乗っ取られた寧音ー。
本人の意識の抵抗もむなしく、”いじめ”に加担するー。
そうとは知らない啓太は、完全に、追い詰められてしまっていた…!
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啓太は落ち込んでいたー
亜理紗や響子、志穂から罵倒されることは、もはや慣れているー
辛いけれど、慣れているー
でもー
「--酷い…!人殺し!」
昨日の寧音の言葉は、忘れられないー。
「----藤井さん…」
啓太が、寧音に話しかけるー。
「--話しかけないで。人殺し」
寧音は目を合わせもせず、そう言い放ったー
「---違うんだ………ぼく…」
啓太は泣きそうになりながら寧音に言い放つー
寧音は、自分の心が激しく痛んでいるのを感じるー
”--ずいぶんとお人よしな心ね”
寧音を乗っ取った志穂も、寧音の身体の底から
浮かび上がる”罪悪感”を感じたー
けれどー
”ーー罪悪感を感じないぐらいに、染めてあげるー”
寧音の身体の中の”心”も自分色に染めて完全に支配するー
志穂はそう思いながら笑うー。
「--ねぇ、松宮くんー
正直にわたしの今の気持ち、言っていいかな?」
寧音が微笑むー。
啓太は泣きそうになりながら頷くー。
耳打ちする寧音ー
”マジできもいーーー”
震える啓太ー
寧音の声は低く、冷たいーーー
「---…あ、、、、、、あ…」
啓太は目から涙をあふれさせるー。
寧音の身体が激しく拒否反応を示すー
”うっさいわね”
その拒否反応を感じながら、寧音を乗っ取った志穂はさらに続けたー。
「---し・ねー」
冷たい声が出たー
寧音とは思えないような、冷たい声がー
寧音の身体中に拒否反応が駆け巡るー
寧音を支配した志穂は、それを抑え込んで、啓太を見てほほ笑んだー
啓太は、あまりのショックに口を半開きにしたまま、
放心状態で、そのままよろよろと歩き出したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”亜理紗と響子”からの直接的ないじめー
”乗っ取られた寧音”からの精神的ないじめー
啓太は、次第に追い詰められていたー
寧音から呼び出された啓太ー
「--ちゃんと持ってきた?」
寧音が微笑むー。
笑顔は、変わらないー
容姿はほとんど変わっていないー
なのにー
今は、寧音が悪魔に見えるー。
「--」
啓太は泣きそうになりながら、寧音にお金を渡すー
「--ちゃ~んと…
わたしに恩返ししなくちゃ…ね?」
寧音が啓太の肩に手を触れながら、悪い笑みを浮かべるー
こういうことをするたびにー
寧音の身体は激しく拒否反応を示すー
けれどー
寧音を乗っ取っている志穂にとって、
それも心地よいものになりはじめていたー
”どんなに拒否反応を示したって
この身体はわたしのものなのよー”
「--今まで松宮くんのこと、助けてあげてたのは
こうして、恩を着せるため。
じゃなきゃ、あんたみたいなキモイやつ、
助けるわけないでしょ?」
寧音が笑うー
本当の寧音が心に思ってないことを言うー。
「--ふふ、じゃあ、来週は今日の倍、持ってきてね♡」
笑みを浮かべる寧音に、
「む、、無理だよー」と叫ぶ啓太ー。
「--人殺しのくせに」
ボソッと呟く寧音ー
啓太は、目から涙をこぼすー。
寧音はそれを見て、意地悪そうに微笑んだー。
「いいから、金を持ってくるのよ。この根暗!」
寧音はそう呟くと、空き教室から外に出たー
「---え?」
寧音は、自分の目から涙がこぼれていることに気づくー
寧音本来の意識が、悲鳴を上げているー
しかしー
「涙を流す必要なんてないのに…
ふふふ…
あいつをいじめるの、マジで気持ちいい…♡」
寧音はそう言うと、自分の涙を指につけて、ペロリと舐めたー
”涙を流す必要なんてないー”
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後の
放課後ー
亜理紗と響子が、啓太を呼び出して、いじめを続けるー。
憑依された寧音は、この場にはいないー。
一緒になっていじめるよりもー
”寧音”としていじめたほうが、啓太にダメージを
与えることができるからだー。
「---あんたをいじめるの、超最高!」
生徒会副会長の亜理紗が、啓太を罵倒し、時に暴力を振るい、笑うー
「----」
そんな様子を見つめながら、ショートヘアーの響子は、
静かに、その様子を”録画”していたー。
「--響子!ほら!こいつにまた”虫”プレゼントしてあげなさい!」
亜理紗が笑いながら言うー。
響子は録画を止めて「うん!」と笑うと、
用意していた芋虫を啓太に押し付けたー。
悲鳴を上げる啓太ー。
その様子を見つめながら、亜理紗と響子は、満足げに笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「---!」
生徒会副会長の亜理紗が学校に登校すると、
亜理紗は白い目で見られていたー。
「-----な、なにこれ!?」
亜理紗が、教室の黒板に貼られた
”いじめ”の写真を見つめるー。
亜理紗が、啓太に暴力を振るっている写真ー
それだけではないー
動画サイトに、亜理紗が啓太をいじめている動画まで
流出していたー
「---」
亜理紗は怒りの形相で、響子を見つめたー。
「--あんた!」
亜理紗が叫ぶー。
動画の撮影角度からー
撮影者は響子以外に考えられないのだー
ショートヘアーの響子は笑うー。
その様子を、寧音も笑いながら見つめているー。
「--……わ、、わたしだけに責任を押し付けるつもり…?」
亜理紗の言葉に、響子は「なんのこと~~~?」と笑みを浮かべるー。
「--裏切者っっ!!!裏切者っ!」
激しく響子を罵倒する亜理紗ー。
亜理紗は続けて寧音の方にも怒りの形相で駆け寄るー。
そして、呟くー
「--あんたも、グルなの!?」
とー。
だが、寧音は、冷たい目で亜理紗を見つめたー
寧音とは思えないような、冷たい目ー
「--亜理紗ー
いつも、松宮くんをいじめてー
いい加減にしなさい、って言ったよね?」
”寧音”のふりをして笑う
寧音を支配した志穂ー。
「---あ、、、あんた…
他人の身体を…乗っ取ってるくせに…!」
亜理紗が歯ぎしりをするー。
寧音を乗っ取った志穂の目的は、”3つー”
”なんとなく腹が立つ啓太を、守っていた寧音の身体で啓太をいじめることー”
”家庭に不満のあった志穂が自分の身体を捨てて、寧音の人生を奪うこと”
そしてーー
”いつも偉そうにしている亜理紗を蹴落とす”ことー。
”優秀な生徒会長”である寧音の身体なら、
それは、たやすいー
「--あんた…!みんな!!みんな、、聞いて!
会長は今、志穂に身体をーーー」
亜理紗が”憑依”のことを暴露しようとするーー
「--恥を知りなさい!」
寧音が大声で叫んだーーー
教室が静まり返るー。
亜理紗が、屈辱塗れの表情で寧音を見つめるー。
「---そんなんで、よく”副会長”が務まったわねー。
いじめっ子さん」
寧音は小声でそう呟くと、
へなへなと座り込む亜理紗を見つめて、笑みを浮かべたー。
「---」
ビクン、と拒否反応を示す身体ー
「-ふふふ…これが”あたらしいわたし”」
身体に向かって小声で呟く寧音ー。
亜理紗はそのまま生徒指導室の先生から
呼び出されて、連行されてしまったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---ねぇ、志穂…」
ショートヘアーの響子が、寧音と一緒に
廊下の隅で話をしていたー
響子も、生徒会副会長の亜理紗ー、
いじめのリーダー格である彼女のことをよく思っておらず、
寧音に憑依した志穂と結託して、亜理紗を引きずり落としたのだー。
「---志穂?」
寧音が舌打ちをするー
「--今のわたしは、藤井寧音よー。
間違えないで」
寧音が怒りの形相で、響子を睨むと、
「ご、、ごめん」と、響子は戸惑いながら呟いたー。
”あの寧音がまるで別人ー
中身が変わっただけでこんなに…”と、
響子もある種の恐怖を抱いていた。
「---あいつ、わたしたちのことも言うんじゃ?」
と、響子は不安を口にするー。
亜理紗によるいじめが公になったことで、
啓太が先生たちから聞き取りを受けているー。
”響子”や”志穂に憑依された寧音”のことも
啓太が言うのではないか、と不安を感じていたのだー
「--心配なんていらない」
寧音はクスッと笑ったー
「--”この身体”なら、いくらでも、対処できるー
ふふふ」
今朝、亜理紗のいじめが発覚する前に、
寧音は啓太をあらかじめ脅していたー
”-わたしを困らせるようなこと、しないよね?
亜理紗のいじめが明らかになったらー
”亜理紗にだけいじめられた”ってちゃんと、言うのよ?”
その言葉に、啓太は戸惑っていたー
けれどー
寧音は悪魔のように囁いたー
”--小さいころから、ずっといっしょで、
楽しかったよね?松宮くんー。
大事な幼馴染のわたしを、困らせるようなこと、
松宮くんは、しないよね?”
その言葉に、啓太はー
今までの寧音との思い出が頭の中に蘇ってきてー
どうしてもーー
どうしても、逆らえなかったー
「--…悪魔…ね」
響子が少し引き気味に言うと、
寧音は、「誉め言葉…最高…ゾクゾクしちゃう」と、完全な悪女の顔で微笑んだー
同時刻ー
生徒指導部では、寧音に言われた通り、
”亜理紗だけにいじめられた”ことを、啓太は先生に話したー
響子は、止めに入ろうとしていた、とも告げたー。
亜理紗は怒り狂って叫んだー。
しかし、”いじめを受けた当事者”の言葉であると同時に、
”生徒会長である寧音の評判はとても良い”ことなどから
亜理紗が主張する”響子もいじめしてる!”という言葉や
”寧音に志穂が憑依してる”という言葉は無視されたー。
そもそも、憑依など信じてもらえるはずがなかったのだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--ご苦労様」
寧音が、啓太の肩を叩くー。
「---藤井さん……僕…僕…」
啓太は泣きそうになりながら言うー。
寧音は、そんな啓太を睨みながらー
「--わたしのこと、好きなんでしょ?」と
笑みを浮かべるー。
「--これからも、わたしに尽くしなさいー」
啓太は”変わり果ててしまった寧音”を前に
理由もわからず、ただただ泣き崩れているー。
啓太が、寧音のことを好きなのはー
志穂も気づいていたー。
そしてーー
啓太は気づいていなかったがー
寧音もーー
帰宅した寧音は、クスッと、微笑んだー。
寧音は、啓太と一緒に写っている写真を、
大切そうに机の中にしまっていたー
志穂にはわかるー
寧音はきっとー
啓太のことを弟のように可愛がるうちにー
好きになってしまったのだとー。
「--でもねー」
寧音は笑うー
「--そんな恋愛感情も含めてー
全部ーーー
わたしが乗っ取ったのー」
”憑依”は最高ー
その相手の全てを乗っ取ることができるからー
身体もー
立場もー
精神もー
そして、”想い”さえもー。
寧音は、狂ったように笑いながら、
寧音と啓太が写った写真を手にするとー
それをー口の中に放り込んで、笑いながらかみ砕いたー。
”寧音本人の想い”を
全て、かみ砕くかのようにー
目から涙がこぼれるー
寧音は、面白おかしくなって、大笑いしたー
身体が震えるー
だが、やがて、その震えが消えていくー
”プチっー”
何かが、”切れた”気がしたー
寧音を支配している志穂は、狂気的な笑みを浮かべたー
「--藤井 寧音の身体と人生、げ~っと♡」
完全に支配したーー
そう確信した志穂は、ペロリと唇を舐めながら、そう微笑んだー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
いじめから守ってくれていたあの子が、
いじめっ子に…!
というお話でした~!
そう遠くないうちに後日談も書けるかも…?
しれませんネ…!
ひとまず、最終回までお読み下さりありがとうございました~!
コメント
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これは続きが見たくなってきますねぇ
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コメントありがとうございます~!
続きもきっと、そう遠くないうちに…☆!
楽しみにしていてくださいネ~!
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奪った体に自分(志穂)のモノだと言い聞かせ、最後には想いも砕いて完全に奪ってしまう……ダークで良かったです。
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コメントありがとうございます~!
お楽しみいただけて何よりデス!
後日談も予定しているので、ぜひ楽しみにしていてくださいネ~