<憑依>彼女が迷惑系配信者になってしまった①~豹変~

ある日を境に、豹変した彼女ー。

彼女は突然、迷惑系の動画の配信を
繰り返すようになってしまいー…?

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「希海の家のハムスター、可愛いよなぁ…」

男子大学生の浦本 裕也(うらもと ゆうや)は、
同じ大学に通う彼女ー静宮 希海(しずみや のぞみ)に
大してそんな言葉を口にしたー。

「ーーーあははーモモちゃんのこと?」
希海がそう言うと、
裕也は「そうそうー。このこっち見てる顔とかたまらないよなぁ~」と、
スマホで、ハムスターの動画を見つめながら言葉を口にするー。

裕也が眺めているハムスターの動画は、
彼女の希海の家にいるハムスター・モモちゃんの動画だー。

希海は”うみはむチャンネル”というチャンネルで
ハムスターの動画を配信していて、
その動画を、裕也は見ている最中だったー。

「ーー…ずっと見てられるなぁ」
裕也がそう言いながら、再びスマホの方を見つめるー。

裕也の彼女、希海がやっている”うみはむチャンネル”の
登録者数は数十人。

元々、希海はただ単に趣味でハムスターの様子を配信しているだけで、
配信者としてやっていこうと思っているわけではないし、
収益化をするつもりもないー。
登録者数を必要以上に増やすつもりもないために、
希海自身も現状に満足していたー。

配信を始めた理由も”自分用にハムスターの記録を残しておきたい”と
思ったことー、そして友達についでに見て貰えればうれしい、と
思ったことー…そのぐらいの軽い理由だったー。

動画の内容も、単にハムスターの様子を映し出すだけで、
特に希海が顔を出したりすることもないー。

「ーーでも、まさか”うみはむ”が、裕くんに
 そんなに喜んでもらえるなんてー」
希海が笑いながら言うと、
「ーははは、俺もハムスター好きだからなー」と、
裕也は嬉しそうに答えたー。

希海が、”うみはむチャンネル”を始めたのは、
裕也と付き合い始める前ー。

付き合い始めた裕也が、初めて家に遊びに来た時に、
あまりにもハムスターのモモちゃんのことを可愛がっていたために、
希海が”あ、わたし、モモちゃんの様子、配信してるんだ~”と、
笑いながら、自分のチャンネルを紹介して、今に至っているー。

今では、希海は”裕くんのために”と、
うみはむチャンネルをほぼ毎日更新していたー。

「ーーまたハムスタートーク中?」
ふと、そんな声が聞こえて
裕也と希海が振り返ると、
裕也の幼馴染で、希海ともそれなりに親しい女子・
高峰 愛唯(たかみね めい)が声をかけて来たー。

「あ、愛唯ちゃん おはよー」
希海が笑いながら挨拶をすると、愛唯も「おっはよ~」と、
挨拶を返しつつ

「希海ちゃんさ~顔出ししちゃえばいいのに!」
と、冗談めいた口調で言うー。

「ーえぇ?顔はちょっと~
 誰が見るか分からないし」
希海は、苦笑いするー。

「ーーははは 希海、いつも自分の顔、反射しないように
 気を付けてるもんな~」

裕也がそう言うと、
愛唯は「え~…希海ちゃん、可愛いから滅茶苦茶人気出ると思うんだけど!
うみはむチャンネル!」と、そう言葉を続けるー。

「ー別に、人気とかそういうのは狙ってないしー
 それに、わたしが見てほしいのはモモちゃんだからー」

希海は、あくまでも”ハムスター”を見てほしいのだと、
そう言葉を口にするー。

「愛唯だったら、すぐ顔出しとかしそうだよな~」
裕也が揶揄うようにして言うと、
愛唯は「わたしのこと、何だと思ってるの?」と、
少し不満そうに頬を膨らませるー。

「ーいや、ほら、愛唯は
 ”ハムスターを見て”とかいいつつ実は
 自分を見て欲しがりそうなタイプに見えるし」
裕也が笑いながら言うと、
愛唯は「ーーすぐそういうこと言う!」と、
むすっとした表情を浮かべるー。

「ーあはは、やっぱり二人とも仲良しだねー」
彼女の希海が、幼馴染同士のやり取りを見ながら笑うと、
「ーははー、まぁ、仲良しというか、永遠のライバルというかー」と、
裕也が首を横に振りながら言うー。

「ーあ、希海ちゃんの彼氏を奪ったりは絶対しないから安心してね!
 コイツの彼女になるとか、地球が真っ二つになるぐらいあり得ないから!」
愛唯が裕也を指差しながら言うと、
「俺もごめんだね」と、嫌そうな表情をしながら呟いたー。

そんな二人の様子を笑いながら、希海は
裕也に対して「あ、そうだー。今度の休み、またモモちゃん見に来る?」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

某所ー。

「どうも~~~!”どってぃ”で~す!」

動画配信者・”どってぃ”が、
目隠しをしながら笑うー。

彼は、迷惑系の動画の配信を繰り返している配信者で、
これまでにも数々の問題を起こしてきた男だー。

今日も彼は、動画を配信するために、
とある大通りの前に来ていたー。

「え~、今日はですね、
 交差点デススイカ割りに挑戦したいと思います。

 反対側に俺の友達が、スイカを設置しているので、
 俺は目隠しした状態のまま、交差点を渡って、
 そのスイカを割る、というルールですねー。」

”どってぃ”はニヤニヤしながらそう言うと、
”どってぃ”の友人である男・下野(しもの)はケラケラ笑いながら、
「お前やべーな!死んだらどうするんだよ!」と、
冷やかすようにして言うー。

「へへへーこんなんで死ぬわけないだろ?」
”どってぃ”は、そう言うと、
ゲラゲラ笑いながら、
「ー俺、この配信が終わったら結婚するんだー」などと
わざと死亡フラグを立てるような発言をするー。

「ははは、自分で死亡フラグ立てんなよー!
 しかも、お前結婚どころか、彼女もいないし童貞だろ!」

動画撮影を担当している友人・下野がゲラゲラと笑いながら言う。

「ーへへへへへー
 おいおい、生配信でそれ言うなよー。

 ま、俺の名前の由来がそれだけどな」

そんなことを言いながら”どってぃ”は、
「では、今から反対側にいる友人のところまで目隠しした状態で
 交差点を渡り、スイカを割ります!」と、
嬉しそうに宣言しながら手を上げるー。

「おっし!信号青になったぞ!いけっ!」
撮影役の下野がそう叫ぶと、
「よっしゃあ!」と叫びながら棒を手に、
目隠ししたまま交差点を渡り始める”どってぃ”ー。

がーーー

「ーお~~~い!もうちょい右!少しずれてる!」
と、下野がそう叫ぶー。

反対側にいる友人も、「そうそう!右!右!」と
揶揄うようにして叫ぶー

「あ?マジか?
 真っすぐ走ってるつもりなんだけどなぁ」
そう言いながら”どってぃ”は、言われた通りに右側に身体を移動させるー。

しかしーー
それは、”二人の友人”の罠だったー。
二人の友人は、どってぃを揶揄おうと、
真っすぐ進んでいるのに、わざとズレている、と言って
どってぃを横断歩道から外れさせようとしていたー。

「ーははは、違う違う!もうちょい!」
笑いながら下野が叫ぶー。

がーーー

「ーって、おい!いきすぎ!」
と、下野は突然顔色を変えて叫んだー。

”少し”横断歩道から外れさせようとしただけだったのだがー、
予想以上に”どってぃ”が移動したため、
現在、歩行者の信号が赤になっている横断歩道のところまで
よろよろと向かい始めていたー。

「ーーおい!!!ちょっと待て!そっちは!」
下野が叫ぶー。

反対側ー…
スイカのところに立っている友人も「おい!!!」と、叫ぶもー、
その直後ーー

赤信号の横断歩道に目隠ししたまま進入してしまった
”どってぃ”はーー
車に跳ねられて、勢いよく身体ごと吹っ飛びーー、
嫌な音を立てて、道路の上に叩きつけられたー。

「ーー…マ…マジか…」
友人・下野が呆然とする中、
明らかに死んでいる”どってぃ”の姿が生配信されてしまうー

”マジ?”
”やべぇ”
”放送事故キター!”
”え?普通にやばいじゃん”

そんなコメントが流れている中、下野は慌てて
どってぃの元に走り出したー。

「ーーーーー?」
そんな中ー、
近くの駅から出て来た希海は首を傾げたー。

随分と、向こうの交差点の方が騒がしいー

「ー何かあったのかな?」
そう思いつつも、希海も家に帰るためには
そちらの方に向かう必要があるために、ゆっくりと騒がしい方向に向かって
歩き始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ーーー!?”

配信者・”どってぃ”は、驚いていたー。

”な、なんだ、これはー…?”
困惑の表情を浮かべる”どってぃ”ー

それも、そのはずー。
彼は先ほど車に跳ねられた交差点の”空中”に浮かんでいたからだー。

”ど、どういうことだぁ…???”
どってぃはそう呟きながら、”下”で、自分自身が血まみれで
倒れているのを見て表情を歪めるー。

”ま、まさか、俺ー…?”
そう思いつつ、友人の下野の方を見つめるとー、
”あいつー…まさか、俺が車に跳ねられるように、嘘を教えやがったな!”と、
逆怨みのような言葉を口にするー。

”けど、まずどうにかしないとまずいぞー?”
そう思っているうちに、ふと、どってぃはあることを思いつくー。

”ーー幽霊ってーそういや、人間に取り憑いたりー…
 憑依したりできるんじゃないかー?”

とー。

”へへー こうなったら下野、お前の身体を貰うぜー
 俺を騙した罰だー”

そう言葉を口にすると、彼は”下野”に憑依しようとしたー。

がーーー

「ーな、なにがあったんですかー…?」
ふと、戸惑いの表情を浮かべている女子大生の姿が目に入ったー。

その女子大生こそー、希海だったー。

”ーーー!!”
どってぃは、希海の姿を見て笑みを浮かべるー。

”待てよー?
 もし、取り憑けるならー”

そう言葉を口にすると、どってぃは下野ではなくーー
希海の方に向かって霊体を動かし始めたー

そしてーーー

「ーーひっ!?!?」
希海が、突然ビクンと身体を震わせるとーー
しばらくしてから、自分の身体を見下ろしてーー
不気味な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーーーあれ?何だか元気なくない?」

幼馴染の愛唯が、大学内の自販機の前で
少し暗い表情をしながら飲み物を飲んでいた裕也に気付き、
声をかけて来たー。

「ん?あぁー……いや、希海と連絡がつかなくてさー」
裕也が少し心配そうにそう呟くー。

「大学にも来てないみたいだしー。
 まぁ、既読はつくんだけど」
裕也がそう言うと、愛唯は「へ~…希海ちゃんが大学に来ないなんて
珍しいね?風邪でも引いたんじゃない?」と、
そう言葉を口にするー。

「ーん~~…でも、返事がないのが気になるんだよなぁ」
裕也がそう言うと、
愛唯は悪戯っぽく「あんたが何か怒らせるようなことしたんじゃない?」と、
それだけ言葉を口にして立ち去っていくー。

「ーははー…”思い当たること”があれば、まだいいんだけどなー」
一人ボソッと呟く裕也ー。

がー、怒らせるようなことをした覚えもないー。
返事もできないぐらいに体調が悪いか、あるいは緊急事態が
起きたのかもしれないー。

大学が終わったら、ハムスターのモモちゃんに会うついでに、
希海の家に行ってみようかと、そんなことを考える裕也ー。

だがーーー
その日の夕方のことだったー

「ーあ!!いたいた!やっと見つけた!」
愛唯が少し慌てた様子で駆け寄って来るー。

それを見て、裕也は
「なんだよーそんなに地球が今にも終わりそう顔して」と
揶揄うように言葉を口にすると、
愛唯は「うみはむチャンネル…!更新されてるよ!」と、そう言葉を口にしたー。

うみはむチャンネルは、
希海がハムスターの配信を行っているチャンネルでー、
単にハムスターの様子を映しているだけのため、数十人ほどの登録者しかいないー。

はず、がーー

「ーえ…?登録者121人?」
裕也は”急に増えたな”と思いながら、
最新の動画に視線を移すー。

するとー、チャイナドレス姿の希海らしき姿が映っていたー。

「ーは?」
裕也は少しドキッとして、その動画のサムネイル画像を見つめるー。

「ーー…希海ちゃん、どうしちゃったの?
 こんなことする子だっけ?」
そう言いながら、愛唯が動画を再生するー。

するとー

”今日はハムスターなんかよりー
 ひひっー…わたしを見てもらおうと思いまぁ~す”

今まで、配信中に顔を出すことはなく、
反射しないように気を使い、
手も、男女どちらか分からないように手袋をはめて、
撮影していた希海ー。

その希海が、あっさりと顔出しをしたのだー。

しかも、チャイナドレス姿でー。

「ーーーーな、なんだこれ?」
戸惑う裕也ー。

”ねぇねぇ、この足、エロくない?”
希海はそう言いながら、椅子に足を乗せて、
チャイナドレスから覗く生足を見せながら笑みを浮かべているー。

その笑みは、希海とは思えないような
歪んだ笑みにも見えるー。

「ーー…希海ちゃんも、登録者数増やしたいのかもしれないけど、
 急にこれはさー、やりすぎじゃない?」
愛唯が少し引いたような表情で言うー。

最後までハムスターを全く移すこともなく、
希海は動画の最後に自分の胸を少し揉むと、
そのまま動画は終了したー。

「ーーーーー」
「ーーーーーー」
裕也も愛唯も困惑した様子で、うみはむチャンネルの
最新動画を見終えると、
裕也は、不安そうに表情を歪めたー。

そしてー、
この日を境に、希海が”迷惑系”な動画の投稿を繰り返し始めるとは、
今の裕也はまだ、夢にも思っていなかったー。

②へ続く

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コメント

彼女の突然の豹変…★
びっくりですネ~!

今日は憑依までが長めだったので、
憑依された後のゾクゾクは明日たっぷり楽しんでください~★!

今日もありがとうございました~!

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