<憑依>ボディオークション①~落札~

”憑依したい身体を落札する時代”

そんな世界では
”ボディオークション”と呼ばれるオークションサイト・
通称”ボディオク”が、流行していた。

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「--へへへへへへ…」
可愛らしい眼鏡の少女が、
あぐらをかきながら、
スマホを見つめているー。

見つめているのは、
オークションサイト”ボディオークション”
ボディオクと呼ばれる
この世界で人気のサイトだ。

それを見つめる眼鏡の少女は
とてもおとなしそうな雰囲気で
清楚な顔立ちだが、
表情を歪めて、汚らしい笑みを浮かべているー

あぐらをかきながら
片手でポテトチップスをわしづかみにして
それを汚らしく口に放り込む姿は、
その外見からは想像できない。

彼女はーー
”憑依”されているー。

この世界では、人体の売買が行われているー

”憑依薬”と呼ばれる薬が拡散したことにより、
世界は大きく変わったのだ。

今では”憑依用の身体”として
色々な人間の身体がこうして売買されているのだ。

この眼鏡の少女もそう。
この家に暮らす40代の男性・加崎 正宗(かざき まさむね)と
いう男が、ボディオークションで落札して
乗っ取ったのだ。

「そろそろこの女も飽きてきたしなぁ…へへへ」
そう呟きながら
見つめるオークションサイトには
色々な女性や男性の写真が掲載されているー

オークションに出品された”身体”だー。

”ご覧頂きありがとうございます。
 22歳 女性 健康状態良好です
 
 左腕に小さいころのケガの傷があります(写真参照)

 声は、明るく元気な感じです
 (詳細はサイトにてご確認下さい)

 名前・矢澤 佐代子”

”身体”の説明文を見つめる眼鏡の少女。

「んっん~…この身体も悪くねぇか~」
ニヤニヤしながら、つい涎を垂らしてしまう。

色々な身体が販売されているー
見ているだけでも飽きないー

やがてーーー…

「---ん?」
正宗は笑みを浮かべるー。

「ーーー!!んんんんっ?」
そこにはーー
”離婚した妻の娘…”
つまり、実の娘の身体が売られていたー

”幸村 香菜(ゆきむら かな)”
離婚して親権が妻に移ったから、
姓が変わっているが、まぎれもない、実の娘だ。

正宗は、10年前に妻と離婚した。
その時、加奈は8歳だった。

今は18歳ー

「ぐへへへへ…最高じゃねぇか」
正宗は、眼鏡の女の身体のままそう呟くと
さっそく香菜の”商品情報”を確認するー

「現在価格、4万8800円・・・か」
笑みを浮かべると、
そのまま5万円で入札する。

オークションであるがゆえに、
即決価格が設定されていない場合、
すぐに購入することはできない。

だがー
娘の身体はなんとしても欲しい。

「それにしてもー」
正宗が憑依している眼鏡の女がニヤリとほほ笑む。

「-ずいぶん、可愛くなったじゃねぇか…へへへへっ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕方ー

正宗は、眼鏡の少女の姿で
おしゃれをして外に出かけるー

小さいころは、自分の外見にコンプレックスがあって、
女子からいじめられ続けていたー
その自分が、今やこうして他人の身体を
乗っ取って、女子になっているー

「---おう、久しぶり」
眼鏡の少女の姿のまま、カフェに入ると
そのまま電話をするー

相手は”元・妻”-

「--香菜がボディオクに出てたけど?」
少女の声のまま言うー

元・妻は”仕方ないでしょ”と
気に留める様子もなく、電話越しに話した。

この世界では”憑依”は当たり前。
だから”元・夫”が可愛らしい声で
電話をかけてきても、驚かない。

「---だから言ったじゃねぇか」
女の声のまま、気にせず男言葉を使う正宗。

可愛らしい顔で煙草を吸いながら、
元妻との会話を続ける。

「俺と別れて、やっていけるのか?ってな」

そう呟くと、
元妻が「うっさいわね!」と呟いたー

10年前ー
元妻の浮気が原因で正宗は離婚した。
だが、散財癖があり、仕事を転々としている
妻が、自分と別れて娘の香菜まで養っていける
はずがないと、正宗はそう思っていた。

そしてー
結果ー
”香菜を売った”ということは、そういうことなのだろうー。

この世界では
”身体を売る”ことが許されているー

50年前ー
未曽有の事態が世界規模で発生し、
経済は死んだー。
秩序は崩壊したー。

その10年後、憑依薬が生まれ、
人々は、身体を取引するようになった。
身体を売らねば、生きていけない時代ー。

人道的に、人権的に、
最初は大問題になったのは言うまでもない。

しかしー。
不思議なことに、
何だかんだ、憑依薬がーー
”経済”を回したのだ。
それが良いことか、悪いことか、
それは別として
憑依薬が経済を回したー。

最初は無差別に発生していた憑依ー

それを、世界中の政府が話し合い、
”調整”したー。

今ではボディオークションに出品された身体だけに
憑依することができる…というようになっている。

憑依薬への耐性を付けるための予防接種が
生まれた人間全てに行われて
ボディオークションに出品された身体は、
”予防接種の効力を一時的に消す薬”を投与され、
憑依されるー。

ボディオークションに出品されていない人は
憑依される心配はなく、
憑依を楽しみたい人間は、憑依薬を買い、
そして、ボディオークションで身体を落札する。

売る側と買う側ー
需要と供給。
そのバランスが取れて、
経済は回り始めたのだー

「--…香菜は、納得してたのか?」
正宗が女の声で呟く。

”してるわけないでしょ
 自分が憑依されるなんて。
 でも、こうするしかなかった。
 ボディオクの運営に連絡して
 香菜は引き取ってもらったわ。

 法律上”親”に優先権があるのは
 しってるでしょ?”

”優先権”
この世界では身体の扱いは親が決める。
本人が嫌がっていても、
親がボディオクへの出品を決めれば
本人の意思に関係なく、ボディオク行きになる。

”娘をドナドナした”
”息子をドナドナした”

と、いう言葉が飛び交うことも多いー。

「--そうか。なら、俺が落札してもいいんだな?」
正宗が言うと、元妻は呟いた。
”好きにしなさい”
とー。

身体を出品すると、落札された金額の大半を
貰えるほか、
ボディオク事務所から、継続的に
礼金が振り込まれるシステムになっている。

ボディオク事務所は、
オークション出品手数料や
憑依薬の販売、広告料などによって
利益を上げている。

香菜の身体が落札されれば、
正宗の元妻…香菜の母親には、
1年間の間、ボディオク事務所から”礼金”が
振り込まれる。
それだけでも1年生活できるほどの金額だ。

”実の娘に憑依するなんて、やっぱあんたは変態ね”
元妻はそう言うと、電話を切った。

「ふっへへ♡ 変態で結構」
眼鏡の症状の姿のままそう呟くと、
カフェでコーヒーを飲み干して
そのままカフェから立ち去った。

・・・・・・・・・・・・・・・・

2週間前

「ただいま~!」
高校卒業を控えた香菜は、18歳になっていた。

今日もいつものように
学校生活を終えて帰宅したー。

しかしー
香菜の母親…正宗の元妻は、
真剣な表情で香菜を見た。

「--ごめんね」

「-え?」
香菜は不思議そうに首を傾げる。

香菜の母は、必死に働いてきたが
既に経済的に限界だった。
これ以上は娘の香菜を養えない。
そして、自分が生きていくためのお金もない。

悩みに悩みぬいた結果、
母は”ボディオク事務所”に連絡したー

身体を提供すると、
”出品者手当”を最初に貰う事ができるー

♪~~

「--来たわ」
香菜の母が呟く。

何が起きているのか分からない香菜。

そこに、不気味な覆面姿の人物が3人入ってくるー

一人は屈強な肉体の持ち主
一人は露出された生足と、ラバースーツの膨らみが目立つ女。
一人は男女どっちかも判断できない人物。

全員、顔に”ボディオク”のロゴが入った覆面をしていて
素顔が分からない。

「ボディオク…も、、もしかして」
香菜が表情を歪める。

この世界の人間はみんな”ボディオク”を知っているー

ボディオクは日常生活に当たり前のように
浸透しているし、
香菜のクラスにもオークションで落札された経験を持つ人間ー
つまり…憑依されている人間がいるー。

「---え…そんな…!いや…!いやだ!
 お母さん!え…うそ…!ちょっと!」
香菜が涙目になりながら言う。

「--……ごめんなさい」
香菜の母は、香菜から目を逸らす。

”ボディオク”の覆面を被った人間たちに
掴まれる香菜。

「いや!離して!やめて!」

しかしー
男の一人が香菜に注射のようなものをすると、
香菜は虚ろな目になって、ぐったりとした状態で
男たちに身を任せた。

「ーーーボディの提供、ありがとうございます」
生足が目立つ覆面の女性が言う。

「--いえ…」
香菜の母親はぐったりして虚ろな目の香菜から
目を逸らすー

”大切な人を売る”

経済的に一度は破綻したこの世界では
このようなことが日常的に行われている。
そうすることでしか、生きることができない人間が、たくさんいる。

中には、ボディオクに提供する身体を作るために
子供を大量に生む人間まで現れた。

皮肉なことにー
ボディオクの存在が、
少子高齢化を解決しつつあったのも事実。
出産して、その赤ん坊をボディオクに提供し、
落札された金額、ボディオクからの礼金…
たくさんのお金を貰うことができる。

何人も出産して
ボディオクに出品すれば、
”礼金”は都度、増えていくー

積極的に”赤ん坊”に憑依したがる人間も多く
”人生強くてニューゲーム”を求める人間たちのことの間で
人気だー。

「---わたしは……商品です…」
ボディオクの本部に連れてこられた香菜が
虚ろな目で呟くー。

”自分がオークションに出品される”

そのことを、笑って受け入れる人間は少ない。

だからー
こうして、従順にするための注射を行い、
従わせるー。

多数の身体が保管されているボディオクの倉庫ー。

「--この身体は、売れませんねぇ」
覆面の男のひとりが言う。

そこには、顔立ちの崩れた中年の小太りのおじさんが、
カプセルの中にコールドスリープ状態で入っているー

「---まぁ、仕方ないさ。相場は10円ぐらいなのに、
 親族が1000円での出品を希望してるからな。
 売れるわけないさ」

そう呟くと、覆面の男の一人が、香菜の写真撮影を始めるー
オークション出品情報を作るためだー

香菜に、セーラー服や、
チャイナドレス、パジャマ、OL風の衣装、
色々な服を渡す。

洗脳されている香菜は命令通りそれを着る。

「ポーズを決めろ」
覆面の男が言うと、
香菜は笑顔を浮かべてポーズを決めた。

こうしてー
”ボディオークションの商品情報”が出来上がり、
ボディオクのサイトに”18歳JK”として
出品されたのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

正宗は、
実の娘である香菜の身体を落札しようとするー

「現在価格8万2000円か…」
正宗は、眼鏡の女の身体のまま、そう呟くー。

恐らく、もっと値段は上がるだろうー
可愛いJKは、落札金額が高くなりやすいー。

「----…ぷっ」
正宗は笑うー

”10円”

それでも、”元自分の身体”は売れていないー。

正宗は、ボディオークションで他人の身体に憑依したあと、
抜け殻になった自分の身体をボディオクに提供したー。
背が低くて、ハゲていて、虫歯だらけの正宗の身体は
ボディオクからもらえる”礼金”も非常に少なく、
オークションに出してからも、まったく売れていないー

「---はっ、まぁ、いらねぇもんな」
眼鏡の少女の姿のまま、元自分の身体をあざ笑う正宗。

そしてー
数日後ー

香菜の身体を12万5000円で、落札することに
成功したのだったー。

②へ続く

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コメント

おかしな世界を舞台としたお話は
ついこの間(地球は植民地)書いたばかりですが、
たまたま近い期間でまた書いてしまいました~汗

地球は植民地~とは、全然お話自体は違うので、
これはこれで、お楽しみ頂けると嬉しいデス~!

コメント

  1. たまぴー より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんばんは(*^^*)
    いつも楽しませていただいております(^^)
    遅ればせながら、前回コメントさせていただいた、「キスに溺れる女」の後編も読ませていただき、なんとも素晴らしい作品でワクワクしながら読ませていただきました(^^)

    今回の「ボディオークション」も凄く好みの作品で、「ブラッディベーカリー」しかり、無名様の描く、実の娘を洗脳したり、乗っ取ったりする描写が独特の背徳感があり、非常に好みな事を痛感いたしました^_^

    私は臭いフェチでもありますので、
    今回の作品に登場している香菜ちゃんも、学校帰りで身体が臭うまま虚ろに洗脳されてしまい、憑依されるまで意思無く立ち尽くしているのか…などと思うと非常に興奮致します(^^)

    落札した操り人形状態で立ち尽くす香菜ちゃんに憑依する前に、実の娘の無防備に蒸れたお尻の穴を弄り臭いを嗅いだり、唾の臭いを嗅ぐような描写があれば……もはや永久保存版にさせていただきたく思う次第です(*´ω`*)

    興奮してしまい、長文大変失礼致しました!
    これからもお身体にお気をつけて頑張ってくださいませ(*^^*)
    次回の更新も心より楽しみにしております!(^^)

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    たまぴー様!

    コメントありがとうございます~!

    深い愛情と欲望を感じる感想ですネ~!
    これからもゾクゾクを楽しんでいただけるように
    頑張ります~☆