憑依好きの男子大学生・文彦ー
そんな彼の誕生日に
彼女の雪菜がプレゼントしてきたのは”憑依薬”だったー。
あの騒動から、1か月…!
※「彼女からの誕生日プレゼント」の後日談デス!
先に①~③(本編)をお読み下さい!
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男子大学生・森重 文彦(もりしげ ふみひこ)は、
TSF好きの男子大学生。
”好き”と言っても、現実でそういうことをしたい、
というタイプではなく、
文彦の場合は”創作物としてのTSF”が好きなタイプだったー。
そんな文彦の趣味を知る彼女・雪菜は
文彦の誕生日に、どこから手に入れたのか
”本物の憑依薬”を手渡してきた。
戸惑う文彦。
しかし、親友の良一郎からアドバイスを受けた文彦は
2人とも奥手な状況を打開するきっかけを作るため、
”文彦に憑依されたがっている”と解釈してしまうー。
結果、文彦は雪菜に憑依ー。
が、それは良一郎の陰謀だったー。
文彦に憑依されたことにショックを受けた雪菜は、
文彦の元から離れてしまうー。
そもそも、雪菜に憑依薬を手渡したのは良一郎で、
文彦と雪菜の関係を割くために、
あれこれ仕組んでいたのだったー。
良一郎の目的は、
文彦と雪菜の関係を壊し、雪菜に精神的ダメージを与えることー
そしてー
憑依薬が本当に安全なのかどうか”テスト”することー。
目的を果たした良一郎は、安心して憑依薬を使い、
精神的に弱った状態の雪菜を、完全に乗っ取ってしまうのだったー。
あれから、1か月ー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
文彦は、雪菜が良一郎に憑依されて完全に乗っ取られてしまったとも知らず、
雪菜から別れを告げられて、それを承諾してしまったー。
”雪菜に憑依して、雪菜を傷つけてしまったー”
そんな思いから、何も、雪菜のことを疑わなかったー。
「---はぁ」
食堂で一人、ラーメンを食べ終えると、
スマホを確認するー。
良一郎と連絡がつかなくなってから既に1か月ほど経過しているー。
大学では、良一郎が”謎の失踪を遂げた”ということになっているー。
文彦も含めー
まさか”雪菜”に憑依して、雪菜の身体で良一郎が日々を過ごしているー…
などとは、夢にも思わずにー。
「---なぁ ちょっといいか」
「--ん?あぁ、いいよ」
文彦が、向かい側の座席にやってきた男子に返事をするー。
その男子は、友人の一人、村川 守(むらかわ まもる)-。
親友の良一郎ほどではないが、
前々から親しい男子の一人だ。
「---あのさ…言いづらいんだけどさ」
守が髪をいじりながら呟くー。
守が髪をいじってるときは決まってロクな話ではないー。
”言いにくい話をする時に、無意識にする癖”だからだー。
文彦は、
彼女と別れて、親友が消息不明ー
という現状以上に悪い話なんてあるものか、と
思いながら「どうしたんだ?」と、守に対して言葉をかけたー
「--あぁ、、その、あのさ、お前の元カノー、
最近さ…その…」
守は、戸惑った様子で呟くと、
顔を上げて、文彦に対して言い放ったー
「--なんか、男とヤッて金貰ってる、って噂になっててさー」
守の言葉に、文彦は、一瞬驚いたが
すぐに首を振ったー。
「---…ま、、まぁ、俺はもう、雪菜とは関係ないしさー」
雪菜から誕生日プレゼントとして渡された”憑依薬”を使って
雪菜に憑依してしまったー。
文彦は、もう、自分は雪菜に関わる資格はないー、と考えていたー
いや、それだけじゃないー
TSFが好きな自分には、彼女を作る資格なんてないのかも
しれない、と、そう思い始めてしまっていたー。
「---…ーーー」
守は、そんな文彦の様子を見ながら、困惑の表情を浮かべるー。
守も、文彦が”TSF好き”なのは知っているー。
文彦は仲良くなった相手には、
男子だろうが、女子だろうが、その趣味を打ち明けているー。
”TSFが好き”
それは、立派な誇れる趣味の一つなのだからー。 と。
彼女の雪菜と別れた現在でも、その考えには変わりはなかったー。
「---最近さー」
守が文彦の方に顔を近づけて小声で呟くー
「---”氷室さん、人が変わったみたい”ってー、
俺の周りのやつら、噂してるんだー」
守が”雪菜”に対する噂を口にするー。
「--え」
文彦は、雪菜と別れてから、雪菜と距離を取っていたし、
元々雪菜や守とは、学部も違うー
だから、別れたあとの雪菜の様子はあまり知らないしー
耳にも入ってきていなかったー。
「--人が変わったみたい?」
文彦は少し考えたあとに、申し訳なさそうな表情を浮かべるー。
「--たぶん、俺のせいだろー。
雪菜には、本当に悪いことしちゃったな」
文彦は、自分が”憑依したせい”だと考えて、そう呟くー。
だが、守はあることを口にしたー。
「-ーーー氷室さんと仲の良い女子がー
言ってたんだー
”最近の雪菜は、まるで男みたいだ”ってー」
その言葉に、文彦は表情を歪めたー。
ふと、”あること”が頭の中に思い浮かぶー。
目の前にいる守は知らないことだがー
”憑依薬”は実在していたー。
あの日、文彦が雪菜に憑依してしまったことは紛れもない事実ー。
夢でもないし、妄想でもないー。
確かに自分は”憑依薬”と呼ばれる薬を飲み、
その末に、雪菜に憑依したのだー。
雪菜の身体を自由に動かすことができた
あの日の感覚は、今でも忘れることはできないー。
「------」
”最近の雪菜は、まるで男みたい”
そんな風に言われるほどに、雪菜は変わってしまったというのかー。
「--…そっか、まぁ、でも…もう別れたんだし、
あんまり俺が干渉するのもな…」
文彦はとりあえずそう返事を返すと、
友人の守も「ま、そうだな」と、頷いたー
だがー
守に対して言い放った言葉とは裏腹に、
文彦は、雪菜のことを心配しだしていたー。
単にー
”自分が憑依”してしまったことによって嫌われて、別れてー
それで、今の雪菜が変わってしまったー…というだけなのであれば、
自分にできることは、「憑依してごめん」ということだけだし、
既に別れてしまっている以上、必要以上に干渉することは
よくないとも思うー。
だが、もしもーーー
文彦は、”イヤな予感”を覚えるー。
もしもー
”雪菜が誰かに憑依されているのだとしたらー”
そんな風に思ってしまったのだー。
”失恋のショック”で変わってしまったというのならー
それは、それで、仕方がないー。
悪いのは、自分ーー文彦自身だし、
この先、文彦は雪菜から何を言われたとしても、謝り続けるし、
言われなかったとしても、一生、自分のした愚かな行為を
背負って生きていくー。
しかしー
もしも、雪菜が誰かに憑依されているというのであればー
「---雪菜と、久しぶりに話をしてみるかー」
文彦はそんな風に思いながら、昼休みを終えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夕日が照り付ける中ー、
金髪の男の腕を掴みながら構内から出て来た雪菜を見つけたー。
「---久しぶり」
文彦がそう言うと、金髪の男が「誰だ?」と呟くー。
雪菜は「元カレ」と呟くと、
金髪の男に「じゃあまた明日」と、だけ告げて文彦の方に近づいてきたー。
「--急に、どうしたの?」
クスッと笑う雪菜ー。
容姿はほとんど変わっていないがー
雰囲気がまるで違うー。
雪菜が自動販売機で、カルピスを買うと、
そのまま自販機に寄り掛かって文彦の方を見たー
「---……いや、、あのさ…
雪菜を傷つけておいてこんなこと言うのもなんだけどさー」
文彦は、険しい表情をしながら雪菜を見つめるー
「--最近…金を貰って男と…その…してるって、聞いたからー」
文彦が言うと、
雪菜は「だったら何なの?」と笑いながら答えたー。
「---……ま、、まさか本当にーー」
文彦が言うと、雪菜は
「-だって、ヤるだけでお金貰えるんだから、得じゃん」と、
笑いながら言い放ったー。
「--ゆ、、ゆ、、雪菜…!わ、悪かったよ…
俺のせいなんだろ?」
文彦が戸惑いながら言うー。
「----」
雪菜がうすら笑みを浮かべながら文彦の方を見つめるー。
「--俺が…雪菜に憑依したから…
雪菜を傷つけちゃったから…
そんなことしてるんだろ…?
許してくれなんて言わないー
でも… でも…!」
文彦が言うと、雪菜は少しだけ笑ってから
飲み終えたカルピスを自販機横のごみ箱に放り投げたー
「----別にー」
雪菜が呟くー。
「-”今のわたし”がいるのは
文彦が”わたし”に憑依してくれたおかげー」
クスッと笑う雪菜ー
「ど、どういう意味だー」
文彦が戸惑うと、雪菜は「さぁ」と、馬鹿にしたように呟いて
そのまま立ち去って行こうとするー
「--まぁ、もう”元カレ”のお前には関係ないでしょ」
雪菜はそう呟くー
”お前”という物言いが少しだけ引っかかるー。
「--じゃー。」
雪菜はそれだけ言うと、立ち去って行ってしまったー
「----------」
文彦は戸惑うー
本当にー
まるで別人のようだったー。
前からー
雪菜はロックバンドのファンで、
バンドの演奏を聞いているときだけ、別人のようにハイテンションだったり、
二面性はあったけれど、
今の雪菜は、なんだか、それとも違うー。
「------」
文彦は戸惑いながらも、雪菜のことを”尾行”したー。
雪菜は誰かと電話をしながら、甘い声で会話しているー
また”男”だろうかー。
文彦は、”これじゃ俺、ストーカーだよなぁ…完全に”と
戸惑いながらも、そのまま雪菜の尾行を続けたー。
家に入っていく雪菜ー。
しばらくそのまま様子を伺っていると、
雪菜が再び家から出て来たー
見えてしまいそうなほどに短い
ショートパンツに肩を見せびらかすような服装ー
髪も一部分を赤く染めて、まるで別人のような雪菜の姿に、
文彦は驚いてしまうー。
ガムを噛んでいるのか、口元をくちゃくちゃと動かしながら
雪菜は繁華街の方に歩いて行くー。
「-ーーー…(どうしちゃったんだよ…雪菜)」
文彦は不安を感じるー。
”あの子、可愛くね?”
突然ー
そんな言葉が、文彦の頭の中に
フラッシュバックするかのように、浮かんできたー。
「-----!!!」
今の雪菜と同じような格好の女を見かけたときにー
親友の良一郎が言っていた言葉だー。
確か、そうー
前に親友の良一郎と、街をぶらぶらしていた際にー
良一郎が、大胆に生足を晒して、肩出しの服を着ていた女を
見ながら、そう言っていたのだー。
「-----」
今の雪菜の格好は、その時の女の格好にそっくりだったー。
”憑依薬は実在する”
”雪菜と別れたぐらいのタイミングから、良一郎が消息不明になっていること”
その2つの事実が、文彦の脳裏にイヤな予感を与えたー。
それはーー
”良一郎が雪菜に憑依しているのではないか”
と、いう予感ー。
「ーーーーー(どこへ行くつもりだ)」
文彦は、まるで別人のような雪菜を尾行しながらー
雪菜が繁華街の方にどんどん向かって行くことにー
さらに強い不安を覚えるー。
そしてー
雪菜が繁華街の一角で立ち止まって、スマホをいじり始めたー。
「----…」
雪菜がふと、鋭い視線を文彦の方に向けるー。
一瞬、バレたかと思ったがー
そんなことはなかったー。
しばらくすると、雪菜のところに、男が二人ほどやって来るー。
特にガラの悪い男、というわけではなくー
普通の感じの男たちだー。
雪菜はその男たちと合流すると、近くのゲームセンターの中に
男たちと共に入って行ったー。
「----…」
文彦の不安は、さらに膨れ上がったー。
雪菜が入って行ったゲームセンターは
”音ゲー好き”でもあった良一郎が良く通っていたゲームセンター
だったからだー。
「---雪菜…」
文彦は意を決して、そのゲームセンターの中に足を踏み入れたー。
<中編>へ続く
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コメント
毎週土曜日の作品のみ、
私の都合上、予約投稿の作品なので、
その都合上で、続きはまた来週の土曜日になります~!
少しお待たせしてしまいますが、
来週もぜひお楽しみください!
今日もありがとうございました!★
※新サイト(ここ)に移転したため
しばらく予約投稿の時間を日付が変わってすぐ(0時)にしています。
そのため、更新時間が毎週土曜日のみ0時すぎになりますので
よろしくお願いします~!
コメント
良一郎は親友で憑依薬の安全を事前に確認するくらい慎重な割に、憑依後の言動が甘いですね。
あんまり元の雪菜とかけ離れた行動をすれば、周囲におかしいと思われるのは当然でしょうに。
この分じゃ普通にそのうち文彦に正体を見抜かれるでしょうね。文彦は憑依薬の存在を知ってるので、良一郎にとって、厄介な存在ですよね。
とはいえ、真実がバレても、文彦に出来るのは説得くらいでしょうか?
自分勝手な良一郎に説得は通じなさそうですし、雪菜を救うのは難しそうです。
というか、憑依された被害者が助かるパターンの話ってあんまりないですよね。
助けようとしたら、逆に憑依されて思考を変えられて破滅したりする話もあったりしますから。
この話の憑依薬はそういう思考を汚染する効果ある薬ではなさそうですけどね。
確か『暴走憑依男』でしたっけ?
あの話みたいに憑依薬を打ち消したり、魂を吸い出す道具でもあればなんとかなりそうですよね。
雪菜を助けて、誤解が溶けてハッピーエンドになるといいんですけど。
続きは来週ですか、一年もかかる『体越し』程じゃないけど、一週間も普段の話に比べたら長いですね。続きが待ち遠しいですね。
コメントありがとうございます~!
本当は続けて書きたいところなのですが、毎週土曜日の
更新の都合上、土曜日に続きものを書くとこのような
形式になってしまいます~…!
(体越しは年末年始感を出したいので、わざと1年に1回にしてます~!)
土曜日のお話だけ毎週、予約投稿なので、
このお話も実は後編まで既に書き終えているのですが、
ぜひ結末まで楽しんでくださいネ~!