<MC>お前は鳥だ②~真相~

「お前は鳥だ」-

少女を操り、
そして、羽ばたかせて、飛び降りさせるー。

彼の目的はー?

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「--ほら!飛びなよ」

「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!!!」

一人の少女が、いじわるそうな少女たちに囲まれている。

「飛べ!」
「飛べ!」
「飛べ!」

学校の屋上で、そう連呼される少女ー

少女は、いじめを受けていたー

きっかけは分からないー
いや、いじめのきっかけなんて、そんなものかもしれないー
いじめられている本人も、
いじめている本人もー
その理由なんて、分かっていないのかもしれないー

「--飛べ!飛べ!」
女子たちがゲラゲラ笑いながら言うー

少女は、連日のいじめで追い詰められていたー。

そしてーーー

錯乱した少女は、そのままいじめっコたちの言うがままにー
鳥のように羽ばたきながらーーー
屋上から飛び降りたー

”死んでやる”
彼女は、そう思ったー

本当にわたしが死んだらー
大変なことになるでしょ???

と、いじめっ子たちが苦しむことを願いー
彼女は、飛んだ。

いじめっ子たちは、いじめられていた少女が
本当に飛ぶなんて、夢にも思っていなかったー

唖然とするいじめっ子たちー

鳥のように、羽ばたき、飛び降りた少女は、
死んだー

「や、、やばくない?」
いじめっ子たちが言うー

少女たちは、慌てて屋上から退散したー。

両親は娘の死に泣き叫ぶー。

両親は、娘がいじめを受けていたことを知っているー
そして、学校にも相談していたし、
それなりの対応を取ってきたー

嘆きー
怒る両親ー

だが、学校はー
”事実”を隠蔽したー
少女は勝手に鳥のように羽ばたいて自殺したのだと言い、
いじめっ子たちは”よく鳥になりたいって言ってたよね~”と笑った。

世間も”自殺”として少女のことを報じ、
”鳥になりたいと言っていた”と面白おかしく書く
週刊誌まで現れたー。

あまりのショックにー
少女の母は、持病が悪化してー
そのまま帰らぬ人となったー

父は、それでも戦い続けたー
だが、担当の刑事に、少女の父は、こう言われた

”お宅の教育が悪いんでしょ?
 高校生にもなって、鳥になったと思い込んで
 屋上から飛ぶなんて、どうかしてるよ”

”娘が鳥なら、親も鳥頭だなぁ”

とー。

刑事も、取り合ってくれなかったー
何故かは知らないが
とにかく”自殺”として処理したいようだったー

後から、父は理由を知るー。
いじめっ子の中心人物の女子がー
”大企業のトップの娘”だったのだー。
学校も、警察も、グルであるー。

それが、真相だったー
とにかく”自殺”で処理して、
終わらせようとしていたー

そのことを知り、
絶望した父は、姿を消したー。

その父が、どこに行ったのかは、分からないー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「---お前は、鳥だー」
男が少女を洗脳するー

「あ………」
少女の目が、虚ろな目になるー

「--お前は、鳥だ。
 飛べ」

男が言うと、少女は
「わたしは…鳥…」と呟くー

洗脳された少女はー
かつてーー
”同級生をいじめていた”
少女の一人。

「--飛べ」
男が言うー

少女は、洗脳が完全ではないのか、
震えながら、「と…ぶ…?」と呟いている。

「そうだ!飛べ」
男が言う。

「ーーわたしは、、とり…わたしは、、とり…」
少女がうつろな目で何度も何度も呟くー

「-飛べ!飛べ!飛べ!飛べ!
 娘と同じように、、飛べ!」
男が言うー

「---わたしは…飛べる…!」
洗脳された少女はー
かつて、男の娘が飛び降りした際に
屋上にいたいじめっ子のひとりー
”やばくない?”と言っていた子だー

その少女はー
今、洗脳されてー

「わたしは、鳥!」
嬉しそうに屋上から羽ばたいたー

当然、飛べるはずがないー

男は、その様子を見て
笑みを浮かべながら
そのまま屋上から立ち去ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---…」
義明は、今までの連続自殺の何件かの
周辺の監視カメラの映像に
”似たような男”が映っていることに
気が付くー

義明は、男の関与を疑い、
男の素性を調べ上げた。

女性刑事の美津代の協力もあり、
義明はその男が、
福森 善次(ふくもり ぜんじ)という男で
あることを突き止めたー

義明は、
福森 善次を調べ始めるー

飛び降り事件のうちの何件かに、
飛び降りが起きる直前の時刻ー
周辺の監視カメラ映像に
福森 善次らしき人物が
映っているのだー

だが、時間から逆算するに、
飛び降りたその瞬間に、少女たちと
一緒にいたわけでもないし、
ネットの利用履歴などを確認しても、
特に、福森善治が、自殺をほのめかす
サイトを運営していたり、SNSをやっていたり
する様子もないー。

福森善治を尾行したもののー
福森善治におかしな行動はなかったー

「---------」
善次は、気付いていた。
尾行にー

だからー
”方法を変えたー”

洗脳は、直接語り掛けなくてもー
強く念じることで、”できる”のだー。

相手の目を見ることさえできれば、
通りすがりに、女子高生に”お前は鳥だ”と強く念じ続けるだけでー。

福森善治は、警察に尾行されていることを知りながらー
”念じること”で、少女を洗脳しー
そして、羽ばたかせたー。

福森善治を見張り続けていた義明は、
善次が何も怪しい行動をしていないのに、
別の場所で飛び降り事件が起きたことを知り、

「---勘違いか」
と、呟いたー

”憶測”でこれ以上捜査をするのは難しいー

「---」
自宅で、頭を抱える義明ー。

「お父さん、悩み事~?」
娘の千里が心配そうに言う。

「ん?あぁ…ちょっと、仕事でな」
義明が言うと、
千里が「この前言ってた、飛び降りのやつ?」と
呟くー。

「--ん?ああ」
義明のその言葉に
千里は、「ちょっと変な噂があるんだけど~」と、少し戸惑いながら言うー。

”鳥のように羽ばたいて自殺をする少女”ー
その事件について、同級生の間で噂になっていることがあるのだと言う。

それがー
”呪い”

「…呪い?」
義明が聞き返す。

千里がうなずく。

「うん。まぁ、都市伝説っぽく話題になってるだけなんだけどね、
 ”鳥の呪い”-。
 呪われて、身体を勝手に動かされて、飛び降りさせられちゃってるんじゃないか、
 って、そういう噂~!

 ”鳥に呪われちゃうゾ”みたいな感じで、クラスの子もよく騒いでるよ~」

千里の言葉に
「呪い…か」と義明は苦笑いする。

「あ、ごめんね!高校生の単なるうわさ話なんて、役に立たないよね?」
千里が苦笑いしながら言うと、
義明が「いや、いいさ、ありがとう」と優しく答えて立ち上がったー

娘のクラスで噂になっている”鳥の呪い”
呪いなんてことはないはずだがー

だがー
”身体を勝手に動かされて、飛び降りさせられているー”
という点はー
なんとなく、ピンと来るような、そんな気がしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

「--どうした?ずいぶん悩んでるじゃないか。例の事件が?」
同期の刑事・源五郎が、
コーヒーを義明に渡すー

義明は、「あぁ…まぁな」と呟く。

「--少女たちの、自殺…ねぇ」
源五郎は、そう言いながら、コーヒーを飲むと、
義明の方を見たー

「で?何か見当はついてるのか?」
源五郎の言葉に、
義明は、「いや…」と首を振った。

「ただの自殺なのか、事件なのか…
 全然分からなくてさ。
 挙句の果てに、”呪い”なんじゃないか、とか
 ”誰かに操られてるんじゃないか”とか、
 そんなこと考えだす始末だよ」

義明は、ため息をつきながらそう答えたー

「-----」
源五郎は、表情を歪めるー

「そういうことも、あるかもしれないな」
源五郎の言葉に、
義明は、「え?」と声を出すー

「--世の中、俺たちの知らねぇこととか、
 ありえねぇと思うようなことも起きるかもしれねぇってことだよ」
源五郎が、義明の肩をポンポンと叩くと、
「案外、そういう線も間違いじゃねぇかもしれねぇぞ」と呟くー

「--はは、お前なら、笑うと思ってたけどな」
義明は、”呪い”とか、そんなことを言ったら
同期の源五郎は、笑うと思っていたー

源五郎の意外な反応に驚くー

「いや。まぁ、ちょっとな。
 俺もこの前捜査してた痴漢冤罪の件で、
 信じられねぇ経験をしたからよ」

源五郎はそれだけ言うと、
「お前が、そう思うなら、現実的じゃなくても
 調べてみる価値はあるんじゃねぇのか?」と、義明に向かって、
力強い言葉で言うと、
そのまま立ち去って行ったー

「----調べてみる価値…か」

義明はそう呟き、
”少女たちが、操られている”という線を
調べ始めたー

共に捜査をしている女性刑事・
美津代には「そんなことあるわけないじゃないですか~!?」と
言われたが、それでも義明は、調べを続けたー

そしてーーー

”洗脳”

他人を洗脳する術ー。
そんな話に、彼はたどり着いたー

福森善治が、数か月前、
怪しげな団体と何度か接触を取っていたことを、
義明は突き止めたのだったー

”ブレイン”という名前の団体ー
洗脳や、催眠術を研究している団体だー。
表向きは、催眠術師の団体として
活動しているようだが、
裏では、洗脳術の実用化に向けて
あれこれしているという情報も手に入れた。

数か月前、そこに福森善治が何度か
出入りしていることを、
義明は突き止めたー

「--洗脳された少女が、鳥のように羽ばたいて
 飛び降りさせられているー」

義明は、”非現実的だ”と
そう思ったー

だがー
それでも、仮に、一連の事件が”洗脳”に
よるものだとすれば、

”周囲から見れば悩みのなかった女子生徒が急に飛び降りること”
”何件も同様の事件が発生していること”
”鳥のように羽ばたくような仕草”
”福森善治が、飛び降りの直前にその付近の監視カメラに映っていることー”
”催眠術の都市伝説”

色々なことの説明がつくー

「----」
義明は、そう判断して、
福森善治から話を聞くことにしたー

・・・・・・・・・・・・・

「--福森、善次さんですね」
義明が言うと、
善次は「はい」と頷いたー

”優しそうなお父さん”という感じの風貌だー

「---ちょっと、お話を聞かせていただけますか?」
その言葉に、善次は頷くー

近くの公園で、話を聞く義明。

善次は、飛び降り事件のことは知っている、と答えたが、
”私は何もしていませんよ”とも答えたー。

「-----」
義明が言う。

「--洗脳」

その言葉に、善次の表情が歪むー

「--ーーー」
善次の表情の変化を、義明は見逃さなかったー

「---……そ、、それは…」
善次は、あからさまに動揺しているー

”10人以上”の少女が既に自殺しているー
いや、させられているー

こいつを、許すわけにはいかないー

「--あと少し…あとひとりなんだっ!」
善次はそう言うと、そのまま足早に立ち去っていくー

「---あいつだ」
義明は確信したー

あいつが、少女を飛び降りさせているー。
なんとかー
なんとか止めなくてはー

今の状況で逮捕することはできないー
義明は、”洗脳現場”を抑えるしかないー
と、決意するー。

”お前は、鳥だー”

悪魔のような洗脳に、終止符を打つため、
義明は、動き出したー

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

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次回が最終回デス~!
果たしてどうなってしまうのでしょうか~?

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