<憑依>あんたも今日からいじめっ子②~支配~

啓太をいじめている陰険な女子たちに
憑依されてしまった、
啓太を守ってくれていた幼馴染の寧音ー。

”味方が敵になってしまった”
そんな状況を前に、啓太は…?

--------------------—-

「----」
1時間目が終わったら空き教室で大事な話があるー。
幼馴染の寧音からそう誘われた啓太は
ドキドキしていたー。

寧音の様子がなんだかいつもと違ったー
いつもと違って甘い声ーというか
そんな感じだったー。

啓太は、”自分なんかが”と常に思っているため、
今までそんなことを意識したことは全くなかったのだが、
寧音から誘われるような声で、空き教室に呼び出されたことで、
必要以上に意識してしまっていたー。

”もしかしたら…”
と、そんな気持ちが浮かび上がって来るー。

1時間目が終わり、啓太は、
寧音に誘われた場所へと向かうー。

寧音の姿は、既にないー。

教室から出ていく啓太の姿を見つめながら
陰険な女子生徒の亜理紗と響子は笑みを浮かべていたー。

そしてー啓太が寧音から呼び出された空き教室に行くとー…

そこには、いじめっ子のひとり・志穂が倒れたままになっていたー。
寧音に憑依した志穂の”抜け殻”-。

志穂の両親は、志穂に全く興味がないためー
志穂が昨日から帰宅していなくても、何の対応もしておらずー
志穂の身体は放置されたままだったー。

「---え…」
倒れている志穂を見て、啓太が唖然とするー

「え、、ちょ、、どうしたの…!?えっ!?」
啓太が慌てて倒れている志穂に駆け寄るー

そういえば、今日はいじめっ子のひとり・志穂は欠席していたー。
啓太からすれば、いじめグループのひとりである志穂に
良い印象なんて全くないー。

けれどー
こうして倒れているとなれば話は別だー。

「ね、、ねぇ、しっかりしてよ!」

啓太はそう叫びながらー
志穂の方を見つめるー。

すぐに分かったー

志穂は息をしていないー

「ひっ!?」
啓太が驚いて尻餅をつくー。

そこにーー

「あんた…何をしてるの?」
いじめっ子のひとり、ショートヘアーの響子が姿を現すー。

「---え…ち、、ちがっ!僕が来た時には…!」
啓太が慌てて叫ぶー。

「きゃああああああああああ!」
響子がわざとらしく悲鳴を上げて走り去っていくー

「--あいつに、、あいつに、志穂が!志穂が~~~~!」
響子の悲鳴に、人が集まって来るー

そんな状況にーー

啓太は「ちがっ!!ぼ、、僕、、僕、何も、、何もしてないよ!」と
叫ぶことしかできなかったー。

先生たちがすぐに集まってきてー
”志穂の死亡”が確認されたー。

志穂の使った憑依薬は”元々の自分の身体”を捨てるタイプー
自分の家庭に嫌気がさしていた志穂は、
亜理紗と共に啓太をいじめる、という目的以外にも
”新しい人生を送りたい”という目的もあったのだー。

「---僕、、何も…何もしてません」
先生から何度も何度も、事情を聞かれる啓太ー

だがー
啓太は”寧音から呼び出された”ことは言わなかったー

”藤井さんが疑われることになっちゃうからー”
とー。

そう考えたからだー。

そして、それは亜理紗たち陰険女子の”狙い通り”だったー。
啓太は一人、疑われて、先生から話を何度も何度も聞かれたー。
警察からも、だー。

しかし、志穂には何の外傷もなかったことー
毒物なども検出されなかったことからー
最終的には、啓太は”怪しいけれど、何もしていない”というような
扱いを受けて、解放されたー。

「---チッ…そのまま掴まればよかったのに」
夕方ー
ようやく、解放された啓太を見て、亜理紗は笑みを浮かべたー。

”話があるんだけど”と
啓太を、人通りの少ない廊下に呼び出したー

「---」
啓太は暗い表情だー。

「--あんたが、志穂を殺したんでしょ?」
亜理紗が、啓太を責めるー。
隣には、ショートヘアーの響子もいるー。

いじめのリーダー格で生徒会副会長の亜理紗は、
当然、志穂が倒れていた理由を知っているー

志穂が憑依薬を使い、寧音に憑依したからだー。

”あえて”、啓太を責めているー

「人殺し!人殺し!人殺し!」
亜理紗が手を叩きながら、啓太の方を見つめる。

「人殺し!人殺し!人殺し!」
ショートヘアーの響子も笑いながら、手を叩くー

”人殺し”コールをする
亜理紗と響子ー

啓太は泣きそうになりながら
「僕は、、僕はやってないよ!」と大声で叫んだー。

そこにーーー

「---あ」
亜理紗が振り返ると、
啓太の幼馴染で、生徒会長の寧音の姿があったー

「--ーーあ…」
啓太は泣きながら寧音の姿を見つめたー

”お決まりの”パターン。
幼馴染の女の子を頼るなんて、情けないけれどー
どこかで、啓太は安心してしまうー。

いつも、
亜理紗・志穂・響子の3人にいじめられているときに
寧音がやってきて助けてくれるー。

そのパターンだからだー。

寧音が近づいてくるー

亜理紗と寧音が笑みを浮かべながら頷くー。
そのことに啓太は気づいていないー

亜理紗がわざとらしく「か、、会長…!」と呟くー
響子も「ヤバッ…また見つかった」とわざとらしく呟いているー。

寧音は、啓太の前に近づいてくると、
静かに呟いたー

「--松宮くん、わたし」
にやりと笑みを浮かべる寧音ー。

「---松宮くんが、そんなことするなんて、思わなかったー」
とー。

笑いだすのをこらえながら、寧音を乗っ取った志穂は、続けるー。

「--松宮くんが、志穂ちゃんを殺したの?」
寧音の声は歪んでいるー。
笑いだすのを必死にこらえるためだー。

「---え、、、え…藤井さん…ぼ、、、僕じゃないよ…」
”唯一の信頼できる女子”である寧音の言葉に、
啓太は亜理紗たちからのいじめ以上に
心が抉られるー。

倍以上ー
いや、10倍以上のショックを受けるー。

亜理紗と響子は、その様子を見つめながら笑っているー。

「---わたしに嘘をつくの!?松宮くんって、そんな子だったの!?」
寧音が、泣き出しそうな”演技”をしながら叫ぶー

「ちがう…ちがう…ぼく…」
啓太は泣き出してしまうー。

「--酷い…!人殺し!」
寧音は泣きながらそう叫ぶと、
背を向けて立ち去っていくー

「待って…僕じゃないよ…藤井さん!ねぇ、、ねぇ!」
泣き叫ぶ啓太ー

寧音は足早に啓太のいる廊下から立ち去ると、
一人笑いだしたー

「くくくっ、、、あははははは、あはは、あは、ウケるぅ~~~」
寧音は、その場でしゃがみ込んで笑いだすー。

寧音が憑依されているとも知らずにー
寧音に罵倒されて、啓太は、これまで見せたこともないような
ショックを受けていたー。

亜理紗たちがいじめるよりも、遥かにダメージを受けている様子だったー

「あは、、あはははっ、、ははははははは」
寧音は笑いながら、呟くー

「この身体…ホント最高…!」

啓太をいじめるだけではなくー、
自分の人生に嫌気がさしていた志穂にとって、
まさに、最高の身体ー

「---!」
だが、寧音は表情を歪めたー

「ふ~ん」
自分のある”異変”に気づいて、寧音は、少しだけ笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ~~あ~~~あ~~~~」

寧音が立ち去ったあとー
響子が笑うー。

「--あんたを守ってくれていた女の子を、泣かせちゃったねぇ~
 人殺し!」

響子が言うと、
生徒会副会長の亜理紗は笑いながら、啓太の方を見たー。

「--会長を泣かせちゃうなんて、ほんとーに、酷いやつね」
亜理紗の言葉に、
啓太は、座り込んで泣きじゃくっているー。

亜理紗や響子の言葉は、もはや耳に入らないぐらいにー
啓太はショックを受けていたー

”寧音を泣かせてしまった”ことにー。

亜理紗は笑うー
”想像以上の効果ねー
 これで、あとは会長の身体で志穂がこいつをいじめればーー”

笑みを浮かべながら立ち去る亜理紗ー。

亜理紗が啓太を執拗にいじめているのには、ある理由があったー。
それはー
”喫煙現場”を見られたことー。

亜理紗の兄は、大の不良で、
その影響で、亜理紗も歪んだ一面を持つー。

表向きは優等生で、基本的には兄とは違い
真面目に生活しているものの、
兄から無理矢理煙草を吸わされた影響で、
亜理紗は、隠れて喫煙を続けているー。

それを啓太に見られてー
啓太が先生に報告したことからー
亜理紗は啓太をイジメ始めたー

「----」
廊下を歩く亜理紗ー。

その背後でーー
ショートヘアーの響子が不気味に微笑んだことに、
亜理紗は気づいていなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

寧音は、鏡の前で笑みを浮かべていたー。

ぴくっと震える左手ー

「--ふふふふ…それで抵抗してるつもり?」
寧音は、クスクスと笑ったー

さっきー
啓太に辛辣な言葉を投げかけたころからだろうかー。

寧音本人の意識が、必死に抵抗しようとしているのを感じるー。
本来の寧音がやらないようなことをすると、
寧音の意識が抵抗するのだろうかー

「でもねー」
クスっと笑う寧音ー

「今はわたしが寧音…
 あんたは今日からいじめっ子になるの」

寧音は、そう言いながら、自分の頬を人差し指でつついて
ぐりぐりと頬を押し付けたー

「-このからだはわ・た・し・の・も・の!」
寧音が狂気の笑みを浮かべるー。

「--いじめをするのも、何をするのも、わたしの自由!
 あんたの幼馴染をいじめるのもわたしの自由ー
 あんたはいじめっ子になるの!」

指で何度も何度も自分の顔をつつく寧音ー

”やめて!”と言わんばかりに
左腕が何度も震えるー

「--だまりなさい!」
左腕を壁に叩きつける寧音ー

「--そうーふふ、いい子ね」
静かになった左腕を見つめながら寧音はほほ笑むー

”身体”に語り掛ける寧音を支配した志穂ー。

「--わたしが”身体(おまえ)”の新しいご主人様よー
 わたしの思うがままに、動きなさいー」

寧音は左手を見つめながら、そう呟くと、
静かに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日の朝ー

空き教室で、いじめのリーダー格であり、生徒会副会長の亜理紗は
笑みを浮かべていたー

その前には、
膝を折って、「女王様…」と呟く寧音の姿ー

「ふふふふ、一度、、一度でいいから、会長をこうして
 屈服させてみたかったの!」
亜理紗が嬉しそうに言うー。

生徒会長の寧音に対して劣等感を抱いていた亜理紗は
寧音を乗っ取った志穂に頼み込んで、
”寧音の身体”で、亜理紗に屈服した演技をしてもらって
喜んでいるー

「--わたしは、亜理紗さまのしもべですぅ」
寧音の演技に、
亜理紗は嬉しそうに邪悪な笑みを浮かべるー

「--ふふふふ…いい気味!ほら!土下座!土下座しなさい!」
亜理紗がクスクスと笑うー

寧音を乗っ取った志穂は、亜理紗のために
寧音の身体で土下座をするー

”---亜理紗、今までわたしと仲良くしてくれてありがとうー”
寧音は、土下座しながら笑みを浮かべていたー

”でもねーー?”
寧音は邪悪な笑みを、亜理紗には見えないように浮かべるー

その様子を横で見ているショートヘアーの響子も笑っているー

”--いつまでも、自分が”一番上”だと、勘違いしないことねー”

そんな風に思われているとは夢にも思っていない亜理紗は、
「さぁ、今日もあいつを痛めつけるわよ!」と、笑みを浮かべたー

悪だくみをするたびにー
寧音の身体に拒否反応が駆け巡るー。

「---ーー…ふふ
 無駄なあがきーー

 最高ー」

女子トイレに入った寧音は静かに微笑むー

「ほらーー
 みてごらんーーー

 これが、今のあなたの顔ー」

鏡に映った寧音は、悪女の笑みを浮かべているー

同じ顔なのにー
”まるで違う”-

「--これが、今のわたしーーー
 わる~~~~~~い、わたしーーー」

手が悲鳴を上げるかのようにビクンビクン震えるー。

「--わ・た・し、わるいこになる♡ ふふ」
寧音はそう呟くと、ビクンビクン震える身体に向かって静かに囁いたー

「--あたらしい主はわたしよー。
 従いなさいー」

”身体”に語り掛ける寧音。
身体の震えが止まると、寧音は満足そうに微笑みー
邪悪な笑みを浮かべながら、トイレの外に出て、廊下を歩きだしたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

いじめられている啓太の運命は…?
そして、乗っ取られてしまった寧音の運命は…?

明日が最終回デス~!

コメント