<憑依>僕の憑依魔法②~成長~

優秀な魔法使いの一族に生まれた彼は、
2人の姉とは違い、平凡な能力しか持ち合わせていなかったために、
2人の姉から疎まれていた。

そんなある日、彼は”憑依魔法”を手に入れてしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーお姉さまー…大丈夫ですか?」
次女のクララが不安そうに呟くー。

「ーー大丈夫なわけないでしょ!」
長女のリーディアが声を荒げるー。

時間にすれば、1分、2分ぐらいの短い時間だったー。
だが、確かに”アイツ”が中に入って来る感覚があってー、
逆らえない何かに支配されるような感触の直後、
リーディアは意識が飛んだー。

実際に何をしていたか、その間の記憶はないものの、
クララによれば”胸を揉んだりしていて、ファビオに支配されていた”
とのことだったー。

「ーーーーーアイツをどうにかしないとー…」
リーディアは爪をガリガリかじりながら表情を歪めているー。

”ーー”この魔法があれば、リーディア姉さんの命は僕の手中だ”ってー…
 そう言ってましたー”

クララから、リーディアに憑依したファビオがそう言っていたと
聞かされたリーディアは、恐怖に震えていたー。

「ーーどんな手を使ってでも、アイツを排除してやるわ…
 絶対に許さないー」
リーディアは青ざめながらそう呟くと、
その場から立ち去っていくー

「ーーふふ…」
一人残されたクララは笑うー

「ーお姉さまってば、昔から自分が追いつめられると、
 火事場のクソ力みたいなのを発揮するのよねー…」

クララはー
”嘘”をリーディアに伝えたー。

ファビオに憑依されたのは本当だし、
リーディアに憑依したファビオが胸を揉んでいたのも本当ー。

しかし、”リーディア姉さんの命は僕の手中”などと、
憑依した状態でリーディアの命を奪うことをほのめかすような言葉は、
ファビオは言っていないー。

クララは”話を盛った”のだー。

憑依された、という事実と、胸を揉まれたという事実でも
”お姉さま”は、ファビオに対して怒り、ファビオを排除しようとするだろうー。
けれど、”命まで狙われている”と話を盛ったことで、
”お姉さま”は手段を択ばず、全力でファビオを抹殺しようとするはずー。

「ーーーー…頑張ってねー お姉さまー ”わたしのため”にー」

ファビオのことは”おもちゃ”として、これまで楽しんで来たクララ。
しかし”憑依魔法”などという危険なものを手に入れた以上、
自分が狙われる可能性もあるし、消すしかないー。

けれど、クララは自分で自分の手を汚すつもりはないし、
ファビオと正面から敵対すれば、憑依されるリスクが高まるー。

リーディアがファビオを始末してくれれば最良、
失敗しても、ファビオの敵意をリーディアに向けることができればー…
クララは”安全”なのだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夜ー。

「ーーファビオ、ちょっといい?」
次女のクララは、何食わぬ顔でファビオの部屋にやってくるー。

「ーあぁ…クララ姉さんー」
ファビオが応じると、クララは「さっきの魔法、すごかったねー」と、
ファビオを褒めながら微笑むー

「ーふふ、それほどでもないよー。
 まだ、あんな短い時間しか憑依できなかったし」
ファビオのそんな言葉に、
クララは「ーでも、頑張って、特技を身に着けたのはえらいよ!」
と、”優しいお姉ちゃん”をいつものように演じるー。

「ーお姉さまは何でも使えるけど、
 わたしは回復系の魔法が中心だし、
 お父様は元気なころは、雷の魔法が中心だったしー、
 ひとつ、”特技”があるのはすごいことだよ!」

クララのそんな言葉に、
ファビオは「ありがとう姉さんー」と、言葉を口にするー。

「ーーーわたしは応援してるから!
 これからも一緒に頑張ろうね!」

クララが笑顔でそう言うと、
ファビオは「ーうん。ありがとうー」と、改めて
そう言葉を口にすると、立ち去って行こうとするクララに向かって声をかけたー。

「ーーー応援してるなら、僕の実験台になってよー」
とー。

「ーー!?」
クララの顔に、途端に恐怖の色が浮かぶー。

がー、既にファビオの身体は抜け殻で、棒立ちしている状態ー

「ーひっ…ま、待ってファビオ!」
そう叫ぶも、クララはその場で憑依されてしまうー。

「ーーふふ…全部リーディア姉さんのせいにして
 自分は助かろうとしてるんだよね?」
憑依されたクララは、ファビオの言葉を口にすると、
「ーそうはさせないよークララ姉さん」と、
そう呟きながら、自分の胸を揉み始めるー

「んふふっ…クララ姉さんの身体もいいなぁ…」
クララは、普段浮かべないような笑みを浮かべながら
嬉しそうに自分の胸を揉むー。

やがてー

「そうだー…クララ姉さんの身体なら、僕も回復魔法を使えるのかなー?」

”やり方”は知っているー。
ただ、ファビオの身体の魔力や、回復魔法との相性がないため、
ファビオは回復魔法を使えないー。

しかしー
”クララ”の身体ならー

「ーーーうぁっ…回復魔法が僕でも使えるー」
憑依されたクララは心底嬉しそうに歓喜の声を上げるー。

やがて、スカートの上から、アソコのあたりに触れつつ
回復魔法を放つと、
今までにない快感を感じながら
「あっ… いぃ…♡」と、回復魔法を”下”から挿入するような感じに
使うことに、圧倒的な快感を覚えるー。

「ーーー!!!」
がー、やはり、姉・リーディオの時と同じように
すぐにクララの身体から抜けてしまいー、
ファビオは自分の身体へと戻ったー

「ーーー!」
ファビオが抜けて、その場に座り込むように意識を失ったクララが
正気を取り戻すー

「ーーー…!」
今まで感じたことのない”回復魔法の快感”のようなものを覚えながら
クララは「ーー…わ…わたしに憑依したの?」と、震えるー。

「ーーーそうだよ。
 クララ姉さんだって、僕のこと馬鹿にし続けていたのは
 僕、知ってるんだー」

ファビオがそう言うと、
クララは震えながらーー

その場で土下座をしてみせたー

「ーファビオー…ごめんなさいー」
とー。

心底悲しそうに謝罪の言葉を口にするクララ。

「確かに、お姉ちゃん、ファビオのことを下に見てたかもしれないー。
 でもー…ファビオがそうやって、自分の得意な魔法を見つけたのは
 本当にうれしいのー。

 もう、ファビオが嫌がるようなことはしないって約束するからー」

クララのそんな言葉に、
ファビオは「ーー本当に反省してるの?」と、そう言葉を口にすると、
クララは「ほ、本当だよー。わたしたち姉弟でしょ?」と、
戸惑いながら言葉を口にするー

しばらく考えるような仕草をしていたファビオは
「そっかー。僕だって姉さんたちを傷つけたいわけじゃないんだー。
 仲直りできるならー」と、クララに向かって笑みを浮かべるー。

クララは安堵した様子で「ファビオー…よかったー」と、
言葉を口にすると、ファビオと握手を交わしたー。

”今まで通り、味方のフリ”をしていれば
ファビオに憑依されることはないと、甘く見ていたクララは、
自分の考えの甘さを思い知らされて、困惑の表情を浮かべながら
自室へと戻って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「ー今夜がチャンスだわ」
長女のリーディアは、”ファビオを抹殺”しようと目論んでいたー。

物理的にー、本当の死を与えようと、
自らのお抱えの騎士・バギーを呼び寄せていたー。

今日はちょうど、現在も病気療養中の父・サンドロが
治療のため、魔道治療院を訪れているー。

サンドロは、今も”クララ”が密かに、回復魔法の過剰摂取状態を
維持させていて、死ぬことも、元気になることもない状況が続いているー。

”父の権力と財”だけを利用し、”口出しはさせない”というクララの悪意によるものだー。

しかし、”リーディア”はそれは知らず、単に父・サンドロは
普通に病気だと思っている状態ー。

そんなリーディアは、父が不在で、いつもより王宮の警備も少な目な今日、
この日に、弟のファビオを”抹殺”しようと目論んでいたー。

「ーー手段は問わないわー。
 確実に息の根を止めるのよ」
リーディアがそう言い放つと、騎士・バギーは「承知いたしました」と、
静かに頷くー。

「ーーー…わたしに憑依したこと、絶対に許さないわー」
プライドの高いリーディアにとっては、ほんの数分の憑依でも、
絶対に許せないほどの屈辱だったー。

それも、自身が”無能”だと見下している弟のファビオにー。
絶対に許さないー。
万死に値するー。

「ーーあんたとも、今日でお別れよー」
リーディアは、弟・ファビオのことを思い浮かべながら
静かにそう囁いたー。

・・・・・・・・・・・・・・

それから、1時間ちょっとが経過したー。

扉をノックする音が聞こえるー。

リーディアが「入りなさい」と、そう言葉を口にすると、
騎士のバギーが中に入って来たー。

「ーーご苦労様ー。
 あの”無能”は、ちゃんと始末できた?」
リーディアが笑みを浮かべながら言うと、
バギーも笑みを浮かべたー

「リーディア姉さんー」
とー

「ー!?」
リーディアが表情を歪めるー。

バギーは、リーディアのことを”姉さん”などとは呼ばないー。

「ーー弟の命を狙うなんて、酷いじゃないかー。」
バギーはそう呟くと、
リーディアは「ま…まさかあんたー……ファビオ!?」と、声を上げるー。

「そうだよー。
 そうそう、僕、修行を続けたら1時間ぐらい、憑依したままで
 いられるようになったんだー。

 ほら、この人も憑依してから20分ぐらい経ってるけどこの通りー

 すごいでしょ?」

バギーが嬉しそうにそう言うと、
リーディアは怯えた表情をバギーの方に向けたー。

「ーーこれは、正当防衛だよー。
 リーディア姉さん」

そう言うとバギーは持っていた剣を手に、
”自分”を突き刺したー。

「ーーー…ーーーリーディア姉さんーー……
 僕の憑依魔法は…まだまだ…進化ーするよ」

バギーは苦しそうにそう呟きながら
その場に倒れ込むと、ガクガク震えるリーディアの前で、
バギーの身体から黒い煙が噴き出したー。

黒い煙は、そのままリーディアの部屋から立ち去っていくー。

ファビオの暗殺に失敗したリーディアは
”と、とにかく…アイツを早く始末しなくちゃ…”と、
怯えた表情を浮かべながら、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

「ーーークララー」
リーディアが次女のクララのところにやってくるー。

クララは、ここ最近、ファビオの元を訪れては
魔法の修行をサポートしているようだー。

「お姉さまー」
クララがリーディアのほうを見つめながらそう言葉を口にするとー、
「ーなんで最近、あの”無能”のところに出入りしているの?」と、
不満そうにリーディアが言葉を口にしたー。

「ーー…それはー」
クララがそう言葉を口にすると、
「ーあんた、あの無能に土下座して謝罪したようねー…」と、
呆れ顔で言葉を口するー。

「ーーあんな奴にへこへこするなんてー…見損なったわー」
ふん、と、そのまま立ち去ろうとするリーディア。

「ーーふふ…お姉さまってばーー…まさか、”本気”にしてるんですか?」
立ち去ろうとするリーディアに対し、クララは笑うー。

「ー今は敵対するのは得策じゃないー。
 そう思っただけですよー?

 ファビオを”サポートする魔法”をかけて、
 ジワジワとファビオの魔力を弱めてますからー…
 憑依魔法が使えなくなるのは時間の問題ですー」

クララは笑みを浮かべるー。

クララがファビオに謝罪して、ファビオに心から親切にしている風に
見せているのは、
ファビオの修行を”サポート”しているフリをしつつ、
魔力を回復させる魔法の中に、わずかに”毒”を混ぜ、
その力を少しずつ吸い取っているのだー。

ファビオが、”憑依魔法”が使えなくなるまでには
まだ時間がかかるが、
クララらしく、ジワジワと、ファビオを弱体化させようとしているのだー。

憑依魔法はみるみると上達しているー。
だが、魔力が枯渇すれば、それはもう使えないー。

「ーーーーー」
リーディアは疑いの目をクララに向けるー

「ーわたしの前で、適当な説明をしてるだけじゃないでしょうね?」
とー。

「ーーそんなことありませんよー
 あの子には、とりあえず謝っておいただけですからー
 ふふー」
にっこりと微笑むクララー。

がーー
その時だったー

「ーーやっぱ、そうだったんだー」
リーディアが突然、態度を豹変させたー

「ーーえ……」
クララの表情から笑みが消えるー。

「ーーやっぱり、そういうことだったんだー
 クララ姉さんー
 失望したよー」

リーディアの言葉に、クララは「ーーお…お姉さま…?」と、戸惑いの表情を
浮かべると、リーディアは言い放ったー

「ー僕、”憑依した身体の記憶”も読めるようになったんだー。
 リーディア姉さんのフリ、完璧だっただろう?」

リーディアが笑うー。

今朝、憑依されたリーディアは、
”クララの本音”を聞き出そうと、リーディア本人のフリをして、
クララのところにやってきていたのだー。

「ーそ…そんなー」
呆然とするクララー。

「ーーーリーディア姉さんも、クララ姉さんも、
 僕、許さないから」

リーディアはそう言うと、
「クララ姉さんも、敵だ」と、鋭い口調で言葉を投げかけたー。

立ち去っていくリーディア。

その場に残されたクララは、
怯えた表情を浮かべながら、
しばらくの間、その場に立ち尽くしたー…

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

どんどん成長していく憑依魔法…!
このままだと、お姉ちゃんたちにとっては
大変なことになりそうですネ~!

次回が最終回デス~!☆!

PR
憑依<僕の憑依魔法>

コメント