<憑依>三人で異世界転生したのに身体はひとつ!?③~帰還~(完)

謎の石を拾ったことで、
異世界の巫女に憑依してしまった三人…。

本人の意識も目覚める中、
三人は元の世界に戻るべく、2つ目の魔晶石を目指す…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”2つ目の魔晶石”がある場所に向かう
ティムとソニア。

一見すると、二人だけに見えるその旅路ー。

しかしー

「あ~~~も~~~~!!!!
 あんた、わたしの身体で遊びすぎ!!!」

巫女のソニアがそう声を上げると、
「えへへーこんな機会滅多にないし」
と、ソニアが急に怒り顔からにやけ顔に変わって、
笑みを浮かべるー。

「兄貴ー、ほどほどにしておけよ」
今度は苦笑いを浮かべながらそう呟くソニア。

「ーソニアさんーなんだかごめんなさいー」
寛太の彼女・早緒莉がソニアの身体で申し訳なさそうにそう言うと、
「ーーまぁ、これはこれで楽しいからいいのかもー」と、
ソニアは悪戯っぽく笑ったー。

前を歩くティムは、表情も言動もコロコロと変わる
ソニアを見つめながら、思わず笑ってしまうー。

「ーーはははーにぎやかだなー」
そんな言葉を口にしながら、ティムはさらに前方へと進むー。

もうすぐ、世界各地に存在する”魔晶石”の2つ目が存在すると
思われる場所に到着するー。

ティムたちは5か所に存在する魔晶石の2つ目の破壊を目的にー、
寛太たちは、ソニアの身体から抜け出して、元の世界に戻ることを目的にー、
そのまま進み続けるー。

「ーーそういえば、みんなはどんな姿をしてるの?」
ソニアが、身体の中で呟くー。
”ソニアに憑依した三人”の容姿は、ソニアからすれば分からないー。
何となく、興味を持って、そんな言葉を口にするー。

「ーーえ~?俺たちの姿?」
寛太がソニアの身体を動かしながら、険しい道を進むー。

”この方が楽だから”という理由で、
身体の主導権を寛太たちに渡したまま、
ソニアは喋る時以外、自分の身体の中に引っ込んでいる状態だー。

「ーう~ん、俺は…まぁ…ごく普通というかー、
 よくいる感じの男子高校生って感じかなぁ」

寛太がソニアの口でそう答えると、
”ふ~ん… こうこうってなに?”
と、ソニアの意識が言葉を口にしたー。

「あ~~高校は~」
寛太は、ソニアの口で何とか伝わるように説明するとー、
”王立学校みたいなやつだね!”と、ソニアにもその意味が
伝わった様子だったー。

「ーー俺は、背が高くてイケメンでー」
寛太の兄・隆也がソニアの口でニヤニヤしながらそう言うと、
”はい嘘~!”と、ソニアにツッコミを入れられて、
隆也は「ぐぐ…!嘘って決めつけるの早くね!?」と、
ソニアの顔で悔しそうにそう呟くー。

「ーーわたしはーーー」
最後に、早緒莉が自分の姿を説明するー。
自分の姿のことを、言葉で伝えるのは何となく恥ずかしいー

そう思っていると、
寛太が「ー早緒莉はすっごく可愛くてー」と、
自分の彼女のことをほめるような言葉を口にしたー。

”あ~!やっぱりそうなんだ~!
 話してるだけで、この人可愛いんだろうなぁって思ってた!”

ソニアがそんなことを口にすると、
早緒莉は、照れくさそうに、ソニアの頬を勝手に赤らめるー。

「ーおいおいおい!俺がイケメンなのは嘘つき扱いで、 
 早緒莉ちゃんが可愛いのはすぐそうやって信じるのかよ!?」

ソニアの口から、寛太の兄・隆也の言葉が漏れ出すー。

”あんたは変態だし”
つーん、とした雰囲気でソニアがそう返してくると、
隆也は再び「ぐぐぐ…」と声を漏らしたー

「ーついたぞ」

その時だったー
前からティムのそんな声がするー。

前方の崖下には”魔晶石”が確認できるー。

やはり、学校帰りに寛太が拾った虹色の石にかなり似ているー
”大きな虹色の石”という、そんな感じの見た目だー。

「ーーあの見た目ー…やっぱり俺の世界で拾った小さな石そっくりですー」
ソニアの身体で寛太が、ティムにそう伝えると
ティムは「そうか」と、頷くー。

しかしー
魔晶石の付近には、山賊のような男たちが数名、
うろついているー。
珍しい輝きに金のニオイを嗅ぎつけて、集まってきたのだろう、と
ティムは説明するー。

「ーー魔晶石ってやつが原因でここに飛ばされたなら、
 元に戻れるかもしれないな」

ソニアの身体で寛太の兄・隆也が言うと、
ソニアは”破壊した時に時空にゆがみが生じるみたいだから、その時戻れるかもね”と、
言葉を付け加えたー。

「ーーよし!そうと決まれば!」
ソニアの身体で、錫杖を剣のように持つと、
突然その手が動いて、ぽかっ!と、ソニアがソニア自身の頭を叩いたー

「いってええええ!?何するんだよ!?」
寛太の兄・隆也がソニアの身体でそう叫ぶとー
”それは光の力が込められた錫杖よ!そんな玩具みたいに振り回すものじゃないの!”と、
ソニアが叱るような口調で言ったー。

「ーーあはははー、兄貴とソニアさんは仲がいいなぁ」
ソニアの口で寛太が、ずっと言い合いばかりしている兄・隆也と
ソニアのことを笑うー。

「ーーよくない!」
「ーーよくない!!!」

ソニアと隆也が二人とも、そう言ったのだろうー。
ソニアの口から同じ言葉が2度、吐き出されると、
「ふん!」と、ソニアが一度右を向いたあとに、
今度は左を向いたー。

ソニアが右を向いて、隆也が左を向いたー、
あるいは逆かもしれないが、
身体が一つしかないため、とても奇妙な光景になってしまったー。

「ーーーまぁいいや、わたしが巫女の力、ちゃ~んと見せてあげる!」
ドヤ顔でソニアが自分の身体を動かし始めると、
「ーーティム!いつものように!」と、ソニアが声を掛けるー

「ーわかった!」
ティムは頷くと、剣を手に、崖下の山賊たちめがけて
走っていくー。

山賊は視認できる限りでは5人ー
ティムが一人目を撃破して、二人目と剣をぶつけあうー。

ソニアが錫杖を手に、力を込めると、
それをティムの方に向けたー。

ティムの身体が、光の結界のようなものに包まれるー。

”おお!やるじゃん!”
ソニアに憑依している隆也が、そんな様子を見ながら
そう呟くー。

ティムは、ソニアの光の結界によって
山賊たちの攻撃を防ぎながら戦っているー。

「ーまだだよ!」
ソニアは、そう言うと、さらに錫杖に力を込めて
今度は光の縄のようなものを飛ばすー。

「ーーーぐぐっ!?」
”光の縄”に捕らわれた山賊が動きを止めるー。

その隙にティムがそれを切り捨てるー。

「ーーー次!」
ソニアは、上空に向かって錫杖を掲げると
光の雨のようなものを降らせるー。

山賊たちが苦しむ中、
ティムが山賊たちを直接撃破していくー。

あっという間に残り一人ー、
ソニアが髪を揺らしながら、さらに錫杖を手に、
力を込めるーー

がーー

その時だったー

「うらぁ!」

「ー!?」

隠れていた山賊の男が、ソニアを背後から襲撃したー

「きゃっ!?」
吹き飛ばされるソニアー。

”ーソ、ソニアさん!?”
寛太がそう叫ぶー。

ティムはまだ、山賊の最初から姿を見せていた最後の一人と崖下で戦っている状態ー。

ソニアは表情を歪めながら錫杖を手にするー。

しかし、ソニアの光の力は
”術のようなものを唱えて、力を錫杖に込めてから放つ”

そのため、接近戦には向いておらず、
遠距離からのサポートが中心だー。

技の発動までに短くとも数秒かかるために、
山賊に力任せに攻撃されたら一方的にやられてしまうー

剣を振るってくる山賊ー

がーーー

ソニアが素早い身のこなしで、それを回避したー

「ーえ!?」
ソニア本人もその動きに驚くー。

「ーーわたしも力を貸すから、その間に術を唱えて!」
ソニアに憑依している早緒莉がそう叫ぶー。

「ーーえっ…でも!?」
ソニアがそう言うと、
早緒莉がソニアの口で「ー小さい頃、ダンス習ってたから大丈夫!」と
根拠のない自信を口にしたー。

寛太が”早緒莉、ダンスもできるんだ”などと思っていると、
早緒莉がソニアの身体で回避、ソニアが術を唱えながら
戦闘を続けるー。

とは言え、ソニアの”光の魔法”はサポート専門ー。
山賊一人を倒すには時間がかかるー。

早緒莉の回避と、ソニアの術でなんとか
時間は稼げたもののー、
ついに、山賊の蹴りがソニアの身体に直撃しー、
錫杖が吹き飛ばされたー。

「ーーーうっ…」
ソニアが苦しそうに呻くー。

”ど、どうしようー!?”
寛太がソニアの中でそう叫ぶと、
寛太の兄・隆也が静かに笑みを浮かべたー。

「ーー俺に任せなー」
ソニアの口でそう呟くと、
”えっ!?あんた、何するつもり!?”と、ソニアの言葉を無視してーー
突然、巫女服のスカートをめくったー。

「ーー!?!?!?!?!?」
ソニアが、寛太が、早緒莉が驚くー。

いや、ソニアを奇襲した山賊も驚いていたー。

「ーーえへへへ…触りたいー?」
ソニアが、ニヤニヤしながら胸を片手で触ると、
山賊も、それに釣られたのか、ニヤニヤしながら近づいてくるー

”ちょっ!こら!わたしの身体で勝手にー!”
ソニアの意識がそう叫ぶー。

しかしー
寛太が”ソニアさんー、ちょっと待ってー”と、
ソニアを止めると、
ソニアの身体を使っている隆也が、山賊が近付いて来たのを見て
笑みを浮かべたー。

「ーーへへへーバカな奴だぜ!」
ソニアの身体でそう叫ぶと、山賊の男の急所を、ソニアの足で
思いっきり蹴りつけたー

「ーぐっはぁ!?!?!?!?!?!?!?」
苦しむ山賊ー

「ーーおら!おら!おら!おら!」
錫杖を棒代わりにして、何度も何度も山賊を叩くとー、
やがて、山賊はその場に倒れ込んだー

「ーへへへ…巫女の身体の有効活用」
ソニアの身体で隆也がそう呟くと、
ソニア本人は呆れ顔で「変態ー。それにその錫杖はそういう風に使うものじゃないの」と、
不満そうに呟いたー

「ーーでも、助かっただろ?」

「ーーーまぁ…ありがとうー」

そうこうしているうちに、ティムが崖下で最後の山賊を倒しー、
魔晶石の周りにいる山賊は全滅したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魔晶石に手をかざしてみるソニアー。

しかし、ソニアに憑依している寛太、早緒莉、隆也の三人は
ソニアの身体の中にいるままー。

「ー砕くときに発生する時空のゆがみが原因だとすればー、
 これを砕けば、君たちは元の世界に戻れるかもしれない」
ティムがそう言うと、
早緒莉が、ソニアの身体で不安そうな表情を浮かべるー。

「ーー大丈夫さ。失敗してもまだ魔晶石は他の地域にもあるー。
 そこを目指せばいいー」
ティムがそう言うと、
ソニアの身体で、寛太は「分かりましたー」と、
そんな言葉を口にするー。

「ーーじゃあ、行くよー」
ソニア本人が、魔晶石の近くに立ち、頷くー。

ティムは魔晶石破壊の際のエネルギーに
巻き込まれないよう、少し距離を取るー。

前回もこうして、魔晶石を破壊したらしいー。

「ーーーー…これであんたたちとはお別れかもしれないから、
 先に”さよなら”って言っておくねー」
ソニアがそんな言葉を口にすると、

「色々ありがとうー」
「ーあ~もうちょっとこの身体で色々とー」
「ーー少しの間だったけど、お世話になりましたー」

寛太、隆也、早緒莉がそれぞれソニアの身体で言葉を口にするー。

「ーわたしの身体でお礼を言われても~」と、
ソニアは少しだけ苦笑いしながら、魔晶石を破壊するために、錫杖に力を込めて
そして、光の玉を魔晶石に打ち込んだー。

ひび割れて、砕け散る魔晶石ー。
膨大なエネルギーが放出されてーーー

ソニアの身体は光に包まれたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーーーーーー!!!!」
ガバッと起き上がる隆也ー。

ここはーー
弟の寛太の部屋ー

その見慣れた光景を見て、
隆也は”戻って来た”ことを確信したー

「ーーやった!!!やったぁ~~~~~~~!!!!」

がーーー

「ーーーえ?」

叫んだ隆也は、”自分の声”じゃないことに気付くー

「え…?女の声?」
そう思いながら、慌てて窓に反射する自分の姿を見つめるとー、
そこには、弟・寛太の彼女・早緒莉の姿があったー

「え…」
早緒莉になってしまった隆也が戸惑いながら、
倒れたままの寛太と自分…隆也の身体を見つめるー

「ーーえ?マジー?俺が早緒莉ちゃんにー?」
早緒莉はそう呟くと、
「えっ…?えへへへー」
と、笑いながら自分の胸を揉み始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

異世界ではー
ティムとソニアが3つ目の魔晶石を目指していたー

「ー兄貴、どこ行っちゃったんだろー?」
ソニアの身体で寛太がそう呟くと、
「大丈夫ー。お兄さんはきっと元の世界に戻れたんだよー」
と、ソニアの身体で早緒莉が呟くー。

「ーーそうだといいけどー」
不安そうな寛太ー。

そんな二人の会話を聞きながら
ソニア本人は「ーまぁ、あんたたちも早く元の世界に戻れるといいねー」
と、苦笑いしながら言葉を口にしたー。

おわり

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コメント

お兄ちゃんだけ元の世界に戻ってしまいました~!
(身体は弟の彼女の身体ですケド…)

でも、彼氏とそのお兄ちゃんが倒れたままの状況なので、
早緒莉になった隆也くんも、大変なことになりそうですネ~笑

お読み下さりありがとうございました~!☆

コメント

  1. 葉月/リーフ より:

    4人の人格が1つの体の中に入っててそれぞれが動いているので奇妙に見えてしまう光景大好きです

    あと続編も見たくなる

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!★★

      続編…★!
      確かに書こうと思えば書けそうな気もしますネ~笑
      (まだ未定ですが、何か思いついたら書く可能性もあります~!)