<憑依>頑固な女

”超”がつくほど、頑固な女子大生がいた。

ターゲットの女子大生が
”頑固”だと知らないままに憑依してしまった男に
異変が起きるー!

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「---もう~!咲月(さつき)ったら本当に頑固だよね~」
苦笑いする女子大生。

咲月、と呼ばれた女子大生は、
そんな友達に対して、
”だってこれがいいんだもん”と呟いたー

皆嶋 彩月(みなじま さつき)-
可愛らしく、人当たりも良い女子大生なのだがー
欠点があった。

それはー”超”がつくほど、頑固であることー。

咲月は、ものすごく頑固な性格で、
一度自分が”こう”だと決めたら
絶対に譲らない性格だったー。

幸い、それ以外の部分は
話しやすく、穏やかな感じであるために、
友達はそこそこの人数はいたものの、
中には、咲月のあまりにも頑固な態度に
”付き合ってられない”と不満を抱くものもいるのは
事実だったー。

「--また明日~!」
咲月と、友達の汐音(しおん)が、分かれ道で手を振って別れるー

大学からの帰りー
咲月はいつものように自宅へ向かっていたー

そんなーー
咲月を見つめる不気味な影があったー

「----くくく」
男は笑うー。

男の名は、竜崎 徹(りゅうざき とおる)-。
30代のフリーターだ。

彼のバイト帰りに歩く道と、
咲月が大学帰りに歩く道が、
偶然同じだったー。

それは、咲月にとって”不運”だったのかもしれないー

「----」
徹は笑みを浮かべる。

彼はー
咲月に”憑依”するつもりだった。

可愛らしい容姿の咲月を
バイト帰りのたびに見かけていた徹は、
咲月に密かに好意を抱いた。

生まれてから初めての
”一目ぼれ”だー。

いいやー
彼は女性を好きになったことがない。
そして、自分自身が”モテない”ことも
彼はよく理解していた。

咲月のような子に、仮に声をかけたところで、
結果は、目に見えている。

徹は
”勝ち目のない戦い”は
絶対にしない主義だった。

咲月に声をかけるー。
それは、”勝ち目のない戦い”だ。

だから、彼はー
”勝ち目のある戦い”をしようと、
”あるもの”を用意した。

それがー
「憑依薬」

「へへへへ…俺が、君になるんだ」
徹は、笑みを浮かべながら、咲月に気づかれないように
尾行を行うー

憑依薬で憑依する際、
一瞬抵抗されることがあるー、と
この薬を購入した際に利用したサイトに書かれていた。

”リスク”はできる限り少ないほうがいいー

憑依する際に、万が一咲月から予想以上の抵抗を受けたり、
咲月が、アニメの憑依のように”うっ!”みたいな反応を見せたり
した際に、周囲に見られると
乗っ取ったあとのことが面倒そうだー。

だからー。

徹は、咲月を尾行しながらニヤリと笑う。

だからー
”咲月が唯一通る人通りの少ない道”が
一つだけある。

そこで、咲月に憑依するのだー。

徹は、そんなことを考えながら
咲月がその道に入るのを待つー

早くー
早く入るんだ…

そして、
その可愛い身体をーー

徹は、早くも憑依したあとのことを
考えながら、早くも興奮していたー。

そうこうしているうちに、咲月は
徹が待ち望んでいた
”人通りが少ない道”の方に入っていくー

今が”憑依”のチャンスー。

「--今だ!」
徹が叫んだ。

徹が霊体になり、
振り返った咲月の口の中に飛び込むー

これで、JDになれる!
徹は、勝利を確信したー

「うっ!」
咲月がうめき声をあげるー

他人が誰かに憑依するときの
お決まりの反応と言ってもいいだろう。

”無駄だ、お前の身体は俺のものだ”
徹は勝利を確信して咲月の中で
そう呟いたー

これからは、俺が咲月として、
女子大生ライフを送りながら
裏ではエッチ三昧のゾクゾクライフを
送ってやるぜ!

そんな風に思いながら、徹は、
咲月の身体を動かそうとする。

だが、その時ー
徹は違和感を感じたー

確かに、咲月の視界らしきものが見えているー

だが、身体が思ったように動かないー。
まるで、重りがついているかのようにー。

「---…だ、、、だれ…?」
咲月の口が開くー

「-!?」
徹は驚く。
咲月の意識が表に出ているー?
そんなはずはー

憑依薬で憑依する際、
一瞬抵抗されることがあるー

憑依薬を販売していたサイトに書かれていたことを思い出すー

”抵抗”
徹は笑った。

そうか、これが抵抗か。
とー

だが、憑依薬の力には
何人たりとも逆らうことはできない。

「--お前の身体は俺のものだ」
徹が、笑うー

咲月の身体が動き出すー
1歩ー、また1歩ー、と。

咲月がニヤリと笑みを浮かべるー

「ひひひひひ…俺が咲月だ…!」
咲月が汚しい笑みを浮かべるーーー。

憑依完了ーーー

「---!?」
徹が違和感を感じるー

乗っ取ったはずの咲月の身体が
思うように動かないー

”わたしは、、、わたしよ…!”

咲月の声が脳に響くー

「--!?」
徹は驚くー。

説明には、乗っ取った相手の意志は
心の奥底に封じ込めることができる、と
そう書かれていたはず。

なのに、何故ー?

「---へへへ…うるさいやつだぜ」
咲月は、女の声で、男言葉を口にすると
「さぁ、さっそく、まずはその辺の男でも誘惑して
 ラブホでエッチでもするかなぁ~」とニヤニヤしながら呟いたー

しかしーーー

身体の支配が不安定だー

また、足が止まってしまうー

”わたしはーーーラブホになんていかない”

咲月の声が脳に響くー

「な、、なんだ…くそっ!?!?」
徹は戸惑うー
咲月の口で、そう喋るー

咲月の身体が、道の反対側に向かったり、
また方向転換を繰り返したりー

人通りのない道の、
あっちに行ったり、こっちに行ったりを
繰り返しているー

”わたしが行く場所は、わたしが決めるの!!!”
咲月の声が脳に響くー

頭に激しい頭痛が走る。

「う、、、うおおおおおお!」
咲月の身体が、その場に膝をつくー

頭を押さえながら咲月を乗っ取っている徹は戸惑うー

「なんだこいつ…
 なんでこんなに抵抗されてるんだ…?」
徹は、憑依薬が偽物だったのか?と一瞬戸惑ったが、
すぐに”いや、実際に憑依はできている”と、思いなおす。

偽物なら、そもそも憑依なんてできないはずだ。
憑依できたということは、憑依薬自体は
本物であることを、意味している。

「へへへへ…この身体は俺のものなんだよぉ!」
咲月が路地で一人、叫ぶと、
そのまま狂ったように胸を揉み始めたー

女としてのゾクゾクを感じる徹ー。

「おれは、、いいや、わたしは咲月だ!!」
大声で叫ぶー

乗っ取った身体で、乗っ取った身体の名前を叫ぶー。
夢見た瞬間がやってきたのだーー

”ちがう”
脳に大きな声が響いた。

”わたしは、わたしー
 あんたは、咲月じゃない”

「--うぐっ!」
一人で苦しみ出す咲月ー。

人の通りの少ない路地だったから良かったものの、
もしもここが、人通りの多い場所だったら
今頃咲月は不審者として
周囲の注目を悪い意味で集めてしまっていただろう。

「--ぐぐぐ…ぐあああああああ」
咲月が、胸を揉んでいた手を頭にやって、叫び出すー。

”わたしのすることは、わたしが決めるの!
 誰にも口出しさせないー”

咲月が叫ぶー

そして、信じられないことに、主導権を握ったはずの
咲月の身体がー
徹の意志では動かなくなり始めていたー

”な、、なんで…なんでだぁ!”
徹が、必死に咲月を完全に乗っ取ろうとするー。

だが、咲月の意識の抵抗が予想以上に激しい。

憑依って、こんなにきついものなのか??
徹は困惑しながら大声で叫ぶー

”この身体は、俺のものだあああああああ”
とー。

”ちがう!!!
 この身体はわたしのものよ!!!!!!!!!!”

咲月が、徹の想いをかき消すぐらいの
強い言葉を脳内に発したー

徹の誤算ーー
それはーー

”咲月が想像以上に頑固すぎることー”

あまりにも頑固な咲月はー
憑依されて他人に命令を下されるというこの状況を
受け入れず、認めなかったー

通常、憑依された人間は、
なすすべもなく、乗っ取られてしまう。

稀に、意志の強い人間が、
一時的に抵抗を見せることはあっても
”ここまで”ではないー

しかし、咲月は
”常軌を逸脱するほどに、頑固”だったのだー

その頑固さが、
彼女にとってはー
幸運だったのかもしれないー

「---!」
気付くと、徹は不気味な空間にいたー。

咲月の精神世界だ。

咲月が反対側に立っているー

「あなたは誰!?なんなの!?」
咲月が叫ぶー

”憑依”などということを知らない
咲月にとっては不安でしかなかったー

それでも、咲月は、
その頑固さで、決して徹の意識を
受け入れようとはしなかったー

「--うるせぇ!身体をよこせええええ!」
徹が、咲月に殴りかかるー

だがー

「うるさいのはあんたよ!!!
 人の頭の中で
 ごちゃごちゃごちゃごちゃうっさいのよ!!!!!!」

咲月のーー
あまりにも強い意識はーーー

指1本で、徹の精神体を木っ端みじんにしたーーー

・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ねぇねぇ~!聞いてよ~!」
大学で咲月が苦笑いしながら言う。

友人の汐音が「どうしたの~?」と
咲月の方を見る。

咲月は笑いながら
「昨日さ~、わたし、危うく二重人格になるところだったんだよね~」と呟く。

「え~?なにそれ?」
汐音が笑う。

あまりにも意味不明な話ー。

咲月は、昨日起きた出来事を説明した。
自分じゃない誰かが頭の中に生まれて
ごちゃごちゃごちゃごちゃ騒ぐから
やっつけてやったのだと。

「あはは!咲月らしいね」
汐音は、真に受けずに、”夢の話かな?”と思いながら
笑ったー

咲月は「わたしの行動は、わたしが決めるもんねー!」と
言いながら、汐音と一緒に昼食を食べ始めるー。

咲月は
”憑依”なんてものをそもそも知らなかったから
昨日の出来事は”自分の中に別人格が生まれそうになったけど
それを自力で消し去った”と思っていたー。

彼女のあまりにも”頑固”な性格はー
彼女にとって、幸運だったのかもしれないー

・・・

・・・・

「え…」
徹が目を覚ます。

何もない、真っ暗な世界ー

「ここは…」
戸惑う徹ー

徹は、一切身動きを取ることすら、できない。

「ど、、、どういうことだっ!?」
徹はもがくー

だが、まるで”見えない鎖”に縛られてしまっているかのように、
何も、身動きを取ることができない。

「--くそっ!くそっ!くそっ!」

徹は、”咲月の中”にいたー。
咲月のあまりにも強靭な精神力を前に、
本来”憑依された側”がなるはずだった立場に、
徹のほうが、逆になってしまったのだったー

咲月の精神世界の奥底に幽閉された徹ー。

乗っ取られた側が味わうハズだったこの光景を、
徹が、体験することになってしまったー

徹は、もう二度とここから出ることはできない。

永遠にー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依する側が返り討ちに遭ってしまうお話でした~!

皆様が誰かに憑依するときは、返り討ちに遭わないように
注意してくださいネ!!

今日もありがとうございました!!

小説
憑依空間NEO

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