とある公園にー
メタモンと呼ばれるモンスターが居た。
他者への変身能力を持つメタモンー。
ある日、メタモンの中に突然、
悪い心が芽生えてしまうー。
※フォロワー様の「抹茶ぷちしゅー様」とのコラボ作品です!
絵/抹茶ぷちしゅー様 小説は私、無名です!
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公園。
女子高生2人組が、
楽しそうに談笑している。
放課後の時間ー。
学校帰りに公園に立ち寄ったのだろう。
この世界には、モンスターが居た。
人間は、モンスターと共存し、
当たり前のように一緒に暮らしていた。
中には、人間に対して悪さをする
モンスターも居るけれど、
基本的には、人間とモンスターは、仲良く
共存しているのだった。
ーーしかし。
この時、公園に居たモンスター
”メタモン”は、
悪い心を持ち、悪の道へと落ちてしまっていた。
他の者への変身能力を持つメタモンは、
ある日、トレーナーに捨てられた。
トレーナーとの別れを悲しみ、
公園で一人、ホームレスのような状態で
過ごしていたメタモンは、ある日、
自分のトレーナーだった女の子のことを
思うあまり、その女の子に変身した。
大雨の中、自分のトレーナーだった女の子に
変身したメタモンは、
“知って”しまった。
女の子の、快感をー。
そんなメタモンが、
談笑している、2人の女子高生に目をつけた。
そのうちの一人、
眼鏡をかけた、大人しそうなセミロングの子にー
メタモンは、覚えてしまったー。
純粋だったメタモンは、
快感を抱いてしまったー。
捨てられて、傷つき、
ダンボールの中で1ヶ月もの時間を
過ごした孤独のメタモンはー、
トレーナーだった少女を思い出して、変身してー
悪の道へと堕ちてしまった。
このメタモンが、歪んでしまったのは、
誰のせいなのだろうかー。
「--じゃあ、わたし、そろそろ帰るね!」
女子高生2人組のうちの一人、
ショートヘアーの子が言う。
「あ、うん!」
セミロングの子が、そう言うと、
二人は手を振って、そのまま別れた。
セミロングの子はスマホを
確認している。
周りには、誰も居ない。
メタモンがズルリ、ズルリと
ゆっくりその子の近くへと移動していく。
女の子の気持ちよさを知ってしまったメタモン。
かっては純粋だったメタモン。
しかし、今は、もうー。
「---?」
セミロングの子が振り返った。
自分の足元に居るメタモンに気付き、
少女は微笑む。
「あ~~可愛い~!」
少女はメタモンを抱きかかえようとした。
その時だった。
メタモンはーー
彼女に”変身”したーー。
「--えっ・・・!?」
セミロングの少女は驚く。
メタモンの”へんしん”は
モンスター同士のものだけと
思っていた。
もちろん、普通のメタモンであれば、そう。
けれどー。
このメタモンは捨てられた寂しさから、
身に付けてしまった。
人にへんしんする術をー。
「きゃあああああっ!」
驚きの表情をあげるセミロングの子。
彼女は、そのまま気絶してしまう。
セミロングの子にへんしんしたメタモンは、
その子の持っていた鞄を奪った。
生徒手帳を見つめて微笑む少女ー。
メタモンのへんしんはカンペキだった。
誰が、どうみても、気絶したセミロングの少女そのもの・・・。
辻野 愛(つじの あい)-
メタモンは、生徒手帳で、その少女の名前を確認した。
そして、愛の姿で微笑んだ。
「---」
気絶している愛を抱きかかえると、
そのまま公園近くの人の気配の無い川辺に愛を連れて行く。
「---ぼくが、愛になる」
人間の身体に変身したメタモンは、
言語さえも身に付けていた。
愛の身体を、川辺に容赦なく投げ捨てる。
前日の雨で、流れが強くなっている川。
ここに流したら、愛はー。
しかし、今のメタモンにそんなことは関係なかった。
「今日から、わたしが辻野 愛ーふふふ♪」
愛は嬉しそうにスキップすると、
そのまま家へと向かっていった。
時折、身体の一部がとろりと歪む・・・
けれども、普通の人なら、気付かないだろうー。
そして、翌日ー。
本物の愛は、姿を現さなかった。
あの川に流したら、しばらくは見つからないだろう。
「--おはよっ!愛!」
クラスメイトの冬子(ふゆこ)が愛に声をかける。
昨日、公園で愛と話していた女子生徒だ。
もちろん、メタモンには
それが分かっている。
愛の姿になったときに、愛の記憶も得たからだ。
「うん。おはよっ」
愛と全く同じ雰囲気で答えるメタモン。
今日の愛は、いつもよりもご機嫌だった。
「--今日はなんか、ご機嫌だね?」
冬子が尋ねると、愛は
「え~そうかな?ふふふ!」と嬉しそうに答えた。
メタモンは、女の子になれたことに
喜びを感じていた。
あの、孤独な時間は、もう二度と味わいたくない。
これからは、この可愛い子として、
生きていくことができるー。
それだけで、メタモンは喜びを感じていた。
「----バイバイー」
あの雨の日ー、
自分を捨てた少女ー。
あの日から、メタモンの孤独は始まった。
いつも一緒で、
いつも仲良しで、
これからも、ずっと、そうだと思っていた。
「メタモンは、わたしの家族だもん!」
彼女はそう言っていたー
メタモンも、そんな彼女のことを、大切に想っていたー。
けど、そう思っていたのは、自分だけだった。
あの子にとっては、所詮自分は
家族なんかじゃなった。
ある日、彼女はメタモンを自転車に乗せて、
川辺にやってきた。
そして、こう言った。
「もう、家族じゃないー」
その一言だけだった。
「バイバイー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あの日のことを思い浮かべていた愛は、
涙した。
「---え?ど、どうしたの愛?」
冬子が心配そうに尋ねる。
「え?ううん、なんでもないよ!だいじょうぶ!」
愛は誤魔化すように答えると、
そのまま廊下へと出た。
突然、涙を流すなんて、
人間から見たら、おかしなことだろう。
だから、メタモンは人目を避けるようにして教室から
出たのだった。
「---ふぅ」
愛になったメタモンはふと、虚無感に襲われた。
自分は、愛になって何がしたかったのかー。
あの時、捨てられて、失意のどん底の中、
トレーナーだった少女に変身した際、
メタモンは思った。
”女の子は気持ちがイイ”と。
そして、その時、女の子としての快感を
メタモンは堪能したのだった。
とても、楽しい時間だった。
この、愛に変身したときも、
同じように楽しい時間を過ごせると思った。
でも、
何故だろうー
トレーナーだった女の子に変身したときとは違うー。
愛になっても、なんだか、満たされない。
確かに、これからこの子として生きていくのは楽しそうだ。
それでもー
それでも、自分は…。
寂しかったー。
「--1時間目の準備しなくちゃ!」
隣のクラスから、一人の少女が出てきた。
ポニーテールの可愛らしい少女。
「-----!!!」
メタモンが変身した愛は驚きで目を見開いた。
その生徒はーーー
”自分を捨てたトレーナー”だった。
柿山 萌衣(かきやま もえ)
あの日ー
「もう、家族じゃないー」
「バイバイー」
自分を捨てたトレーナー・萌衣が目の前に居るー。
この高校に萌衣が通っていたことを、
メタモンは知らなかった。
色々な感情が絡み合う中、
愛は、即座に動き出していた。
背後から、萌衣のポニーテールを掴み、
人気のない場所まで引っ張っていく。
捨てられたくやしさー
家族だと言ってくれたのに、どうして?
「---辻野、さん?」
愛を見て、萌衣は戸惑う。
「--ねぇ・・・」
愛の目には涙が浮かんでいた。
メタモンは、信じていた。
萌衣のことをー。
家族だと言ってくれた、
彼女のことを。
「---ど、どうしてって…?」
萌衣が困惑した様子で言う。
「---」
話は長くなる。
愛はそう思った。
「放課後、話があるの。
ちょっと付き合ってくれる?」
愛の姿のままそう言うと、
萌衣は困った様子で頷いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー。
あの日、
萌衣がメタモンを捨てた川辺に二人はやってきた。
少し、雨が降り出している。
「ここ、覚えてない?」
愛が言うと、
萌衣は表情を歪めた。
「ここ…?」
萌衣にはわけが分からないようだ。
表情に、困惑がにじみ出ている。
「へぇ、覚えてないんだ」
愛は憎しみを込めて言った。
「そっか、そうだよね!
あんたにとって、どうでもいいんだ!」
愛が怒りをぶちまける。
萌衣は、さらに困惑した
「ね・・・ねぇ、辻野さん、何言ってるの?」
萌衣がそう問いかけた直後、
愛の顔が、歪んだ。
雨に濡れて、
少しだけ”メタモン”の部分が飛び出たのだ。
「---!?」
萌衣が驚いて愛から遠ざかる。
「--僕だよ・・・」
愛の姿で、メタモンは言った。
「--も、もしかして・・・」
萌衣は驚いた様子で言う。
「--メタちゃん・・・?」
萌衣は、自分が捨てたー
メタモンの名を呼んだ。
「--僕のこと、家族って言ったのに・・・!
僕も、シンジテタノニ・・・!!」
愛の身体で言い放つ、メタモン。
ずっと、一緒に過ごして行けると思っていた。
でもー
そうじゃなかった。
「--裏切り者!裏切り者!」
愛は怒りの形相で、萌衣をその場に押し倒した。
川辺の砂利が背中にあたり、
萌衣は苦痛に表情をゆがめる。
「--僕のことなんか、お前にとって
どうでもいいんだ!
僕のことなんか!」
愛は髪を振り乱しながら、
萌衣の胸倉をつかんだ。
メタモンは、萌衣のことが
許せなかった。
人間にとって、所詮自分たちは、道具ー。
雨が二人に向かって落ち続けるー。
「----」
愛はふと、萌衣の顔を見た。
萌衣は、泣いていたー。
「ごめんね・・・ごめんね・・・」
ただ、ひたすら謝る萌衣を見て、
愛は、手を離した。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
その場で泣き続ける萌衣。
愛は、その場に立ち尽くす。
「わたしは、ずっと・・・あなたと一緒に居たかった。
でもね・・・
わたし、来年は受験なのー。
お父さんとお母さんが、
”そんなモンスターと一緒に居るから成績が伸びないんだ”って
毎日毎日私に・・・」
萌衣は涙声のまま続けた。
「--親に言われたの。捨てろって・・・
私は反対した。
でも、、聞いてもらえなかった」
萌衣は両手で顔を覆い隠して泣き続ける。
「--ずっと、ずっと、一緒に居るって約束したのに・・・
わたしが力不足だったから・・・
ごめんなさい・・・ごめんなさい」
泣き続ける萌衣。
萌衣は、自分を裏切ったんじゃなかったー。
結果的に、自分を捨てたことは、同じー
けれど、萌衣には、愛情が残されていた。
「-----」
愛は、優しく萌衣の肩に触れた。
「-----僕も、ごめん」
萌衣には、愛情が残っていた。
それが、知れただけでも十分ー。
メタモンの心の闇は、
愛情によって、取り払われていた。
「---ごめんね」
萌衣が今一度言った。
そしてーー
「---でも、、本物の辻野さんはどこに?」
萌衣の言葉に、メタモンはハッとした。
昨日の夕方、
公園の裏にある流れの強い川に、
気絶したままの愛を流してしまった。
「---ぼ、、僕、行ってくる!」
愛の姿のまま、メタモンは駆け出したー。
あの子に、何の罪もないー。
メタモンは、そんな当たり前のことを思い出した。
今、この愛という少女はどうなっているのだろう。
川に投げ捨てたのは昨日の夕方ー
なら…。
メタモンは、愛の姿のまま走った。
必死に、必死に走った。
そしてー
川の下流で、枝に引っかかっている愛を見つけた。
ずっと気絶したままだったのだろうか?
それとも、もう、死んでしまったのだろうか。
分からない。
けれども、メタモンは迷わず、川に飛び込んだ。
自分の身体が、冷たい水に当たり、
あまりの水流に、変身が一部歪んでいる。
それでも、メタモンは愛のところに
たどり着いた。
「---!」
愛は、まだ生きていた。
「うっ・・・」
酷く衰弱している。
メタモンは、半分変身のとけた状態で、
必死に愛の身体をつかむと、
川辺に戻ろうとした。
けれどー。
自分の身体が、上手く、枝に
引っかかってしまっていた。
「あー・・・」
身動きが取れなくなってしまったメタモン。
愛と自分の姿が入り乱れる中、
メタモンは途方に暮れる。
このままじゃ、自分も、愛も流されてしまう。
その時だった。
「--な、何やってるの?」
メタモンのトレーナーだった、萌衣がやってきた。
メタモンの後を追ってきた萌衣は、
川に流されそうな二人の愛を見て叫ぶ。
「--な、何なのこの状況?」
一人は本物の愛。気を失った状態ー
そしてもう一人はメタモンが変身した愛。
「--説明している時間はないや・・・」
メタモンがつぶやく。
「この子を、お願い・・・」
愛の姿をしたメタモンが悲しそうに言う。
萌衣がなんとか、愛の身体を、
陸地の方へと引き寄せた。
昨日の夕方から川に流されたままだった
愛の身体は酷く衰弱している。
救急車を手配した萌衣は、
続けてメタモンの方を見た。
メタモンは既に変身を解除して、
元の姿に戻っていた。
「-はやくこっちに!」
萌衣が叫ぶ。
しかし、メタモンには、もう体力は残されていなかった。
(家族って言ってくれて、嬉しかった・・・)
そう、表情で伝えると、
メタモンは、悲しそうな表情をしたまま、
木の枝から手を離して、
そのまま濁流に飲み込まれていった。
「--メタちゃん!!」
萌衣の叫ぶもむなしく、メタモンの姿は
濁流に飲みこまれて、あっという間に、消えた・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日。
萌衣は野生のメタモンを道端で
見かけて、悲しそうにそのメタモンを見つめた。
メタモンは、やっぱり最後まで自分のことを
憎んでいたのだろうかー。
「--おはよう!」
後ろからやってきた女子生徒に声をかけられる。
隣のクラスの愛だった。
愛は、衰弱していたものの、すぐに病院に
運ばれて、無事に助かっていた。
「--おはよ」
萌衣はそう返事をすると、
空を見つめた。
「---ごめんね・・・」
もう二度と遭えない、
”家族だったメタモン”に向かって、
萌衣は悲しそうにつぶやいた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
遠く離れた地ー。
とある海の家。
濁流に飲み込まれた、
あのメタモンは、遠くに流されたものの、
なんとか、生き延びていたー。
海の家の主人に拾われたメタモンは、
新しい家族を見つけ―、
そして、心の闇を取り払いー、
また、新しい生きる場所を見つけたのだった。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
私がフォロワー様の抹茶ぷちしゅー様にお願いして
メタモンの絵を提供していただきました!
単純に、私が絵を気に入ってしまっただけなのですが(笑)
こんな感じのお話しで
他者変身?に入るのでしょうか。
このジャンルは憑依空間では初めてだったので、
難しい執筆でした!
絵を提供して下さった抹茶ぷちしゅー様、
そしてお読み下さったすべての皆様に、感謝です!
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