ある日、突然彼女が”憑依”されてしまったー。
しかも、彼女に憑依した男が語った理由は
あまりにも”身勝手”なものだったー…。
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間近に迫った学年末テストのために、
二人で勉強をしていた高校生カップルの
糸村 健太(いとむら けんた)と、吉岡 奈津美(よしおか なつみ)の二人はー、
お互いに苦手な”数学”の問題を前に苦戦していたー。
「これってー…こうでいいのかなー?」
奈津美が、問題を解いて、答えが書かれている問題集を見せて来るー。
「ーえっ…え~~~~~…ど、どうなんだろうー?」
健太は苦笑いしながら首を傾げるとー、
奈津美も思わず笑いながら、
「わたしたちって、数学、本当に苦手だよねー」と、そんな言葉を口にするー。
「ーーーーはは…せめて僕が数学得意だったらよかったんだけどー」
健太は少し申し訳なさそうにそんな言葉を口にするー。
すると奈津美は、首を横に振りながら
「ううんー。気にしないでー。わたしも苦手だから、
苦手な気持ち、よく分かるしー」と、
そんな言葉を口にするー。
健太は少しだけ笑うと、二人で問題集の”解答”が書かれたページを
見つめながら、色々な話を交わすー。
がー、その時だったー。
「ーーーうっ…」
横にいた奈津美が奇妙なうめき声を上げたー。
それに気づいた健太は不思議そうにしながら
「え?」と、奈津美の方を見つめると、
奈津美は、しばらく瞬きをしながら、
「すごいー…」と、そんな言葉を口にしたー。
「す…すごいー?」
奈津美の言っている意味が分からず、困惑の表情を浮かべる健太ー。
何が”すごい”のか、全く分からないー。
そう思っていると、やがて奈津美が言葉を続けたー。
「ーーへーへへ…ほ、本当に”憑依”できたー」
とー。
今まで見たこともないような不気味な笑みを浮かべながら
奈津美は、自分の手をー、自分の胸をー、
感動的な表情を浮かべながら見つめているー。
「ーーえ…??え…??な、奈津美ー?」
そんな反応に、戸惑いながら健太は言葉を口にするー。
しかし、奈津美は半笑いのまま
「えー?っていうか、君、誰?」と、そう言葉を口にしたー。
「えっ…!?えぇっ!?」
健太は、彼女の奈津美から”君”などと、普段呼ばれない呼ばれ方をしたことにー、
そして何よりも「誰?」と言われたことに心底驚きながら
そう反応すると、
奈津美は「あぁ、ごめんー。俺、”この女”じゃないんだー」と、
さらに訳の分からない言葉を口にしたー。
「ーーえ???え???何を言ってー???」
健太が心底戸惑ったような言葉を口にすると、
「いやー…え~っと、何て言えばいいかなー?」と、
奈津美は髪をボリボリ掻きむしりながら、
悩むような表情を浮かべるー。
「ーえーっと、”憑依”って分かるかー?」
奈津美がそう言い放つー。
「ーひ、憑依ー?
え、えっとー、あの、霊とかが身体に入り込む的なやつー?」
健太が言うと、奈津美は「そう!それ!」と、
健太を指差しながら嬉しそうに声を上げるー。
「今さー、俺がその”憑依”してる状態なんだよねー。
この女にー」
と、奈津美は自分の指で、自分の顔をつんつんしながら
クスクスと笑うー。
「ーーーへへへへー
ホントに、他人の身体が俺の意思で勝手に動くなんてー
へへーなんかすげぇやー」
奈津美が今まで見たこともないような笑みを浮かべながら
ニヤニヤしているのを見て、健太は背筋が凍るような思いをしつつ、
「ーえ、えっとー…じ、冗談だよねー?」と、そう言葉を口にするー。
「ーーえ?冗談ー?
あぁー、そう思われちゃうのかー」
奈津美はそれだけ言葉を口にすると、
「まぁ~…そっかーそうだよなぁ
この女がそういうおふざけしてると思われても、仕方ないかー」と、
奈津美は自分で納得したかのように何度か頷きながら、
やがて、笑みを浮かべるー。
そして、突然奈津美は、健太の前で両手を使って
両胸を揉み始めたー。
「ーえっ…」
あまりの出来事に呆然とする健太ー。
奈津美はニヤニヤしながら
「ふふっーは、初めてのおっぱいーき、気持ちよすぎるー」と、
下品な笑みを浮かべながら、健太の方を見つめるー。
健太は唖然としながら、顔を赤らめると
「き、急にどうしたんだよー?!」と、そう叫ぶー。
すると、奈津美は両胸を揉んでいた手を止めてから
ニヤッと笑うと、
「ーーん?”憑依”してる証拠だよー」と、そう呟くー。
「君の彼女、こんなことしないだろー?」
とー。
「ーーー…」
健太は戸惑いながらも
「た…確かに…ぜ、絶対しないと思うけどー」と、そう呟きながら
今一度奈津美の方を見つめるー。
だったらー、
だったら、今、目の前にいる奈津美は何なのかと、
改めてそんな不安そうな表情を浮かべるー。
「ーへへへ 信じて貰えたー?
俺、この女に今、憑依して身体を乗っ取ってる状態なんだよなぁ」
ニヤニヤしながら、奈津美はそう言うと、
ドサッと近くのイスに座って足を広げるー。
”奈津美がこんな座り方をするなんて”と思ってしまうような、
まるで”女”とはかけ離れたそんな座り方ー。
「ーーふ…ふ、ふざけるなー!」
健太は、奈津美の普段とはまるで違う言動にドキドキしてしまいながらも、
すぐに気を取り直してそう声を上げると、
「今すぐ奈津美から出ていけ!」と、そう言葉を口にしたー。
が、奈津美はニヤニヤしながら健太の方を見つめると、
「ーーへへへーイヤだねー」と、そう言葉を口にするー。
健太は、奈津美の身体が勝手に動かされている状況に
怒りと、恐怖を感じながら
「ーーな…何が目的なんだ!」と、そう叫ぶー。
しかしー
奈津美は「ん~~~~~~」と、髪をボリボリと掻きむしると
「別に、目的なんかねぇよー」と、そんな言葉を口にするー。
「ーえ…」
健太は呆然としながらも、さらに食い下がるー。
「僕に恨みがあるなら、奈津美じゃなくて僕に憑依すればいい!
奈津美に恨みがあるなら、僕が話を聞くから、
とにかくまず奈津美の身体から出てくれ!」
健太がそう叫ぶー。
それでも、奈津美は曖昧な態度を見せるー。
「ーーか、身体目的ならー、ぼ、僕が許さないぞ!
勝手に人の身体で変なことするなんてー、絶対にーーー」
健太がそこまで叫ぶと、
奈津美は「おいおいおいーそんなに興奮するなー」と、
面倒臭そうに言葉を口にしてから続けたー。
「ーー俺は別に、この女に恨みはないし、
君にも恨みはないー」
と、奈津美はそう言いながら、足を再び組むと、
ニヤニヤしながら言うー。
「そもそも俺、君のこともこの女のことも今まで知らなかったし
会ったこともないしー」
奈津美に憑依している男が、奈津美の身体でそう言うと、
健太は「じ…じゃあ、なんでー」と、奈津美に憑依した理由を
問いただそうとするー。
”憑依して身体を乗っ取る”なんて、
被害者側からすれば最悪の行為だー。
それなのに、面識もないのに、この男はどうして奈津美に憑依したのかー。
そう思っていると、奈津美は笑ったー。
「別に、誰でも良かったんだよー
誰でもー。
霊体になってふわふわさ迷ってたら
たまたまこの女が見つかったから、憑依したー。
それだけさー」
奈津美のそんな言葉に、健太は再び怒りを浮かべるー。
”誰でもよかったー?”
そんな、通り魔的なこと許されるものか、と、
怒りがさらに膨れ上がっていくー。
「ーーへへー、っていうかさー
”憑依”も、たまたま憑依薬ってやつ手に入れたから
なんとなく使ってみたらこうして憑依できただけでさー、
別に特に目的はないんだよなぁ。
まぁ、もちろん、俺は男だから女に憑依したら
色々楽しみたいってのはあるけどー。
だからそうー
目的とかはないしー…
憑依した理由も”なんとなく”かなー」
奈津美はニヤニヤしながら言うー。
”別にこの女に愛着もないし、憑依も単純に好奇心で
憑依薬が手に入ったからなんとなくしただけ”
だとー。
「ーー…な、なんとなく…? ふ、ふざけるなー!
なんとなくで”憑依”される奈津美のことも考えろよ!」
怒りの形相で健太はそう叫ぶー。
けれど、奈津美は悪びれる様子もなく言うー。
「別にいいじゃんー。そんなに怒らなくてもさー。
暇つぶしにはなってるんだし、この子だって、
死ぬわけじゃないんだしー」
奈津美はそう言いながら、自分の身体を
少しニヤニヤしながら見つめるー。
「ーーひ、憑依なんてされて、
身体も心も奪われてたら、死んでるようなものじゃないか!」
健太がそう叫びながら「早く奈津美から出ていけ!」と、
そう言葉を口にするー。
「はははー君は彼女思いだなー」
奈津美はそれだけ言うと、
「っかし、憑依したのはいいけどー、案外やることもないもんだなぁ」と、
そんな風に呟き始めるー。
「ーコスプレとかしてみたいけど、この家にそんなものなさそうだしー」
奈津美はそれだけ言うと、「う~ん」と腕組みをしながら
考え始めるー。
「ーーー…や、やることがないなら僕の彼女から早く出ていけ!」
健太がなおも繰り返すー。
奈津美は「う~ん…」と考えつつ、
「俺さぁ、昔から行き当たりばったりで、あまり深く考えずに
行動するんだよなぁ」と、呟くー。
憑依薬を手に入れて、それを何となく暇つぶしで使い、
偶然見かけた奈津美に、なんとなく憑依してー、
憑依したあとも、何をやろうか特に決めてはいなかったー。
そんな状態ー。
がー、しばらく考えていた奈津美は「あ!そうだ!」と、
思いついたかのように言うと、
「ー普通、絶対しないようなことをさせられるのが憑依の醍醐味だよな」と、
笑いながらそう呟くー。
「ーーー…え」
健太が戸惑うような表情を浮かべると、
次の瞬間、奈津美は突然、その場で服を脱ぎ始めるー。
「ーえっ!?ちょっと…何をー?」
健太が唖然としながら言うと、服を脱ぎ捨てた奈津美は
ニヤニヤしながら
「ーこのままの姿で外を全力ダッシュとか、楽しそうだよな!」と、
そう叫んで、そのまま部屋を飛び出すー。
「ーーえっ!?ちょ!?おいっ!」
状況を理解した健太は大声で叫ぶー
”奈津美ー!?何その格好ー!?”
1階から奈津美の母親の声が聞こえるー。
奈津美は笑いながら、そのまま玄関から飛び出すと、
”生まれたままの姿”で街中を疾走し始めるー。
「はははっ!すごいー!!すごい!!これが憑依かー!」
奈津美に憑依した男は、視線を集めながら
”本人が絶対にしないようなこと”をさせる快感を味わうー。
当然ー、周囲は大騒ぎになっているー。
ようやく奈津美に追い付いた健太は奈津美に声を掛けようとするー。
が、周囲を見て、健太は取り返しのつかないことを
されてしまったことに気付くー。
「ーあはっ…あははははははー
”暇つぶし”にはなったよー」
奈津美は周囲の騒ぎなどお構いなしの様子で
そう言葉を口にすると、健太は怒りの形相で
「お前は…奈津美の人生を壊したー…!」と、そう言葉を口にするー
「あははー…まぁ、他にやることも思いつかなかったし?
せっかく憑依したんだからって思ってさー。
そう怒るなよ」
奈津美はそれだけ言うと、どよめく周囲を見つめながら
クスッと笑うと、
「じゃ、そろそろ飽きたから帰るよ。」と、それだけ言葉を口にして、
奈津美はそのまま、生まれたままの姿でその場に倒れ込んだー。
どよめく周囲ー。
健太は慌てて奈津美の身体を隠そうとするー。
しかし、すぐに奈津美は意識を取り戻してしまい、
憑依された瞬間から意識が飛んでいる奈津美には
”現在の状況”に陥っている理由も分からないまま、
悲鳴を上げることしかできなかったー。
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奈津美の人生は壊されたー。
あの日、憑依された奈津美が
外を歩く動画はネット上に拡散ー。
既にどうすることもできないまま
写真や動画がネット上の”おもちゃ”のような
扱いを受ける状態になってしまったー。
奈津美も精神的におかしくなってしまい、
不登校の状態が続いているー。
健太は、奈津美の家に今でも通っているものの、
”憑依される前”の明るい奈津美は、もういないー。
「ーーー」
悲しそうな表情を浮かべる健太ー。
”僕の彼女は、あの日、なんとなく憑依されて、
人生を壊されたー”
健太はそんな怒りを抱きながら
いつの日か、奈津美をこんな目に遭わせたやつを
絶対に叩き潰してやるー、とそう思いつつ、
今日も奈津美の家を後にするのだったー
おわり
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コメント
1話完結のシンプルなダーク憑依でした~!★!
時々、捻りのないシンプルなお話も
織り交ぜつつ、色々な作品を書いていくのデス…!
お読み下さりありがとうございました~!★!

コメント
なんだか、お前でヨシ! の主人公みたいにいい加減な憑依人ですね〜。
憑依からは解放されたとはいえ、何となくという理由で人生を壊された奈津美が不憫すぎますね。
感想ありがとうございます~~!★
こういう力をいい加減な人が手に入れちゃうと
被害が拡大しちゃいますネ~…★!