<憑依>あんたも今日からいじめっ子①~悪意~

陰険な女子三人組から、いじめを受けていた
気弱な男子生徒。

幼馴染の女子生徒は、そんな彼のことを守っていたものの…?

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「--ほら!触れよ!ほら!」

「や、、やめて…!」
気弱な男子生徒・松宮 啓太(まつみや けいた)は
陰険な女子三人組からいじめを受けていたー。

「---ほら!!ほらぁ!」
ショートヘアーの乱暴な口調の女子生徒・城ケ崎 響子(じょうがさき きょうこ)が、
啓太の腕を掴んでいるー。

「-うぁ…ぁ」

その先には、芋虫のような昆虫がいるー。

虫が大の苦手の啓太ー。
それを知って、陰険な女子三人組が、啓太に虫を触らせようとしているのだー

「あっ…あっ…あっ…」
泣きながら芋虫を触らされる啓太ー

「あっはははははは!」
響子が笑いながら、啓太を見つめるー

「--かわいそう~~~!!
 あ、あんたじゃなくて、芋虫のほうがね!」

派手な雰囲気のおしゃれ女子・山崎 志穂(やまざき しほ)が、笑いながら言うー。

「あんたみたいなキモイのに触られる芋虫が可愛そう~~!
 ほら、謝りなよ!」

志穂が、啓太の方を見つめながら笑うー。

「うっ…うっ…」
泣きじゃくる啓太ー

おしゃれ女子の志穂と、がさつな女子の響子が笑いながら
そんな啓太の様子を見つめているー。

そしてー
陰険な女子たちのリーダー格である
生徒会副会長の里中 亜理紗(さとなか ありさ)が、笑みを浮かべるー。

亜理紗は”表向き優等生”であり、
先生たちも、その亜理紗の悪事には気づいていないー

そのため、啓太は、誰からも助けてもらうことが出来ずー、
日夜、陰険女子三人組からの”いじめ”を受け続けていたー

いやーー
啓太を助ける”光”が一人だけいたー

「--こら!何してるの!」
クラスメイトで幼馴染のー
生徒会長・藤井 寧音(ふじい ねね)-。

「---ゲッ!」
ショートヘアーの響子が、ぎょっとするー。

おしゃれな志穂も、途端に緊張した様子を見せるー。

生徒会副長の亜理紗は寧音の方を見つめながら
「あら、会長」と笑みを浮かべたー。

「--亜理紗」
寧音が亜理紗の方を見つめるー。

「また松宮くんをいじめて…
 いい加減にしなさいよ」

寧音が、亜理紗を睨む。

寧音は”お姉ちゃん”という感じの頼れる子で、
優等生の副会長・亜理紗以上に成績も高く、
生徒会の役職も”会長”だー。

「--チッ」
亜理紗が舌打ちをするー

亜理紗は、寧音に対して”劣等感”を抱いていたー。

陰険女子のリーダーで、生徒会副会長である亜理紗は、
今まで、誰にも負けず、常に”1番”だったー。

しかしー、高校に入学してからは、
寧音に勝てずー
亜理紗はいつも屈辱を味わっていたー

プライドの高い亜理紗は”上には上がいる”ということを
認めることが出来なかったー。

「----わ、、わかったわよ」
寧音に睨まれた亜理紗は、そう呟くと、
「--ただ単に”指導”してただけだから」と
捨て台詞を残して、
仲間の響子・志穂の二人を連れて立ち去って行ったー。

寧音は、亜理紗らが立ち去って行ったのを確認すると
ため息をついてから啓太の方を見たー。

「松宮くん…大丈夫だった?」
寧音が心配そうに呟くと、
啓太は震えながら、指をさしたー。

さっきの芋虫が、まだ空き教室の中にいたー

「ひっ!?」
啓太と同じく虫が苦手な寧音が悲鳴を上げると
「い、移動しよっか」と苦笑いしながら、
空き教室の外に出るー。

啓太の心配をする寧音ー。
寧音は啓太の幼馴染で、小さいころはよく一緒に
遊んでいる間柄だったー。

気弱な啓太はあまり友達が出来ず、
明るくて優しい寧音は、友達にも恵まれて
ずいぶんとクラスの立ち位置に”差”が
出来てしまったものの、
寧音は今でも、昔のように啓太に優しかったー。

「---ごめんね。力になりきれなくて…」
寧音が申し訳なさそうに言う。

啓太は「ううん」と首を振るー。

「藤井さんにはいつも助けられてばっかり…」
啓太が言うと、
寧音は「当たり前でしょ」と、笑いながら言うー。

寧音は、これまでも何度も亜理紗たちに注意してくれているー
先生にも、何度か報告はしているー。

しかし、亜理紗が普段は優等生を振舞っていることからー
なかなか先生たちも強く注意することが出来ずー
生徒指導部に一度、三人は呼び出されたが、十分な指導が
行われておらず、野放し状態になってしまっているー。

「---困っているクラスメイトがいたら、助けるのは当然だから」
寧音が言うと、
啓太は「本当にありがとう」と感謝の気持ちを述べたー。

寧音は、本当に優しいー
”偽りの優等生”である亜理紗とは違い、
”本物の優等生”であると、啓太は思うー。

でも、同時に
”いつまでも藤井さんに甘えていちゃいけない”という思いも
啓太の中にはあったー。

寧音に助けてもらってばかりではなく、
なんとか、自分でも、亜理紗・響子・志穂の三人に
立ち向かっていかないといけないー、
とー。

「--わたしは、いつでも、松宮くんの味方だからね」
寧音はそう言って微笑むと、啓太の前から
立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

だがーー

「--!」

啓太の前から立ち去って下校しようとしていた寧音の前に
亜理紗たち三人が姿を現したー。

「--何か用?」
寧音が言うと、
亜理紗が、「ちょっと話があるんだけど」と、笑みを浮かべたー。

亜理紗たちが、寧音に手を出すことはないー。

亜理紗たちも交友関係は広いがー
寧音はさらに交友関係が広いー。
先生たちにも信頼されているー

寧音の性格も考えると、
寧音に手を出せば、破滅するのは自分たちの方であると
亜理紗たちも、よく理解しているからだー。

「ーーー相談があるの」
空き教室に入った亜理紗は、寧音の方を見て、そう呟いたー。

ショートヘアーの響子と、
おしゃれな志穂は、亜理紗の横で、寧音の方を見つめているー。

「--あんたも、わたしたちと一緒に、あいつをいじめない?」
とー。

「--!」
寧音が表情を歪めるー。

「---いじめって認めるの?」
寧音が言うー。

亜理紗たちは今まで自分から”いじめ”と認めることはなかったー。
寧音が注意しても”指導”だの”遊んでいただけ”だの
何かと言い訳をしていたー

だがー
今ー

はっきりと”いじめ”と口にしたー。

「--そう。い・じ・め。
 あいつを一緒にいじめましょ?」
亜理紗が笑うー

「副会長であるわたしと、会長が組めばー
 あいつを徹底的に追い詰めることが出来るー」
亜理紗の言葉に、
寧音は失笑したー。

「---お話にならないー。
 最低」

寧音は、心底亜理紗を軽蔑しながら
そう言い放つと、
亜理紗は「そう言うと思った!」と笑みを浮かべたー。

「--でもね!」
亜理紗が、寧音に壁ドンをするー

寧音は怯えず、亜理紗を見つめ返すー。

「--あんたは今日からいじめっ子になるの!」
亜理紗の言葉に、
寧音は「脅迫でもするつもり…?」と、尋ねるー。

仮に脅迫されても、寧音は屈しないー
それどころか、亜理紗たちを撃退する自信が
寧音にはあるー。

けれどー。
”そう”ではなかったー。

「脅迫なんかしないわ」
亜理紗はほほ笑むー。

「ーー会長、あんたは自分からわたしと一緒に、あいつをいじめる」
亜理紗の言葉に、寧音は
「そんなこと…!地球がひっくり返ってもあり得ない!」と叫ぶー。

「---ふふ」
亜理紗は馬鹿にしたように笑ったー。

「--”憑依薬”って知ってる?」
亜理紗の言葉に、寧音は表情を歪めるー。

「--他人の身体を乗っ取って
 意のままに操ることができる、夢のような、クスリー」

亜理紗が微笑むー
亜理紗に壁ドンされた状態のまま、寧音は初めて表情を歪めたー

「そんなもの…あるわけが」
寧音がそう言いかけたその時ー
亜理紗の背後に立っていたおしゃれな女子・志穂が何か不気味な
液体を飲むのが見えたー

「さぁ志穂!あんたが今日から寧音になるの!」
笑う亜理紗ー。

亜理紗が寧音の前からどくと、
おしゃれ女子・志穂が寧音の方に近づいてきたー

「ふふふふふ…会長の身体、いただきまぁ~す♡」
志穂はそう言いながらー
驚く寧音に、キスをしたーーー

そしてーー
志穂がその場に倒れてーー
寧音が苦しそうに、喉のあたりを抑え始めるー

何度も何度も咳き込む寧音ー

やがて、寧音の動きが止まりー
寧音はゆっくりと立ち上がったー

「---ふふふふふふ…♡」
寧音は自分の身体を見つめると、
「ホントにわたしが藤井さんになってる…」と笑みを浮かべたー。

おしゃれ好きの志穂が、生徒会長の寧音に憑依したー。

「ふふふ」
亜理紗がその様子を満足そうに見つめるー。

寧音に憑依した志穂は笑いながら
亜理紗の方に近づくと、笑みを浮かべたー。

寧音の歪んだ笑みに、
ショートヘアーの響子は「すごっ!マジで会長を乗っ取ったの!?やば~!」と
興味深そうに乗っ取られた寧音を見つめているー。

「--これからは、わたしと一緒に、あいつをいじめてくれる?」
リーダー格の亜理紗の言葉に、
乗っ取られた寧音は笑みを浮かべながら「もちろん♡」と答えて、
亜理紗に忠誠を誓うかのように、亜理紗の前で膝を折ってみせたー。

「--くふふふふ 会長がわたしの前で膝を折ってる…
 最高の光景ね」

寧音に劣等感を持っていた亜理紗が邪悪な笑みを浮かべるー。

取り巻きである志穂が寧音を乗っ取ったー。
寧音はもう、自分の言いなりだー。

「--で、志穂の身体はどうするの?」
響子の言葉に、寧音になった志穂が言うー。

「-ーーわたし、藤井 寧音として生きるからー
 その身体はもういらない」

寧音を乗っ取った志穂が笑いながら言うー。

「---え…マジ?いいの?」
響子の言葉に、寧音は頷くー。

寧音を乗っ取った志穂の家庭は
お金持ちだが、同時に”歪んで”いたー。
窮屈な人生に志穂は嫌気がさしていて、
莫大なお金を使い、海外から憑依薬を取り寄せて
寧音を乗っ取ったのだったー。

「--ふふ、いきましょ」
亜理紗が笑いながら言うと、
乗っ取られた寧音と、ショートヘアーの響子は頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

空き教室に放置された志穂の身体は、まだ発見されていなかったー。
ほとんど人が通らない廊下に隣接している教室である上に、
今では全く使われていない教室だからだー。

「---ねぇ、松宮くん」
寧音が笑みを浮かべながら啓太に近づくー

「---あ、藤井さん」
寧音がいじめっ子のひとり・志穂に乗っ取られたなどと夢にも
思っていない啓太が笑みを浮かべるー。

「---1時間目が終わったら話があるのー。
 2階の西棟の空き教室に来てくれない?」
寧音の言葉に、啓太は「え?」と、戸惑うー

戸惑っている啓太を見て、
寧音は甘い声で囁いたー

「誰にも聞かれたくない話があるの♡」
とー。

思わずドキッとしてしまう啓太ー

そういうことに全く態勢のない啓太は、
ズボンのあたりを慌てて押さえているー。

「--(キモッ まじでむかつく)」
寧音は心の中でそう思いながらも、笑みを浮かべたー。

「--1時間目が終わったら、待ってるね!」

そして、啓太の前から立ち去っていく寧音ー。

寧音と、少し離れた場所にいるいじめのリーダー格、亜理紗が
目を合わせて、二人で邪悪な笑みを浮かべるー。

寧音が憑依されたことを知らない啓太は
”も、、もしかして僕…告白されるのかな…?”などと
浮かれていたー。

そこに”罠”が待ち構えているとも知らずにー

②へ続く

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コメント

守ってくれていた幼馴染がいじめっ子に憑依されて
いじめる側に…

よくあるシチュエーションですネ~!

でも…?

続きはまた明日デス!

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