<憑依>ポゼッションシャークⅡ

人間に憑依するサメはー
人間の身体に適応できずに支配に失敗し、
撃退されたー

はずだった…

だが、サメはあきらめていなかったー。

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「サメこそ、救済である」

怪しげな宗教団体が、
サメの形をしたオブジェに祈りをささげる。

「サメよ、我らを救いたまえ」
教祖のような男が言うと、
他の人間たちも、サメのオブジェに祈りをささげる。

「サメよ、我らを救いたまえー」

ともされた炎に祈りをささげる者たちー。

それに応えたわけではないー

サメは、諦めてなどいなかったー。
撤収した”ポゼッション・シャーク”に代わり、
新たなるサメが地上にやってこようとしていたー

より、強力な、”赤きサメ”がー。

人間に憑依し、人間を支配…
多くの人間を乗っ取り、地上を制圧しようとした
ポゼッションシャークは、失敗した。

誤算があったのだー

人間の身体が、憑依したサメに拒否反応を示し、
人間の持つ免疫力に蝕まれて、
人間の体内で衰弱し、最終的には
そのまま対外に追い出されたのだー

だがーー
深海には、まだ未知なる恐怖が潜んでいる。

ポゼッションシャークのより上位個体ー
”レッド・ポゼッション・シャーク”が地上へと
向かっていたのだー。

・・・・・・・・・・・・

海ー。

あれから1か月ー。
人々はすっかり憑依鮫の脅威を忘れて
再び海は賑わっていた。

人々は、過ぎ去った脅威に無頓着だー。

だがーー
そこにー
赤い背びれが現れた。

「え…あれって、サメじゃね?」

「サメだ!」

海水浴たちが騒ぎ出す。

そしてーーー
赤い背びれが、飛び跳ねたー

赤い憑依鮫ー

それが、海から飛び出したのだー

「--ひっ!?!?」
海の近くにいた女子大生が、それに襲われるー

憑依鮫がー
女子大生に憑依するー

「--だ、、大丈夫か?」
「お、、おい!」

女子大生に赤いサメが吸い込まれるようにして
憑依していったー。

「--く、、、くくく」
女子大生が笑うーーー

そしてーー
ボコボコと女子大生の身体が歪みー
一部がサメのような身体に変貌していくー

”サメ人間”

そう言った方がいいだろうかー。

80%が人間
20%がサメのような不気味な容姿に変貌した女子大生は
笑みを浮かべながら自分の身体を見たー

「ふふふふ…
 定着した…
 この身体は…われらの…もの、、ものだ…!
 ふふふふふふふ」
痙攣をおこしながら女子大生が笑うー

サメ人間のような姿になった彼女が、
海に向かって叫ぶー

「お前たち!早くこっちにこいよ!」

とー。

女子大生の可愛らしい声に呼応するかのようにー
赤い憑依鮫が大量に海から飛び出した。

パニックに陥る海ー。

「--ふふふふふふ…
 あははははははは♡」
地獄と化した海水浴場を見て、
サメ人間と化した女子大生は笑ったー

憑依して支配するだけではないー
”憑依して、人間の身体の中枢に潜り込み、
 融合してしまうー”

そんな、赤い憑依サメが、地上に姿を現したのだー

・・・・・・・・・・・

「江見留総理大臣!」
官邸の男が総理の元に駆け込むと、
総理は唖然としていたー

「また、やつらが姿を現したというのかー」

テレビの報道を見ながら唖然としている
江見留総理大臣ー。

前回の危機を乗り切ったものの、
前回は”人間の免疫”と言う、奇跡的な
要因によってサメたちを撃退しただけだ。
総理大臣自体は、何も出来ていない。

「--…くっ……特殊部隊に出動を要請しろ」
江見留総理大臣はそう叫んだ。

前回のサメの襲撃から
半月で、
未知なる脅威に対処するための特殊部隊
”ZERO”が結成された。

その特殊部隊の出番が、さっそくやってきたのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「--おいおい…」
大学生・達夫(たつお)が呟くー。

スマホのニュースを見ている達夫。

そこにはー
”サメが再び出現”と
そう書かれていた。

「--えええ…」
彼女の静香(しずか)が不安そうにする。

「--大丈夫…今度も勝つのは人間さ」
達夫が言う。

前回のサメの襲撃で、
彼女の静香はサメに憑依されてしまったー

幸い、無事に解放されたものの、
静香にとっては”自分が乗っ取られて好き勝手されていた”
というのはトラウマだった。

「--大丈夫。静香は俺が守るよ。
 いざとなったら、この前みたいにチェーンソー背負って
 戦うから」

達夫が言うと、
近くにいた友人の洋平(ようへい)が言う。

「しっかし、台風に乗って飛んでくる
 サメをチェーンソーで切り付けるなんて、
 お前もとんでもないことをしたよな」

笑う洋平。

達夫は、不安そうにニュースを見つめることしかできなかったー

・・・・・・・・・・・・・

赤いサメは、空を飛んだー。

信じられないことに、空を飛んだのだー。

台風が発生していなくても、
空を飛ぶサメー。

サメに救済を求めていた
宗教団体の本部が、サメに襲撃されてー
次々と憑依されていくー

「おおおおおお!サメ様ぁ…!」

宗教団体は一気に憑依されたー。

人々が憑依・融合されていくー

サメ人間が増え続けていくー。

江見留総理大臣の対応は、
間に合わず、あっという間に、
国内は大混乱に陥ったー

特殊部隊”ZERO”も壊滅した。

「-----」
頭を抱える総理。

そして、総理は立ち上がったー。

・・・・・・・・・・・・・・・

「--どんどんサメが近づいてきているな」

「--あぁ…隣の県にも出たらしい」

達夫と洋平が話している。
静香や、女友達の蓮子(れんこ)には
聞かれないようにしながら。
必要以上に女性を怖がらせないように
するための配慮だ。

「どうする?」

「どうするったって、俺たち個人で
 できることなんてねーだろ?
 この前は仲間を救うために
 海に向かったケド、
 今回はそういう目的もないわけだし、
 俺たちがチェーンソーを持って
 戦ったところで、すぐにやられるのがオチだぜ」

スマホのニュースに
サメと憑依融合してしまった女子高生が
笑みを浮かべながら歩いている動画が
写っているー

この子も、乗っ取られるまでは
普通に暮らしていたのだろうー。

今や、海にはサメに乗っ取られた人間たちが、
身体に出てきたサメの背びれのようなものを
利用して泳ぎ回っているー

服を着たままーーー

”濡れたJKを見に行く”とか言って
ツアーをした若者たちがまとめて憑依されて
さらに憑依鮫は拡大しているー

”国民の皆さんー”

「-ー?」

近くのテレビから映像が流れるー

大学構内のテレビに
江見留総理大臣が映し出されている。

総理大臣は、チェーンソーを手にしている。

「国民の皆さん!武器を取れ!
 地上は我々、人間のものだ!」

江見留総理大臣がチェーンソーを手にし、
スーツを脱ぎ捨てて戦闘服のような恰好を
披露すると、そのまま近くに飛んできた
赤いサメを一刀両断したー

「おおお!」
洋平がその映像を見て叫ぶ。

「--なんでみんなチェーンソーなんだ?」
近くのモブっぽい男子学生が呟く。

だが、その呟きは無視された。

「サメ映画のお約束ってやつか?」
洋平はそう呟きながら
チェーンソーを手にしたー

この日ー
市民たちは立ち上がった。
チェーンソーや、それぞれの武器を手に
サメとの戦いが始まったのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・

サメとの戦いは、続くー

やがてー
秋が来て、
冬になろうとしていたー

「---はぁ…はぁ…
 今日は何匹ヤッた?」

洋平が言うと、
達夫は「8匹だな」と呟いた。

「いつまでサメとの戦いが続くの…?」
彼女の静香がおびえながら言う。

もう、何か月もサメとの戦いが続いている。

サメによって、
世界は大打撃を受け、
さらにはサメ対策グッズの
チェーンソーの買い占めや、
転売までもが起き始めた。

ネットではチェーンソーが
大量に出品されている。

赤い憑依サメとの戦いー
それに乗じた略奪行為ー
さらには、パニックを起こして暴徒と化した人間ー。

サメとの戦い以上に、
人間は疲弊を続けていたー

「---ひひひひひひひひひ!」

達夫の前にサメ人間が現れるー。

「--はぁぁぁ♡」
可愛らしい女子高生だー。
登校中に乗っ取られたのかセーラー服姿の少女は、
一部がサメ化しているー

サメ人間と化しているー
赤い憑依サメに乗っ取られた人間たちはー
サメと憑依・融合してしまい
精神を完全に乗っ取られるほか、
身体の一部がサメのようになってしまうー

「---あぁぁぁ…♡ 愚かな…人間!」
可愛らしい少女が呟く。

制服が汚れているのを気にもせずに
襲い掛かってくる少女ー

達夫と洋平はその少女の攻撃をかわすー。

今度の憑依はー
前とは違うー

赤い憑依サメは人間の中枢にまで潜り込みー
憑依された人間はもう助からないー。

前回の憑依サメが、人間の拒絶反応により
人間の身体から追い出されたことで敗北・撤退に
追い込まれたことから、今回の憑依サメたちは
より賢く、強力になっていたー

「--ごめんなー」
達夫はそう呟いてーー
チェーンソーで憑依されたサメ少女を真っ二つにしたー

「----」
悲しそうに倒れた少女を見つめる達夫。

「--たすけ…て…たすけ…て」
そう呟いて少女は息絶えるー

これはサメたちの”演技”だー。

人間に罪悪感を植え付けるためにー
サメに憑依された人間たちは
死ぬ前に、わざとそういうことを呟くー。

「---くそっ」
洋平が呟くー

このままじゃ、キリがないー

赤い憑依サメの個体は
前回の憑依サメよりも少ないのか、
憑依された人間の数は限られているー

だがー
”憑依されたら、助からない”という状況は厳しいー。

人間は既にパニックを起こし、
大混乱に陥っているー

数は少ないとは言え、新たなる憑依サメの
上陸も続いているー。

このままでは、人間は壊滅する。

「--はぁ」
達夫も疲れた様子で近くの壁に寄りかかる。

「--静香たちは?」
彼女の静香たちの様子を洋平が聞く。

静香たちは安全な場所に避難させてある。
憑依されたら終わりである以上ー
彼女たちを危険に晒すことはできない。

安全第一だ。

「---俺たち…いつまでサメと戦えばいいんだろうな…」
洋平が呟く。

「--分からない」
達夫が呟いたー

終わりの見えない戦い-

だがー
彼らはまだ、知らない。
終わりは、もう目の前まで来ていたことをー。

冬になる。

江見留総理大臣は、サメ人間を一掃する計画として
サメ型の超巨大兵器
”アトミック・シャーク”の開発に着手していたー

これを使えば多くの犠牲を払うことになるかもしれないー

だがー
このままずるずる戦いを続けていてもー

「総理!!」
官房長官が駆け込んでくる。

「-どうした?」

「サメ人間たちがーーー!」

官房長官の報告に驚く江見留総理大臣。

戦いは、再び終わったー

前回同様、あっけない形でー

それはーー
”冬”だったー。

冬の気温に、赤い憑依サメたちは耐えきれずー
サメ人間たちはー
そのままーー
死んだー。
冬の気温と、特有の乾燥に、赤い憑依鮫たちは
耐えられなかったのだー

2回に渡る憑依サメの侵略ー
人間は、また、何もすることができなかったー

けれどー
結果的に人間は勝利したー

「--静香」
大学生の達夫は、彼女の静香を迎えに行き、
安心したような笑みを浮かべるー

サメは、またやってくるかもしれないー

その時までに、
人類には、備えが必要なのかもしれないー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

憑依鮫の続編が欲しい!と言われたことがあったので
作ってみました!

この調子だと、またいつか、新しい
憑依サメが上陸しそうですネ…
(今のところもう書く予定はないのですが…笑)

お読み下さりありがとうございましたー!

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