
”俺に憑依されたいのか?”と、聞こうと思ったが、
さすがにそれは気が引けたー。

「-まだ捨ててないんだ」
雪菜はそう言うと、「文彦はちゃんと分かってるって信じてるからね!」と、
にっこりしてほほ笑んだー。

「ん…あ、、あぁ」
文彦はそう返事をすると、ちょうど、二人がいつも
家に向かうために別々の方向に向かう交差点までたどり着いたー。

「--ーふふ、そんな顔しないで!
 また明日!」

雪菜は笑いながら手を振ると、そのまま立ち去っていくー。

”自分が憑依されること”を恐れている様子が
全く見受けられないー。

「文彦はちゃんと分かってるって信じてるからね!」

雪菜の言葉に、文彦は「鈍くてごめんな…」と呟くと、
今夜、雪菜の望み通り、雪菜に憑依することを決意するー。

”ってー、
 何をすればいいのかな?”

帰宅した文彦は憑依薬の入った
炭酸飲料のラムネのような容器を前に考え込むー。

さすがに”やりすぎ”はよくないと思うー。
雪菜の人生に影響が出ない範囲かつ、
雪菜を傷つけない程度のことをするー…

そんな感じが良いのだろうー。

「---…あれかな…?揉んだりとか…」
それを考えるだけで、ドキッとしてしまう文彦ー。

「---はぁぁ…まさかこんなことになるなんて
 夢にも思わなかったなぁ~」

”憑依”が現実に出来るなんて夢にも思わなかったー。

文彦は”見る”専門で、
自分が憑依したい、とか、自分が憑依されたい、とか
そういう願望を持っているタイプではなかったー。

けれどー
いざ、こうして”本物の憑依薬”とされるものを
手にして、それが目の前にある、となると
やはり、どうしても欲望が出てきてしまう。

しかも、彼女が憑依されることを望んでいるというのであれば、
なおさらだー。

「----」

”毒入りの可能性”
”単なるいたずらで中身はただの水である可能性”

それも、考えたー。

だが、前者は、良一郎の言う通り、まずないー。
雪菜は悪女じゃないと思うし、
毒を盛ったりはしないはずだー。
雪菜も毒入りだと知らずに、この憑依薬を手に入れている可能性は
否定できないが、雪菜は慎重な性格でもある故にー
その可能性も、おそらくは低いー。

「---ただの水なら、それはそれで、笑い話にするだけだしな」
深呼吸する文彦ー。

そして、文彦はついに意を決したー。

カッ、と目を見開いて、
憑依薬を口にする文彦ー。

憑依薬をひと思いに全て飲み干すー。
味はしないー。
ただの水のように思えるー。

「---」
飲み終えた文彦は、憑依薬の容器を机の上に置いたー。

だがー
何も起きる様子はないー。

「--な、なんだ…やっぱりただの水だったのかー?」
思わず苦笑いしてしまう文彦ー。

”ラムネの容器に入った水”を相手に、
この数日間、真剣に考えていたー、
と、いうことだろうかー。

「--は~~~!雪菜に騙されたぁ~!」
笑いながら呟く文彦ー。

しかし、次の瞬間ー
これまで感じたことのない、全身から激しい脱力感を感じたー

”えー…?”

まさか、毒!?と一瞬思うと同時に、
その感覚が、2倍にも3倍にも強まりー

そのまま、何かが飛び出すような感覚を覚えたー。

”いや、毒じゃない!”
文彦はすぐに状況を理解したー。

自分は、幽体離脱したのだったー。

「-ひ、憑依薬は本物だったんだ!」
幽体離脱を終えた文彦は、そのまま”よし…じゃあ…”と、
自分が宙に浮いた状態で、家から飛び出しー
そのまま夜空を舞ったー。

「--うわぁ…なんだこれ…
 憑依しなくても、これだけで楽しいじゃん」
幽霊みたいな状態で夜の空を飛ぶー。

なんとなく勢いで出てきてしまったが、
通行人が反応しないところを見ると
”夜空を舞う霊体の文彦”は、誰にも見えていないのだろうー。

”もし見えてたらヤバかったな”
そんな風に思いながら、雪菜の家に到着した文彦はー、
雪菜の方を見つめるー。

雪菜は、晩御飯を済ませたあとだったのか、
食器を洗っている最中だったー。

「---洗い終わるまで待つかー。
 憑依した瞬間、どうなるか分からないしー」

文彦は、雪菜を傷つけるつもりはないー。
雪菜が望む通り、少し憑依したらすぐに身体を返すつもりだー。

雪菜になったら、何をするかも既に考えてあるー。

「---おわり!」
雪菜が食器洗いを終えると、一人、満足そうに微笑むー。

「--よし…じゃあ」
文彦は、”これでいいのかな?”と思いつつ、
自分の霊体を雪菜に重ねたー。

「--うっ…!」
雪菜がビクンと震えるー。

そしてー
急速に”身体の感触”が戻って来たー

「----!」
自分の手を見つめる雪菜ー

そして、自分の身体に視線を落とす雪菜ー

「--や、、やべぇ…ま、、マジで…」
雪菜は驚いた様子でそう呟くー。

そこまで言うと、ハッとした様子で口元を押さえた雪菜は
「あ…そっか、雪菜の身体になったら、声も雪菜のものだもんなー」と、
苦笑いするー。

「---……」
雪菜の姿を鏡で見つめて顔を赤らめるー。

いざ、大好きな彼女に憑依すると、
やろうと思っていたことをやるのも、なかなかドキドキして進まないー。

「--わ、、わ、、わ…わ、、」
鏡の前で緊張した様子で何度かそう呟くと、
雪菜は続けたー

「--わたしは…雪菜…」
とー。

「---あぁああああっ…」
興奮した様子で、鏡から目を逸らす雪菜ー

単に自分の名前を言っただけだがー
”雪菜の身体で”わたしは雪菜””というだけで、
激しく興奮したー。

「--あぁぁぁ…ダメだ…最初の段階で、もう俺…」
そう呟いた雪菜は、

「あぁっ!雪菜の声で”俺”とかやばい!」
と、一人、頭を抱えたー

③へ続く

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ついに彼女への憑依を実行…☆!
次回が最終回デス~!

憑依<彼女からの誕生日プレゼント>
憑依空間NEO

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