<憑依>僕の憑依魔法①~習得~

魔法が存在する世界ー。

そんな世界の、魔法使いの一族に生まれた彼は、
”優秀な二人の姉”から馬鹿にされる日々を送っていた。

しかしある日、彼は”憑依魔法”を会得して、
2人の姉に復讐を開始し始めるー…。

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その世界では”魔法”が当たり前のように存在していたー。

そんな世界の”魔法使い”の名門の家に生まれた少年・ファビオは
小さい頃から、二人の姉にいじめられる日々を送って来たー。

長女・リーディアと次女・クララ。
2人とも魔法使いとして非常に高い能力を持ち、
”魔法使いの名門”の家の子として、ふさわしい力を
幼少期から発揮していたー。

しかし、二人の弟であるファビオは違ったー。

魔法を使うことはできてはいたものの、
その魔力や実力はあくまでも”平凡”ー。

”天才”とも称されるリーディアとクララの二人とは違い、
”凡才”でしかなかったー。

それ故に、リーディアとクララの二人に”いじめられる”日々が続くー。

「ーーファビオ。こんな夜遅くまで、魔法の修行ー?」
長女のリーディアが笑みを浮かべながらやって来るー。

いかにもプライドが高そうな、少しきつめの雰囲気を漂わせる美人ー。
彼女は、日常生活に役立つ魔法を中心に、
様々な魔法を会得しており、
さらには、炎系の魔法に長けながら、正反対である水系の魔法まで
扱うことができる、非常に多くの魔法を使いこなす魔法使いだー。

「ーーあ…リーディア姉さん…」
ファビオがそう言うと、
「”無能”はこんな夜中まで修行しないと、
 ロクな魔法も使えないもんね?」と、ケラケラ笑い始めるー。

「ーー…ぼ、僕だってー姉さんたちにいつかー」
ファビオが、そう言い放つと
リーディアは「無理無理ー。あんたに魔法使いは向いてないから」と
冷たく言い放つと、
「ーいい加減さ、諦めなさいよー。この無能」と、
ファビオを睨みつけたー。

リーディアは弟のファビオをとことん毛嫌いしていて、
会うたびにこうして攻撃的な言葉を投げかけて来るー。

一生懸命練習しているファビオの横で、
”同じ魔法”を使って見せるリーディア。

ファビオよりもはるかに強力なその威力に、
ファビオは表情を曇らせるー。

「ーーね?わかったでしょ?
 あんたは才能のない、ただの負け犬ー。
 お父様もあんたになんか、何も期待してないんだから」

リーディアがそう言うと、
「ーーお姉さまー」と、背後から声がしたー。

背後から姿を現したのは次女のクララ。

リーディアと同じく”天才”と称される魔法使いだー。

穏やかそうな雰囲気の美人で、
リーディアとは正反対の優しそうな雰囲気に見えるー。

回復系魔法の専門で、
あらゆる魔法を使いこなすリーディアとは違い、
扱う魔法のジャンルは限られているものの、
不治の病を治すほどの強力な回復魔法を扱うことができ、
”奇跡の聖女”などと呼ばれていたー。
また、回復魔法以外に、相手の行動を制限する魔法を一部使うこともできるー。

そんなクララが、”弟イジメ”を続けるリーディアに苦言を呈すと、
「ーこれ以上いじめちゃ、可哀想ですよ?」と、
そう言葉を口にするー。

リーディアは「それもそうね~」と、笑いながら呟くと、
クララはファビオの方を見つめながら
「ーこんな遅くまで練習して、お疲れ様」と、微笑むー。

「ーーあ、ありがとうー」
ファビオは、そう言葉を口にすると、
クララは「疲れてるでしょ?」と優しく微笑むー。

姉のリーディアの方は少し後ろに下がって
その様子を見つめているー。

「ーーじゃあ、お姉ちゃんが応援してあげるね」
クララはそう言うと、ファビオに”気力回復”の魔法をかけるー。

肉体的なダメージではなく、
”身体の疲れ”などを回復させるための魔法ー。

それをクララは弟のファビオに向かって使用するー。

「ーーー…」
ファビオは身体の底からエネルギーが満ちていくのを感じると、
「ありがとうークララ姉さん」と、そう呟いたー。

再び、猛練習を始めるクララー。

「ーーーどういたしまして」
にっこりと微笑みながら、クララはそのまま立ち去っていくー。

「ーーーーーーー”鬼”すぎるでしょ」
すれ違いざまに姉のリーディアが言葉を口にすると、
クララは「何のことですか?お姉さまー」と、にっこりと笑うー。

「ーーー…あの無能がこれ以上伸びることなんてないー。
 クララー、”わざと”あいつを回復させて、
 練習をさせ続けて楽しんでるんでしょ?」
リーディアがため息をつきながらそう言うと、
クララはクスッと笑うー。

「ーーーだってー……
 才能のない”虫けら”が健気に努力してる姿を見るのってー
 とっても、楽しいじゃないですかーー」

クララが邪悪な笑みを浮かべるー。

「ーーー」
ゾゾッと、悪寒を感じるリーディアー。

自分の妹ながら、性格が悪すぎるー。

クララはファビオの”味方”のフリをしながら、
”意味のない努力”をする姿を見て、
心の底から馬鹿にして、楽しんでいるのだー。

「ーほら、お姉さま、見て下さいー」
クララは、リーディアに向かってそう言うと、
ファビオの方を見つめるー。

「ーー”意味のない修行”を、
 必死に頑張る姿ー…
 美しいでしょう?」

クララのそんな言葉に、
リーディアは少しだけ苦笑いすると、
「ー恐ろしい妹ねー」
と、それだけ言葉を口にしたー。

クララはクスクス笑いながら立ち去っていくー。

「ーーーーー」
そして、ニヤリと笑いながら、
クララはある場所へと向かうー。

「ーーーおぉ…クララかー」

リーディア、クララ、ファビオの父親・サンドロは
現在、病気療養中ー。

原因不明の病に侵され、治療が続いているー。

「ーーーお父様…お加減はいかがですか?」
心配そうに呟くクララ。

「ーーあぁ…あまり変わらないなー…
 すまないなー
 お前たちばかりに迷惑をかけてー」

サンドロがそう言葉を口にすると、クララは笑みを浮かべたー

「大丈夫ですよー。お父様ー」
そう呟くと、クララは今日も”病気”の治療に用いる類の
回復魔法を父・サンドロにかけていくー。

「ーーあぁ…身体が楽になっていくー」
苦しそうにしていたサンドロがそう呟くと、
クララは「ー早く元気になって下さいねー」と、
そう言葉を口にしたー。

がー、父・サンドロの”病気”は
”回復魔法の過剰摂取”によるものー。
つまり、クララが回復魔法をかけるのをやめれば
数日もすれば回復するのだー。

だがー、クララは”分かっていて”父に回復魔法をかけ続けているー。

父を、”再起不能”にしておくためにー。

そんな邪悪な姉二人に囲まれて、日々”いじめられる”ファビオー。

「ーーーー」
ファビオは気づいていたー。
次女のクララは一見親切だが、
”自分を弄んでいる”ことをー。

「ーーー………はぁ…はぁ…」
ファビオはため息をつきながら、「どうして僕はー…」と、
悔しそうに言葉を口にするー。

だがー、それからもファビオはその才能を開花させることはできないまま
月日が流れていくー。

それから数年ー
ファビオは、未だ姉たちから”嫌がらせ”を受ける日々に耐えていたー。

「ーーーこの無能!どきなさい」
長女のリーディアが、廊下ですれ違ったファビオを突き飛ばすー。

リーディアの側近の女たちもクスクスと笑うー。

リーディアはいつも、”周囲に側近の女たち”を従えていて
高圧的な態度を隠そうともせず、屋敷の中を歩いているー。

「ーーー…ぅ…」
ファビオはよろよろと立ち上がると、自分の狭い部屋に戻っていくー。
そして、自室に戻ると一人、”何か”の研究に没頭し始めたー。

ここ数年、ファビオは自室に引きこもりがちになったー。
あれだけ熱心だった練習もほとんどしなくなり、
何かの研究に没頭している様子だったー。

長女のリーディオは”引きこもりのゴミ野郎”と、
ファビオのことを徹底的に見下しー、
次女のクララは”ファビオが可哀想ですよーお姉さま”と、
一見、味方をしてくれるような素振りを見せながら、
ファビオの陰口を自分の近い者たちと叩き合っているようだー。

結局、二人とも性格は違えど、
同じように自分の才能に酔いしれ、弟のファビオを見下していることに違いないー。

「ーーーく…くくくー」

しかしー、この日、いつものように自室に
籠っていたファビオは突然、笑いだしたー

「くく… くくくくー
 ついに…ついにできたー…!」

ファビオはそう呟くと、何かの呪文を唱え始めるー。

そしてーーー
信じられないことに、ファビオの身体から、突然
黒い霧のようなものが飛び出し、ファビオはその場に立ったまま、
微動だにしなくなったー。

ファビオの身体から、ファビオの霊体が抜け出したのだー。

「ーーはは…ははははは…!
 やったー… やった…!ついにー!」

ファビオがここ数年、部屋に引きこもり続けて
研究を続けていた”禁忌の魔法”ー。

魔法の才能が、自分にないのはよく分かった。
確かにリーディアとクララの二人は、自分よりも優秀だー。

しかしー…

「ーくくくくく…”僕の憑依魔法”の完成だ!」

この日ー、ファビオは”他人に憑依する魔法”を、
数年にもわたる研究と隠れた修行により、
ついに会得してしまったのだー。

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翌日ー

魔法の修行を行うための部屋、魔力修行場で
魔法の修行をしていた長女・リーディアと、次女・クララの元に
ファビオが姿を現したー。

数年ぶりのことに、リーディアとクララは少し驚いた様子を見せるー。

「何よー?無能。ここに用なんかないでしょ?」
相変わらず鋭い口調のリーディア。

「ーファビオ、どうかしたの?」
次女のクララはいつものように”表向き”は優しいー。

「ーー姉さんたちに、”僕の”魔法を見せてあげようと思ってー」
ファビオが笑みを浮かべると、
リーディアがいかにも不愉快そうに言葉を発したー

「はぁ?あんたの魔法なんか見たくもないー。
 どうせ、”火の粉”が出せるようになったとか、
 ”お漏らしみたいにチョロチョロ水を出せるように”なったとか、
 そういうゴミみたいな魔法でしょ?」

その言葉に、クララは「まぁまぁお姉さまー。せっかくファビオも
やる気を出したんですしー、見てあげましょう」と、
そう言葉を口にすると、ファビオは笑みを浮かべーーー

”幽体離脱”をしたー

「ーー!?」

抜け殻になって、その場に立ったまま動かなくなる
ファビオの身体ー

ファビオの身体から飛び出した”黒い煙”を見て、
2人は驚くー

「ーな、なにこれ…?自殺の魔法?」
リーディアが、ファビオは自ら死んで幽霊になったのではないかという
訳の分からない解釈をして、そう呟くー。

がー、次の瞬間ー

「うっ…!」
リーディアがビクンと震えると、
隣にいたクララが「お姉さま?」と、表情を曇らせたー

「ーえへへ…えへへへー
 どう?クララ姉さんー」
リーディアは突然そう言い放つと、
自分の胸を両手で乱暴に揉み始めたー

「えへへへ…えへへへ すっごい…すっごいや!」
リーディアが嬉しそうにそう言いながら、夢中になって胸を揉むー

「え……お姉さま?どうしたんですかー…?」
クララが戸惑いながらそう言うと、
リーディアは「これが、僕の”憑依魔法”だよー。姉さんたちの身体をー、
いいや、誰の身体だって”乗っ取る”ことができるー」
と、嬉しそうに言葉を口にしたー

「ーーーーー!」
クララは心底驚いたような表情を浮かべると、
すぐに笑みを浮かべて
「ーす、すごいー。さすがー
 やればできると思ってたよ!」と、優しい言葉をかけるー

”何の心も籠ってない”言葉をー。

がー
次の瞬間ー、
突然、リーディアがうめき声をあげて、
ファビオの身体が動き出したー

「ーー!?!?!?」
正気を取り戻したリーディアが驚くー

「ーーーあれ?」
自分の身体に戻ってしまったファビオも驚くー。

「ーーあぁ…そっかー
 ”まだ”習得したばかりだからねー」
ファビオは一人、そう呟くと、
リーディアとクララの二人を見て、笑みを浮かべたー

「姉さんー
 今のが僕の”憑依魔法”だよー
 今はまだ、短時間しか憑依できないみたいだけど
 これからどんどんどんどん成長していくんだー

 ふふー」

憑依魔法を会得したファビオは嬉しそうに笑うー。

「ーーえ…なに…?今…わたし…?」
憑依されていたリーディアは困惑するー

「ーーお、お姉さま…」
クララが心配そうに呟くー。

「ーー僕の憑依魔法は、これからどんどん進化していくからー
 楽しみにしていてねー
 リーディア姉さんー、そして、クララ姉さんー」

自分を散々馬鹿にしてきた二人を見返してやるー
その一心で、数年間の研究を続けて来た憑依魔法をついに会得した
ファビオは、ニヤリと笑みを浮かべながら、そう言い放ったー…

②へ続く

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コメント

魔法使いの姉弟のお話デス~!

まだまだ出来立ての憑依魔法…!
弟の魔法がどんどん進化していく中、
2人の姉は……

次回以降もぜひ楽しんでくださいネ~!

今日もお読み下さり、ありがとうございました~~!!

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憑依<僕の憑依魔法>

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