<憑依>ネットカフェの女②~心配~

ネットカフェに住み着いている謎の女性ー。

”憑依”が絡んでいるなどとは夢にも思わない
大輝は、その女性のことを心配していくー。

--------------------—

「-------」
美桜が、ネットカフェの中で、パソコンをいじりながら、
色々と調べ事をしているー。

憑依のことー
美桜自身の家族のことー。

1年前ー
美桜に憑依してしまったホームレスの男はー
今でも、この子の正体を調べていたー。

この子はあの時、ホームレスのたまり場になっている
廃墟地帯で自殺しようとしていたー。

何故、そんなことをしていたのかは、分からない-。

だがー
自殺しようとするだけの理由があったはずだー

あの時のこの子は、ボロボロだったー。

「-----…」
今でこそ、この子は、元気になっているー

…少なくとも、身体はー。

「----早く、見つけてあげないとな」

家族がいない可能性もある。
仮に家族がいるのであれば、
この子が姿を消せば、
家族は、この子を探すだろうー。

女子高生かー
それとも女子大生かー。
それすらも、分からないー

だが、
見た目や、身体の感じから、
そのぐらいの年齢だとは思うー。

「--わからない…」
美桜は、ネットカフェのシャワーを浴びるー。
通常のシャワールームではなく、
ネットカフェの店長が特別にスタッフ用のものを貸してくれているー。

綺麗な黒髪を濡らしながらー
美桜は鏡で自分を見つめるー。

「----髪…面倒だけどな」
美桜はボソッと呟くー

ホームレスの男にとって、長い黒髪を綺麗に洗うー、
というのはとても面倒臭く感じたー

最初は、短髪にしてしまおうかとも思ったのだが、

”この子に身体を返す時のために
 できるだけそのままにしておいてあげないとな”と
考えー、
長い黒髪もそのまま、毎日綺麗にお手入れしていたー。

「---こんなに綺麗なのに…
 本当に、何があったんだ…?」
美桜はそう呟くと、ネットカフェの店長に
シャワールームを貸してくれたお礼を告げて、
再び個室へと戻っていったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-----”早くなんとかしないと”」
美桜がそう呟いているのを偶然聞いてしまった大輝はー
美桜のことが気になって仕方がなかったー

”可愛いからー”

そういう下心…も、
全くないと言えばうそになるのかもしれないー。

けれど、
大輝は純粋に美桜のことが心配だったー。

「---あの」
大輝が美桜に声を掛けると、
美桜は漫画を手に、振り返ったー

美桜は、朝早くから夕方まで、バイトをしているー

とー
言っても、ネットカフェの事務作業だー。

美桜に憑依してしまった
ホームレスの男は、
働こうと思ったのだが、
「身元」が一切不明のこの子の身体で働くことは難しかったー。

ネットで仕事をしながらー
ネットカフェの事務作業を行っているー。

ネットの仕事で稼いだお金をー
ネットカフェへのお礼として、支払い、
生活を続けているー。

だがー
この子の身体も、こうしている間に
どんどん年齢を重ねてしまう。

やはり、早いところこの子の正体を突き止めてー

「--あの!」
大輝が、考え事をしている様子の美桜に向かって
もう一度声を掛けたー

「-あ、、ご、ごめんなさい」
美桜が、髪をかき分けながら、大輝の方を見つめるー。

「--あの…この前”早くなんとかしないと”って
 言ってるのを聞いちゃったんです。

 ………何か、困っているんですか?」

大輝は昔から、困っている人がいると
放っておけないタイプー。
この美桜に関しても、そうだったー。

「---……いえ…それは」
美桜が目を逸らすー

だが、大輝は
「困っていることがあるなら、俺で良ければ力になりますよ!」と声をあげたー。

「--……え」
美桜が戸惑うー。

大輝のまっすぐな目ー。
純粋な、正義感ー
そんな感じの目だー。

「---」
美桜は考え込んだ様子で大輝の方を見つめるー

「--絶対、誰にも言いませんから」
大輝は、自分でも”見ず知らずの女の人のために、
どうしてここまで…”と思いながらも、
なんとなく、いつも見かけていたこの女性が
儚げな様子で悩んでいることが気になりー
力になりたい、と、そう思っていたー。

「--------」
美桜は考え込んだ末に
「--少し、時間を頂けますか?」と返事をしたー。

”憑依”のことを打ち明けるのは、とてもリスクが高いー
だがー
この男子大学生になら、話してもいいかもしれないー

美桜は、大輝から感じた誠実さを信じるべきかどうか、
悩んでいたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

「---あの学生に、話すのですか?」
ネットカフェの店長が、苦笑いしながら、美桜に近づいてくるー

「--迷ってます」
美桜が言うと、ネットカフェの店長は考え込みながら、口を開いたー

「--”憑依”なんて、誰が信じると思いますか?」
ネットカフェの店長の言葉に、
美桜は

「でも、店長は信じてくれたじゃないですか」
と、呟くー。

店長は首を振りながら
「-私は変わり者ですからね」と、自虐的に笑うー。

確かにー
”憑依”なんて信じてくれない可能性は高いー
大輝に余計なことを言うことで、
変な目で見られてしまう可能性もあるー。

「--ホームレスの男が、若い女性に憑依しているー…
 そんな話、仮に信じたとして、
 良いイメージで受け取って貰えると思いますか?」

店長の問い詰めるような口調ー。

「---」
美桜は、思わずうつむいてしまうー。

店長は苦笑いしながら美桜の肩をポンポンと叩くと、
「--すみません、つい言い過ぎちゃいました」とお詫びを口にしたうえで
続けるー。

「--ただ、お話するときは、慎重にしたほうがいいって思ったので…」
店長の言葉に、
美桜は、さらに考え込むー

「でもーー」
美桜は”答え”を口にしたー

「でも、あの男子学生に相談してみようと思います」
とー。

店長は少し驚いた様子で
「本気なのですか?」と、美桜を見つめるー

「はいー…
 正直、この身体のほうが、自分の身体より何倍も好きですけど…

 でも、この子に返してあげなくちゃな、って思うのでー

 俺は良くても、
 この子の時間をいつまでも奪い続けることはー
 良くないと思うのでー」

美桜がそれだけ言うと、
店長はため息をついてから、微笑んだー。

「--あなたらしいですね」
とー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

大輝が大学の帰りにいつも通り
ネットカフェでレポートをまとめるとー

”今日も1冊読んでいくか”と、
レポート終わり後の息抜きの漫画を探しに本棚へと向かうー

”今日は美桜さんを見かけないな”

美桜は、個室にいることも多くー
見かけない日は見かけないー

これ自体は別に特別なことではないー

「---これにするか」
大輝が読みたい漫画を手にしたその時だったー

「---おい」
ガムを噛みながら柄の悪い男が大輝を睨みつけて来たー

「---え、、は、、はい?」
大輝が戸惑いながら返事をすると、
男はガムを噛みながら、
大輝の胸倉を突然掴んだー

「--俺が読もうとしてた漫画取るなんて、
 いい度胸じゃねぇか」

男の言葉に、大輝は「え、、あ、、これですか…?」と、
戸惑いながら男の方を見るー

正直ー
こんなヤバそうなやつと関わりたくないー

そう思った大輝は、「あ、別にいいですよ、どうぞ」と
漫画を男に渡すー

だが、男は「気に入らねぇ態度だな」と、呟くと
いきなり大輝を殴りつけたー

「ぐあっ!」

大輝が悲鳴を上げるー

「な、なんだよ急に!」
大輝が叫ぶと、男が大輝に向かってきてー
蹴りを加えようとしたー

しかしー

「--お客様!おやめください!」
ネットカフェの店長が乱入してきてー
その男は舌打ちしながら、
立ち去っていくー

「大丈夫ですか?」
店長の心配そうな言葉に、大輝は「あ、はい…大丈夫です」と
戸惑いながら、返事をしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日以降ー

ガムを噛んだ柄の悪い男が、
ネットカフェに頻繁にやってくるようになったー。

「--(くそっ…俺を目の敵にしているのか…?)」
次第に居心地が悪くなっていく大輝ー。

「---大丈夫ですか?」
美桜が心配そうに大輝に声を掛けるー。

「----あ、、すみません。ご心配おかけして」
大輝が、周囲を見渡しながら言うー。

最近は、ネットカフェに来るたびに
あの男と鉢合わせするー。

まるで”大輝を意図的に狙っているかのように”

「---………」

美桜は大輝に”自分のこと”を明かして
相談しようと決意していたー。

だが、大輝が変な男に絡まれ始めて、
それどころではなくなってしまったー。

ガタッ

「-!」
大輝が表情を歪めるー。

ネットカフェの奥の方の通路から
ガムを噛んでいる例の男が出てきたー

「よ~ぉ、ネットカフェで女口説いてんのか?
 やるじゃねぇか」

男がニヤニヤしながら言うー。

「--すみません、俺、帰ります。
 他の人にも迷惑かけちゃうし」
大輝は美桜に小声でそう告げると、
足早にネットカフェの店内から外へと退出したー

「---(しばらくここには来ないほうがいいか…)」
大輝はため息をついたー。

「---へっ」
店内では男がガムを噛みながら笑みを浮かべるー。

そして、美桜の方をチラッと見たものの、
美桜には絡むことなく、
そのまま店の外へと出ていったー。

「---(あの男はいったい…)」
美桜に憑依しているホームレスの男は困惑したー。

個室に戻った美桜はパソコンをいじりながら思うー。

この子はー
一体誰なのだろうか。

不思議なこともひとつあるー。

このネットカフェには大学生もやって来るし、
ネットカフェの外を歩いていると
高校生ともすれ違うー。

だがー
”誰一人”
美桜に反応を示す人間がいないー

美桜が高校生なのか、女子大生なのかは分からないー

けれどー
年齢的に”どちらか”であるのは間違いないと思う。

ホームレスの男がこの娘に憑依してしまった
例の廃墟地帯は街はずれにあって
ここからそう遠くはないー

あの廃墟地帯で自殺しようとしていたということは
この娘は、この近所の子であるはずー。

と、なればーー

”知り合い”が、この娘の姿に反応しても良いはずなのだー。

だがーー

何故だろうかー
”誰一人”美桜には反応しないー

”この子はいったい…誰なんだ…?”

美桜に憑依しているホームレスの男は、そう呟いたー

美桜というのも咄嗟に思いついたただの偽名だー。
この子の、本当の名前すら、分からないー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大輝はネットカフェを避けるようになったー。
美桜のことは心配だったが、
あそこに行くと、柄の悪い男に絡まれてしまうー。

美桜とは関係無さそうにも見えたがー、
とにかく”あのネットカフェ”に迷惑が掛かってしまう以上、
しばらく足を運ばないほうがいいー

大輝はそんな風に判断して、
大学のレポートは自宅でやるようになっていたー。

そんなある日ー

美桜が夜中に目を覚まして
ネットカフェの店内を気晴らしに歩いているとー
”声”が聞こえたー

”ご苦労だったな 江頭(えがしら)-”
男の声が聞こえるー

ーー!

美桜が廊下の影から、その声がした方を覗くとー
例のガムを噛んでいる男が、金を受け取っていたー

「あのガキ、お前のおかげですっかり来なくなったよ」

「へへへ…どうも」

ガムを噛んでいる男・江頭が金を受け取るー

そしてー
金を江頭に渡していたのはー

「---!!」
美桜は、表情を歪めたー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回デス~!
今日もお読み下さりありがとうございました!!

憑依<ネットカフェの女>
憑依空間NEO

コメント

タイトルとURLをコピーしました