<憑依>三人で異世界転生したのに身体はひとつ!? ~帰還編~後編

異世界に飛ばされて、その世界の巫女の身体に
憑依してしまった三人ー。

無事に、全員が元の世界に戻ることはできるのかー。
最後に待ち受けている運命はー…?

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「え…え…えっと…」

元の世界に戻り、”早緒莉”の身体になってしまった
寛太の兄・隆也は戸惑っていたー。

最初、自分だけがこの世界に戻って来たことで、
つい調子に乗って早緒莉にコスプレをさせようと、
早緒莉の身体でコスプレ衣装を買って、帰って来たところで、
早緒莉が、寛太の身体で目を覚ましてしまったのだー

「ーこれ…着ようとしてたんですか?」
寛太になった早緒莉が、紙袋から零れ落ちたメイド服を
見つめながらそんな言葉を口にするー

「え…い、いやっ、こ、こ、これはー、そのー…」
早緒莉の身体で、顔を真っ赤にしながら戸惑って見せる隆也ー。

”彼氏の兄”が相手とは言え、
流石に気分を害したのか、
寛太になった早緒莉は「ーーわたしの身体で、勝手なことしないでくださいー」と、
悲しそうに言葉を口にするー。

早緒莉になった隆也は、
「ご、ごめんなさいー」と、心底申し訳なさそうに
謝罪の言葉を口にすると、
「ーーもう、いいですけどー…でも、この状況、どうすればー?」と、
寛太になった早緒莉が言葉を口にしたー。

最初に、異世界から戻って来た隆也は、早緒莉の身体にー、
2番目に異世界から戻って来た早緒莉は、寛太の身体に戻ってしまったー。

てっきり”自分の身体”に戻れるのかと思っていたけれど、
そう甘くはなかったようだー。

この世界と異世界の時間の流れも違うようで、
隆也がこの世界に戻ってきて、それから”異世界”では
次の魔晶石を破壊するまでに数日、間があったものの、
”こっちの世界”に帰って来た日付は同じー。

「ーーー…たぶん、寛太も少ししたら戻ってくると思いますー
 あっちの世界で、ソニアちゃんたちは、4つ目の魔晶石の破壊に
 向かってるはずなので」

寛太になった早緒莉は、そう言葉を口にするー。

「ーーそ、そっかー」
早緒莉になった隆也は、気まずそうにそう言うと
「あ…め、メイド服は、そのーどうぞー」と、
寛太になった早緒莉に、紙袋ごとメイド服を差し出したー

「ーえっ…えぇっ!?元に戻っても、わたしは着ませんよ!?」
寛太の身体でそう叫ぶと、
早緒莉になった隆也は「い、いや、だって俺が持ってても使わないしー」と、
そんな言葉を口にしたー。

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異世界ー。

”山賊”が根城にしている地帯を突破していく
ティムとソニアー。

”わたしは光の力を発揮する方に全神経を集中させるからー
 わたしの身体を動かすのは、お願い!”

ソニアにそう言われた寛太は、
ソニアの身体でひたすら山賊たちの攻撃を回避するー。

”身体が”自動”で動いてくれてるみたいな感じでー、
 光の術の発動に、集中できるのは便利ね”

「ーーひぇっ… ひぇぇぇぇ…!」
しかし、寛太はこんな風に”戦い”には慣れていないー。

慌てた様子で、山賊の攻撃を、ソニアの身体で
回避していくー

「ーこ、こ、こ、この巫女服、動きにくいし!
 もっとなんかこう、動きやすい格好はないのか!?」

寛太がソニアの身体でそう言うと、
”ひ、人の身体を借りてるくせに、服にケチをつけるの!?”と、
ソニアが不満そうに心の中で叫んだー。

”ー怒ったり、笑ったり、戸惑ったりー、忙しいなー”
ティムは、コロコロと表情の変わるソニアを見て
内心で笑いながら、襲い掛かって来る山賊をなぎ倒すー。

「ーわたしたち巫女にとって、この服は、神聖でとっても大事な服なの!」
ソニアが自分の身体の主導権を取り戻して、そう叫ぶと、
寛太は”で、でも、ヒラヒラして戦い向きじゃないしー!”と、
そんなことを言い返してくるー。

「ーーーそれでもわたしはこれがいいの!」
ソニアが頬を膨らませながらそう言うと、
山賊の一人がニヤニヤしながら近づいてくるー。

「へへへ…お嬢ちゃん、一人で誰と喋ってるんだい?」
そんな言葉を口にしながらニヤニヤしている山賊ー。

がーー

「ーうるさい!!!今、わたしは取り込み中なの!引っ込んでて!」
ソニアがそう言い放つと、錫杖から光の弾丸のようなものを放ち、
その山賊を倒したー

”ーーうわぁ…”
ソニアの身体の中でその様子を見ていた寛太はー
”巫女さんを怒らせないようにしようー”と、
そんな言葉を内心で口にするー

「この服はね!!わたしのご先祖さまが、
 わたしが一人前になった証にって送ってくれたもので、
 この服にはーー」

ソニアがガミガミと巫女服の重要性を説いてくるー。

あまりにも話が長く、だんだんと眠くなってきた寛太が
寝落ちしてしまうと、
「あ、こら!起きなさい!」と、ソニアが自分の頭を
ポコポコと叩き始めたー。

そんな様子を見つめながら、苦笑いをするティムー。

がー、そうこうしているうちに、
ついに”4つ目の魔晶石”のある場所へと到着したー。

「ーついたー。4つ目の魔晶石だ」
ティムがそう言い放つと、右手をソニアが、左手を寛太が
コントロールして、手と手で喧嘩していたソニアが、
「あー…」と、振り返ったー。

「ーも、もう到着したんだー」
ソニアが苦笑いしながらティムの方に近付いてくると、
ティムも苦笑いしながら頷く。

そこには4つ目の魔晶石が輝いているー。

「ーーあ、あの…」
ソニアの身体の主導権を寛太が握ると、
寛太は、ソニアの身体でティムのほうを見つめるー

「ーー短い間だったけど、お世話になりましたー」
ソニアの身体で、寛太がぺこりと頭を下げると、
ティムは笑いながら
「はははー…いいさ。僕たちも助けられたこともあったし」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーーソニアさんも、色々お世話になりました」
寛太がソニアの身体で、どこに視線を合わせていいのか分からずに
感謝の言葉を口にすると、
”も~…ホントは、自分の身体でお礼を言って欲しかったけど!”と、
冗談を口にしたー。

「ーーあはは…確かにー
 でも、俺の身体はこの世界にはないからなぁ…」
寛太は、ソニアの身体でそんなことを呟くと、
”ーさ、早く元の世界に戻っちゃいなさいー”と、
ソニアの意識がそんな言葉を口にしたー。

どうやら、少し寂しいのか、
”寂しくなる前に、さっさと帰って”と言わんばかりの態度だー。

いつも通り、衝撃を回避するためにティムが
魔晶石から少し離れて、
ソニアが魔晶石の前に立つー。

「あ、そうだー」
錫杖に光の力を込めながら、ソニアは思い出したかのように
そんな言葉を口にすると、
「ーあんたのお兄さんに”変態ッ!”って叱っておいて」と、
笑いながら言葉を口にしたー

”あははーー”
寛太は笑いながらも、”必ず伝える”と、そう返答すると、
ソニアは4つ目の魔晶石を破壊したー。

いつも通り激しい衝撃が走るー。

そしてー、
そのまま寛太の意識は光の中に包まれたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーメイド服なんてもらっても~…」

寛太の身体に入り込んだ早緒莉が戸惑いながら言うと、
早緒莉になった寛太の兄・隆也は
「ま、まぁ、着なくてもいいからー…
 元に戻ったあと、俺が持ってても仕方ないしー
 早緒莉ちゃんにー」と、そんな言葉を口にするー。

”早緒莉の身体”が”早緒莉ちゃん”と呼んでいると、
周囲からは、自分が自分を呼んでいるかのような
そんな奇妙な光景にしか見えないー

そんな、やり取りをしていると、
眠っていた隆也の身体に光のようなものが降り注ぎー、
隆也が目を覚ましたー

「ーーぅ…」
隆也が周囲を見渡すー。

「お、寛太が戻って来たー」
早緒莉になった隆也が笑いながらそう言うと、
「でも、わたしたち、元に戻るにはどうすればいいんでしょうー?」と、
寛太になった早緒莉が、困惑しながらそう言葉を口にするー。

がー…
その時だったー

「ーーえっ!? 誰? なにここ?」
隆也が、そんな言葉を口にしたのだー。

「え?」

「?」

寛太になった早緒莉と、早緒莉になった隆也が
困惑の表情を浮かべながら、”隆也”を見つめるー。

「ーーえ… だ、誰ってーー…えっと…」
早緒莉になっている隆也は、今、この状況で
誰の名前を名乗ればいいのか、と、少し困惑の表情を浮かべながら、
考えていると、
寛太になった早緒莉が、少し不安そうにあることを尋ねたー。

「ーーー…寛太…じゃないの?」
とー。

早緒莉の身体には寛太の兄・隆也が、
寛太の身体には、寛太の彼女である早緒莉が、
それぞれ憑依する形で、この世界に戻って来たー。

と、なれば当然、残っている隆也の身体には
寛太が帰って来るはずー。

元の身体とは別の身体に入り込んでしまった状態を
どうにかしなければいけないけれどー、
とりあえず、まずは三人全員、この世界に戻って来ることが
何よりも先決だったー。

しかしー…

”隆也”の身体は
困惑の表情を浮かべながら、静かに言葉を口にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーな、なんだってー…!?」

異世界では4つ目の魔晶石を破壊した
ティムが、驚きの表情を浮かべていたー。

「ーす、すみませんー。俺にも何が何だか分からなくてー」
巫女・ソニアがそんな言葉を口にするー。

「ー”ソニア”がいなくなって、君がその身体に残っているー
 そういうことか?」
ティムがそう言うと、ソニアはコクリと頷いたー。

「ーーな、何でそのようなことがー…?」
ティムが困惑しながら、そう呟くー。

今までの流れから、今回、魔晶石を破壊すれば
ソニアの中にいる寛太が、元の世界に帰る、と
そう思っていたー。

が、ソニアがいなくなり、寛太がソニアの身体に
残っているということは、
ティムたちが考えている通りにはならなかったー…
と、そういうことだろうかー。

そう思いながらも、ティムは
「寛太くんー。君は悪くない」と、だけ言うと、
「ただー…5つ目の魔晶石は、結構遠いからー
 またしばらく、付き合ってもらうことになってしまうがー」
と、申し訳なさそうにティムが言葉を口にするー。

「ーーーい、いえー…こちらこそ、宜しくお願いしますー」
ソニアの身体にただ一人残ってしまった寛太は、
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、
そのまま、ティムの後を追い、歩き始めたー。

5つ目の魔晶石を破壊すれば、今度こそ元の世界に戻れると信じてー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーえ…!?!?え…!?!?ソニアさんなのー!?」

”元の世界”では、
寛太の身体になった早緒莉が驚きの声を上げていたー。

「う…うんー。理由は分からないけどー…」
残る”隆也”の身体に戻ってきたのは、
異世界に唯一残っていた寛太ではなく、
ソニアだったー。

「ーこ、ここがあなたたちの世界ー?」
そう言いながら、不思議そうに
隆也の身体で窓の外を見つめるソニアー。

道路を走っている車を見て
「え…?あ、あれ何?」と、指を指しながら
言葉を口にするー

「ーーあぁ、あれは”くるま”っていう乗り物でー
 まぁ、簡単に言えばあれに乗って早く移動できるんだー」
と、早緒莉の身体で隆也が答えるー。

「ーーー…ってー、あんたー」
隆也の身体になったソニアが不満そうに
「早緒莉ちゃんの身体にいるのー!?」と、
そう言葉を口にするー

「えっ!?えっ!?
 い、いや、別に俺は好きにこの身体に入ったんじゃー…」

そんな言葉を口にする早緒莉になった隆也ー。

がー…
隆也になったソニアは、近くに置かれている紙袋の中に
メイド服が入っているのを確認すると、
「ーーあんた、早緒莉ちゃんに何て格好させようとしてたの!?」と、
怒りを露わにするー

「ま、まぁまぁソニアさんー
 それよりも、寛太はー…」

隆也になった早緒莉が不安そうにそう言葉を口にするとー、

「もう、わたしの身体に残ってるのは、あの子だけだろうしー、
 次の魔晶石を破壊できれば、戻って来れるんじゃないかなー」

と、そんな言葉を隆也になったソニアが口にするー

「ーーいやぁ、でも、戻って来るにしてもー、
 入る身体がなくね?」

早緒莉の身体で隆也が言うと、

「ーーーそ、それもそうねー」
と、隆也の身体で、ソニアは戸惑いの言葉を口にしたー。

”これから、どうなってしまうのだろうー”
三人は、そんな不安を抱きながら、困惑の表情を浮かべることしかできなかったー。

おわり

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コメント

寛太くんが戻れると思ったら
余計にややこしいことに…!

ここで物語は終わりですが、
続きも書こうと思えばまだ書ける気もしますネ~…!

ひとまず、お読み下さりありがとうございました~~!

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