「お前は鳥だ」-
少女を操り、
そして、羽ばたかせて、飛び降りさせるー。
彼の目的はー?
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「--ほら!飛びなよ」
「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!!!」
一人の少女が、いじわるそうな少女たちに囲まれている。
「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!」
学校の屋上で、そう連呼される少女ー
少女は、いじめを受けていたー
きっかけは分からないー
いや、いじめのきっかけなんて、そんなものかもしれないー
いじめられている本人も、
いじめている本人もー
その理由なんて、分かっていないのかもしれないー
「--飛べ!飛べ!」
女子たちがゲラゲラ笑いながら言うー
少女は、連日のいじめで追い詰められていたー。
そしてーーー
錯乱した少女は、そのままいじめっコたちの言うがままにー
鳥のように羽ばたきながらーーー
屋上から飛び降りたー
”死んでやる”
彼女は、そう思ったー
本当にわたしが死んだらー
大変なことになるでしょ???
と、いじめっ子たちが苦しむことを願いー
彼女は、飛んだ。
いじめっ子たちは、いじめられていた少女が
本当に飛ぶなんて、夢にも思っていなかったー
唖然とするいじめっ子たちー
鳥のように、羽ばたき、飛び降りた少女は、
死んだー
「や、、やばくない?」
いじめっ子たちが言うー
少女たちは、慌てて屋上から退散したー。
両親は娘の死に泣き叫ぶー。
両親は、娘がいじめを受けていたことを知っているー
そして、学校にも相談していたし、
それなりの対応を取ってきたー
嘆きー
怒る両親ー
だが、学校はー
”事実”を隠蔽したー
少女は勝手に鳥のように羽ばたいて自殺したのだと言い、
いじめっ子たちは”よく鳥になりたいって言ってたよね~”と笑った。
世間も”自殺”として少女のことを報じ、
”鳥になりたいと言っていた”と面白おかしく書く
週刊誌まで現れたー。
あまりのショックにー
少女の母は、持病が悪化してー
そのまま帰らぬ人となったー
父は、それでも戦い続けたー
だが、担当の刑事に、少女の父は、こう言われた
”お宅の教育が悪いんでしょ?
高校生にもなって、鳥になったと思い込んで
屋上から飛ぶなんて、どうかしてるよ”
”娘が鳥なら、親も鳥頭だなぁ”
とー。
刑事も、取り合ってくれなかったー
何故かは知らないが
とにかく”自殺”として処理したいようだったー
後から、父は理由を知るー。
いじめっ子の中心人物の女子がー
”大企業のトップの娘”だったのだー。
学校も、警察も、グルであるー。
それが、真相だったー
とにかく”自殺”で処理して、
終わらせようとしていたー
そのことを知り、
絶望した父は、姿を消したー。
その父が、どこに行ったのかは、分からないー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「---お前は、鳥だー」
男が少女を洗脳するー
「あ………」
少女の目が、虚ろな目になるー
「--お前は、鳥だ。
飛べ」
男が言うと、少女は
「わたしは…鳥…」と呟くー
洗脳された少女はー
かつてーー
”同級生をいじめていた”
少女の一人。
「--飛べ」
男が言うー
少女は、洗脳が完全ではないのか、
震えながら、「と…ぶ…?」と呟いている。
「そうだ!飛べ」
男が言う。
「ーーわたしは、、とり…わたしは、、とり…」
少女がうつろな目で何度も何度も呟くー
「-飛べ!飛べ!飛べ!飛べ!
娘と同じように、、飛べ!」
男が言うー
「---わたしは…飛べる…!」
洗脳された少女はー
かつて、男の娘が飛び降りした際に
屋上にいたいじめっ子のひとりー
”やばくない?”と言っていた子だー
その少女はー
今、洗脳されてー
「わたしは、鳥!」
嬉しそうに屋上から羽ばたいたー
当然、飛べるはずがないー
男は、その様子を見て
笑みを浮かべながら
そのまま屋上から立ち去ったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---…」
義明は、今までの連続自殺の何件かの
周辺の監視カメラの映像に
”似たような男”が映っていることに
気が付くー
義明は、男の関与を疑い、
男の素性を調べ上げた。
女性刑事の美津代の協力もあり、
義明はその男が、
福森 善次(ふくもり ぜんじ)という男で
あることを突き止めたー
義明は、
福森 善次を調べ始めるー
飛び降り事件のうちの何件かに、
飛び降りが起きる直前の時刻ー
周辺の監視カメラ映像に
福森 善次らしき人物が
映っているのだー
だが、時間から逆算するに、
飛び降りたその瞬間に、少女たちと
一緒にいたわけでもないし、
ネットの利用履歴などを確認しても、
特に、福森善治が、自殺をほのめかす
サイトを運営していたり、SNSをやっていたり
する様子もないー。
福森善治を尾行したもののー
福森善治におかしな行動はなかったー
「---------」
善次は、気付いていた。
尾行にー
だからー
”方法を変えたー”
洗脳は、直接語り掛けなくてもー
強く念じることで、”できる”のだー。
相手の目を見ることさえできれば、
通りすがりに、女子高生に”お前は鳥だ”と強く念じ続けるだけでー。
福森善治は、警察に尾行されていることを知りながらー
”念じること”で、少女を洗脳しー
そして、羽ばたかせたー。
福森善治を見張り続けていた義明は、
善次が何も怪しい行動をしていないのに、
別の場所で飛び降り事件が起きたことを知り、
「---勘違いか」
と、呟いたー
”憶測”でこれ以上捜査をするのは難しいー
「---」
自宅で、頭を抱える義明ー。
「お父さん、悩み事~?」
娘の千里が心配そうに言う。
「ん?あぁ…ちょっと、仕事でな」
義明が言うと、
千里が「この前言ってた、飛び降りのやつ?」と
呟くー。
「--ん?ああ」
義明のその言葉に
千里は、「ちょっと変な噂があるんだけど~」と、少し戸惑いながら言うー。
”鳥のように羽ばたいて自殺をする少女”ー
その事件について、同級生の間で噂になっていることがあるのだと言う。
それがー
”呪い”
「…呪い?」
義明が聞き返す。
千里がうなずく。
「うん。まぁ、都市伝説っぽく話題になってるだけなんだけどね、
”鳥の呪い”-。
呪われて、身体を勝手に動かされて、飛び降りさせられちゃってるんじゃないか、
って、そういう噂~!
”鳥に呪われちゃうゾ”みたいな感じで、クラスの子もよく騒いでるよ~」
千里の言葉に
「呪い…か」と義明は苦笑いする。
「あ、ごめんね!高校生の単なるうわさ話なんて、役に立たないよね?」
千里が苦笑いしながら言うと、
義明が「いや、いいさ、ありがとう」と優しく答えて立ち上がったー
娘のクラスで噂になっている”鳥の呪い”
呪いなんてことはないはずだがー
だがー
”身体を勝手に動かされて、飛び降りさせられているー”
という点はー
なんとなく、ピンと来るような、そんな気がしたー
・・・・・・・・・・・・・・・・
「--どうした?ずいぶん悩んでるじゃないか。例の事件が?」
同期の刑事・源五郎が、
コーヒーを義明に渡すー
義明は、「あぁ…まぁな」と呟く。
「--少女たちの、自殺…ねぇ」
源五郎は、そう言いながら、コーヒーを飲むと、
義明の方を見たー
「で?何か見当はついてるのか?」
源五郎の言葉に、
義明は、「いや…」と首を振った。
「ただの自殺なのか、事件なのか…
全然分からなくてさ。
挙句の果てに、”呪い”なんじゃないか、とか
”誰かに操られてるんじゃないか”とか、
そんなこと考えだす始末だよ」
義明は、ため息をつきながらそう答えたー
「-----」
源五郎は、表情を歪めるー
「そういうことも、あるかもしれないな」
源五郎の言葉に、
義明は、「え?」と声を出すー
「--世の中、俺たちの知らねぇこととか、
ありえねぇと思うようなことも起きるかもしれねぇってことだよ」
源五郎が、義明の肩をポンポンと叩くと、
「案外、そういう線も間違いじゃねぇかもしれねぇぞ」と呟くー
「--はは、お前なら、笑うと思ってたけどな」
義明は、”呪い”とか、そんなことを言ったら
同期の源五郎は、笑うと思っていたー
源五郎の意外な反応に驚くー
「いや。まぁ、ちょっとな。
俺もこの前捜査してた痴漢冤罪の件で、
信じられねぇ経験をしたからよ」
源五郎はそれだけ言うと、
「お前が、そう思うなら、現実的じゃなくても
調べてみる価値はあるんじゃねぇのか?」と、義明に向かって、
力強い言葉で言うと、
そのまま立ち去って行ったー
「----調べてみる価値…か」
義明はそう呟き、
”少女たちが、操られている”という線を
調べ始めたー
共に捜査をしている女性刑事・
美津代には「そんなことあるわけないじゃないですか~!?」と
言われたが、それでも義明は、調べを続けたー
そしてーーー
”洗脳”
他人を洗脳する術ー。
そんな話に、彼はたどり着いたー
福森善治が、数か月前、
怪しげな団体と何度か接触を取っていたことを、
義明は突き止めたのだったー
”ブレイン”という名前の団体ー
洗脳や、催眠術を研究している団体だー。
表向きは、催眠術師の団体として
活動しているようだが、
裏では、洗脳術の実用化に向けて
あれこれしているという情報も手に入れた。
数か月前、そこに福森善治が何度か
出入りしていることを、
義明は突き止めたー
「--洗脳された少女が、鳥のように羽ばたいて
飛び降りさせられているー」
義明は、”非現実的だ”と
そう思ったー
だがー
それでも、仮に、一連の事件が”洗脳”に
よるものだとすれば、
”周囲から見れば悩みのなかった女子生徒が急に飛び降りること”
”何件も同様の事件が発生していること”
”鳥のように羽ばたくような仕草”
”福森善治が、飛び降りの直前にその付近の監視カメラに映っていることー”
”催眠術の都市伝説”
色々なことの説明がつくー
「----」
義明は、そう判断して、
福森善治から話を聞くことにしたー
・・・・・・・・・・・・・
「--福森、善次さんですね」
義明が言うと、
善次は「はい」と頷いたー
”優しそうなお父さん”という感じの風貌だー
「---ちょっと、お話を聞かせていただけますか?」
その言葉に、善次は頷くー
近くの公園で、話を聞く義明。
善次は、飛び降り事件のことは知っている、と答えたが、
”私は何もしていませんよ”とも答えたー。
「-----」
義明が言う。
「--洗脳」
その言葉に、善次の表情が歪むー
「--ーーー」
善次の表情の変化を、義明は見逃さなかったー
「---……そ、、それは…」
善次は、あからさまに動揺しているー
”10人以上”の少女が既に自殺しているー
いや、させられているー
こいつを、許すわけにはいかないー
「--あと少し…あとひとりなんだっ!」
善次はそう言うと、そのまま足早に立ち去っていくー
「---あいつだ」
義明は確信したー
あいつが、少女を飛び降りさせているー。
なんとかー
なんとか止めなくてはー
今の状況で逮捕することはできないー
義明は、”洗脳現場”を抑えるしかないー
と、決意するー。
”お前は、鳥だー”
悪魔のような洗脳に、終止符を打つため、
義明は、動き出したー
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・
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次回が最終回デス~!
果たしてどうなってしまうのでしょうか~?
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