深影村に囚われる人々ー。
自分を、村の生まれだと思い込まされて、
その村で暮らしている人々の運命はー…!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
深影村では、年に1回の”深影祭り”が
行われていたー。
華やかな様子のお祭りー。
しかしー、
その実態はー…
「ーーー」
岩隈村長が笑みを浮かべながら、村人の舞を見つめるー。
「ーーーーー」
ギャルのような風貌の紗智は、
いつもの明るい雰囲気とはまるで別人のような
真剣な表情で、巫女服を身に纏い、舞を披露しているー。
「ーーー…紗智ってばー…すごいー」
先に舞を披露した久美は、そう言葉を口にするー。
”久美”の彼氏で、久美を助けに来て
先日洗脳されてしまった龍太は、
”小さい頃から”親しんできたこの祭りで
この数日間、必死に練習した笛の音色を披露しているー。
当然ーーー…
”小さい頃から”親しんでなどいないし、
今回が初めての深影祭りであるものの、
”洗脳”された龍太はそう思い込んでしまっているー。
大盛り上がりのままー、深影祭りは終盤を迎えー、
お祭りの会場に設置されている、この村の”神”ミカゲの石像が、
光を放ち始めたー。
毎年、村の最後には
男女一人ずつが”神”に選ばれるー。
男は、最も神に美しい笛の音色を聞かせた者がー、
女は、最も神に美しい舞を披露した者が、ひとり、選ばれるー。
深影村に住む全員は、神に選ばれることが、
何よりの幸せだと、そう、信じているー。
「ーーーえ…お、俺がー?ホントですかー!?」
石像から放たれた光が、一人の男を照らすー。
龍太がこの村にやってきた時に、
村の入口で龍太と出会った男だー。
男は嬉しそうに、何度も何度も
「やった!!やった!!!」などと、そう叫んでいるー。
それほどまでに、この村の住人にとって、
深影祭りで、”神に選ばれる”ことは、心の底から
嬉しいことなのだー。
そしてーー
石像から放たれた光がーー
久美の”親友”であり、洗脳される前も同期で仲良しだった
ギャルな紗智に照らされたー。
「ーわ、わたし…!?やったー!
やったぁぁぁぁ♡!」
紗智は嬉しそうに目から涙をこぼすー。
久美は少し悔しそうにしながらも、
「ーーう~ん…負けちゃったーおめでとう紗智!」と、
嬉しそうにそう言葉を口にするー。
「うん!ありがとう!
わたし、神様に選ばれちゃった!えへへー」
得意気な表情を浮かべる紗智ー。
「ーーー二人とも、おめでとう」
岩隈村長はそう言葉を口にするとー、
「では、”ミカゲ様”の前へー」と、そう言葉を口にしたー。
石像の奥に控える、”ミカゲ様”と呼ばれるこの村の神様ー
蛇のような姿をしたその銅像の前へと向かうー。
「ーーミカゲ様ー…わたしを選んでくれて、ありがとうございますー」
紗智は、本当にうれしそうにそう言葉を口にするー。
「ありがとうございますー」
選ばれた男も、そう言葉を口にするー。
「ーーーーーーー……」
そんなー、村人たちの様子を物陰から見ている女がいたー。
”洗脳”されてしまった久美の親友で幼馴染の花楓ー。
久美の彼氏・龍太も、この村の餌食になったことを知り、
彼女はこの村にやってきていたー。
「ーーー……」
花楓は、いつでも”音”を遮断できるように耳栓を用意した上で
この村に乗り込んできていてー、
既に”18時”に鳴った鐘の音を防ぎー、
洗脳されずにこの場にいたー。
「ーー久美ー…」
巫女服姿で、嬉しそうに拍手をしている久美の姿を見つめるー。
そしてー、久美の彼氏である龍太の姿もー。
”みんな、この村のおかしな力に操られてるー…”
花楓は、そう思いながら
なんとか、久美を村から脱出させようと、そう考えるー。
”もし、俺に何かあったら、久美だけでも助けてくれ”
龍太から、そうお願いされているー。
久美の彼氏である龍太のことも、もちろん助けるつもりだー。
しかし、花楓一人では、まず一人を助け出すのが限界ー。
そのため、花楓はまず、久美を救出しようと、そう考えていたー。
そしてー、久美を正気に戻せば、この村の恐るべき実態を
外にも伝えることができるー。
「ーーーえ…」
そんなことを考えていた花楓が、表情を歪めたー。
”ミカゲ様”などと呼ばれる蛇のような銅像から、
何か触手のようなものが現れるーーー
そしてーー、
”深影祭り”で選ばれた紗智と、男に
その触手が巻き付くー。
「ーえへへへー…幸せ…えへへへへ♡」
紗智は嬉しそうに顔を赤らめながらそう言葉を口にしているー。
「ー紗智…!よかったね!おめでとう!」
久美は巫女服姿のまま、紗智にそんな言葉をかけているー。
ぶしゃっーーー…
イヤな音がしたーー
「ーー!?!?!?」
物陰からお祭りの様子を見ていた花楓は、思わず青ざめるー。
”選ばれた男”が、触手のようなものに”潰されて”ー、死んだー。
その場にこぼれた血を、”触手”が美味しそうに飲んでいるようにー、
そう、見えるー。
「ーーな…なにあれ…?」
花楓は、”選ばれた女”のほうー、確か久美の同期で仲のよかった紗智の方を見つめるー。
「ーーすごい…!ミカゲ様ー早くわたしも…わたしも召し上がって下さいー」
嬉しそうに呟く紗智ー。
”深影祭り”で選ばれることー、それは死を意味するー。
しかし、洗脳されている村人たちは、それを最高の幸せだと信じー、
選ばれた者は、この上ない幸せのまま、正気に戻ることなく、死ぬーー
「ーーーーー…ち、ちょっと!!!何してるんですか!!」
花楓は、思わず飛び出してしまったー
久美の同期がそのまま”握りつぶされる”のを見過ごせなかったー
「ーーー誰?」
久美が表情を歪めるー。
「ーー…っ」
親友であり、幼馴染の久美にそう言われた花楓は
ショックを受けながらも、
「ーー今すぐ、そこから離れて!」と、紗智に向かって叫ぶー。
しかし、触手に巻かれた紗智は、嬉しそうに
「ーわたし、神様に選ばれたのー!」と、そう叫び返すー。
「ー何言ってるの!?そこにいたら死んじゃうよ?!
早く、そこから離れて!」
花楓がそう叫ぶも、紗智は「あはははー!何言ってるの?」と、
おかしそうに笑うー。
「ーミカゲ様に身を捧げることは、何よりの幸せなのー
よそ者は黙ってて!」
紗智の言葉に、花楓は「あんたはこの村に操られてるの!!!」と、
そう叫び返すー。
だがー、紗智は笑いながら触手に絞められ始めてー、
嬉しそうに、握りつぶされたー。
「ーーー紗智ーーおめでとう!」
久美が拍手をするー。
周りの村人たちもー
「ーー狂ってるー…!」
花楓はそう呟くと、龍太の方を見つめながらも、
言われた通り、久美を優先するー。
「久美!こんなところにいちゃダメ!」
花楓が久美の手を掴むと、
「何するの!?」と、不満そうに叫ぶー。
「ーここから出るの!久美も、この村に”操られてる”ー」
花楓がそう言うと、久美は「何訳の分からないこと言ってるの!?」と、
反論するー。
どよめく村人たちー。
「ーー…いいから来て!」
花楓は強引に、久美の手を掴んで村の外へと引っ張って行こうとするー。
そんな様子を見つめながら、岩隈村長は目を赤く光らせるとー、
村の中心にある”鐘”が不気味な音を立て始めたー。
「ーっ…!」
花楓はすぐに耳栓をつけて、そのまま久美の手を引っ張るーー
がーー、久美も目を赤く光らせると、
「ーー殺すー…殺す…殺すー」と、突然、花楓に襲い掛かって来たー。
「ーーひっ…く、久美ー…!」
首を絞められた花楓は、久美の方を見つめるー。
久美の目は、完全に正気を失っているー。
”あの鐘のせいー…”
花楓は、そう思いながら、久美の背後から
久美と同じように目を赤く光らせながら近づいて来る村人たちに気付くー
このままじゃー、わたしもー…
そう思った花楓は”ごめん”と、心の中で叫びながら、
久美を思いっきり蹴りつけたー。
「ーーぁ…」
久美の手から力が抜けて、その場に倒れ込むー。
「ーーー…こ、こんなところにーー久美ちゃんを居させられないーー…!」
華奢な花楓ー。
けれども、危機を前に力を振り絞って、失神した久美を抱えると、
そのまま村人たちから身を隠しながら移動を始めるー。
「ーー殺すー 殺すーー 殺すー」
「ーー村を脅かすものー許さないー」
「ーー殺せー…殺せー」
村人たちが、目を赤く光らせながら花楓を探しているー。
花楓は、その中にいる久美の彼氏・龍太の姿も見つめるー。
しかしー、久美のことを優先してほしいという龍太の意思を
尊重して、そのまま花楓は身を隠しながら
深影村の出口までたどり着くとー、
そのまま外へと飛び出したー。
「ーーーー…!」
村から少し離れた山林地帯までやってくると、
久美が目を覚ますー。
村を離れたからか、久美の目は赤く光っておらずー、
”完全に操られている状態”ではなくなっていたー。
しかしー…
「ーー放して!村に帰らないと!」
久美が声を荒げるー。
「ーー久美!しっかりして!」
花楓がそう叫ぶと、花楓はスマホを手に、
事前のフォルダにまとめておいた、久美との写真を見せるー。
「ー久美は、あの村に操られてるの!」
花楓の言葉に、久美は震えるー。
「そんなはずないー!わたしは…わたしは村で生まれて村で育ったの!」
敵意を向けて来る久美ー。
「ーじゃあ、この写真は何なの!?」
花楓が、思い出の写真の数々を見せるー。
「ーーーー…それはーー…それはーーー…」
久美は瞳を震わせながら
「うああああああああ…!」と、その場で頭を抱え込んでしまうー。
「久美ー…」
花楓は、悲しそうな表情を浮かべながら
”何とか、久美を連れて帰らないとー”と、
そのままさらに村から離れてー、
久美を連れ帰ることに成功したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
半月後ー。
「ーーーーーーーーー………ーーー」
久美は、虚ろな目のまま、ベッドに座り込んでいるー。
「ーー久美ー。今日の調子はどうー?」
花楓がお見舞いにやってくるも、久美は反応を示さないー。
”鐘の音”を継続して聞くことがなくなった久美は、
”わたしは村で生まれた”というようなことは言わなくなりー、
次第に洗脳は解けつつあったー。
しかし、鐘の音を聞いていた期間が長ければ長いほど
”元に戻る”には長い長い時間がかかりー、
最悪の場合ー…”精神的に崩壊してしまう”可能性もあるー。
「ーーーーーいつもーーー ありがとう」
久美は虚ろな目のまま、そう言葉を口にするー。
その言葉に、時間は掛かっても、
いつか必ず、久美が元に戻ってくれることを信じながら
「どういたしまして」と、微笑むー。
しかしー…
久美の彼氏・龍太の救出は未だにできず、
しかも、警察に深影村のことを伝えても、
なかなか信じてもらうことは出来ず、状況は好転していなかったー。
あの村を花楓一人でどうにかすることは難しいー。
久美一人を救い出すことが限界だったー。
それでもーーー
「ーー久美が元気になったらー……
久美と一緒にどうするか、考えなくちゃー」
諦めたわけではないー
久美が完全に正気に戻れば、あの村で起きていることを
久美の口からハッキリと聞けるかもしれないー。
そうなればー、何か対策が見つかる…
そのはずだー。
「~~~~~~~…」
病院の窓の外を虚ろな目で見つめ続ける久美を見て、
花楓は「ー焦らなくていいから、ゆっくり元気になってね」と、
優しく言葉を投げかけたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この村の”神”ー
”ミカゲ”はー、
大昔にこの地で行われた争いの犠牲者たちの”怨念”の集合体ー。
憎悪が形となり、”ミカゲ”となりーー
この村を支配しているー。
人々を操りー、”祭り”で、生贄となる人を喰らっているー。
”ーーククククククーーー”
”ミカゲ”は、笑みを浮かべるー。
”ーーー無能な人間よー
これまでお前を”器”にしていたが、お前は失格だー”
その言葉に、岩隈村長が怯えた表情を浮かべるー。
岩隈村長自身も、他の村人同様、”洗脳”された人間ー。
定年退職後に、旅をしていた際にこの村を訪れ、洗脳されたー。
その後、”神の分身”に選ばれ、洗脳された状態のまま
”ミカゲ”の意識も同居した状態で、村の代表として行動していたー。
しかし、岩隈村長は、”久美”たちを逃がした責任を取らされようとしていたー。
「ーーお…お許しをー」
ミカゲの石像の前で、震える岩隈村長ー。
がー…
岩隈村長は触手に絡めとられると、そのまま”潰されて”しまったーー
村に、鐘の音が鳴り響くー。
村人たちの記憶からは”岩隈村長”の、存在が消えていくー。
そしてまた、新たな”村長”が選ばれー、
”深影村”に住む洗脳された人々は、何食わぬ顔で
いつものように1日を始めるのだったー…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
操られたまま生贄になってしまうのは…
私もイヤですネ~…!笑
お読み下さりありがとうございました~~!
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