<憑依>僕の憑依魔法~復讐編~後編

裏切られ、悪霊と化したファビオ。

彼に、生前のような迷いはないー。
あるのは、二人の姉と父親に対する復讐を
完遂させるという”執念”だけだったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あっ!」
メイドに憑依しているファビオは、
そんな声を上げたー。

「ーーー…?」
父・サンドロは困惑した様子で、
メイドのほうを見つめるー。

父・サンドロしか知らない
”秘密の隠れ家”に逃亡した
長女のリーディア。

しかし、父・サンドロは
その場所を絶対に答えようとはせずに、
メイドに憑依しているファビオは困り果てていたー。

サンドロも、”答えれば”リーディアが殺されることは
理解していたからだー。

既に、次女のクララは悪霊と化したファビオに憑依されて死んだー。
そして、息子のファビオ自身も、
サンドロが自ら葬り去ってしまったために、
こうして霊体として存在していても、
死んでいることには違いはないー。

残る”子”は、長女のリーディアのみ。
リーディアが死ねば、サンドロにとって
”三人の子供たち”は、全員が命を落としてしまったことになるー。

それだけはどうしても避けたかったー。

そして、サンドロがリーディアの居場所を言わない以上、
ファビオにも”どうすることもできない”状態であるのもまた事実ー。

サンドロに憑依して、サンドロの命を奪うことは簡単だー。
けれどー、そうしたら”リーディアの居場所を知る人間”がいなくなってしまうー。

「ーーーふふー…ふふふふふふ」

メイドに憑依しているファビオは笑うー。

”その状況”を打開するための方法を
たった今、思いついてしまったー。
この方法を使えば、”リーディア姉さん”の居場所を知ることができるー。

「ー何がおかしいー?ファビオー
 馬鹿な真似はやめるんだ」
父・サンドロは険しい表情を浮かべながら、
メイドに憑依している状態のサンドロに対して
”思い留まるように”そう言葉を口にする。

しかし、メイドに憑依しているファビオは
今しばらく笑うと、ようやく言葉を口にした。

「ー教えてくれないなら”お前”に憑依して
 記憶を確認するまでだー」
とー。

「ー!?!?!?」
サンドロは表情を歪めるー。

既に、ファビオの”憑依”は、憑依した相手の記憶も
正確に読むことができるようになっているー。

父・サンドロに憑依すれば
姉・リーディアが潜伏している場所を
突き止めることなど、とてもたやすいことなのだー。

「ーー待て!やめろ」
サンドロはそう言葉を口にするも、
ニヤリと笑ったメイドがそのまま意識を失うー。

サンドロは青ざめるー。
自分が憑依されて”記憶”を確認されてしまったら、
娘のリーディアが隠れている場所も突き止められてしまうー。

そしてー、今のファビオにはもう”言葉”は通じないー。
話し合いで解決することは出来ず、
いずれ、サンドロは最後には自分も殺されることを悟ったー。

リーディアの居場所を教えようと、
このまま口を閉ざしていようと、
ファビオはリーディアもサンドロも殺すー。

そのはずだと、サンドロは悟ったー。

で、あればー。

サンドロは咄嗟に近くにあった護身用の短剣を手にして、
自分の喉元を切り裂き、命を絶とうとするー。

”今、ここで俺が死ねばー
 死ぬのは俺だけで済むー
 リーディアだけは助かる”

サンドロは心の中でそう言葉を口にするー。

そう、ファビオに憑依される前に、サンドロが命を絶ってしまえば、
もうリーディアの隠れ場所を知る人間はいないー。

リーディアが自分から姿を現してしまうかどうかは、
また別問題ではあったものの、
とにかく、サンドロがここで自ら命を絶てば、
ファビオに記憶を読み取られてリーディアの居場所を
知られてしまうことはないー。

「ーファビオー。
 お前の暴走を招いたのは、父である俺にも責任があるー」
短剣を手にしながら、そう叫ぶと、
「ー俺の死をもって、お前の怒りを鎮めようー」と、
そう言葉を口にしてから、躊躇なく自ら命を絶とうするサンドロ。

がーーー

「ーーーぁ…」
自分に短剣を突き刺す直前ー、サンドロは身体の自由が
利かなくなってしまったことを察するー。

”間に合わなかったー”
そう自覚すると同時に、サンドロの意識は
そこで途切れてしまったー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!!!」

サンドロは、意識を取り戻したー。

慌てて周囲を見渡すと、
そこは”自分の部屋”だったー。

「ーーー…!」
サンドロはすぐに時計を確認するー。

時間は、1時間ほどしか経過していないー。

「ーーぐ…は、早くリーディアに危険を知らせねばー」
サンドロはそう言葉を口にすると、
慌てて屋敷の外へと向かおうとするー。

がーー

「ーーー!!」
サンドロの部屋には、先ほどまでファビオに憑依されていた
メイドの死体が転がっていたー。

そしてー…

「ーーー!!!なっ…」
サンドロは自分の手を見て驚くー。
自分の手に”血”が付着していたー。

床には血のついたナイフ。

先程まで憑依されていたメイドの身体には
刺されたような傷も確認することができた。

サンドロは慌てた様子で部屋の扉を開けようとすると、
部屋の扉は外から固定されていたー。

「ーーぐっ…ぐぐぐーいったい、どうしてー」
サンドロは表情を歪めながら、
これもファビオの仕業に違いないー。

と、そんな風に思いながら
”なんとか脱出しないと”と、部屋から出る方法を探し始めるー。

しかし、時間ばかりが経過していくー。
ファビオは恐らく、既に”サンドロの記憶”から、
長女・リーディアが身を潜めている場所を突き止め、
その場所へと向かっているー。

早くリーディアに危険を知らせなくてはー。
そんな風に思いつつー、
サンドロは部屋から脱出する方法を探るー。

がー、それでも部屋の扉はビクともしない。

そうこうしているうちに、
部屋の外から”声”が聞こえたー

”お父様ー”
リーディアの声だー。

「ーり…リーディア…?」
父・サンドロは心底不安そうな声を出すー。

どうして、リーディアが戻って来たのかー。

いやー、その答えは分かっている。
でも、認めたくなかったー。

「ーーリーディア……ここは危険だー。
 ファビオがお前に憑依して、
 お前の命を奪おうとしているー」
サンドロが振り絞るようにして、
そう言葉を口にするー。

「ーだから、今すぐ逃げるんだー。
 どこか遠くにー誰にも知られないような場所に」
サンドロはなおも言葉を吐き出す。

リーディアの返事は聞きたくなかったー。
リーディアに喋らせたくなかったー。

だってー…

”ーーふふふふ お父様ー
 もう”手遅れ”よー?”

リーディアのそんな声が聞こえたー。

聞きたくなかったー。
そんな言葉ー。

そう、既にリーディアはファビオに憑依されて、
隠れ場所からこちらに戻って来たのだー。

”憑依された娘”を見せ付けるためにー。

「ーーだ、誰か!!誰か!!!」
サンドロは慌てて屋敷にいる使用人たちを呼び寄せようとするー。
先程も、この部屋の中から大声をあげたものの
誰も駆け付けては来なかったー。

もしかしたら”使用人”たちもー?

そんなことが頭をよぎる中、
リーディアに憑依しているファビオは、
父・サンドロの考えを見透かしたかのように
言葉を口にしたー

”お父様ーこの屋敷の人たちには
 一度、外に脱出してもらいましたー。
 メイドの死体が見つかった件で上手く理由をつけてー ふふ”

リーディアの口調を真似ながら
クスクスと笑うファビオー。

どうやら、屋敷の人間は
さっき、ファビオがサンドロに会いに来る際に使われてしまった
哀れなメイド以外は”無事”のようだー。

がー、他の使用人が無事だったとは言っても
娘のリーディアに危機が訪れているのは事実だー。

外側から”何か”で封鎖された扉の向こうにいるリーディアに向かって
父・サンドロは必死に叫ぶー。

「頼む!リーディアを解放してくれ!!
 ファビオ!!俺が悪かったー。
 リーディアにもしっかりと言い聞かせるー。だからー」

サンドロがそう言うと、
”ーー黙れ”と、憑依されたリーディアの冷たい声が
部屋の外から聞こえて来たー

”姉さんたちは僕に散々酷い仕打ちをしてきたんだー
 それにー、本当に心を入れ替えようとしていた僕を
 殺したのは、父さん、お前だー。
 僕は死んで思い知ったよー。
 人間なんて信じるに値しないー。
 利用して、利用して、利用して、利用するべきものなんだと”

その言葉に、サンドロは震えるー。

「ーー…ファビオー。
 お前を生き返らせる手がないわけではないー。
 もう一度、やり直そうー。
 俺も、リーディアも心を入れ替えるー。
 今なら、まだ間に合うー」

サンドロはそう言葉を口にしながら
”ファビオを説得して、いったん何とかファビオを落ち着かせて
 西方の森にいる”徐霊術師”の元を尋ねるしかないー”と、
心の中で考えるー。

西方の森に”霊”に関する魔術を使う一族がいたはずだー。
確か、除霊の類も扱うと聞いているー。

ここは何とかファビオのご機嫌を取って、
それで、時間を稼ぎつつファビオを除霊する方法を
見つけ出すー。

それしかないー。

そう思いつつ、サンドロが表情を歪めると、
”お、お父様ーこ、これはー!?”と、
部屋の外からそんなリーディアの声が聞こえたー。

「ーリーディア!?正気に戻ったのか!?」
一瞬、ファビオがリーディアを解放してくれたのかと、
そう思ったー。

しかしー…

”ーへへへへー姉さんーそして父さんー
 今から、リーディア姉さんの処刑を開始するよ”

と、リーディアは部屋の外でどうやらナイフを手にしながら
そう言葉を口にしている様子だったー。

ファビオはどうやら、”リーディア”本人の意識も戻した上で
けれども身体は操り、リーディアを”処刑”しようとしているようだー。

”ーーわ、わたしの口が、勝手にーー”
リーディア本人らしき言葉が聞こえるー。

”へへへー僕の魔術、すごいだろ?もう誰にも僕を馬鹿にさせない”
リーディアの声が続けて聞こえて来るー。

”さぁ、処刑だー”
とー。

「ーーや、やめろファビオ!」
”ーや、やめて!!た、助けてー!”

サンドロの叫び声と同時に、部屋の外から
リーディアの本人らしき悲鳴が聞こえて来るー。

”あ、ぁああああああああっ!いやああああああああああっ!”
何をされているのかは、サンドロが閉じ込められている
部屋からは見えないー。

しかし、リーディアのこの世とは思えない悲鳴が
聞こえてくると同時に、
リーディアの呻くような声が聞こえて来て、
やがて、何も聞えなくなったー。

「ファ…ファビオ!!!お前まさか…!!
 なんてことを…!なんてことを…!」
長女のリーディアまで”憑依”されて殺されてしまったー。
そう認めざるを得ない状況を前に、
父・サンドロは悲痛な叫び声を上げるー。

「ー許さん!絶対に許さんぞ!ファビオ!
 お前のしたことはー…
 お前のしたことは、絶対にー……!!!」

サンドロが怒りの形相で叫ぶー。
息子を憎むようなことはしたくなかったー。

けれど、こうなってしまってはもう、
憎むしかなかった。
たとえ、自分自身の今までの対応が
悪かったのだとしても、
もうー…憎むしかなかった。

しかし、そんなサンドロの怒りを余所に、
”ー次はお前だ”と、ファビオの声が聞こえて来たー。

父・サンドロは怒りの形相を浮かべながら
自分の”最期”を悟るー。

それと同時に、「憑依されるぐらいならー」と、
自ら、先ほど使おうとした護身用の短剣を手にして、
”ファビオに俺の身体は使わせまい”と、
自分の身体を突き刺して、ファビオに憑依される前に、
自ら命を絶ったのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーお父様ーーー」

数時間後ー。

屋敷の中には泣き崩れる長女・リーディアの姿があったー。
使用人たちは、死んだサンドロの前で泣き崩れる
リーディアのほうを見つめながら、
それを不憫に思うー。

がー、サンドロの前で泣いていたリーディアは笑みを浮かべていたー。

「ーリーディア姉さんの身体も、立場も、僕が貰うことにしたよー」
そう小さく囁くリーディア。

あの時、”リーディアの身体”で、
”死んだかのような悲鳴”を上げて、
父・サンドロに”娘が死んでしまった”と、そう思わせたー。

父・サンドロに絶望を与えた上で、
その命を奪うためだー。

が、実際にはー…
リーディアの身体には傷ひとつ、つけてはいなかったー。

何故ならーー

「ー僕が、リーディア姉さんとして、
 この家の当主として、
 この家を支配していくことにしたよー」

姉・リーディアの身体を奪ったファビオは
そう言葉を口にすると、一人、邪悪な笑みを浮かべるのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

後日談の完結デス~!!★

復讐も成し遂げて、
身体も手に入れたファビオ…★
これからは平穏な生活が待っているかも…
しれないですネ~!!

お読み下さりありがとうございました~~!

「僕の憑依魔法」目次

作品一覧

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憑依<僕の憑依魔法>

コメント

  1. む~やん より:

    家督と共に性格とか憎しみで存在全てを嫌っていた長女の成りつつも
    肉体のみだったら気にいってるから最後まで利用するつもり説推し
    姉妹の中でも一番胸を愉しみまくってたし

    • 無名 より:

      む~やん様~!★感想ありがとうございます~!!★

      遠い昔にむ~やん様が予想していた展開(身体を奪いそう)が
      正解でしたネ~!

      このあとも…大変なことになりそうデス~!!

  2. 匿名 より:

    サンドロは本当に救いようがありませんね。この後に及んでまだ嘘で誤魔化して2度も息子を騙し討ちしようと考えるとは。クズ姉もきっちり報いを受けましたし、復讐が完遂されてよかったです☆ サンドロが逆にフォビアに騙されて死んだ最後はとてもスッキリしました☆

    しかし、両親や姉達のせいで大いに人格が歪んでしまったファビオが今後、何をするか分からないので恐ろしいですね。永遠に他人の身体を乗っ取ったりして生き続けていきそうですし。リーディアの身体で産んだ自分の娘を乗っ取る展開などもあり得そうですよね。歳取ってから、解放して、リーディアを絶望させるのも面白そうです。

    なんだかまた続編やれそうなのでいつかそんな感じの続きが見たいですね☆

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~~!★

      みんな、自業自得な最期を遂げてしまいましたネ~…!

      続きの内容も既に頭の中にはあったりしますケド、
      まだ書くかどうかは…考え中デス~★笑