少女たちを操りー
「お前は鳥だ」と吹き込む男ー
事件の調査をする刑事は、
悪行を止めようと、奔走する…!
----------------
「---お前は鳥だ」
少女が、その言葉にうなずくー。
少女が「わたしは、鳥です…」と呟きながら両手を羽ばたかせるー
「さぁ、飛べ」
その言葉に、少女は頷く。
「飛びなさい」
その言葉に、少女は、屋上の端に向かって走り出すー
そしてー
少女はそのまま鳥のように羽ばたき、
屋上から外に飛び出しー
転落したー
・・・・・・・・・・・・・・
「--くそっ!」
自宅にいた義明は、事件の発生を、女性刑事の美津代から聞かされて飛び出すー。
「-お父さん!」
娘の千里が、義明を呼び止めるー
「--ん?」
義明が振り返ると、千里が「気を付けてね」と心配そうに呟いたー
「あぁ」
義明は、外に向かって走り出すー
「--福森善治、あいつだ」
義明は、警察署にやってくると女性刑事の美津代に向かって叫ぶー
「--あいつが、被害者たちを洗脳して
飛び降りさせている」
その言葉に、美津代は「洗脳なんて、あるわけが~」と笑うー
「あるんだ!」
義明は、確信していたー
非現実的なことであっても、
それが本当であれば、突き止めなくてはならないー
さらに福森善治のことを調べる義明ー
「--あと少し…あとひとりなんだっ!」
その言葉にー
善次は”特定の人物”を洗脳しているのではないか、と
そう考えていたー
”鳥のように羽ばたかせる理由はなんだ?”
義明は、そうも思いつつ、
徹底的に善次の過去を調べるー
そこに、同期の刑事・源五郎がやってきたー
「--ったく、仕事熱心だな、相変わらず」
源五郎は、資料を漁る義明に対して
”ほれ”と何かを手渡してきた。
「--これは?」
義明が驚くと、源五郎は「同期のよしみだ」と
呟いて、義明の肩を叩き、立ち去っていくー
そこにはー
数年前の”いじめによる自殺疑惑”の事件の
記事がまとめられていたー
「堤…」
義明は立ち去っていく源五郎の背中を見つめながら、
”あいつ、俺のために調べてくれたのか”と感じるー
「-堤!ありがとな!」
義明が叫ぶと、
源五郎は「今度飯奢ってくれよな」と呟いて
そのまま立ち去って行ったー。
福森善治は、娘を”いじめ”で失っているー
その娘は”飛べ”といじめっ子たちに茶化されてー
飛び降りて、死んだー
そしてーー
「----!!」
当時”いじめっ子ではないか”と言われた子たちがー
”自殺”させられているー
福森善治の娘をいじめていたと噂されている7人のうちー
既に主犯のお嬢様を含む6人が、ここ最近で”自殺”しているー
残るひとりーーー
福森善治の言う”あとひとり”はほぼ間違いなくこの子だー
”川野 有菜(かわの ありな)”
この少女がーー
狙われるー
いじめっ子以外の子も飛び降りさせられているのは
何故だろうかー
義明は少し疑問に思うー
カモフラージュか。
それとも、娘のいじめっ子たちを洗脳して飛び降りさせているうちに
病みつきになって、暴走したのかー
とにかくー
とにかく、川野有菜のところに、福森善治は来るー。
・・・・・・・・・・・・・・・
「---お前は、鳥だ」
「---お前は、鳥だ」
「---お前は、鳥だー」
数日後ー
福森善治は、川野有菜を洗脳していたー
帰宅中だった有菜は
びくびくと震えると、
善次の言葉に従って
近くの建物の屋上に、善次と共に向かうー
「お前は、鳥だー」
「--わたしは、、鳥」
有菜がうつろな目で呟くー
「そうだ。お前は鳥だ。
飛べ! 飛んで見せろ!」
善次の表情が歪むー
そう、これはー
娘の仇討ちー
娘を自殺に追いやったやつらをー
同じように自殺させるー
因果応報の報いを、受けさせてやるのだー
「---もうすぐ、もうすぐだ」
善次は空を見つめながら呟くー
こいつで、最後ー
娘をいじめていた”7人”は、全員死ぬー
「飛べぇ!」
善次が叫ぶー
有菜が手を羽のように羽ばたかせながら
屋上の端の方に向かって走っていくー
だがーー
「やめろ!」
義明が突如、姿を現して有菜を抑えると、
そのまま突き飛ばしたー
乱暴だが、有菜が飛び降りるのを阻止するためにはー
「--なっ!」
善次が叫ぶー
「福森善治!!
こんなこと、しちゃいけない!
娘さんのことは、本当に無念だっただろう!
でも、でもだ!
こんなこと、しちゃいけない!」
義明の言葉に、
善次が叫ぶ。
「う、うるさい!お前に娘を奪われた気持ちがわかってたまるか!」
善次の言葉に、
義明は「俺にも娘がいる!」と叫ぶー
善次は「ーーその娘が奪われたら、お前だって、俺みたいなことするさ!」と叫ぶー
義明は表情を歪めるー
確かに、娘を奪われたらー
父親として、何をするか分からないー
自分が、善次のようにならないと言えるのだろうかー。
いやー
だがー
”もしも”の話をするよりもー
目の前の犯罪を止めるー
それが、刑事の仕事だー
「--確かにな。
そうなってみないと、あんたの気持ちは分からない。
でもなー
それでも、目の前の犯罪を止めるのが、俺の仕事だ」
義明が言うと、
善次が「殺せ!」と叫んだ。
洗脳されている有菜が義明をグーで殴りつけるー
少女の手を取り押さえる義明ー
正気を失った目の有菜が「殺す 殺す」と義明の
首を絞めるー
「--くそっ!」
義明はそう叫ぶとー
「ごめんな」と呟いて、有菜を気絶させたー
「あ…」
有菜がその場にぐったりと倒れるー
「--く、、くそっ!」
追い詰められた善次が叫ぶー
「お、、俺は、、俺はただ、、、娘の…娘のぉ!!!!」
善次がその場に泣き崩れるー
義明は、泣き崩れた善次を悲しそうな目で見つめるー
「---」
義明は、善次の肩を叩くー
同じ、娘を持つ身として、
その気持ちは、わかってしまうー
自分だって、千里が奪われたら、何をするか分からないかもしれないー
善次のしていることは、許されないことだー
でもー
その、気持ちは、どこか、理解できるー
同情してはいけないのだが、
どこか、同情してしまうー
それでもー
それを許してしまっては
社会は”無法地帯”になってしまうー
だからー
義明は、善次に手錠をかけたー
善次を連行する義明ー
有菜は無事に正気を取り戻し、病院へと搬送されたー
取り調べが始まるー
「---まさか、本当に洗脳なんて」
女性刑事の美津代が苦笑いするー
「--福森の取り調べが終わったら
”ブレイン”も調べなくちゃな」
”洗脳術”を福森善治に提供した
怪しげな団体「ブレイン」-
それも、調べなくてはならないー。
本当に、人を洗脳できる術がある以上、
ブレインに悪意があろうとなかろうと、
どうにかしなくてはいけないー
「---」
善次が娘の写真を見て泣きじゃくるー
その取り調べを行うのは、
数々の取り調べを行ってきた同期・源五郎だー。
「--お父さん、気持ちはわかるよ。
でもね。それはやっちゃいけないことだ。
分かるだろ?
それにー
どうして、どうして関係ない子まで
やっちまったんだ?」
源五郎が、いつものスタイルで
取り調べを進めていくー
「--へ?」
善次が泣きながら顔を上げるー
「全部で、17人」
源五郎が言う。
「あんたの娘さんをいじめてた女子は、
俺たちの調べでは7人だ。
川野有菜は、未遂だから、あんたは、
11人も余計に殺してる。
いつの間にか洗脳して飛び降りさせるのが
楽しくなっちまったのか?え?」
源五郎が言うと、
善次は激しく動揺した様子で叫んだー
「お、、おれは…!
俺は6人しかやってない!」
叫ぶ善次ー。
「---なぁ」
源五郎が鋭い目つきで呟くー
「---同じ手口で17人死んでるのに、
6人は俺ですってか?
お互い、平和に行こうや。な?
無駄な抵抗したって、
こういう面倒臭い話が続くだけだぞ?
あんただって、俺みたいなゴツイおっさんと
いつまでも話していたくはねぇだろ?」
その言葉に、
善次は「違うんです!俺は6人しかやってない!」と
泣きながら叫ぶー
「--ったく」
取調室から出てきた源五郎がため息をつくー
「----」
その様子を見ていた義明が歩き出す。
「-どこへ?」
女性刑事の美津代が尋ねるー
「--”ブレイン”のところだ」
義明が呟く。
福森善治はー
6人しかやっていないー
だとすれば、”同じ手口”で
他の11人を殺したやつがいるー
同じく、洗脳だろうかー
美津代と共に、
目の前で少女が飛び降りた場面を目撃したー
あの時の子はー
”福森善治の娘を自殺に追いやったいじめっ子”とは
無関係だー
身元は既に調べてあるが、
そもそも学校が違ったー。
「--ブレインに乗り込んで、顧客の情報を全て照会するー」
義明は、
ブレインから洗脳術を教わった人間が他にもいてー
その人間が”残り11人”に絡んでいると考えたー
そのまま、ブレインの本部に向かって歩く義明ー
しかしー
♪~~~
スマホに連絡が入ったー
”おとうさん”
LINEのメッセージー
ビルの屋上の写真ー
娘の千里からー
「---」
義明は表情を歪めたー
そしてー
その”意味”を理解すると同時に、義明は走り出していたー
”わたし、鳥になるー”
娘・千里からのメッセージには、そう書かれていたー
ビルの屋上には見覚えがあったー
「やめろーーーーーー!!!!」
屋上に駆け付けた義明ー
そこには、鳥のように両手を広げて
羽ばたこうとする千里の姿があったー
義明は、これまでの人生で一番の全力を出してー
屋上から飛び降りようとする千里の方に向かって行きー
そしてーー
千里に飛びつきー
千里の飛び降りを阻止したー
「離して!わたしは鳥よ!」
千里がうつろな目で叫ぶー。
「違う!違う!やめろ!落ち着いてくれ!」
叫ぶ義明ー
「--いったい、誰がー」
福森善治ではないー
福森善治は、取り調べ中の態度からー
恐らくは、”娘の命を奪った7人のうちの6人”しか殺していないー
残り1人は未遂に終わっているー
では、犠牲者17人のうち、残りの11人の命を奪ったのはー
「---美しいですよねー。
人が、己の人生を捨てて、空を飛ぼうとする様はー」
背後から聞き覚えのある声がしたー
「--…お前…だったのか!」
義明は悲痛な叫びをあげるー
一緒に事件を捜査していた女性刑事・美津代の姿がそこにはあったー。
「--わたしも、”ブレイン”に通っていたんです。
そこで、洗脳術を身に着けたー。
最初はただの興味本位でした。
ブレインで教えているのは、ほんの催眠術程度の術ー。
でもー…
福森善治が悪用する方法を思いついてしまった。
彼が、娘をいじめた子たちを飛び降りさせていると知ったわたしはーー
彼の”真似”をしたんですー
彼が殺したのは、彼の言ってた通り、
”娘を死に追いやった女子たち”だけー。
残りは、わたしが洗脳して、飛び降りさせました」
淡々と語る美津代ー
「ど、、どうして!!どうして、そんなことをー!」
そう叫びながら、義明は、
美津代と一緒に事件を調べている最中に、
目の前で少女が飛び降りしたこともあったことを思い出すー
あの時も、美津代が、洗脳して飛び降りさせたのかー。
「------なんで??ふふ」
美津代が笑うー
「--ただ、面白かったからですよ。ふふふふふふふふ…
鳥のように羽ばたかされて、飛び降りちゃう人たち…
今まで生きてきた人生を、一瞬にして放り投げる人たちー
しかも、自分の意思ではなく、他人にそうさせられているー!
他人に無理やり飛び降りさせられているのに
本人は嬉しそうに羽ばたくー
ゾクゾクしませんか!?」
美津代は狂っているー
義明はそう思ったー
美津代は数年前ー
とある少女が人質に取られた事件の解決にあたりー
結果、少女を死なせてしまったことがあるー
犯人が、救出の直前で、少女もろとも自害したのだー
その時から、美津代は少し精神的に病んでいたー
そのことは、義明も知っていたー
少女ばかり飛び降りさせているのはー
その時の精神的ダメージが影響しているのかもしれないー
「バカな真似はやめるんだ!」
義明が大声で叫ぶー
千里を気絶させた義明が、美津代の方を見るー。
美津代は狂ったように笑っているー
そしてー
「--ふふ…今までお世話になりました」
美津代が不気味にほほ笑むー
「--?」
義明が、その意味を理解したときには、もう遅かったー
鳥ー
義明の両手が勝手に動いているー
身体がーー
言うことを聞かないー
美津代がにっこりとほほ笑んだ。
「---お前は鳥」
とー。
「---やめ…」
義明は鳥のように羽ばたきー
そしてーー
転落したーーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”これで、邪魔者はもういないー”
美津代は、屋上で気絶していた義明の娘・千里にも
「お前は鳥よ」と囁くと、
千里がどうなったのかも確認せず、
そのまま屋上から立ち去って行ったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
お前は鳥だ、の完結編でした~!
後日談の構想(?)が頭の中にあるので、
それもいつか書く…かもしれません~!
お読み下さりありがとうございました!!
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