女性の身体に憑依して暗殺を行う
憑依暗殺部隊に
最大の危機が訪れた
”憑依を憎む男”の憎悪が、
部隊を襲うー。
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昆虫の標本ー
そして、涎を垂らしながら
ぼーっと意思のない人形のように
立ち尽くす女性ー
昆虫収集家の直樹により、
憑依で記憶を消され、
”人間標本”にされてしまった
女性たちが並ぶその空間ー
しかし、そこに
主であるはずの直樹はいないー。
女子大生に憑依したアルファ
女子高生に憑依したベータ
OLに憑依したガンマ。
その3人が、憑依した身体から抜け出せないまま
鎖で拘束され、
エッチな姿をさらしていた。
「--憑依で人生を奪われたものの怒り?」
女子大生の声でアルファが聞き返す。
「えぇ」
憑依薬の売人である
愛染は答えた。
「--僕は、憑依薬を広めたくて
憑依薬を売っているわけじゃ、ありません。
僕が憑依薬を売るのは、
軽々しく憑依薬に手を出そうとするやつらに
その罪を思い知らせるためー
そして、資金を集めて
この世から憑依を消し去るためー。」
愛染がそう呟くと、
女子高生の姿のベータが言う。
「--何のためにそんなことをー?」
その言葉に、愛染は
自分がつけていたペンダントの中にある
写真をアルファたちに見せたー
「莉奈(りな)-
僕の大事な彼女だった人だー」
愛染の彼女・梨菜は
何者かに憑依されて”目の前で自殺させられた”
「--くくく、この女が可愛いから悪いんだよ!
可愛いから俺のような男に乗っ取られるんだよ!
なぁ…?彼氏さんよぉ?
エッチしようぜ、ここで! あぁ…感じてきた!」
あの時のことは
今でも忘れないー
優しい莉奈が、悪魔のような笑みを浮かべてー
笑いながら最後には自殺したー
愛染は、あの時決意した。
どのような手を使ってでも
この世から憑依を消し去ると。
「僕の彼女は憑依で奪われました
だから、その復讐です。」
愛染は優しく、けれども不気味に微笑んだ
「-憑依薬の撲滅」
「-憑依薬を使うものたちへの復讐」
「-彼女に憑依し、命を奪った男への復讐」
愛染は、この3つを目的に動いている。
”憑依薬の売人”になったのは、
憑依薬という存在に少しでも、近づくためー
「---それにしても…
どうです?軽い気持ちで憑依していたのに
それができなくなった気分は?」
愛染が笑う。
OL姿のガンマは
苦しそうにしながら愛染の方を見た。
「--僕が作った特殊な薬をあなたたちには
投与しました。
もうその身体からは抜け出せない。
今まで”どうせ他人の身体”だ、と
適当に使ってきたんでしょう?
でも、乗っ取られる側の身体はひとつだ。
人生奪われたらそこで終わり。
憑依する側は”いくらでも”別の身体があるから
簡単に、乗っ取った身体をまるでおもちゃや
生ごみのように使っていくー」
”身体から抜け出せない”
それは、アルファたちにとって
今、乗っ取っている身体が
自分そのものー
使い捨てにできない身体であることを意味している。
「--君たちのような”憑依”を使う人間は
一人残らず消さなくてはならないー。
それに、君たちの上層部にも憑依薬に絡む人間がいる。
だから僕は、
君たちを一人残らず、抹殺しますー」
愛染は、そこまで言うと、
近くのモニターに映像を映し出したー
そこにはー
”ブラッディベーカリー”を襲撃する予定だったはずの
戦国暗殺部隊が炎に包まれている映像が
映し出されていたー
リーダーであるオダノブナガが”人間50年~”と
歌いながら舞っている
映像が切り替わるー。
百合の花を咲かせる高校生
猪上卓也を追跡していたはずの
”猛獣”部隊は、黒塗りの高級車に追突して
壊滅状態になっていた。
リーダーの猛獣先輩は、拷問を受けて
喘いでいる。
「ふふ…」
愛染はモニターの映像を消す。
「--お別れです」
愛染はそう言うと、何か合図をした。
そしてー
先ほどの少女の人影が現れると、
その少女が不気味に微笑んだー
「--…!」
アルファは思う。
少女は
さっき愛染が見せた、
死んだ彼女”莉奈”の姿をしているー と。
「僕はいつも、彼女と一緒だ」
愛染が作り出した亡き彼女・莉奈の
ホログラム映像が不気味に微笑む。
そしてー
昆虫収集家・直樹の家が
再び炎に包まれた。
「--ま…待て!」
女子大生の声を振り絞ってアルファが叫ぶ。
「---ふふふふ…
美少女として死ねるんだ…。
君たち、そういうの好きだろう?
可愛い子が拘束されたまま
苦しい声を出して、
そのまま燃え尽きるー」
炎に照らされる愛染は
笑みを浮かべるー。
「--さようなら」
そうボソッと呟くと
愛染はそのまま立ち去って行くー
「く、、くそっ!」
女子大生の身体を必死に動かすアルファ。
しかし、身体自体も非力だし、
どうすることもできないー
女子大生の生足が
だんだん熱を感じてくるー
「--お、、俺…JKとして死ぬのか…
えへへ…」
女子高生に憑依しているベータは、
諦めたのか、表情を歪めている。
しかも、拘束されていることに興奮しているのか
女子高生の身体も興奮して、
少し濡れはじめていたー。
「---……」
OLに憑依したガンマは目を瞑っている。
「--…チッ」
アルファが歯の奥を歯でこすると、
そこから紫色の液体が垂れ流れてきた。
鎖に垂れる液体。
アルファが”暗殺”に用いる猛毒を、
アルファは女子大生の口の中に
隠していたのだったー
鎖が解けて行く。
自由になったショートパンツ姿の女子大生=アルファは
立ち上がると、ベータとガンマの拘束を解除した。
「--早くここから出るぞ!」
女子大生の声で叫ぶ。
諦めかけていたベータとガンマも立ち上がる。
憑依能力は解除できそうにない。
ならば、この少女たちの身体で、逃げるしかないー
巻き上がる炎ー
昆虫の標本や、
”人間標本”が燃えて行くー
昆虫収集家の直樹に人体標本にされた
女性たちは、表情を変えることもなくー
そのまま、燃えて行くー。
アルファたちは、直樹の屋敷の出口を目指す。
「--くそっ!体力ねぇな、この身体」
ベータははぁはぁ、と女子高生の荒い息を
出しながら走る。
「--それは、お互い様ですよ…!」
ガンマが憑依しているOLも、息が上がっていたー。
アルファは走りながら思うー。
”昆虫収集家・直樹”は
どこにいるー?
とー。
そもそも今回のミッションの
ターゲットは昆虫収集家の直樹だったはず。
上層部からの事前の情報によれば
直樹は家に潜伏していたはずだが、
ここに直樹の姿はない。
愛染に始末されたのかー
それとも上層部が何か”嘘”をついたのかー
さっき、愛染が見せてきた映像を見る限り…
オダノブナガも猛獣先輩も既に
殺されているだろう…。
ブラッディベーカリーというパン屋や
猪上卓也の仕業である可能性もあるが、
どちらにせよ、愛染の手がかかっている可能性が高い。
「---逃がしませんよ」
直樹の館から出ると、
憑依薬を売る男・愛染が、立っていた。
「--あなたたち全員を僕は消し去ります」
愛染が、謎の義手のようなものを
アルファたちの方に向ける。
だがー。
愛染は”暗殺”などに携わる人間ではないー
”表の顔”は孤児院の運営者ー。
「---終わりだ」
戦闘に関しては”プロ”と”素人”。
愛染がアルファたちに勝てるはずがなかった。
ショートパンツの女子大生に憑依しているアルファが
愛染の首筋に毒入りの注射を打ちこむ。
愛染が一瞬驚いた表情を浮かべたものの、
愛染は笑みを浮かべたー。
「--僕は、、消えない…」
それだけ言うと、愛染は倒れて
地面に溶けるようにして無くなってしまったー。
”本体ではない?”
アルファは表情を歪める。
だがー
今は脱出が先だったー。
昆虫収集家・直樹の家から離れて
アルファたちは現場を離脱するのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
乗っ取った女子大生・女子高生・OLの身体のまま
部隊の本部へと命からがら逃げのびた3人。
3人は、ボロボロだった。
「あ~あ、可愛い子の身体もボロボロだぜ」
女子高生に憑依するベータが
自分の太ももを触りながら言う。
「--へへ、何にもしてないのに
こんなに汚されちゃって、へへへ」
ベータはいつものように憑依した
身体を堪能している。
しかしー
他のふたりはそんな気分でもなかった。
もしかしたら、もうこの身体から
抜け出すことはできないかもしれないー。
憑依暗殺部隊がいつも利用している部屋に
戻ってきた三人ー。
三人は、カプセルの中で
眠ったままの自分たちの身体を見つめる。
もしかするとー
もう、この身体には戻れないかもしれない。
♪~
呼び出し音がなる。
上層部の男・通称”エックス”から
呼び出されたー
女子大生、女子高生、OLの姿のまま
三人は上層部の男が待つ部屋へと向かった。
「------」
アルファが可愛らしい声で
真面目に、任務の詳細を伝えると、
エックスは溜息をついた。
「-オダノブナガも、猛獣先輩も
全員やられた」
”憑依暗殺部隊”以外の部隊は
壊滅してしまったのだと言う。
「ーーーその憑依した身体から
抜け出せないというのは、
本当かね?」
上層部の男の問いに、
女子大生の姿をしたアルファは頷いた。
上層部の男の視線は、
アルファが乗っ取っている女子大生の
太ももに向けられている気がする。
「--…では、君たちはもう
他人に憑依することはできない…
と、いうことだな」
上層部の男はそう言うと、
静かにうなずいた。
そして、何か合図をする。
嫌な予感を感じるー
合図と共に、マスクを被った
兵士たちが流れ込んできたー
「こ…これは…どういうことです?」
女子大生の姿のままアルファが言うー。
「---憑依能力を失った君たちは、
もう、ただの女子大生と女子高生とOLだ。
”口封じ”のために消えてもらうよー」
上層部の男が笑みを浮かべた。
”憑依暗殺部隊”をはじめとする特殊部隊は
”機密中の機密”
憑依能力を失ったアルファたちを用済みと判断し、
上層部は憑依暗殺部隊を粛清することにしたのだー
「--悪いね。上からの命令だ」
上層部の男・エックスが言う。
この組織の上層部がどうなっているのかは
憑依暗殺部隊を率いるアルファも知らない。
「--お、おい、ふ、ふざけんなよ!」
女子高生の姿をしたベータが叫ぶ。
OLの姿をしたガンマが戸惑う。
「---それにしても…
憑依ってものは素晴らしいな…。
どうだね?
わたし専属の愛人になるのなら
見逃してやってもいいが?」
上層部の男・エックスが、
アルファが憑依している女子大生の太ももを
見つめながら言う。
「--ーーー」
アルファが何か合図をする。
ベータとガンマはその合図の意味を読み取った。
”撤収”
”お前たちは先に行け”
そういう合図だ。
その合図を見たガンマが自分たちも残ると
言おうとしたが、アルファは再度その合図を出すと
ベータ、ガンマの方を見て頷いた。
”ここは任せて先に行け”と
そういう意味であると、読み取ったベータとガンマのふたり。
アルファは、スカートの中に隠していた
毒液のカプセルを取り出し、
部屋に放り投げる。
部屋に紫色の霧のようなものが充満していく。
発砲する兵士たち。
女子高生の身体を乗っ取ったベータと
OLの身体を乗っ取ったガンマは、
その隙にその部屋から飛び出した。
それを確認したアルファは、
いつもほとんど浮かべることのない笑みを、
その場で浮かべたー
あの二人まで、
自分に付き合う必要はないー。
「---くそっ!逃がすな!」
上層部の男が叫ぶ。
アルファは、毒の霧に乗じて、上層部の男を襲うと、
押し倒されて驚く上層部の男に対して、
自分の太ももを押し付けた。
驚く上層部の男ー
太ももに付着した大量の毒液が、上層部の男を襲うー
直後、多数の銃声が響き渡るー。
アルファは、女子大生の身体が貫かれていくのを感じながら
目を閉じたー。
表ざたに出来ない悪人を葬ってきた自分の人生ー。
悪人を葬るため、憑依能力を使い、女性の身体に憑依して
身勝手に使ってきた自分たちも、当然悪人だー。
多くの人間が自分たちの憑依によって傷ついた。
こんな人生がいつまで続くのだろうー
どこかで、そんな風にも思っていたー。
家族に囲まれた、あの幸せな日々は、
もう二度と戻ってこない。
そう思いながらもー
いつかまたー
やっと、解放されるー
アルファは、幸せだったころの自分ー
憑依暗殺部隊になる前の自分を思い出しながらー
静かに笑みを浮かべたー
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス!
憑依空間初期のころのシリーズで
合間も空いてしまっているので、
どうしようかとも迷ったのですが、
それでもちゃんと区切りはつけないと、
ということで、今回のお話を
書くことにしました~!
新しくサイトを知る人もたくさんいると思いますし、
やっぱり単発モノ(三日ぐらいで完結まで行くもの)の
方が最近はわかりやすくていいのかな~なんて
考えています~☆
(※過去作品の続編やシリーズモノを書かないと言っている
わけではありませんー汗)
長期シリーズモノだと
分からない人にはさっぱりですし、
前に読んでいても間が空いちゃうと
???~ですからネ!
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