<憑依>初日の出は恋のおわりを告げる③~解放~(完)

憑依された彼女たちから出されるクイズー。

先に3問正解すれば、彼女たちは解放されるのだと言う。
果たして、Wデート中のカップルの運命はー?

元日の恋の行方はー?

------------------------------

「せいか~い!」

健吾も雷太も、第2問に正解したー。

問題は、いたって簡単だった。
相手をバカにするかのような問題。

”わたしたちの誕生日はいつ~?”

という問題だった。

だが、この問題は健吾と雷太に
精神的ダメージを与えた。

”なぜ、正解が分かるのか”

真菜と陽奈に憑依した男2人は見たことも
あったこともないような、他人だ。

憑依される直前の真菜と陽奈の反応からも、
2人と知り合いだったとは思えない。

ではー
なぜ、奴らは誕生日を知っているのか。

「ふふふ…って顔してるね~?」
真菜が笑いながら言う。

「わたしのき・お・く」
頭を指でつつきながら真菜は叫ぶ

「ぜ~んぶ、奪われちゃった~!
 あははははははっ!

 生まれてから今までのわたしの人生が
 ぜ~んぶ、一瞬にして俺に奪われてる!

 どうだよ?興奮しないか?
 あははっえへへへへへへへぇ!」

興奮でおかしくなった、というような表情を
しながら真菜が笑う。

陽奈も「ふふふふふふ、何でもわかっちゃうよ~!」と
微笑んだ。

「くそがっ!」
雷太は叫ぶ。

このままではまずい。
奴らがその気になれば、
2人は”真菜””陽奈”として
完全に日常生活に戻ることができることを意味している。

「--さぁ、1問正解、1問不正解ネ」

3問不正解するよりも先に、3問正解すれば
2人を解放するとやつらは言った。

その確証はないが、
奴らの身体が倒れたままということは
解放される可能性も高い。

奴らとて、自分の身体が死んでしまうことは
望まないだろう。

ゆえに、機嫌を損ねず、かつ、相手の条件をクリアすれば
2人は解放される可能性もあるのではないか、と
健吾は考えていた。

それにー
自分の大切な彼女が人質に取られてしまっているこの状況では、
相手の条件を飲むしかない、というのもまた事実でもあった。

「第3問~!
 わたしたちは、今まで何人と付き合ったことがあるでしょうか~?」
真菜が笑う。

「---くっ」
健吾は表情を歪める。

彼女たちの過去の恋愛など、
できればあまり知りたくないと言う男性も多いー。

健吾は、それだった。

一方の雷太は、知っていた。
陽奈から、聞かされていたからだ。

「俺が初めて…。
 答えは0だ!!!」
雷太が叫ぶ。

陽奈はニッと笑う。

一方の健吾は迷っていた。
真菜にあえてそういうことは聞かなかったし、
真菜も言わなかった。

真菜は穏やかで真面目な性格だ。
大学で出会ったから、その前のことは知らないがー
少なくとも大勢の男と関係を持っていたとは思えない。
だが、関係を持っていなかったとしても、
真菜ほど可愛い子なら、彼氏の一人や二人、いたかもしれない。

「ほ~ら、早くぅ~!」
真菜がお尻ぺんぺんをしながら馬鹿にした笑みを浮かべる。

パン!パン!と自分のお尻を叩く音が響き渡る。

「くそっ…!」

0か?1か?2か?
健吾は思うー
大学では他の彼氏がいた感じはしないし、浮気も無い。
だが、高校時代はどうか?
”初めての彼氏だから”という言葉を真菜から聞いたことはない。

と、いうことは居たのかもしれないー。

1か?2か?3か?

「は・や・くぅ~♡」
真菜がお尻を笑いながら叩いている。

「---くそっ……に、、2だ!」
健吾が叫ぶと、
真菜と陽奈は顔を見合わせて笑った。

「ぶっぷ~!」

健吾は唖然とした。

だが、それ以上に雷太は唖然とした。

”わたし、雷太が初めての彼氏なの~☆”

と、陽奈がいつも言っていたからだ。

「--わたしはね~高校1年生のとき
 ちょ~っと荒れてたの!
 彼氏は、高校1年の時に9人、 
 2年の時に3人いたわ。
 そのうちの7人とヤッたの」

真菜が髪の毛を触りながら微笑む。

「な…何だと…!」
健吾がショックを受ける…

「--ふふ、雷太~!ごめんね~!
 わたし、嘘ついてたの!
 本当は、高校2年の時にひとり彼氏がいて~、
 エッチもしたことあるの!ふふふっ!」

陽奈の言葉に雷太は叫ぶ。

「う…嘘だ~~~~!」

と。

健吾も雷太もショックが大きく、
泣きそうな表情をしていた。

真菜と陽奈はその二人を見ながら内心で笑った。

”嘘だば~か!”と。

真菜は高校時代荒れていたなんてことはない。
実際の彼氏は今までにひとり。
エッチの経験はなかった。

陽奈は、本人の言うとおり彼氏0人ー

だが、二人は嘘をついた。

健吾と雷太を絶望に突き落とすためー。

第2問で、誕生日を問題にしたのはそのためだ。
”二人は記憶を読み取れる”ということをあえて教えたー

そして、この第3問ー。
前の問題で”記憶を読み取れる”ことを知ったふたりは
いとも簡単に嘘を、本当だと信じて、
彼女たちの裏の顔にショックを受けている。

「--くくく…」
真菜は、嘘を信じ込んで絶望する彼氏二人を見ながら叫んだ。

「2問目不正解の罰ゲーム!」
そう言うと、真菜と陽奈は、にやりと笑みを浮かべて、
お互いの胸をこすりあわせて甘い声をあげはじめた…。

「んひっ♡ あひぃ♡ 真菜ちゃ~ん♡」
「あひひひひひっ♡ えへへへへ!陽奈ちゃん~♡」

雷太が今にも襲いかかりそうなオオカミのような表情で
2人を見つめている。

健吾はなんとかそれを落ち着かせる。

2人は顔を真っ赤にしながら、
不慣れな様子でお互いの胸をこすり合せたり、
揉みあったりして笑っている。

少しすると、真菜が
「あ~気持ちイイ」と言いながら健吾たちの方を見た。

「第4問~!
 わたしたちの性別は、何でしょうか?」

真菜がニヤニヤしながら言う。

健吾は、その目的を理解しながらも冷静に答える
「--女性だ」
と。

おそらく、やつらは、正解2問、不正解2問にした上で、
難しい問題を出して、最後に絶望に突き落とすつもりなのだろう。

「…上等じゃないか」
健吾は呟く。

必ず最後の問題を正解してみせる。

それでもし、やつらが2人を解放しないなら
その時はー

「・・・・」
一方、雷太は考え込んでいた。

”なぜ、そんな問題を出すんだ?”と。
ふつうに女と答えればいいのか?

いや、待て。
実は陽奈は男の娘なのかもしれない。

とー。

雷太は迷っていた。

ニヤニヤと笑みを浮かべる陽奈の方を見る。

「---わたし、ついてるかもよ?」
陽奈が笑う。

雷太は迷ってしまった。

「--雷太!」
横に居た健吾が叫ぶ。

「-ー陽奈ちゃんを、信じろ」

その言葉で、疑心暗鬼になっていた雷太が
正気を取り戻した。

「そ、、そうだな…女だ!」
そう叫ぶと、二人は笑みを浮かべた。

「じゃあ、確認しなくっちゃね!」
陽奈と真菜がスカートを脱いで、下着を脱ぐー

そこにはー
男のソレはなかったー。

「--えへへへへへ!
 外で露出する痴女になっちゃった~♡」

微笑む真菜。

「-----」
冷静な健吾も歯ぎしりをして怒りを爆発させる寸前だった。

だがー

だが、
あと1問、あと1問さえ正解すれば、
2人は、解放されるー。

流石に寒いのか、スカートをはき直すと、
彼女たちは笑みを浮かべる。

「最後の問題~!」
陽奈が微笑む。

「--わたしたちが身も心も乗っ取られちゃうことになった
 憑依薬~~~!」

真菜が続ける

「これは、誰から買ったのでしょうか~?」

2人が勝ち誇った表情でニヤニヤ笑っている

”正解できるわけがない”

そういう表情だ。

健吾も雷太も表情を歪めた。

「あらあら?分からないのかしら?」
真菜が腕を組みながら挑発的な態度で言う。

「---」
健吾も雷太も答えられない。

「だったらー、2人のうち、どっちか一人でも
 正解できたら、正解扱いにしてあげる~!
 まっ!無理だろうけど!あはははははははは」

真菜が大声で笑いだしたー。

「えへへへへ!この身体はわたしたちの、
 俺たちのものだ!あはははははははははっ!」

陽奈も両手を広げて大声で笑いだした。

2人の彼女の可愛らしい、けれども邪悪な笑い声が
響き渡る。

周囲の初日の出を見に来た人間たちも
少し違和感を感じながらも
”盛り上がっちゃってるんだろうな”と
考えて相手にしなかった。

「--あははははははははは!俺たちの勝ちだ!」
真菜が叫ぶ。

「---だ」

雷太が呟いた。

「は?」
真菜が笑うのをやめて雷太の方を見た。

「---愛染 亮だ!」

雷太が大声で怒鳴ると、
真菜も陽奈も表情を歪める。

「--…テメェ…なぜその名前を!」
真菜が、真菜のふりをするのも忘れて
怒りの形相で叫ぶ。

「---陽奈のやつ、可愛いなぁ、って思って、
 酔ってる時にオークションで検索したことがあるんだ…

 憑依薬って…
 そのときに見た…」

雷太は知らないが、この世に存在する憑依は愛染の憑依薬だけではない。
けれど、雷太は、確信を持ってそう叫んだ。

「--バ…馬鹿な」
真菜と陽奈がその場にへたへたと座り込む。

正解か不正解かは言わなかったが、
2人の反応から、”愛染亮”という答えが正解で
あることを示していたー。

「雷太…!すげぇぜお前!」
健吾が嬉しそうに叫ぶ。

「だろ!」
雷太も笑いながら健吾とグータッチをして微笑んだ。

そして、うなだれる二人の彼女の前に向かう。

「--さぁ、二人を解放しろ」

健吾がそう言うと、
真菜はブツブツと呟いた。

「あぁ、解放してやるよ」
そう言って立ち上がると、陽奈と向き合って、
微笑みあう真菜。

そして…
雷太の運転してきたスポーツカーの方に向かうと、
真菜が無言でそれに乗り込んだ。
陽奈もそれに乗る。

「おい!何をしてる!」
雷太が叫ぶ。

突然の意味不明な行動にあっけに取られながら
雷太が「逃げる気か!二人を解放するって約束だろうが!」と大声で叫んだ。

それを無視してエンジンを噴かせる陽奈。

助手席に乗っていた真菜が動き出した車から顔を出して笑う。

「--あぁ!約束通り、きも~~~い彼氏から”解放”してあげるの!
 わたしたちをネ!あははははははっ!」

真菜が笑いながら健吾と雷太を見つめる。

「テ…テメェら!ふざけんな!」
雷太が車の方に駆け寄って行くー。

「実はさ、俺たちも元に戻る方法、分からねぇんだよ!
 出品者の愛染さんが”念じれば戻れる”って言ってたのに
 念じても戻れなくてさぁ!

 ま、俺たちは可愛い女子大生として生きてくから心配すんな!
 大学はやめるけどな!えへへへへへぇ」

車が走り出す。

健吾と雷太が「待て!」と叫んだ

しかし、その言葉もむなしく、助手席から顔を出した真菜が叫んだ。

「チャ~~~~~オ!」

とー。

そして車はそのまま走り去ってしまった。

「くそっ!真菜!…くそっ!」
健吾がその場に蹲って地面を叩きだす。

「くそぉぉぉぉぉぉぉ!」
雷太も悔しそうに大声で叫んだ。

太陽が、二人のいる場所を照らすー
とても美しい初日の出ー

その初日の出は、
ふたりの恋のおわりを告げているかのようだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

2人は奪われてしまいました…
バットエンドですネ…!

新年最初の作品、
(体越しは去年から続いていたものなので除いて)
お読み下さりありがとうございました☆

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    記憶が読めることを示唆してから嘘の過去を教え込み、絆にひびを入れるのは面白かったですね。
    結局、体を持ち逃げされちゃいましたけど、本当に解放されたとしても、これまで通りには付き合えないでしょうし、憑依者達のほうが上手でしたね。
    頭脳戦?が楽しめました!

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 記憶が読めることを示唆してから嘘の過去を教え込み、絆にひびを入れるのは面白かったですね。
    > 結局、体を持ち逃げされちゃいましたけど、本当に解放されたとしても、これまで通りには付き合えないでしょうし、憑依者達のほうが上手でしたね。
    > 頭脳戦?が楽しめました!

    ありがとうございます!
    あえて解放してみるのも面白かったかもしれませんネ!
    それはまたの機会(別作品)で!