配信中に事故で命を落とした
迷惑系配信者に憑依されてしまった彼女…。
突如豹変した彼女を前に、
周囲の人間は困惑していく…。
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「ーーーへへへへへへー
あぁ~~…髪も足も胸も全部エロい…」
夜ー
憑依されてしまった希海は、
ニヤニヤしながら、
勝手にネットで買い漁った色々なコスプレ姿を楽しんでいたー。
「ーうっほ…♡ ボンテージ姿とかヤバすぎるだろー」
希海は、本人が絶対にしなかったであろう格好をしながら、
顔を真っ赤にして、下品な笑みを浮かべるー。
ハムスターのモモちゃんがいたケージにはもう誰もいないー。
「ーあぁ、これももういらねぇな」
乱暴にケージを放り投げると、希海は
「ーうみはむチャンネルの登録者も増えまくってるし」と、
自分のチャンネルを見つめながら笑うー。
「”どってぃ”はあんまり流行らなかったけどー
このエロイ身体があればー
ひひひひひ…」
希海は、そう呟きながら
次の動画である”彼氏に突然別れを告げてみた”の準備を始めるー。
希海が”モモちゃんの記録を残したい”という想いだけで作った
うみはむチャンネルはー、
彼女を乗っ取った男によって、その想いを踏みにじられていたー。
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「ーーーの、希海ー!?」
翌日ー。
ここ最近は大学を休んでいた希海が、
突然大学にやってきたー。
服装もメイクも少し派手な感じで
”いつもの希海”とは違う違和感を感じるー。
がー、裕也はすぐに
「さ、最近、どうしたんだよ!うみはむチャンネルの動画ー!」と、
声を上げるー。
が、希海は「ちょっと、話があるんだけどーいい?」と、
笑みを浮かべながら、
”周囲にあまり人がいない場所”に移動することを提案するー。
「ーーー…い、いいけどー…」
裕也は戸惑いながら、希海に従うと
希海と共に大学の敷地内の、あまり人が来ない場所へとやってきたー。
「ーーー希海ー…
昨日の配信、アレ一体なんなんだよ!?モモちゃんは!?
あんなに大切にしてたのに!」
裕也がそう言うと、希海はそれを無視して、
スマホを手にしながら、”動画”を撮影し始めたー。
「ーみんな~!おっはよ~!希海だよ♡」
希海がスマホで自分を自撮りしながら、そう言葉を口にすると、
裕也は戸惑いの表情を浮かべながら
「ーーお、おい?希海ー?」と、言葉を口にするー。
が、希海は裕也を完全無視したまま、
「今日は”彼氏”を振っちゃいます~~~!」と、そう宣言したー
「え…な、何を言ってー?」
戸惑う裕也ー。
そんな裕也に、希海はスマホを向けると、
「これがわたしの彼氏の裕くんー」と、そう言いながら、
さらに言葉を続けたー。
「ーで、裕くんさ、
わたしたち、お別れしよ?」
とー。
「ーーは…????
え…ど、どうしてー?」
裕也が困惑の表情を浮かべるー。
しかし、希海は笑いながら
「ー裕くんのこと、好きじゃなくなっちゃった」
と、それだけ言葉を口にしたー。
「ーーい、いやいやいやー…
え???
の、希海、ホントにどうしちゃったんだよ?
え?」
ここ最近の、希海の動画投稿ー
そして、突然の別れー。
「ーどうしたって?飽きちゃったのー裕くんに。
それ以外に、理由いる?」
希海の冷たい口調ー。
「ーーーーお…俺、何かしたか?
何かしたなら、謝るからー」
裕也は戸惑いながらそう言葉を口にするー。
希海を何らかの理由で怒らせてしまったのではないかと、
そんなことも考え始めるー。
しかしー
「ーー別に。わたしはこれから
配信者としてやっていくのー。
ーーふふふー ”叶えられなかった夢”を果たすのー」
希海はそう言いながら
”俺が俺である時に叶えられなかった夢をなー”と、
憑依している”どってぃ”は笑みを浮かべるー。
「ーーー見てみて、みんな、これが”元カレ”の
情けない姿ー。
女に振られたのに、現実を受け入れられなくて
ほらー!ちょっと泣きそうじゃない?
くくくー ホント、笑えるー」
希海がスマホを自分に向けながら、
動画の視聴者たちにそう語り掛けるー。
「ーーほらほら、教えてよー
わたしみたいに可愛い彼女に振られた気持ち、
どんな気持ちー?」
煽り続ける希海ー。
裕也も、さすがに怒りを感じながらも、
”今までの希海”の振る舞いから、
どうしても”理由もなくこんなことをする人”には思えず、
怒りよりも心配が勝るー
”積み重ねた高い高い信頼”はー、
一気に崩壊しそうになりながらも、
まだ、辛うじて裕也の中で”希海への信頼”は生きていたー。
「ー誰かにやらされてるのか?
なんか、理由があるんだろ?」
裕也が、戸惑いながらそう言い放つー。
それでも、希海はー
”憑依された希海”は笑うー。
「はい出た~!現実逃避~!」
煽るような口調で、スマホを裕也に向けながら言うー。
「みんなはこうなっちゃダメだからね~?
こういう男が、ストーカーになるんだから!」
希海が笑いながら言うー。
裕也は、怒りと悲しみと悔しさと心配が
混ざったような表情で希海を見つめるー。
その時だったー。
「ーいい加減にしなさいよ」
裕也の幼馴染・愛唯が、姿を現したー。
希海が、”彼氏を振ってみた”という動画を
配信し始めたのを見て、大学内にいた愛唯も
心配してこの場にやってきたのだったー。
「ーん~~~?」
希海に憑依している”どってぃ”は一瞬首を傾げながらもー、
”あぁ、彼氏の幼馴染のーー”と、
憑依してからの出来事や、LINEの記録などから理解すると、
「ーふふふー”負けヒロイン”が何の用?」と、
挑発的に笑うー。
「ーー…は?なにそれー?」
愛唯が不満そうに言うと、
希海は「ー裕くんのこと、好きなんでしょ?」と煽るようにして言うー。
「でも、幼馴染以上の関係になかなかなれなくってー
そうしている間にわたしに取られちゃった
負けヒロインー」
希海がそう言うと、
裕也は「おい、やめろよ。何でそんなこと言うんだよー」と、
戸惑いの言葉を口にするー。
「ーみんな~!見てみて!
この女!負けヒロインの愛唯ちゃん!」
希海がそう言いながらスマホを愛唯に向けるー。
「ーー…だから、わたしはコイツと付き合うなんて
考えられないって言ってるでしょ」
愛唯がうんざりした様子で言うー。
その言葉に、希海は「はい!負け惜しみ~!」と、
煽り始めるー。
がー、その時だったー。
パチン!と音が響き渡ってー、
裕也と希海が驚いたような表情を浮かべるー。
愛唯が、希海をビンタしたのだー。
「ーーー…あはーー」
ビンタされた希海が薄ら笑みを浮かべると、
愛唯は「最低!希海ちゃんー、そんな最低な子だとは思わなかったー」
と、怒りの形相で言い放つー。
「ーーふ…ふふふー
いいよいいよー安心してよー愛唯ちゃんー。
”そいつ”は、愛唯ちゃんにあげるからー」
裕也を指差しながら、希海は少し怒りっぽい口調で言うー。
「ーーーだから!わたしは!」
愛唯が反論しようとすると、
希海はクスクスと笑いながら、
「ーーそういうのーー
負け犬の遠吠えって言うんだよ?」と、
心底馬鹿にしたような口調で言ったー
「ーはぁ!?ちょっと何なの!?」
愛唯が再び怒りを爆発させて希海に向かおうとするー。
「ーめ、愛唯!も、もういいって!
落ち着け!」
裕也が愛唯の腕を掴んで抑えると、
希海は二人を心底馬鹿にした様子で笑いながら
そのまま立ち去って行ったー。
「ーー何なのあの子!!!
ーーー許せない!」
残された愛唯が涙目で叫ぶと、
裕也は「落ち着けってー…巻き込んでごめんなー」と、
愛唯を何とかなだめようと、そう言葉を口にしたー。
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数日後ー
”負け犬女を襲ってみた”
という動画のライブ配信が始まったー。
希海は、大学帰りの愛唯に声をかけてー、
突然、愛唯にキスをしてそのまま押し倒したー。
「ーちょっと!?何のつもり!?」
愛唯が声を上げると、
希海は邪悪な笑みを浮かべながら言ったー。
「ー”女同士”なんだからいいだろー?
ねー?」
とー。
恐怖に震える愛唯ー。
希海がゲラゲラ笑いながら
「ほら、全部脱げよ!」と、愛唯の服を無理やり脱がせようとするー。
がーー
「ーーいい加減にしろ!!!」
今度は、先日のように”生配信”を見た裕也が
愛唯を助けに姿を現すー。
希海は笑いながら「”元カレ”は引っ込んでて!」とだけ反応するー。
しかしー、裕也は希海を突き飛ばすと、
「ーー希海がそんなやつだとは思わなかった!」と、
倒れ込んだ希海に言い放ちながら、
愛唯を助けて、そのまま愛唯を守るかのように
自分の背後に回したー。
「ーく…くく…くくくくー」
よろよろと立ち上がる希海ー。
「ー最低だよー。希海」
裕也のその言葉に、希海は一瞬ピクッと震えるー。
無意識のうちに、身体が強いショックを感じたようだー。
希海はそれを”気持ちイイ”と思いながら、
笑みを浮かべると
「ーーふふふー…誉め言葉をありがとうー」
と、馬鹿にするように囁いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
希海は、大学を退学して、
そのまま”配信活動”を中心に活動するようになったー。
その内容は、酷い内容の動画ばかりー。
”のぞみん”などと名乗り始めて、
もはややりたい放題だー。
「ーーー…今でも信じられないよ」
寂しそうに呟く裕也ー。
幼馴染の愛唯は戸惑いながら
「ーーわたしも、こんな子だとは思わなかったー」と、
不満そうにスマホを見つめるー
”うみはむチャンネル”の登録者数は、
以前よりも大幅に増えているー。
度を越した迷惑系の動画が、
受ける層には受ける、ということなのだろうー。
裕也は困惑の表情を浮かべながらー
”かつて”一緒に撮影した希海との写真を見つめるー。
とても優しそうな笑顔を浮かべている希海ー。
”今”の希海とはまるで別人だー。
「ーーこの笑顔も、嘘だったのかなー」
裕也がそう呟くと、
愛唯は寂しそうに「ーーどうなんだろうねー」と、それだけ言葉を口にしたー。
裕也は、しばらくその写真を見つめていたものの、
大きく息を吐き出しながら、
その写真を”削除”しようとスマホを操作するー。
「ーーー…いいの?」
それに気づいた愛唯が言うと、
裕也は悲しそうに笑いながら言葉を口にしたー。
「ーー…俺の好きだった希海は、もういないからー
きっとーー全部、”嘘”だったんだー」
裕也はそう言葉を口にすると、
真相に気付かないまま、希海との思い出の写真を削除したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数年後ー
裕也は大学を卒業し、社会人になったー。
今年で社会人3年目ー。
学生の頃とは違うこともたくさんあるし、
学生に戻りたいと思うこともないわけではないー。
それでも何とか、社会人生活に慣れてきて、
順調な日々を送っているー。
「ん?」
裕也が、スマホが鳴っていることに気付いて、
名前を確認するー。
「愛唯かー」
相手は幼馴染の愛唯ー。
希海と別れたあとも、愛唯との関係は変わらず、
幼馴染のままー。
希海と付き合っている頃に、二人が言っていたように、
二人はお互いを恋愛対象としては考えていないー。
”ーーあ、裕也?
今、スマホのニュースで見たんだけどー”
愛唯が少し気まずそうに言葉を口にするー。
「ーえ?」
愛唯から話を聞く裕也ー。
愛唯との電話を終えると、
裕也はスマホを操作して、
表情を歪めたー。
”迷惑系配信者”うみはむチャンネル”の
静宮 希海 容疑者を逮捕”
そう書かれているー。
「ーーーー…希海ー」
別れて数年ー。
希海のことは、すっかり諦めがついていたし、
気持ちの整理もすっかりついていたもののー、
やっぱり、こうしてー
”元カノ”が転落する姿を見るのは、悲しかったー。
希海が逮捕されたというニュースの
動画を確認する裕也ー。
連行される希海は、
赤髪になっていてー、
報道陣に対して指を突き立てながらゲラゲラ笑っていたー。
「ーーーー」
裕也は、心の底から悲しそうな表情を浮かべると、
過去の思い出を今一度振り払うかのように、
そのままそのニュースが表示されているページを静かに閉じて、
大きくため息をついたー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最後まで気付かないタイプの結末でした~!
もしも、彼女が正気を取り戻すことが
この先あったら…
また、大変なことが起きちゃうかもですネ~!
お読み下さりありがとうございました~!☆!
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