憑依された彼女たちから出されるクイズー。
先に3問正解すれば、彼女たちは解放されるのだと言う。
果たして、Wデート中のカップルの運命はー?
元日の恋の行方はー?
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「せいか~い!」
健吾も雷太も、第2問に正解したー。
問題は、いたって簡単だった。
相手をバカにするかのような問題。
”わたしたちの誕生日はいつ~?”
という問題だった。
だが、この問題は健吾と雷太に
精神的ダメージを与えた。
”なぜ、正解が分かるのか”
真菜と陽奈に憑依した男2人は見たことも
あったこともないような、他人だ。
憑依される直前の真菜と陽奈の反応からも、
2人と知り合いだったとは思えない。
ではー
なぜ、奴らは誕生日を知っているのか。
「ふふふ…って顔してるね~?」
真菜が笑いながら言う。
「わたしのき・お・く」
頭を指でつつきながら真菜は叫ぶ
「ぜ~んぶ、奪われちゃった~!
あははははははっ!
生まれてから今までのわたしの人生が
ぜ~んぶ、一瞬にして俺に奪われてる!
どうだよ?興奮しないか?
あははっえへへへへへへへぇ!」
興奮でおかしくなった、というような表情を
しながら真菜が笑う。
陽奈も「ふふふふふふ、何でもわかっちゃうよ~!」と
微笑んだ。
「くそがっ!」
雷太は叫ぶ。
このままではまずい。
奴らがその気になれば、
2人は”真菜””陽奈”として
完全に日常生活に戻ることができることを意味している。
「--さぁ、1問正解、1問不正解ネ」
3問不正解するよりも先に、3問正解すれば
2人を解放するとやつらは言った。
その確証はないが、
奴らの身体が倒れたままということは
解放される可能性も高い。
奴らとて、自分の身体が死んでしまうことは
望まないだろう。
ゆえに、機嫌を損ねず、かつ、相手の条件をクリアすれば
2人は解放される可能性もあるのではないか、と
健吾は考えていた。
それにー
自分の大切な彼女が人質に取られてしまっているこの状況では、
相手の条件を飲むしかない、というのもまた事実でもあった。
「第3問~!
わたしたちは、今まで何人と付き合ったことがあるでしょうか~?」
真菜が笑う。
「---くっ」
健吾は表情を歪める。
彼女たちの過去の恋愛など、
できればあまり知りたくないと言う男性も多いー。
健吾は、それだった。
一方の雷太は、知っていた。
陽奈から、聞かされていたからだ。
「俺が初めて…。
答えは0だ!!!」
雷太が叫ぶ。
陽奈はニッと笑う。
一方の健吾は迷っていた。
真菜にあえてそういうことは聞かなかったし、
真菜も言わなかった。
真菜は穏やかで真面目な性格だ。
大学で出会ったから、その前のことは知らないがー
少なくとも大勢の男と関係を持っていたとは思えない。
だが、関係を持っていなかったとしても、
真菜ほど可愛い子なら、彼氏の一人や二人、いたかもしれない。
「ほ~ら、早くぅ~!」
真菜がお尻ぺんぺんをしながら馬鹿にした笑みを浮かべる。
パン!パン!と自分のお尻を叩く音が響き渡る。
「くそっ…!」
0か?1か?2か?
健吾は思うー
大学では他の彼氏がいた感じはしないし、浮気も無い。
だが、高校時代はどうか?
”初めての彼氏だから”という言葉を真菜から聞いたことはない。
と、いうことは居たのかもしれないー。
1か?2か?3か?
「は・や・くぅ~♡」
真菜がお尻を笑いながら叩いている。
「---くそっ……に、、2だ!」
健吾が叫ぶと、
真菜と陽奈は顔を見合わせて笑った。
「ぶっぷ~!」
健吾は唖然とした。
だが、それ以上に雷太は唖然とした。
”わたし、雷太が初めての彼氏なの~☆”
と、陽奈がいつも言っていたからだ。
「--わたしはね~高校1年生のとき
ちょ~っと荒れてたの!
彼氏は、高校1年の時に9人、
2年の時に3人いたわ。
そのうちの7人とヤッたの」
真菜が髪の毛を触りながら微笑む。
「な…何だと…!」
健吾がショックを受ける…
「--ふふ、雷太~!ごめんね~!
わたし、嘘ついてたの!
本当は、高校2年の時にひとり彼氏がいて~、
エッチもしたことあるの!ふふふっ!」
陽奈の言葉に雷太は叫ぶ。
「う…嘘だ~~~~!」
と。
健吾も雷太もショックが大きく、
泣きそうな表情をしていた。
真菜と陽奈はその二人を見ながら内心で笑った。
”嘘だば~か!”と。
真菜は高校時代荒れていたなんてことはない。
実際の彼氏は今までにひとり。
エッチの経験はなかった。
陽奈は、本人の言うとおり彼氏0人ー
だが、二人は嘘をついた。
健吾と雷太を絶望に突き落とすためー。
第2問で、誕生日を問題にしたのはそのためだ。
”二人は記憶を読み取れる”ということをあえて教えたー
そして、この第3問ー。
前の問題で”記憶を読み取れる”ことを知ったふたりは
いとも簡単に嘘を、本当だと信じて、
彼女たちの裏の顔にショックを受けている。
「--くくく…」
真菜は、嘘を信じ込んで絶望する彼氏二人を見ながら叫んだ。
「2問目不正解の罰ゲーム!」
そう言うと、真菜と陽奈は、にやりと笑みを浮かべて、
お互いの胸をこすりあわせて甘い声をあげはじめた…。
「んひっ♡ あひぃ♡ 真菜ちゃ~ん♡」
「あひひひひひっ♡ えへへへへ!陽奈ちゃん~♡」
雷太が今にも襲いかかりそうなオオカミのような表情で
2人を見つめている。
健吾はなんとかそれを落ち着かせる。
2人は顔を真っ赤にしながら、
不慣れな様子でお互いの胸をこすり合せたり、
揉みあったりして笑っている。
少しすると、真菜が
「あ~気持ちイイ」と言いながら健吾たちの方を見た。
「第4問~!
わたしたちの性別は、何でしょうか?」
真菜がニヤニヤしながら言う。
健吾は、その目的を理解しながらも冷静に答える
「--女性だ」
と。
おそらく、やつらは、正解2問、不正解2問にした上で、
難しい問題を出して、最後に絶望に突き落とすつもりなのだろう。
「…上等じゃないか」
健吾は呟く。
必ず最後の問題を正解してみせる。
それでもし、やつらが2人を解放しないなら
その時はー
「・・・・」
一方、雷太は考え込んでいた。
”なぜ、そんな問題を出すんだ?”と。
ふつうに女と答えればいいのか?
いや、待て。
実は陽奈は男の娘なのかもしれない。
とー。
雷太は迷っていた。
ニヤニヤと笑みを浮かべる陽奈の方を見る。
「---わたし、ついてるかもよ?」
陽奈が笑う。
雷太は迷ってしまった。
「--雷太!」
横に居た健吾が叫ぶ。
「-ー陽奈ちゃんを、信じろ」
その言葉で、疑心暗鬼になっていた雷太が
正気を取り戻した。
「そ、、そうだな…女だ!」
そう叫ぶと、二人は笑みを浮かべた。
「じゃあ、確認しなくっちゃね!」
陽奈と真菜がスカートを脱いで、下着を脱ぐー
そこにはー
男のソレはなかったー。
「--えへへへへへ!
外で露出する痴女になっちゃった~♡」
微笑む真菜。
「-----」
冷静な健吾も歯ぎしりをして怒りを爆発させる寸前だった。
だがー
だが、
あと1問、あと1問さえ正解すれば、
2人は、解放されるー。
流石に寒いのか、スカートをはき直すと、
彼女たちは笑みを浮かべる。
「最後の問題~!」
陽奈が微笑む。
「--わたしたちが身も心も乗っ取られちゃうことになった
憑依薬~~~!」
真菜が続ける
「これは、誰から買ったのでしょうか~?」
2人が勝ち誇った表情でニヤニヤ笑っている
”正解できるわけがない”
そういう表情だ。
健吾も雷太も表情を歪めた。
「あらあら?分からないのかしら?」
真菜が腕を組みながら挑発的な態度で言う。
「---」
健吾も雷太も答えられない。
「だったらー、2人のうち、どっちか一人でも
正解できたら、正解扱いにしてあげる~!
まっ!無理だろうけど!あはははははははは」
真菜が大声で笑いだしたー。
「えへへへへ!この身体はわたしたちの、
俺たちのものだ!あはははははははははっ!」
陽奈も両手を広げて大声で笑いだした。
2人の彼女の可愛らしい、けれども邪悪な笑い声が
響き渡る。
周囲の初日の出を見に来た人間たちも
少し違和感を感じながらも
”盛り上がっちゃってるんだろうな”と
考えて相手にしなかった。
「--あははははははははは!俺たちの勝ちだ!」
真菜が叫ぶ。
「---だ」
雷太が呟いた。
「は?」
真菜が笑うのをやめて雷太の方を見た。
「---愛染 亮だ!」
雷太が大声で怒鳴ると、
真菜も陽奈も表情を歪める。
「--…テメェ…なぜその名前を!」
真菜が、真菜のふりをするのも忘れて
怒りの形相で叫ぶ。
「---陽奈のやつ、可愛いなぁ、って思って、
酔ってる時にオークションで検索したことがあるんだ…
憑依薬って…
そのときに見た…」
雷太は知らないが、この世に存在する憑依は愛染の憑依薬だけではない。
けれど、雷太は、確信を持ってそう叫んだ。
「--バ…馬鹿な」
真菜と陽奈がその場にへたへたと座り込む。
正解か不正解かは言わなかったが、
2人の反応から、”愛染亮”という答えが正解で
あることを示していたー。
「雷太…!すげぇぜお前!」
健吾が嬉しそうに叫ぶ。
「だろ!」
雷太も笑いながら健吾とグータッチをして微笑んだ。
そして、うなだれる二人の彼女の前に向かう。
「--さぁ、二人を解放しろ」
健吾がそう言うと、
真菜はブツブツと呟いた。
「あぁ、解放してやるよ」
そう言って立ち上がると、陽奈と向き合って、
微笑みあう真菜。
そして…
雷太の運転してきたスポーツカーの方に向かうと、
真菜が無言でそれに乗り込んだ。
陽奈もそれに乗る。
「おい!何をしてる!」
雷太が叫ぶ。
突然の意味不明な行動にあっけに取られながら
雷太が「逃げる気か!二人を解放するって約束だろうが!」と大声で叫んだ。
それを無視してエンジンを噴かせる陽奈。
助手席に乗っていた真菜が動き出した車から顔を出して笑う。
「--あぁ!約束通り、きも~~~い彼氏から”解放”してあげるの!
わたしたちをネ!あははははははっ!」
真菜が笑いながら健吾と雷太を見つめる。
「テ…テメェら!ふざけんな!」
雷太が車の方に駆け寄って行くー。
「実はさ、俺たちも元に戻る方法、分からねぇんだよ!
出品者の愛染さんが”念じれば戻れる”って言ってたのに
念じても戻れなくてさぁ!
ま、俺たちは可愛い女子大生として生きてくから心配すんな!
大学はやめるけどな!えへへへへへぇ」
車が走り出す。
健吾と雷太が「待て!」と叫んだ
しかし、その言葉もむなしく、助手席から顔を出した真菜が叫んだ。
「チャ~~~~~オ!」
とー。
そして車はそのまま走り去ってしまった。
「くそっ!真菜!…くそっ!」
健吾がその場に蹲って地面を叩きだす。
「くそぉぉぉぉぉぉぉ!」
雷太も悔しそうに大声で叫んだ。
太陽が、二人のいる場所を照らすー
とても美しい初日の出ー
その初日の出は、
ふたりの恋のおわりを告げているかのようだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
2人は奪われてしまいました…
バットエンドですネ…!
新年最初の作品、
(体越しは去年から続いていたものなので除いて)
お読み下さりありがとうございました☆
コメント
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記憶が読めることを示唆してから嘘の過去を教え込み、絆にひびを入れるのは面白かったですね。
結局、体を持ち逃げされちゃいましたけど、本当に解放されたとしても、これまで通りには付き合えないでしょうし、憑依者達のほうが上手でしたね。
頭脳戦?が楽しめました!
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> 記憶が読めることを示唆してから嘘の過去を教え込み、絆にひびを入れるのは面白かったですね。
> 結局、体を持ち逃げされちゃいましたけど、本当に解放されたとしても、これまで通りには付き合えないでしょうし、憑依者達のほうが上手でしたね。
> 頭脳戦?が楽しめました!
ありがとうございます!
あえて解放してみるのも面白かったかもしれませんネ!
それはまたの機会(別作品)で!