<MC>わたしの故郷の青い空②~音色~

生まれ故郷”深影村”で過ごしていた彼女の前に、
彼女を知っていると自称する謎の男が現れたー。

彼の言葉を聞いた彼女はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

半年前ー…

久美はこの村にやってきたー。

やってきた理由は、ひとつー。
”同期”の、紗智が”失踪”したからだー。

「ーーー紗智ー……」

アパレル業界の会社に就職して、
辛いことはありながらも、何だかんだで楽しくやっていた久美ー。

しかし、ある日、
”同期”だった紗智が急に姿を消したのだー。

ギャルっぽい風貌ながら、いい子で、仲良しだった同期の紗智。

がーー

”今度の休みでわたし、深影村ってところに行こうと思ってて”
紗智は、いなくなる直前、そんな言葉を口にしていたー。

「深影村?聞いたことないけどー…」
久美がそう言うと、紗智は言ったー。

”ーふふふ
 そういう村、巡るの楽しいじゃんー”

”あまり人が訪れないようなところ”に足を運ぶのが趣味だった紗智ー。
それまでにも、辺境の地にある村を訪れたりしているのは知っていたし、
大学生の頃には、人口が数十人の島を巡って
レポートを書いたりもしていたらしい、という話も聞いたー。

”深影村”を訪れようとしているのも、その趣味の一環で、
特に特別な意味はなかったのだろうー。

その話を聞いた時には、久美自身は深影村を訪れるつもりは全く無かったー。
まさか後に紗智も、久美も”深影村”に住み着くことになってしまう、などとはq
夢にも思わなかったー。

そしてーー…
その数日後、実際に深影村を訪れた紗智が音信不通になってしまい、
そのことを心配した久美は深影村を訪れる決意をしたー。

その日、午前中のうちに
深影村に到着した久美は、
同期の紗智が、何故かこの村の役場で働いていることを知ったー。

”紗智ー…?どうして?”
久美と同じ、アパレル業界の企業で働いていたはずの紗智が
この村の役場で働いているー。

久美は戸惑いながら、お昼前の時間には、
その役場に到着し、紗智の姿を見つけたー。

紗智は元気そうだったー。
久美は、紗智を呼んで、言葉を投げかけるー。

「みんな心配してるよ!?何で連絡もくれないの!?」
とー。

がー、
「ーーな、何のことですか?」
と、紗智はそう言ったー。

久美は、紗智に対してみんなが心配していることを伝えー、
話を続けたー。
しかし、紗智との話はかみ合わないー。
久美のことが”わからない”様子だったし、
しまいには”わたしはこの村の生まれなんですけど!”などと、
そんな言葉まで口にしたー。

「ーね、ねぇ…!どうしちゃったの!?
 わたしのこと、覚えてないの!?」
久美が、様子のおかしな紗智に必死に食い下がるー。

しかし、紗智は戸惑った様子で、
「ーいい加減にして下さい!何なんですか!?」と、
声を荒げたー。

「ーさ、紗智ー…」
久美は呆然としながら、スマホを手に、紗智に写真を見せるー。

「ーこれ…入社式の時の写真ー。
 覚えてない?」
そう確認する久美ー。

紗智は、その写真を見つめながら瞳を震わせるー。

しかしー…
すぐに「ーー…な…何ですか…これ?」と、表情を歪めながら
久美の方を見つめたー。

「ーーー……ーー紗智に何があったんですかー?」
久美は、岩隈村長の方に向かって叫ぶー。

紗智の様子が明らかにおかしいー。

「さぁ…」
岩隈村長はとぼけるような仕草をしながら言ったー。

「ーー……あ、あなたたちが、紗智に何かしたんですか?」
久美が、青ざめながら言うー。

この怪しげな村に、紗智が何かされたのかもしれないー。
そんな風に思う久美ー。

「ーーーー」
岩隈村長はチラッと時計の方を見つめると、
「いいでしょう。全て教えてあげます」と、
そう言葉を口にしながら立ち上がったー。

老人ながら、鋭い目つきの岩隈村長は言うー。

「ーーー浅川 紗智さんー。
 その子は、”洗脳”させていただきましたー」

岩隈村長の言葉に、
「せ…洗脳ー…?」と、表情を歪める久美ー。

「えぇ、そうですー。
 この村の安寧を未来永劫保つためー、
 ”村人”を増やす必要があるのですー。

 ですから、この村を訪れた人間を洗脳しー、
 ”村人”にしているのですー。

 この村の出身であると思い込ませてー
 記憶を書き換えて、ねー」

岩隈村長がそこまで言いかけると、
久美は呆然とした様子で、
「ーな…なんてことをー…」と、そう言い放つー。

がーー

それを聞いていた紗智も、村長の言葉に反応を示したー。

「ーーー…わ…わたしが…洗脳…された…?」
既に洗脳されている紗智も、村長の言葉を聞いて、
”自分が洗脳されている”という事実に驚いた様子を見せるー。

「ーーーーそう。君は、元々”外”の人間だー。
 驚いたかい?」
岩隈村長のその言葉に、紗智は「う…嘘…?わたしはこの村で生まれてー
この村で育ってー」と、震えながら言うー。

「ーー…さ、紗智!しっかりして!」
久美は、今がチャンスだと言わんばかりに、紗智に声をかけるー。

「ーーー…わ、わたし、知らないー…あなたのことなんて、知らない!」
既に洗脳されている紗智からすれば、
突然”お前は村の出身じゃない”ということを告げられて
激しく動揺していたー。

「ーーさ…紗智…!目を覚まして!
 あの人の言葉、聞いたでしょ!」
久美が村長の方を指差して言うと、紗智は震えながら
「ーーーー…あなたー本当に、知りないなんですかー…?」と、
そう言葉を口にするー。

頷く久美ー。

紗智は迷いの表情を浮かべながらも
「ーー…だったらー、助けて下さいー」と、涙ながらに言葉を口にしたー。

久美は「ー当たり前でしょ!そのために来たんだから」と、
そう言い放つと、岩隈村長や、役場にいた他の2人の職員の方を警戒しながら
「ーーこんなこと…許されませんから!」と、それだけ言うと、
紗智を連れて村を出ようとしたー。

「ーーーー」

だがーー
役場から逃げる二人を見つめながら岩隈村長は笑みを浮かべたー。

何故ならーーー

♪~~~~

夜の6時とお昼の12時ー。
深影村では、”鐘”が鳴るー。

この”鐘”こそがーー
村に住む人々を”洗脳”する鐘ー。

「ーーークククククー」
村長の岩隈が笑みを浮かべるー。

「逃げられはしないー。
 お前たちは、今日から”村人”だー」

鐘の音が、村中に鳴り響くー。

”深影村”の守り神が人々に与える祝福の音色ー
そう言い伝えられているこの鐘ー。

この鐘の音が、人々を洗脳し、
村に住まわせているー。

仮にーー…
途中で洗脳が解けても、無駄なのだー。

「ーーーーー!」
村の出口に向かう久美は、
外で、紗智と共にその音を聞くー。

「~~~~…」
紗智の目がとろんとなって、
やがてー「わたし…役場に戻らないとー」と、
そう言葉を口にするー。

「えっ…なんで!?どうして!?」
既に”洗脳”されている紗智に先に影響が出て、
そう言葉を口にした紗智に対し、驚きの表情を浮かべる久美ー。

がーー

「ーーーーあ…綺麗な…音色ー」
久美の目も、次第に虚ろな目になると、
その鐘の音に聞き入ってしまうー。

やがてーー…
久美は「ーーー…あれ…わたしー?」と、呟くと
「ーーあ…そっかー。村に帰って来たんだったー」と、
そう言葉を口にすると、
そのまま紗智と一緒に村の出口ではなくーー…
”村の中”に向かって嬉しそうに歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、現在ーー

今度は、その久美を心配してやってきていた
彼氏の龍太も”餌食”になってしまっていたー。

村にやってきた龍太を、
村長が丁重にもてなしたのはこのためー。
”洗脳”されて、この村に住むことになった人たちの
家族や恋人、友達がこの村にやってきたことは
今までにもあったー。

しかしー…
この村にとって、それは何の問題もないことー。

”やってきた人間”も村人にしてしまえば良いのだからー。

そして、翌朝ー。

「今度の深影祭り、楽しみだな」
昨日、久美を訪ねてやってきていた龍太は、
昨夜の”鐘”の音に洗脳されて、完全に”村人”になってしまっていたー。

「ーふふー。わたしも楽しみですー」
久美も、嬉しそうに笑うー。

相手は”恋人”だと言うのに、この村での二人の関係性は
そうではないようで、久美は他人行儀な口調で、龍太と会話しているー。

しかし、その龍太自身も、もうー、それを気にする素振りは見せていないー。

昨日、”外から”村を訪れて来た龍太を、
当たり前のように”村の仲間”として扱っているのはー、
”久美”や、”紗智”、他の村人たちも昨夜の鐘の音で
”洗脳の上書き”をされているからだー。

この”村”は、村人を増やすたびに、元々村にいる人々の記憶も
整合性が取れるように弄っているー。

洗脳は一度だけではなく、毎日、お昼と夜の鐘が鳴るたびに
行われているのだー。

そして、この村に長期住んでいればいるほどーーー……

「ーー絶対、わたしが勝つからね!」
ギャルのような風貌の紗智が、久美に対してそう言うと、
「”ミカゲ様”に選ばれるのはわたしだよ!」と、
対抗心を燃やすかのように、そう言葉を口にしたー

”ミカゲ”とは、深影村に伝わる”神様”ー。
この村の住人全員が崇め、讃えている存在だー。

「ーーははは、俺だって負けないぞ」
龍太がそう言うと、紗智は「勝つのはわたしです~!」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」

”花楓”は、映像を見つめていたー。

「ーーー……」
久美の彼氏・龍太が深影村を訪れた際に
久美に対して”君の親友で幼馴染”として名前を挙げていた子だー。

映像の中から、鐘の音が鳴り響くー。
その直後ー、”龍太”の様子がおかしくなりー、
やがて、映像は途切れたー。

「ーーこの鐘の音ー…」
映像越しでは、力を発揮しない鐘の音ー。

花楓は、その音の直後、龍太の様子がおかしくなったのを見て、
”この音に何かある”と感じ取るー。

龍太は、深影村を訪れる前ー、
色々と”事前に対策を打っていた”ー

”毎日1回は、花楓ちゃんにメッセージを送るよー
 もし、それが途切れたらー
 俺に何かあったと思って欲しいー。”

龍太は、事前に花楓にそう相談していたー。

スマホを通じて、常に自分の状況を映像で配信できるようにしておき、
あるサイトにアップロードしていたー。
役場にいた時などは、ポケットにスマホを入れていたため、
音声しか入っていないものの、洗脳される直前、宿に入ったあとの
龍太の様子は、ハッキリ映っていたー。

花楓には動画のダウンロードのためのパスワードを教えておき、
”もしも俺から連絡が途切れたら、動画を確認してほしい”
とー、そう伝えてあるー。

そこに、必ず異変のヒントがあるはずだから、とー。

「ーーーーー」
そして、龍太からの約束の連絡が途切れたことで、花楓は
事前に、”親友の彼氏”である龍太から言われた映像を確認しーー

”鐘の音”に違和感を抱いたのだー。

「ーーーーー久美ー」
久美の親友であり、幼馴染でもある花楓は、
久美の名を呟くと、龍太から送られてきた映像を元に、
深影村に足を運ぶことを決意したー。

”ーーー鐘の音は、聞かないようにしないとー”

そう、思いながらー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

深影村では、”深影祭り”が始まっていたー。

村の女たちは、巫女服を着て、ズラリと並んで、
”神”の前で舞を披露しているー。

村の男たちは、それぞれ村で作られている特産品の
笛のようなものを持って、それを順番に奏でているー。

「ーーー次は、久美の番だねー」
紗智が、笑いながらそう言うと、
「ー絶対負けないよ!今年こそわたし、”選ばれる”んだからー!」
と、そう言葉を口にするー。

「ーーー」
巫女服など、この村に来るまで着たこともなかったし、
着るつもりもなかった久美ー。

しかし、洗脳されている久美は、何の疑問も抱かず、
真剣に”この村の神様”に選ばれるべく、
ここ最近、一生懸命練習していた舞を披露しているー。

「ーむむ…!久美ちゃんってばなかなかいい感じー」
紗智がライバル心をむき出しにしながらそう言葉を口にするー。

他の村の女たちも”わたしこそ選ばれるの!”と言わんばかりに、
その様子を見つめているー。

「ーーーーーー」
岩隈村長は、そんな様子を見つめながら、
静かに笑みを浮かべるー。

”深影祭り”で”神”に選ばれるーー

それが意味するものはーーー

「ーーーー」
邪悪な笑みを浮かべながら、岩隈村長は
”もうすぐ、決まりますぞー。”生贄”がー”と、
この村に伝わる神・ミカゲの石像を見つめながら
静かにそう言葉を口にしたー。

③へ続く

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コメント

恐怖の深影村…!

私も、数日ぐらい、この村の鐘に
操られてみたい気分デス~!
(戻れるなら…(だいじ))

明日が最終回デス~!!

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