<憑依>ネットカフェの女①~謎の女~

ネットカフェに通う男子大学生ー。

ふと、彼は、あることに気づいた。

”いつも同じ女性が寝泊まりしている”
ことにー

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大学に通う、下園 大輝(しもぞの たいき)は、
ネットカフェをよく利用していたー

大学近くのネットカフェー。
正直、自宅よりも落ち着くし、
このネットカフェの”落ち着いた雰囲気”が
何よりも好きだったー。

大学のレポートづくりも捗るし、
少し休みたいときには漫画も読めるー。

一人暮らしの大輝が暮らすアパートは
隣人が騒音を立てるタイプだし、
決して家具なども充実しているわけではないために
ここにいたほうが、のんびりできるのだー。

今日もー
大輝は、このネットカフェで
大学の課題を進めていたー。

「--ふぅ…」
課題を終わらせた大輝は、時計を見つめて
”まだ帰るには早いか”と、思いながら
この前読んだ漫画の続きを読もうと立ち上がるー。

本棚のある場所に向かい、
ちょっとおしゃれな本棚を見つめると、
少し離れた場所で本を選んでいる女性に目が行ったー。

「あ…」
大輝は、その女性と目が合って、会釈をするー。

”あの人…ずっとここにいるのかな?”
大輝はそんな風に思うー

とても綺麗で可愛らしい感じの女性ー

だがー
いつこのネットカフェに来ても、
必ず見かけるー。

もしかしたら、ネットカフェに住み着いているのかもしれないー
と、思ってしまうほどにー。

けれどー

「---俺より、年下だよな?」
大輝はそう呟くー。

見た目だけで、本人から直接聞いたわけではないから、
何歳なのかは分からないが
見た感じ、大輝よりも年下に見えるー。

ギリギリ女子大生かー、
あるいはー…

「----あの」

「--!」
大輝が、我に返ると、その女性が大輝の目の前にいたー

「え…?」
大輝がビクッとするー。

なんとなく見つめてしまっていたことに
気づかれたのだろうかー、

とー。

「---あの…何か御用ですか?」
穏やかな感じの声ー

だが、声の質的には、
明るく元気そうな感じ…も受ける。

声と実際の喋り方に妙な違和感を感じるー。

「---…え、、、あ、、いや」
大輝は困惑しながらも
”素直”に打ち明けることにしたー

不審者と思われてしまっては、たまらないー

「あ、、いえ、あの、いつもいらっしゃる気がしたので
 不思議に思って…

 別に変な意味で見てたわけじゃないんです。
 すみません」

大輝がそう言うと、
女性はほほ笑んだー。

「---確かに、そうですね」
とー。

「--良ければ、少しお話しませんか?」
女性が、本棚の近くのテーブルが置かれているスペースを
指さすと、静かにそう微笑んだー

「あ、はい…」
大輝は、少し戸惑いながらも、
女性と共に同じ座席に座るー。

かなり若く見えるが、
”妙に”落ち着いているー。

「---……あ、、近くの大学に通う
 下園といいます」

大輝は、学生証を見せながらそう呟いたー。

不審者ではない、ということを理解してもらうために
早いところ素性を明かしたほうがいい、と
そう判断したのだー。

「---……あ、、わたしは、、わたしは、美桜(みお)です」
その女性は、美桜と名乗ったー

ネットカフェの店長が本棚を整理しにやってくるー
そして、美桜と大輝の方を見つめると、
少しだけ何かを考えるような表情を浮かべるー。

そのことに、大輝は気づかないー。

「え、、えっと、、あ、よろしくお願いします」
大輝は、”何がよろしくなんだ?”と頭の中で
苦笑いしながら、美桜の方を見つめるー。

美桜は口を開いたー

「--下園さんに言う通り、わたしは
 このネットカフェで寝泊まりしています。」

「--あ、そ、そうなんですね」
大輝がうなずくと、
美桜は「下園さんがよく見かけると感じたのは
そのせいだと思います」と、呟くー。

「---…あ、、あの…」
大輝は少しだけ心配になって、
”失礼かもしれないんですけど”と、
言葉を続けたー

「ご家族とかは…?」

「---」
美桜は口を閉ざしたー

「あ、、い、、いえ、ごめんなさい!
 俺と同じぐらいの年齢に見えるので、ついー…

 大学…生ですか?」

大輝がそう聞くと、
美桜は首を振ったー

「大学には通っていません」
とー。

「---…こ、、、高校生…じゃないですよね…?」
大輝が不安そうに聞くー

もしかすると家出少女なのではないか、と
思いながらー。

だが、その問いには答えず、美桜は続けたー。

「---昼間は、アルバイトをして、お金を稼いでいます」
とー。

「---そ、そうですか」
大輝はそれだけ答えると、
口を閉ざしたー

何て言っていいか分からない-ー
見た目的に、大学生か高校生に見えるー。

だが、その落ち着きぶりは、
自分よりも何倍も生きているような、
そんな印象さえ、感じさせる振る舞いだー。

「---あ、長々とすみません」
美桜が頭を下げるー

大輝も「あ、いえ」と頭を下げると、
美桜はそのまま、自分の個室の方に戻っていったー

しばらく漫画を読み、
チェックアウトする際に、ネットカフェの店長が呟いたー

「---彼女は…」

「--え」
大輝が店長の方を見る。

だが、店長はすぐに「いえ、ご利用ありがとうございました」と
接客モードに戻り、そのまま大輝は店を後にしたー。

大輝は不思議そうにしながら
ネットカフェの外へと足を踏み出したー

・・・・・・・・・・・・・・

夜ーーーー

寝静まった利用客も多い中、
美桜はネットカフェの廊下を歩いていたー。

「----”美桜”
 仮名ですか?」

背後から店長が声を掛けるー

「----ええ」
美桜は、ふふっと笑いながら、
悲しそうな瞳を輝かせるー。

「----……しかし…まぁ、誰も信じないでしょうからね」
店長は壁に寄り掛かりながら美桜の方を見ると、
美桜は、苦笑いしたー。

「そうですね…
 ”名前も分からない”なんてー」

美桜は、それだけ呟くと、目を閉じたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

1年前ーーー

ホームレスの男が、ホームレスのたまり場となっている
廃墟地帯を歩いていたー

ここは、行政の管理も行きわたらず、
身寄りを失った人間たちが、たまり場として利用している場所ー

そこにー
可愛らしい少女がいたのだー

「--え」
ホームレスの男は唖然とするー。

しかも、その子は廃墟地帯の高台から
飛び降りようとしているー

偶然それを見かけたホームレスの男が叫ぶー

「危ない!」
とー。

今、まさに飛び降りようとしているその子をー
ホームレスの男は咄嗟に助けたーー

だが-
その時ーーー

ホームレスの男は反動で、自分が転落してしまいー
そのまま落下ー

気づいたときには、自分がその少女の身体に憑依していてーーー
自分の身体は、死んでいたのだー。

「---え……」

死んだ自分が、助けた少女に憑依してしまったー

”名前”もー
”どこから来た子なのかもー”

分からないー

やがて、少女に憑依してしまった
ホームレスのおじさんは、
その廃墟地帯から外に出たー。

周囲のホームレス仲間が、
少女の身体を弄ぼうとしたためだー。

名前もー
住所もー
何も分からないー

絶望的な状況の中、公園で寝泊まりしていたが、
ついに力尽きてしまいー

そしてーーー

その時に出会ったのが、
偶然、公園を通りがかった
ネットカフェの店長だったー。

少女に憑依してしまったホームレスの男は
全てを泣きながら店長に打ち明けたー。

”警察に行きたいけれど、憑依なんて信じてもらえないだろうから、
 警察に行くこともできない”

とー。

店長は、そんな少女の言葉をー
信じたのだったー。

そして、その日から、ホームレスの男は、少女の身体で
ネットカフェに寝泊まりしているー

「--あの時、正直、あなたの”憑依”の話を信じたわけじゃなかったんですよ。

 でも、なんとなく死んだ私の娘に似ていたー。
 だから、こうしてここに匿ったんです」

店長が言うー。

「ーーいえ、本当に、ありがとうございます」
美桜を名乗る女性は、当初無料でこのネットカフェに
寝泊まりさせてもらっていたー。

今はお昼にバイトをすることで、
お金を稼ぎ、ネットカフェに、通常料金以上の料金を支払い、
恩返しをしているー。

「---…その子の…
 その身体の名前や身元、いつか分かるといいですね」
店長の言葉に、
美桜は「えぇ…」と悲しそうに微笑んだー

大輝が”違和感”を感じていたのはー
身体は女子高生か女子大生ー…なのに、
中身は、40、50代のホームレスの男だったからー…

大輝はまだ、そのことを知らないー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大輝は、それからもネットカフェを利用していたー

「--あ、こんにちは」
大輝と美桜の目が合い、大輝が頭を下げる。

「--こんにちは」
美桜がにっこりとほほ笑むー。

大学生の大輝から見ても、美桜は同じぐらいか
年下に見える。

その美桜が、ネットカフェに寝泊まりしている、
というのが、やはり、大輝には気になったー。
しかも、美桜はなんとなく儚げー、というか
時折”見た目と中身が合っていない”ような、
そんな雰囲気を見せるー。

「---少年漫画、お好きなんですね」
大輝が漫画を指さしながら笑うと、
「--え、あぁ、はい、小さいころよく読んでいたので」
と、美桜はほほ笑んだー。

美桜が読んでいる漫画はー
”古い”漫画が多いー。

最近の少年漫画ではなく、
まるで懐かしむかのようなー

そうー

大輝の父親が、懐かしんでいるような、
そんな漫画ばかり読んでいるー

「--変、ですか?」
美桜が呟くー。

「あ、いえ、そうではなくて、
 俺の父親と同じような漫画読んでるなぁって」

と、大輝が慌てて言うと、
美桜は少しだけ戸惑った様子で
「あ、そっか…この身体だと…」と意味深な言葉を
呟いたー。

「え?」
大輝が聞き返そうとすると、
美桜は「なんでもないですよ」とだけ呟いて
そのまま立ち去って行ったー。

「-------……」
大輝は、美桜の後ろ姿を心配そうに見つめたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「---早く、この子の名前とか、家族とか見つけてあげないとな」
固執に戻った美桜は足をだらしなく垂らしながら
そう呟くー。

「---家族も、名前も分からないー
 とは言え……」

美桜は難しい表情を浮かべるー。

”自分がこの子に憑依してしまった”以上、
警察に保護を求めるのも色々とトラブルになりそうだし、
ネットでこの子の写真を載せて「知りませんか?」と情報収集するのもリスクがあるー。

「---」
ネット上で、美桜を探している人のツイートなどがないか探すー。

だが、美桜の捜索願のようなものは
出されていない様子だったー。

「------」
美桜はため息をつくー

”美桜”と言うのも咄嗟に思いついた偽名だー。
本名は、知らないー。

「--この子を、家族のところに、早く届けてあげなくちゃな…」
美桜はそう呟くと、静かにため息をついたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--きみ」

大輝がネットカフェから出ようとすると、
ネットカフェの店長が大輝を呼び止めたー

「--え?あ、はい」
大輝が立ち止まると、
店長は言うー。

「--彼女は色々大変なんだー。
 あんまり、彼女のこと、詮索しないでもらえるかな?」

店長が悲しそうな目で言うー。

「え…それは…どういう…」
大輝が戸惑っていると
店長は

「--難しい事情があるんだ…」
と、だけ呟いて、
「--彼女のこと、あまり深堀しないでほしい」
と、だけ付け加えて、そのまま立ち去って行ったー

「----」
大輝は心配そうに、ネットカフェの美桜がいる個室の方を見つめたー

②へ続く

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コメント

ネットカフェでの謎の出会い…
ここから物語はどう進んでいくのでしょうか~?

続きはまた明日デス!

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