憑依薬の魅力に、はまっていくー
やがて、引き返すことのできない地獄に、
彼は堕ちていくー。
憑依薬中毒という、地獄に…
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「---みんな~!芳香だよ~♡」
アイドル衣装を身に着けて
正明の彼女、芳香が
鏡の前でポーズを決める。
「---あぁぁあ♡」
芳香は顔を赤くして
その様子をスマホで写真に撮る。
「ふふふ…芳香ぁ…いい表情だぁ…♡」
芳香は、彼氏の正明に憑依されているー
芳香に憑依した正明は、
念願であった
”彼女にコスプレしてもらう”夢を叶えたー
してもらっているわけではなく、
憑依して、無理やりさせているのだがー…
「---」
モデルのような格好をして、
モデル歩きをして、
鏡の前でポーズを決める。
芳香の挑戦的な表情を見て
ゾクゾクするー
買い込んだコスプレ衣装を
次々と身に着けていく芳香。
「---私に跪きなさい!」
SMの衣装を着て、
鞭をふるい、高飛車なポーズをとる芳香。
普段の芳香は絶対にこんなことをしない。
「はぁぁぁ…こんな顔もできるんだぁ…」
”人を乗っ取って、こんなことをさせている”
そう考えただけで
興奮が止まらないー
ドキドキが無限に噴き出してくるー
これが、憑依の魅力ー
鏡に映る芳香は
自分が乗っ取られているのに、
とても嬉しそうな表情を浮かべているー
「すげぇ…!憑依すげぇ…!」
芳香ははぁはぁしながらそう言うと
嬉しそうに自分の身体をぎゅっと抱きしめたー
「っと…やべぇやべぇ」
憑依薬の効果があと40分しかないことに気づく芳香。
慌てて元着ていた服を身に着けると、
正明の家を飛び出した。
そしてー
憑依薬の効果が切れる5分前には
芳香の家に戻り、
そのまま、時間切れを待ったー。
・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「----…はぁ…」
芳香は悩んでいたー
昨日、大学から帰宅してからの
記憶が2時間ぐらい飛んでいるのだ。
「--あれ?どうかしたのか?」
彼氏の正明の友人、峰雄が芳香の姿を
見かけて呟く。
「--あ…うん…ちょっとね」
「--あ、そういえば、昨日、
正明のやつの家に駆けこんでいったけど、
何かあったのか?」
峰雄が言う。
峰雄は昨日、偶然、正明の家の前を通ったー。
2人の家は近所ではないが、
峰雄が家からバイト先に移動する最中、
自転車で正明の家の前を通過するのだー。
その時、”憑依された芳香”が正明の家の中に
入っていくのを目撃している。
「---え…」
芳香が不思議そうな表情を浮かべる。
「--え…って、
昨日…正明のやつの家に行っただろ?」
「---うそ…?行ってないけど…?」
芳香が不安そうに言う。
「え…?でも、俺、確かにみたんだけど…」
峰雄の言葉に、芳香は「何時ぐらいの話?」と尋ねた。
峰雄が口にした時間はー
ちょうど、芳香の記憶が飛んでいる時間だったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
憑依薬を注文しようとする正明。
だがー
憑依薬販売サイトでは、
憑依薬が”品切れ”と表示されていた。
「品切れ!?そんな」
正明が呟くー
大学の昼休みー
食堂で正明は頭を抱えていた。
「って言うと、あと2本…?」
正明は震えるー
もう、憑依薬のない生活なんて考えられない。
「--正明」
背後から芳香の声がした。
「あ、あぁ、芳香。」
正明が振り返る。
芳香を見るだけで昨日の最高の時間を思い出す。
今度は、休日に4時間ぐらい憑依したい。
憑依薬のまとめ飲みは何本までいけるのだろうか。
「---昨日…わたし、正明の家に行った?」
芳香が言う。
「え…?」
正明が唖然とするー
”なぜだ?”
そう思ったー
憑依されている最中の記憶は残らないはずだー。
「---き、来てないよ」
正明が言うと、芳香は「嘘」と呟いた。
「峰雄くんが見たんだって。
わたしが正明の部屋に入っていくの…
それに…
わたしが正明の部屋の中で…
その…」
芳香は、峰雄を問い詰めて
自分がメイド服を着ていたことを
知ったー。
涙を目に浮かべながら言う。
「--わたし…正明の部屋で
何をしてたの…?
昨日の記憶が少し飛んでて…
その間、わたし…」
「---……
峰雄の見間違えだよ」
正明はそう呟いて
芳香の前から
逃げるようにして立ち去ったー
・・・・・・・・・・・・・
その夜ー
正明は、芳香に問い詰められたいらだちから、
近所の女の子に憑依したー
そして、めっちゃくちゃに部屋で暴れまわった。
「くっそ~~~~~~!!!!!
ストレスたまるぜ~~~~~~!!!!!」
良い子の娘が急に暴れ出したことに
両親が困惑する。
「何もかもぶっ壊してやるぅ!!!!
あははははははははははははは!」
少女の表情がこれ以上ないぐらいに歪むー
そうだ、
憑依薬があれば、
何でもできる。
何でもできるんだ。
「--はははは!!俺は最強だ!!!」
少女が、喉が壊れてしまいそうなぐらいの声で叫ぶー
戸惑う両親ー
やがて、時間切れを起こして
少女は表情を歪めたままその場に倒れたー。
「あぁぁ…足りねぇ!もう1本!」
正明はそう叫ぶと、
少し離れた場所の大学の女子大生に憑依して、
無茶苦茶にエッチをしまくったー
憑依から抜け出すころには、その女子大生の身体は
ビクンビクンと痙攣していたー
・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
憑依薬は品切れたまま。
販売ページを30分に1回は見ているが
入荷されないー
「--正明…話がある」
友人の峰雄に呼ばれる正明。
「---なんだよ?話って」
そう言うと、峰雄は話を切り出した。
「--芳香ちゃんのこと…
お前…何か知ってるだろ?」
峰雄が言う。
「しらねーよ」
正明は愛想なく返事をした。
峰雄に、
芳香が部屋に入っていく場面を見られたー
面倒なことになった、と
正明は頭の中で思う。
「---なぁ!大事な彼女だろ?
お前、何を知ってるんだ!?
昨日から、彼女、ずっとふさぎ込んでるぞ!」
峰雄が言う。
「--うるせぇな。童貞のお前には関係ないだろ」
正明が言うと
峰雄が胸倉をつかんだ。
「--俺、みたんだ。メイド服を着た芳香ちゃんが
「---俺の意のままだ」って笑いながら呟くのー。
お前…あの日、彼女に何をしてた?」
峰雄が胸倉をつかみながら言う。
「---……俺と芳香の問題に関わるな」
正明は動揺しながらそう呟いたー
”俺の意のままだ”
確かに、芳香の身体でそう言った。
やばいー
憑依薬なんてものはばれないだろうがー
やばい…
「--芳香ちゃんに、本当のことを言えよ。
あの子、すっげぇ、悩んでる。
お前、彼氏だろ!?」
峰雄が言う。
峰雄は正義感の強い暑苦しいやつだー
面倒臭いことになったー
帰宅した正明は
憑依薬のサイトを見る。
憑依薬は入荷していない。
「くそっ!」
峰雄が邪魔だー。
正明は思うー
あいつが、邪魔だー。
「--…憑依薬があれば…」
正明は狂った笑みを浮かべるー
そう、憑依薬があれば自分は無敵だ。
あいつをーー
峰雄を消すことだってできる。
正明は手を震わせていたー
「憑依中に…そいつの身体で死んだら…
どうなるんだろうな…?」
悪魔のような笑みー
邪魔だー
峰雄が、邪魔だー
「---」
正明は、気づいたときには
無意識のうちに憑依薬販売サイトの運営に連絡を取っていたー
そしてー
運営者から連絡がきたー
”直接取引しよう。15万だ。”
とー。
正明はすぐに指定された場所に向かったー
するとそこには、
煙草を口に咥えた女子高生が腕を組んで待っていたー
とある廃工場ー
「---…15万」
女子高生が愛想なく言う。
「--あ、、はい」
正明がお金を払う。
女子高生がそれを確認する。
そして、憑依薬が手渡された。
「--あ、、、あの…!」
正明が言うと、
女子高生は「余計な詮索はするな」と呟いたー
この身体は”取引用”だー。
その辺の女子高生に売人が憑依して
ここに来ているー。
正明は、憑依薬を受け取ると、
そのまま女子高生に礼を言って、
足早に立ち去ったー
”金づるになりそうなやつを見つけたらー
そいつの見ている画面をハッキングして
憑依薬の広告を表示する”
”憑依薬サイトに誘導後に、憑依薬を
安価で売りつけるー”
”そいつが魅力に取りつかれたら
徐々に価格を上げていくー”
”病みつきになったタイミングを見計らって
憑依薬を品切れにして、
運営への連絡フォームだけ用意しておくー”
”連絡が来たら直接取引に誘導するー”
「ククク」
女子高生は笑うー
こうしてー
どんどんどんどん
憑依薬を売りつけていくのだー
金づるから、金を奪うためにー
・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
峰雄は、昨日に続き、正明に
芳香に謝るように言ってきたー。
だが、正明はそれを無視する。
峰雄は口を開いた。
「なぁ…正明…
最近、何か変だぜ」
峰雄が言う。
「変…?」
「--何かに憑りつかれちまってるような…」
峰雄が心配そうに呟く。
「--やっと…
やっと、楽しいことを見つけたんだ。
邪魔をしないでくれー」
正明の表情には狂気が宿っていた。
「---…邪魔って…
お前、、ふざけるなよ!」
峰雄が叫ぶ。
「---お前を…殺したくないんだ!」
正明が狂った顔で呟くー
目がイッてる…
峰雄はそう思ったー
「---…お、、、お前…」
峰雄は正明のことを”怖い”と感じながらも言った。
「--お前…何をはじめたんだ!?
最近、どう考えてもおかしいぞ!」
峰雄はなおも食い下がるー
”憑依薬”のすばらしさ、お前には分からないだろ?
正明はそう思いながら決めた。
”邪魔だー
処分してやる”
とー。
その夜ー
正明は峰雄に憑依したー
「へっへへへ…憑依薬があればなんでもできる」
笑う峰雄は時計を見ながら、解放されているビルの屋上に向かうー
59分45秒…
憑依から解除されるのは60分の時点だー。
憑依した状態のまま死ぬとどうなるか分からないー
だからー
「53秒、54秒、55秒、56秒、ひーははははははは!」
笑いながら峰雄はビルの屋上から飛び降りたー
憑依されたままーーー
・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「---峰雄くんが、死んだって…」
芳香が呟く。
「---……そうみたいだな」
正明はそう言いながらも、内心で笑っていたー
”憑依薬があれば、邪魔者さえ消せる!”
「--ねぇ…」
芳香が呟く。
「--ん?」
正明が芳香のほうを見ると、
芳香は呟いたー
「峰雄くんに…何をしたの?」
とー。
「--え?」
正明が困惑するー。
「--昨日、こんなLINEが来たの」
芳香がスマホを見せてくるー
そこにはー
”俺、正明に殺すって言われたー
もしかしたら…俺…殺されるかも…”
峰雄からのメッセージだったー
「---…」
正明はそれを見て決めたー
”芳香の身体でもっとコスプレを楽しみたかったけど…
仕方ない”
その夜ー
再び憑依薬の売人に連絡を入れたー
「--100万だ」
「え?」
正明は困惑する。
貯金を全部足してもたりない。
「---くくく、払えないのか?」
この前とは別の少女がイヤらしい笑みで笑うー
「い、、、いや…いや、、払う!払えるよ!
明日まで待ってくれ!」
正明はそう言うと、
翌日には借金をして、100万円を用意したー
”憑依薬があれば、金もどうにでもなる”
そしてーーー
「----あはははははははっ♡
お前の身体、しゃぶりつくしてやるよ~!
最後になぁぁぁぁ♡」
憑依された芳香は、悪魔のような笑みを浮かべて笑うー
エッチしまくる芳香ー
身体が砕けそうになるぐらいの快感を味わい、
狂気的な笑みを浮かべるー
そしてー
憑依してから59分のタイミングで台所に行くとー
その包丁で、芳香は自分を突き刺したー
「へへへっへ♡」
笑いながら倒れる芳香ー
憑依から抜け出した正明。
「もっとだー」
「もっと、もっと、憑依したい」
憑依薬の売人に連絡するー
借金をするー
大学の同級生に憑依して遊びまくるー
借金をするー
売人に連絡をするーー
金持ちの娘に憑依して全額、家に運ばせるー
借金を返す
憑依薬を買うー
憑依するーー
「ひひ、、ひひひひひひ、ひひひひひひひひひ」
正明はーー
別人のように、目の下に隈を作りながら
家で一人、不気味に笑い続けていたー
憑依薬の異常な使用が、
精神を蝕んでいたー
パンを食べながら、
台所に座り込む正明。
「へへへへ~憑依薬ぅ~」
大学にも行かなくなった正明は、
憑依薬の売人を再び呼び出すのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依薬をご利用の際は
中毒症にご注意を~(?)
お読み下さりありがとうございました~!
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