大学生の大輝が
ネットカフェで謎の女と出会ってから
5年の月日が流れたー。
「ネットカフェの女」の五年後の物語…!
※「ネットカフェの女」の後日談デス!
先に本編をお楽しみください~!
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5年前ー
大学生の下園 大輝は
大学近くのネットカフェで、
課題やレポートをまとめるのが日課だったー
当時、大輝が暮らしていたアパートでは
隣人が騒音を立てるタイプの隣人で
なかなか落ち着いた状況で
作業することが出来ず、
それならば、と大学の近くにある
落ち着いた店内が魅力の
ネットカフェを利用していたのだったー。
そんな中ー
ネットカフェで出会ったのが、美桜(みお)と名乗る
不思議な雰囲気の女性ー。
自分よりも若く見えるものの、どことなく
自分よりも何倍も生きているかのような
そんな振る舞いを見せる、不思議な女性だったー。
後に、美桜と名乗る女性は
倉田 佳純(くらた かすみ)という名前の少女で、
両親を男に殺されてしまい、
失意の状態で自殺しようとしていた彼女を助けようとした
ホームレスの男が、憑依してしまった状態で
あることが判明したー。
そして、彼女の両親を殺したのは、
ネットカフェの店長自身であることが判明ー
店長は逮捕され、ネットカフェは閉鎖ー
佳純に憑依した状態のままのホームレスは
何かとよくしてくれた大輝にお礼の言葉を告げてー
「--…この子に身体を返すことができるのかどうかも含めてー…
頑張って生きていこうと思いますー」
と、未来に向かって歩み始めたのだったー
あれから5年ー
大輝は、大学を卒業し、社会人になっていたー。
とある企業に就職し、忙しい日々を送っているもののー
大輝の真面目な性格もあってか、
上司からも可愛がられていたー。
佳純とはあれからは一度も会っていないー
連絡先も交換しなかったし、
彼女が今、どうしているのかは分からないー。
今もホームレスの男が憑依した状態のままなのかー
それとも、あの子本来の意識が目覚めて、
元通りに戻っているのかー、
それも、分からないー
そもそも、あれから5年ー
大輝も、既にあの時のことは
ほとんど思い出さなくなっていたし、
今を生きるのに、一生懸命だったー。
「--ふ~、今週も疲れたなぁ」
大輝の同期である栗沢 翔(くりざわ かける)が
スーツを脱ぎながら笑うー。
大輝と翔は、同期の中でも特に仲が良く、
週末にはこうして一緒に食事をすることが多いー
「はは、金曜日のこの時間は最高だよな」
大輝がそう言いながらスーツを脱ぎ、
メニューを確認するー
「-ーここのから揚げ、意外とうまいんだぜ~」
翔の言葉に、大輝はどれどれ~?と言いながら、
から揚げの写真を見つめるー。
男性店員が、水を運んでくると、
大輝はその水を少しずつ口に運びながら
から揚げやポテトなど、適当にいくつか注文するー。
同期の翔は、いきなりアイスクリームを注文し、
それを見た大輝が苦笑いするー
「ほんと、アイス好きだよな」
大輝の言葉に、
翔は「スタートのアイス、中間地点のアイス、〆のアイスだぜ!」と
笑みを浮かべたー
「--ふ~ん…よくお腹こわさないなぁ」
大輝がコップを口につけて、
水を口の中に運ぶー
「--お待たせいたしました」
女性店員が、大輝の注文したポテトや、飲み物を
運んでくるーー
「---ぶっーーーーーー!!!!!!」
「うわっ!?!?!?!?」
突然ー
大輝が飲んでいた水を口から勢いよく吐き出したー。
目の前にいる翔に大輝の口から噴き出た水が直撃するー
「-----…あ」
女性店員が驚いて大輝の方を見ているー
「---……美桜…さん…?」
大輝が、驚きの表情で、その女性店員の方を見つめたー
5年前ー
ネットカフェで出会った美桜ー
本当の名前は倉田 佳純だが、
当時はホームレスの男に憑依されていて、
美桜と名乗っていたー
あれから5年ー
あのホームレスの男は、最後に
”いつかこの子に身体を返したい”と言っていたー
もし、あの時のホームレスの男ー
”美桜さん”が、既にこの子から抜け出しているとすればー
恐らく、この子は、自分のことを知らないだろうし、
”美桜”なんて呼ばれ方も分からないはずだー
「----…え?なになに?知り合い?」
同期の翔がニヤニヤしながら言うー
「--……」
大輝は、相手の反応を待つー。
”美桜”は、
佳純に憑依したホームレスの男が、
佳純の名前を知らず、大輝に名前を聞かれた時に
咄嗟に答えた偽名だー。
そして、あの時、最後に大輝は
ホームレスの男の本名を聞こうとしたがー
”美桜です”としか答えてくれなかったー。
身体は佳純ー
中身はホームレスの男ー
けれどー
大輝にとってはー、
今でも”美桜さん”だったー。
「---」
ぺこっと頭を下げて立ち去っていく佳純ー。
大輝は、その反応からー
”今もホームレスの男が、あの子に憑依したままなのかどうか”
判断することが出来なかったー
「え?なになに?あのかわいい子?」
翔がニヤニヤしながら聞いてくるー
「-知り合い?元カノ?」
「そんなんじゃないよ…」
大輝はそう呟きながら、
その後は終始、佳純のことが気になって仕方がなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--じゃあまた!」
「ああ」
翔と別れる大輝ー。
大輝はーー
そのまま家に帰らずー
お店から少し離れた場所で、
佳純が出てくるのを待ったー
待つこと1時間ー
佳純がお店から出て来るー
バイトを終えたようだー。
5年前よりも少し大人っぽくなったー。
当たり前だー
当時、佳純の身体は女子高生の年齢だったー
5年が経過したということは、
佳純の身体は既に成人していることになるー。
「---…あの…」
大輝が勇気を振り絞って声を掛けるー
もしー
この子が”既に意識を取り戻して、ホームレスの男は去っていたら”
この子からすれば、大輝のことなど、全く知らない人、
ということになるー
「---!」
佳純が振り返るー。
「--あ、、あの…俺…5年前に…」
「---」
佳純は、少し間を置いてからにこっと微笑んだー。
「--下園さん…ですよね?お久しぶりですー」
とー。
大輝は、ほっとすると同時に、
佳純という子に憑依してしまったホームレスの男が
未だ、佳純に身体を返すことが出来ていないことを悟ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
近くのファミレスに入った二人ー
佳純の身体は大人の女性、という雰囲気に変わっていて
その変化に大輝は少しドキッとしたー。
「--えっと……」
大輝が戸惑っていると、佳純はほほ笑んだー
「--あの時と同じように、美桜でいいですよ」
とー。
「--あ、、はい、じゃあ…美桜さん…
その…最近は、、どうですか?」
大輝が聞くと、
佳純は「--相変わらずです」とほほ笑んだー
「-ーやっぱり、”この子”の意識は戻らない感じでー」
”倉田 佳純”はネットカフェの店長に家族を殺され
失意のうちに自殺しようとしていたー
それを助けたホームレスの男が憑依してしまった状態が
今の佳純だがー
佳純本来の意識は、戻らないままだと言うー。
家族を殺されたショックで、心の奥底でふさぎ込んでいるのか、
あるいはーー
「--今は、大学に通いながら、さっきのお店でバイトしてます」
佳純が微笑むー。
「--そうですか。ひとまずお元気そうで何よりです」
大輝が言うと、佳純は
「下園さん…なんだか随分立派になりましたよね」と
嬉しそうに笑うー
「はは、そんなことないですよ。まだまだ半人前です。
それにーー美桜さんもずいぶん大人っぽくなってー」
その言葉にー
佳純は少しだけ、寂しそうな表情を浮かべたー
「--あ、、な、なんかごめんなさい
失礼なこと言いましたか?」
大輝が言うと、美桜は「あ、いえ」と、首を振るー。
「---”わたし”の身体じゃありませんから……
ずっとこのままでいいのかな…って、
時々そう思うんですー
色々な人に褒められたりしてもー
本当に褒められているのは自分じゃないー
ってー
いつもそう思ってしまって」
佳純の寂しそうな言葉に、
大輝は「あ、いやいや、そんな」と首を振るー。
「----美桜さんは、その子のために
本当に一生懸命生きているじゃないですか。
たとえ、身体は他人のものだったとしても、
無理矢理乗っ取ったりしているわけじゃありませんし、
もっともっと、誇りを持っていいと思いますよ」
大輝が、感情を込めて言い放つー。
「--…」
佳純は少し驚いた様子でクスッと笑うと
「ありがとうございます」と、
微笑んだー
「---下園さんは、5年経っても、
あの時のままー
暖かい感じですね」
佳純の言葉に、大輝が顔を赤らめると
佳純は「でもー」と、続けたー。
「わたしは、そんなに”綺麗”な心の持ち主じゃないんです」
「---え…」
大輝が言うと、佳純は呟いたー
「--もう、5年以上です。
この身体でずっと生き続けて来るとー
やっぱり、、ホームレスだったことも、
男だったこともだんだんと忘れてきてー
…自分が最初から女であったようなー…
この身体が、わたしのものであるかのような
錯覚を受けてしまうことが多いんです」
「---」
大輝は、沈黙するー。
佳純に憑依しているホームレスの男の気持ちは、
大輝には、想像は出来ても、実感として理解することは、
難しいー。
「--わたしが今、こうして働けているのもー
わたしが今、こうして下園さんとお話できているのもー
自分自身の力じゃないー…
倉田 佳純…この子の身体のおかげなのにー
自分の力だと、たまに錯覚してしまう…
わたしはきっと、この子にならなければ
ずっと、あの場所でホームレスをやっていてー
きっと今も定職にすらつけていないー
わたしは、そういう人間なのにー。
自分の努力だと錯覚してしまうんです」
佳純の悲しそうな表情に、
大輝は
「--そんなこと、ないですよ…
少なくとも、今、俺がこうしてお話をしているのは、
見た目と中身、両方揃ったあなただからこそ、です」
と、優しく微笑んだー。
「-ーーそれと、怖いんです。
いつか、、、いつか、この子ー
佳純の意識が戻るようなときが来たらー
わたしはどうなるんだろう?って」
佳純が言うー。
佳純に憑依している男の意識は、
佳純の意識が万が一戻った時に
どうなるのだろうー?
ホームレスの男は、いつか佳純に身体を返したいと言っているー
だが、もしそうなったときー
「---…」
大輝はどう言葉をかけて良いか分からず、迷ってしまうー。
「--わたしが消えるのも、怖いですしー
もし…もしも、佳純の意識が戻ったときに
わたしが消えてしまうならー
この子は突然、5年以上の月日が流れた状態で
何も分からないまま目を覚ますことになってしまうー
わたしの意識が残っていれば…
色々説明することもできますけど、
瞬時にわたしが消えてしまったら…
この子は…」
佳純の目から涙がこぼれるー。
自分が消えてしまう恐怖ー
そしてー
意識を取り戻した佳純に何も説明することができないままー
佳純がパニックを起こしてしまうのではないか、という不安ー
「----美桜さん」
大輝はあくまでも
ネットカフェで出会った際に名乗られた偽名”美桜”で
この人を呼んでいるー
その方が”区別”できるという意図もあるー。
「---っ、、ごめんなさい。
あの時もご迷惑をおかけして、今度も甘えようとしてるなんて、
わたしはダメですね」
佳純はそう呟くと、涙を拭いて、
「今日はー
気持ちだけでも吐き出せて、良かったです。
本当に、ありがとうございましたー」
と、頭を下げて、そのまま立ち去って行ったー
「------」
大輝は一人、カフェのテーブルに座ったまま、
何かを呟いたー。
「---うん。そうだ。そうしよう」
大輝はそう呟くと、何かを決意したかのように立ち上がったー
あの時もー
見ず知らずの女の人だった美桜さんのために、
身の危険を顧みずに、首を突っ込んだんだー
ならーー
とことん、首を突っ込んでやるー
大輝は、彼女から聞いた悩みを解決するには
これしかない、と決意していたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ネットカフェの女の後日談でした~!
「~再会編~」の次も、いずれ書く予定ですので、
お待たせしてすみませんが
気長にお待ちください!!
今日もありがとうございました!
コメント
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こんなに早く続きが見れると思っていませんでしたっ‼
今回の話の続きも気になりますねっ‼
楽しみに待ってます(^o^)
SECRET: 0
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コメントありがとうございます~!
この続きも、そう遠くないうちに書きます~!