突如として、人間に”憑依する”サメが出現したー。
海に遊びにやって来ていた大学生グループの一人が、
そのサメに憑依されてしまい、
楽しかったはずの夏の思い出は、地獄へと変わっていくー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
梓の病室に駆け付けた
紀介と彼女の和美は呆然としていたー。
”サメ”に憑依されてしまった梓と、
その様子を見守っていたはずの梓の彼氏・純一の姿はそこにはなく、
”血痕”だけが残されれていたのだー。
「ーー…こ、これは一体…」
困惑の表情で、紀介はそう言うと、
不安そうな表情を浮かべる彼女の和美に対して
「ーちょっと純一に連絡してみる」と、それだけ言葉を口にしながら
スマホを手に取ったー。
だがー…
純一との電話は繋がらないー。
当たり前だー。
既に純一は、梓に憑依していた”サメ”に食われて
この世にいないのだからー。
「ーー繋がった?」
和美が不安そうに呟くー。
「い…いや…と、とりあえず、梓ちゃんにも連絡してみる」
紀介はそう言いながら、梓にも連絡を入れるー。
するとー…
意外なことに電話が繋がったー
”もしもしー”
低い声で応じる梓ー。
「ー!?梓ちゃん!?」
繋がるとは思っていなかった紀介は、
予想に反して、電話がつながったことに驚きながらも
そう声を上げるー。
”梓”はさっきまで意識不明の状態だったため、
驚くのも無理はないー
「い、今、どこにー!?」
紀介がそう叫ぶと、梓はクスクスと笑ったー。
”今、病院の3階にいるよー…
さっきまで”この人間”のことを診察していたー
先生、おいしそうだなぁって思ってー”
「ーーーえ…」
紀介は、スマホを握る手に、冷や汗をかくのを感じたー。
梓の”言っていること”がおかしいからだー。
「ーーあ、梓ちゃんー?何を言ってー…?」
紀介がそう言うと、
”ーーふふふふふふ 人間の身体って いいねーー”と、
梓のそんな言葉が聞こえて来てーー
そのまま、電話は切れてしまったー。
「ーー!!!」
紀介は戸惑いの表情を浮かべながら
彼女の和美の方を見つめるー。
「ーーど、どうしたの?
梓に繋がったのー?」
和美の言葉に、紀介は「つ、つながったー…
これから迎えに行ってくるー」と、それだけ言うと、
和美は「ならわたしも!」と、自分もついていこうとするー。
しかし、紀介は首を横に振ると、
「純一がここに戻って来るかもしれないから、和美はここにいて」と、
それだけ言葉を口にすると、”病院の3階”に向かって走り出すー。
和美を一緒に連れて行くと、和美まで危険に晒してしまうー。
それだけは避けなければならない、と、
紀介は、病院の3階へと向かうー。
「ーーーくそっ…何でこんなことにー」
紀介は3階へ駆け付けると、
既に夜になっていたこともあってか、あまり人の気配がなかったー。
「ーーー…」
薄暗い病院の廊下を歩く紀介ー。
「ーー!」
ふと、人の足音が聞こえて、紀介はその後を追うー。
そしてーー
”うわあああああああああっ”
そんな、悲鳴が聞こえたー。
「ーーー!!!」
紀介が駆け付けると、そこにはー、
先程のDr・笠島の姿と、梓の姿があったー。
笑みを浮かべながら、壁際にDr笠島を追い込んでいる梓ー
「梓ちゃん!」
紀介がそう叫ぶと、ニヤッと笑みを浮かべながら
一瞬振り返った梓が、突然白目になって、
その場にへなへなと座り込むー。
直後ー、梓の身体から光のようなものが飛び出しー、
それが空中で実体化ー…
悲鳴を上げるDr笠島を丸のみにすると、
地面に着地したサメは、すぐにまた光のようになって、
梓の身体に吸い込まれていったー。
「ーーー…そ、そんなー…」
紀介が呆然としていると、気を失って座り込んでいた
梓が再び立ち上がるー。
「ーすごいでしょ?人間の身体を使うとー、
こうやって陸地の人間も食べることができるー」
梓はそれだけ言うと、
「ー人間の脳から、人間の言葉も学べたしー」と、
最初よりも”人間らしい”振る舞いでそう言葉を口にしたー。
「ーー…ふ、ふざけるなー…!梓ちゃんから出ていけー!
それに…純一はどうした!?」
紀介が表情を曇らせながら聞くと、
梓はニヤリと笑ったー。
「この”乗り物”の彼氏ー?」
梓の身体のことを”乗り物”呼ばわりするサメー。
「ーー…彼氏なら”食べちゃった”」
クスクスと笑う梓ー。
「ーお…お前ー!」
カッとなって、紀介が梓を腕を掴むと、
梓はニヤリと笑ってー、その場で失神するー。
「ーー!?!?梓ちゃん!」
倒れ込んだ梓の身を心配するも、すぐに、
さっきと同じように梓の身体から、光が飛び出して来たことに気付きー、
紀介は咄嗟に、その場を離れー、
”サメ”の口を回避したー…
がー、サメはすぐ光になるとー
今度は紀介の方に光が飛んで来たー
「なっ!? ぅっー」
そのまま憑依されてしまった紀介ー。
「ーークククーー…人間は美味しいから、食べるのをやめられない」
憑依された紀介がそう呟くと同時にー、
すぐに紀介は気を失いー、
そのまま紀介からサメが飛び出すー。
”憑依された人間”は、サメが身体から抜けても、
一旦、意識を失うー。
それを利用して、サメは紀介が逃げられないようにしたのだー。
失神した紀介の頭上で、サメが実体化ー、
サメはついに、紀介も丸のみしー、
紀介は意識を失ったまま食われてしまったー
「ーーーえ…」
ちょうど、梓が意識を取り戻すー。
がー、サメはまた、すぐに霊体になると、
そのまま梓の身体を乗っ取り、不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーえ…何なのー!?」
病院の1階で待機していた紀介の彼女・和美は
3階で起きた事態を知らないまま、呆然とした表情を浮かべるー。
それもそのはずー、
病院に警察官たちが駆け付けたのだー。
「皆さんー落ち着いて下さいー」
警察官たちはそう言うと、外に出れる人は
一旦外に出るように指示をし始めるー。
「な、なにがあったんですかー…?」
和美が不安そうに聞くと、
「ーー”病院内にサメが出現した”という通報がありましたー」と、
警察官の一人がそう言葉を口にしたー
「サメがー…?」
呆然とする和美ー。
和美は、いったん病院の外に誘導されるも、
不安そうに病院の方を振り返るー。
彼氏の紀介も、親友の梓も、梓の彼氏である純一も
行方知れずのままー。
和美は意を決すると、病院の方に向かって
再び歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー君も、早く避難を」
病院の3階で”梓”と遭遇した警察官がそう言葉を口にするー。
がー、梓はにやりと笑みを浮かべると、
その警察官の急所を突然蹴り飛ばしたー
「ぐっおっ!?!?」
驚く警察官ー。
「これで、逃げられないー」
梓はそう言うと、そのまま梓の身体から”霊体”が飛び出しー、
空中でサメが実体化ー。
落下しながら、警察官を捕食するー。
「さ、サメだ…!」
他の警察官がそれに気づき、声を上げるー。
がー、銃を構えると同時に、サメは
梓の身体の中に再び入っていくと、
「ーこの子はただのー…… そうー…女子大生ってやつだけど
撃っちゃっていいのー?」と、
梓の記憶を引き出しながら、言葉を口にするー。
「ーなっ…」
銃を構えている二人の警察官が戸惑うー。
ニヤリと笑みを浮かべた梓は、二人の方に駆け寄ると、
そのままその場にどさっと倒れ込み、サメが再び姿を現すー。
警察官を一人捕食しー、
反撃を受ける前に梓の身体に戻りー、
「ー撃つ?可哀想な女の子を撃つ?」と、ニヤニヤしながら
挑発するー。
「ぐっ…」
戸惑う警察官ー。
その間に、梓から再びサメが飛び出し、また一人、
警察官が捕食されてしまうー。
「ーーふ~~~~…」
またもや憑依された梓は、
「ー人間、美味しいなぁ…」と、呟きながら
ゆっくりと歩き始めるー。
やがてー、異変に気付いた他の警察官たちがやってくると、
梓は不気味な笑みを浮かべたー。
「ーこの身体はただの人間ーーー
撃てる?撃っちゃう???」
梓に憑依してから時間が経過したからか、
すっかり人間らしい”煽り”の仕草も手に入れると、
そんな言葉を口にしながら、梓は警官たちを煽ったー。
「ーわたし、可哀想だなぁぁぁ…
人間が見下してる”サメ”にこんな風に
身体を勝手に動かされて、
何も分からないまま、死んじゃうなんてー」
クスッと笑う梓ー。
警官たちは戸惑うー。
先程、”サメが梓から出て来る”場面を目撃した
警官もいるため、警官たちは
”サメが人間に憑依している”というその事実を
信じるほかなかったー。
「ーあの子の身元はー?」
警官隊の一人が言うと、他の警官が
通っている大学と、名前を口にしたー。
「ーくそっ…だったら、拘束するぞ」
警官隊の一人がそう言うと、
梓を取り囲むようにして、梓に向かっていくー。
ニヤリと笑う梓ー。
梓の身体から、サメの霊体が飛び出し、
それが空中で実体化ー。
がー、警官が実体化した瞬間に銃弾を放ったことで、
慌ててサメは再び霊体と化しー、
攻撃を回避するー。
とは言え、”誰にも憑依していない状態”で
ずっと霊体になっていることは出来ずー、
”実体化する”か”人間に憑依するか”を選ばなければ
いけなかったー。
サメは再び、梓に憑依するー。
しかしー、すぐに警官隊が梓を拘束しー、
梓は「くそっ、一人を相手にー、卑怯な人間どもめ!」と、
声を上げるー。
「ー大人しくしろ!」
警官が手錠を梓にかけると、
身動きの取れなくなった梓は悪あがきをするかのように、
警官の一人に唾を吐きかけたー。
「ー貴様…!」
その警官がカッとなるも、近くにいた警官がすぐに彼を止めるー。
「ダメだー。この子も被害者なんだから落ち着けー」
その言葉に、カッとなっていた警官は
”憑依”の恐ろしさを改めて感じずにはいられなかったー。
「ーー梓!」
そこに、死んだ紀介の”彼女”である和美が駆け付けるー。
まだ紀介が死んだことを知らない和美は
他の警官たちを押しのけて、
「と、友達なんですー」と、そう説明するも、
警官たちは「危ないから近寄らないで」と、そう言葉を口にするー。
「ーー…梓…!梓は、どうなるんですか!?」
和美がそう言うと、警官の一人は「罪には問わない」と、そう約束したー。
あくまでも、”人間に憑依したサメ”が、犯人であり、
この子は使われただけだ、とー。
殺人事件に使われたナイフは、罪を問われないー。
それと同じだとー。
「ーー梓ー…」
和美が悲しそうに立ち尽くすと、
警官たちは、梓を一度署に連行して、
そこで、”憑依したサメ”を取り除く方法を検討するー、と、
そう言葉を口にしたー。
連行されていく梓ー。
自分の目の前を横切った際に、和美が「梓ー」と、
声をかけると、
梓は和美の方を見て、少しだけ笑みを浮かべたー。
そしてーー…
白い光が、梓から飛び出してすぐ近くにいた和美に
一瞬にして、”移動”したー。
「ーーっ…」
ビクッと震える和美ー。
ガクッと意識を失った梓は、警察官に気付かれることなく、
そのまま連行されていくのだったー。
「ーーーーー…ククー」
ニヤリと笑う和美ー。
「ー手当たり次第人間を食べちゃうとこうなっちゃうからー
今度は、もうちょっと慎重に人間を食べよっとー」
サメに憑依されてしまった和美はクスッと笑うと、
そのまま嬉しそうにどこかへと立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーあ~~~~くそっー…」
最初にサメが出現した際に、
サーフィン中で、そのまま海に転落、
行方不明になっていた三平は、
なんとか海から上がり、紀介や純一らと5人で宿泊する予定の
ホテルを目指していたー。
「しかしー、あいつらも薄情だよなー
俺を置いていくなんてー」
サメの”憑依”の件を全く知らない三平は不満そうに言葉を
口にしながら、海辺を離れようとするー。
がー、偶然そこに病院を出て、どこかへと向かう
”憑依された和美”がやってきたー
「あ、和美ちゃんーみんなは?
サメに食われたりしてないかー?」
サメが出現したところまでしか知らない三平がそう言うと、
和美は笑ったー。
「ーーーふふー…わたしが”サメ”だって言ったらどうする?」
和美の言葉に、三平は「は?はははー面白い冗談だな~」と笑うー。
和美はにこにこしながら、突然その場でガクッと意識を失うー。
「ー!?」
驚く三平ー。
直後、三平の頭上で実体化したサメは美味しそうに三平を
丸のみにすると、そのまま再び和美に憑依して、
何事もなかったかのように立ち去って行くのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
ほとんど全滅エンドでした~!
最初に憑依された梓だけは連行されたあとに
意識を取り戻しているので、
一応無事デス…!
お読み下さりありがとうございました~~!
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