<憑依>三人で異世界転生したのに身体はひとつ!?①~混乱~

自分、兄、彼女ー。

三人で異世界に転生してしまった彼らー。

しかし、三人で異世界転生したのに、
彼らに与えられた身体は”ひとつ”だけだったー。

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沼津 寛太(ぬまづ かんた)は、
”試験勉強”という名目で、同じ高校に通う彼女の
相葉 早緒莉(あいば さおり)を連れて、
自宅にやってきていたー。

「ーお邪魔しま~す」
明るく、真面目な性格ながら、ちょっぴりお茶目な一面も持つ
早緒莉が、そう言葉を口にしながら寛太の家に足を踏み入れるー。

「ーーいつもごめんねー」
申し訳なさそうに苦笑いする早緒莉ー。
試験が近付くたびに、いつも数回、こうして寛太の家にやってきている早緒莉ー。
早緒莉の家には、まだ小学生の弟と妹がいて、しかも猫も数匹飼っていることから
あまりゆっくり勉強できる空間が存在しないのだー。

そのため、寛太と付き合い始めて以降は、
寛太の家で、毎回何度か勉強をしているー。

寛太と付き合い始めてから、これで4度目の試験ー。
そのため、早緒莉は寛太の両親や兄とも既に面識がある状態だったー。

「いやいや、大丈夫大丈夫ー。
 このぐらい全然どうってことないよ」

寛太がそう言いながら、自分の部屋のある2階に向かおうとすると、
早緒莉は「ちょっと待ってて」と一声かけてから、
キッチンの方にいた、寛太の母親に「お邪魔します」と、
改めて挨拶をするー。

寛太の母親が「ゆっくりしていってー」と、穏やかに笑うー。

挨拶を終えると、早緒莉は階段の方に引き返してきて、
そのまま寛太と共に、雑談しながら2階へと上がっていくー。

2階に到着するとー、
偶然か、それとも二人がやってきたことに気付いたからかー、
寛太の兄・隆也(たかや)が部屋から出て来たー。

「お~~早緒莉ちゃん!」
隆也のそんな言葉に、
寛太は「ーあ、兄貴、もう帰ってたんだー」と、言葉を口にするー。

兄の隆也は大学生ー。
寛太より帰りが遅くなることもあれば、
早いこともあるー。
今日は、帰りが早いほうだったようだー。

「ーあ、お久しぶりですー。お邪魔しますー」
早緒莉がペコリと頭を下げると、
隆也は「はははー、でも、ホント、何度見ても可愛いなぁ」と、言葉を口にするー。

「ーーーあははは」
照れくさそうに笑う早緒莉ー。

「ーーおいおい!」
寛太が、兄の隆也に”そういうのやめろよ”と言いたげに
そう声を掛けるー。

隆也は女好きで、平気でそういうことを口にしたり、
Hな話題も平気でするー。

彼女の前ではあまり長々と話したくないタイプだー。

「ー試験勉強とかいいつつ、実は中でチュッチュッしてたりするのか?」
小声で隆也が寛太にそう聞いてくるー。

「ーバ!バカ!しねぇよ!本当に勉強だって」
寛太が呆れ顔でそう返すと、
隆也は「はははー冗談冗談ー」と、
笑いながら言葉を口にするー。

「ーでもなぁ~俺より先に寛太に彼女ができるなんて
 予想外だったよなぁ~

 寛太、早緒莉ちゃんに嫌われるようなこと、するんじゃないぞ~?」

隆也はそう言いながら、
揶揄うように笑うと、
早緒莉は「わたしの方が嫌われないように頑張ります!」と、
笑いながら隆也にそう言葉を口にしたー。

「ーーなんか、兄貴がいつもごめんな」
寛太が自分の部屋に入りながらそう言葉を口にすると、
早緒莉は「え~?全然ー。なんか面白いし、いいお兄さんじゃん」と、
笑いながら、部屋の中へと入っていくー。

その会話が聞こえていた隆也は”いいお兄さん”と、早緒莉に言われたことに
少しニヤニヤしながら、自分の部屋に戻ろうとしたー。

がー。
その時だったー

「ん?」
隆也は、ふと、寛太の部屋の前に、虹色の石が落ちていることに気付くー

「なんだこれー?
 キレイな石だな」

そんなことを呟きながら、隆也は
「早緒莉ちゃんが落としたのかな?」と思いつつ、
そのまま部屋をノックするー

”な、なんだよ~!?チュッチュッしてないぞ!”
部屋の中から寛太の声が聞こえるー

「ーいや、いや、そうじゃない。なんか綺麗な石が廊下に落ちてたから」と、
隆也がそう伝えると、寛太が部屋の中から出て来たー。

普通に入って良さそうな雰囲気だったため、隆也が
部屋の中に入ると、
寛太が「あ~!それ、俺が帰りに学校に敷地内で拾ったやつ」と
言葉を口にしたー。

「え~?なになに?」
早緒莉も興味深そうに近寄って来るー。

隆也が、寛太の机の上に
虹色の石を置くと、
早緒莉は「わ~!綺麗!」と、嬉しそうに声を上げたー。

聞けば、早緒莉の落とし物ではなく、
寛太の方の落とし物で、
妙に綺麗だから、何となく拾ってきた、とのことだったー。

「ーーははは、こういう石ってなんか不思議な力とか
 込められてそうだよな」

兄の隆也がふざけた口調でそう言葉を口にすると、
早緒莉は「あははー…確かにそういうお話、ありますよね~」と、
隆也のほうを見て笑うー。

”早緒莉ちゃん、って色々な話にも乗ってくれるしー、
 ほんと、優しいよなー”
隆也はそんな風に思いながら
「ほら!こうして手をかざすと、封印されていた力が!みたいな!」と、
ふざけた口調で、虹色の石に手をかざすー。

「おいおいおい、兄貴、大学生だろー?
 一体いつまで子供みたいなことー」
寛太が呆れ顔でそう言いかけたその時だったー。

突然、虹色の石が、7色の光を発し始めるー。

「ーえっ!?えっ!?えぇっ!?」
ふざけた口調で、石に手をかざしていた兄・隆也も
まさか本当に何かが起こるとは思っていなかったのか、
慌てた様子で声を上げるー。

「ーーーえ…こ、この光はいったいー!?」
寛太の彼女・早緒莉も、戸惑いの表情を浮かべる中ー、
光はさらに強くなりー、やがて、三人は光の中に包まれてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーう……」
眩しい光が止みー、
目を開けると、
そこは、見たこともない草原のような場所だったー。

「ーーー…!?」
寛太は表情を歪めながら周囲を見渡すー。

見渡す限りの草原ー

”こ、ここはー!?な、なにが起きたんだー?”
寛太はそう思いながら、
「ーーーみ、みんなは!?」
と、背後を振り返るー。

がーー…
背後には兄の隆也も、彼女の早緒莉の姿もなくー、
しかもーー

自分の口から、聞いたことのない女の声が発されたー

穏やかで、癒されるような感じの声だー。

「ーーえっ!?な、なにこの声!?」
寛太が困惑した様子で表情を歪めると、
やがて、自分が”巫女服”を着ていることに気付くー

「ぶっ!?!?!?!?!?
 な、なんで俺が女装を!?」
可愛い声でそう叫ぶ寛太ー。

するとー
その時だったー。

「ソニア」
背後から声がして振り返ると、
そこには優しい雰囲気の青年が立っていたー。

「そ、そ、ソニア!?」
ソニアと呼ばれた寛太が戸惑いの表情を浮かべているとー、
「ソニアー…??」
と、心配そうに優しい雰囲気の青年が首を傾げるー。

「ーーえっ… えっ… えっ!?」
ソニアと呼ばれた寛太がそう戸惑っていると、
”口”が勝手に動いたー

「ーあ… あ、ご、ごめん!な、なんだかちょ、ちょっと疲れてちゃってー!」

勝手に口が動き、そんな言葉を口にすると、
優しい雰囲気の青年は「ちょうどこの近くに宿場があるから、今日はそこで休もう」と、
笑いながら言葉を口にしたー。

前を歩きだす青年ー。

「え…ど、どうなってー」
女の声で寛太がそう言葉を口にするとー
口が”また”勝手に動いたー

「ーーか、寛太?」
とー。

「え?」
勝手に動く口に驚きながらも、寛太は”そ、そうだけどー”と、答えるー。

すると、再び勝手に口が動きー、
「ーーわたし… 早緒莉ー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーえ!?早緒莉ー…ど、どこにいるの!?」
寛太がそう聞き返すと、
早緒莉は「たぶんー…寛太と同じ身体の中にいるんだと思うー」と、
巫女服の女の口でそう答えたー。

「ーーえぇ…?い、いったい、どういうことなんだー?」
寛太がそう言葉を口にするー。

傍から見れば、巫女服姿のソニアが
独り言をブツブツと喋っている怪しい光景ー。

そんな中、ソニアが突然、片手で胸を揉み始めるー

「えっ!?ちょっ!?何してるの!?」
早緒莉が、ソニアの口で驚きの言葉を口にするー。

「う、うわっ…な、なんだこれー!?お、俺じゃないー…!」
寛太が慌ててもう片方の手でソニアの胸を揉む手を
止めようとするー。

すると、その時だったー

「ーせっかく可愛い子になったら揉まなきゃだろ?」
そんな言葉がソニアの口から吐き出されたー。

「ーーえっ…!?ま、まさかー…」
寛太が戸惑いながら”兄貴!?”と叫ぶと
「へへへ…正解」
と、返事が返って来たー。

「ーーーか、寛太のお兄さん!?」
早緒莉がそう叫ぶー。

「ーははー、驚かせてごめんなー」

ソニアの身体の中にいたのは
寛太と早緒莉だけではなく、寛太の兄・隆也も一緒だったー。

「ーおい!いつまで揉んでるんだよ!兄貴!
 身体がゾワゾワしてきて変な感じなんだけど!」

「ーーははは、悪い悪いー」

そんな”3人の会話”ー
しかし、それを言葉にしているのは、全部ソニアの身体ー。

ソニアの”独り言”は、続くー。

「ーーーーそ、ソニアー…?」
前を歩いていた男が、不安そうに振り返るー。

「ーあ、え、えっと…な、なんでもないですぅ~!おほほほほほ」
ソニアに憑依している隆也がぎこちない返事を返すー

「ちょ、ちょっと!不自然すぎだろ!兄貴!?」
小声で寛太が言うと、
「し、仕方ないだろ!」
と、隆也が戸惑いながら言葉を返したー

「ーわ、わたしたち、いったいどうなってるんですかー?」
早緒莉が、寛太の兄・隆也に確認すると、
隆也は「俺が思うにー」と、言葉を口にし始めるー

見たこともない幻想的な光景が広がっているー。
そう、まるでRPGゲームのようなー。
そのことから、ここは自分たちがいた世界ではなく
異世界なのだと、隆也は分析するー。

そして、この世界に三人が飛ばされた理由は
あの”虹色の石”だと、思うー、と。
三人はあの時、石から放たれた光に包まれたー。
あの石が何かは分からないけれど、
ここに来た原因自体は、アレだろう、とー。

「ーけど、俺たちはこの世界で身体を持ってない
 だからこのソニアっていう巫女服のエロイ子の身体に
 憑依しちゃったー、ってことだと俺は思うけどなー」

「ーエロイとか言うなよー」
寛太がツッコミを入れると、早緒莉は
「でも…何となく合ってる気がします」と、隆也の言葉に
賛同を示したー。

「ーーーーーーで、でも、よりによって三人で一つの身体とか…」
寛太がソニアの身体で戸惑いながらそう言うと、
「ーえへへへ…俺はいいけどー」と、ソニアが再び
自分の胸の方に視線を向けるー

「おい!早緒莉もいるのに、そういうことするなって」
寛太がツッコミを入れると、
隆也は「へへへ~」と笑いながら言葉を口にしたー。

「ーで、でも、どうするんだよー?
 あの前を歩いている人が何なのか分からないし、
 この子のことも名前以外分からないしー、
 今、何をしている状況なのかも分からないしー」

ソニアが寛太の言葉を早口で言うと、

「ーそれは、ーー確かに」

と、表情を変えて、今度は隆也の言葉を口にするー。

表情も口調もコロコロ変わるソニアの様子は
やっぱり奇妙な光景にしか見えないー。

そんな中、早緒莉がソニアの口で喋り始めるー。

「ーーー…わたしに任せて」
とー。

「え?」
寛太と隆也が戸惑っていると、
ソニアの身体が二人の意思とは関係なく動き出すー

”うぉぉぉ!?勝手にか身体が動く感覚…病みつきになりそうだな!”
”変なこと言うなよ!兄貴!”

そんなことを二人が言っていると、
ソニアの身体で、早緒莉が「あの!」と、前を歩く男を呼び止めたー。

「ん?」
前を歩いていた男が振り返るー。

「あ、あの…わ、わたし、その~…
 記憶が急に、ハッキリしなくなっちゃって~…

 今の状況とか、色々、教えてくれませんか?」

目をウルウルさせながら、悲しそうにそう言い放つソニアー。

「え???え??? えぇ…?わ、わかったー…
 もうすぐ村につくからー、そしたらー」

前を歩く男のそんな言葉に、
ソニアは嬉しそうに「ありがとうー」と、言い放つー。

”おぉ、お前の彼女、やるな!”

”ーーそ、そうかなぁ?”

寛太と隆也が、ソニアの身体の中でそんな言葉を口にすると、

「ーとりあえず、記憶喪失気味ってことにしちゃったー」
と、早緒莉がソニアの口で小さく呟いたー。

程なくして、村に到着する男とソニアー。

三人で異世界に飛ばされたのに、身体は一つしかない三人の苦悩の日々は、
まだまだ始まったばかりだったー

②へ続く

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コメント

異世界に飛ばされたのに身体は1つしかない
お話デス~!☆

3人の中に見ず知らずの他人や、悪い人が混じってたら
もっと大変そうでしたネ~笑

続きはまた次回デス~!!

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