<MC>喜怒哀楽の狂う街①~異変~

人の”喜怒哀楽”をコントロールし、
必要とあれば、完全に操り人形にすることもできる狂気のライト…

その街は、
そんな、悪魔のライトにより完全に支配され、狂気に染まっていたー。

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鳥山 幸仁(とりやま ゆきひと)は、
半年ぶりに、実家に帰るために新幹線に乗っていたー。

新幹線から見える景色が、
だんだんと生まれ育った故郷の色に染まっていくー。

”やっぱ、いつ見ても、この感じ、懐かしいよなー”

言葉では言い表しにくいその感覚ー。
幸仁はいつも、”故郷”が近付いてくる景色を見つめながら、
そんな感覚を覚えるー。

大学卒業後、社会人になって丸2年ー。
人暮らしを始めて、もう2年だー。

最初の1年目は、2カ月に1回ぐらい、実家に顔を出していたものの、
最近は少し仕事が忙しくなってしまい、
今回はおよそ半年ぶりの帰郷ー。

幸仁の生まれ故郷は、地方に存在する、
それほど大きくない街で、
上京した幸仁からとってすれば、
”今いる環境とはずいぶん違う”雰囲気の街だー。

それ故に、こうして久しぶりに帰ってくると無性に懐かしくなるー。

新幹線がようやく目的地に到着し、
生まれ故郷のある街に向かうため、
そこから私鉄に乗り換えて、その場所へと向かうー。

ようやく、たどり着いた生まれ故郷の街ー。

幸仁は”帰って来た”ということを、
心の中で実感しながら、駅から出て、
実家に帰る前にお土産を買っていこうかと、急に思い立った幸仁は、
近くにケーキ屋があったはず、とゆっくりその場所に向かって歩き始めるー。

がー…
その時だったー

「おぉ!鳥山くん?鳥山くんじゃないか!」
嬉しそうにおじさんが近寄って来るー。

「え…?」
幸仁は急に声を掛けられて、一瞬驚いたような表情を
浮かべたものの、すぐにその相手の顔を思い出し、
「あ、本屋の…!お久しぶりです」と、
頭を下げるー。

夏目漱石のような髭が特徴的な、
本屋のおじさんー。

学校からの帰り道にその本屋があったこともあって、
小さい頃からよく、その本屋に足を運び、
受験関係の真面目な本から、就職関連の本、
それに漫画なども買った、馴染の本屋だー。

実家を離れてからは、流石に、このおじさんの書店で
本を買うことはなくなってしまったけれど、
幸仁にとっても、とてもお世話になったおじさんだー。

「ーいやぁ、まさか鳥山くんとこうして、再会できるなんてー…
 今日はなんて喜ばしい日なんだー」

本屋のおじさんがそんな言葉を口にするー。
元々気さくなおじさんだが、そんなにも、
幸仁の帰省を”喜んで”くれるとは思わなかったー。

「ーーあはは…そんなにですか?
 でも、ありがとうございますー」
幸仁がそんな風に言うと、本屋のおじさんは妙に嬉しそうに、
「ー今日はお祝いしないとな!」と、そんなことまで口にし始めるー。

「ーーな、何だかご機嫌ですねー」
幸仁が、苦笑いしながら本屋のおじさんにそんな言葉を投げかけると、
「あぁ、最近妙に嬉しいことばかりでねー」と、嬉しそうに
色々なことを喋り始めるー。

がー、話の内容を聞いて、幸仁は少しだけ表情を歪めるー。

本屋のおじさんの”喜び方”が尋常ではないー。
しかも、本屋のおじさんが、異様に嬉しそうに話している内容は
正直”ここまで喜ぶことなのか?”と首を傾げてしまうような内容ばかりー。

もう、おじさんもそれなりの年齢だー。
そんなことは考えたくないけれど、もしかしたら感情のコントロールが
上手く行かない、そんな年齢になりつつあるのかもしれないー。

やがてー、本屋のおじさんとの会話を終えて、
近くのケーキ屋にたどり着くと、
そのお店に入り、実家へのお土産として持って行くケーキを
選び始めるー

「あ!鳥本くん!久しぶり~!
 来てくれたんだ~!」

ケーキを選んでいる最中にそんな声が聞こえて、
その方向を向くと、
そこには、高校時代の同級生・雅美(まさみ)の姿があったー。

「ーーあ、倉井(くらい)さんー。久しぶりー」
幸仁がそう言うと、雅美も、幸仁との再会を”異様に”喜んでいる様子で、
「ーー店長!!鳥本くんが来てくれました!」と、嬉しそうに、
店長にまで声を掛けに行ってしまうー。

「ーあらぁ…久しぶりー。こっちに戻って来たの?」
ケーキ屋の店主とも、それなりに面識があるー。

元同級生の雅美と、店長は、幸仁が帰って来たことを
”異常なまでに”喜んでくれたー。

「ーーー…え…えっと、な、なんだかみんなー、今日は嬉しそうですねー
 何かあったんですか?」
幸仁がそんなことを言うと、
雅美は「うんうん!昨日からなんだかいいこと続きで!」と、
ハイテンションな様子で言葉を口にしたー。

「ーーーー…」
幸仁は少し首を傾げながら、ケーキを選び終えると
それを購入して、ようやく実家へとたどり着くー。

「ーーただいま」
実家に入り、幸仁がそう言うと、
「お兄ちゃん~~~!!!」と、嬉しそうに
現在大学生の妹・美奈(みな)が抱き着いて来たー

「ぶわっぷ!?」
美奈に抱き着かれて驚いた表情を浮かべる
幸仁ー。

「ーーお兄ちゃんと会えてうれしいー…!」
美奈は、とても喜んでいる様子でそう言うと、
嬉しそうに、色々なことを話し始めるー。

「ーーあ!お帰りなさいー」
母親の佳代子(かよこ)も同じー。

やはり、”異様なまでの喜びよう”で、
机の上には既に、異常な量のごちそうが並んでいたー。

父親の和人(かずと)も、同じだー。

「ーみ、み、みんな大げさじゃないかー?」
幸仁が苦笑いしながら言うと、
”妙にハイテンションな両親と妹”に囲まれながら、
早速”お祝い”ムードで、食事が始まってしまったー。

「ーーーーーーーーーーーーーー」
夜ー。
実家での、久しぶりの1日を過ごした幸人は、
困惑の表情を浮かべていたー。

”なんなんだー…みんな、妙にご機嫌というかー
 俺が帰ってきたことを喜んでくれているというかー”

そんなことを不思議に思う幸人。

確かに、近所での評判は悪くなかったし、
本屋のおじさんが声をかけてくれたり、
高校の時の同級生・雅美が声を掛けてくれたりするのはー
そこまで異常なことではないー。

だが、問題は”あまりにも喜びすぎ”なことだー。

本屋のおじさんにはよく世話になったとは言え、
近所の子供、そして今では店主と常連客の立場であることには
違いはない。
それなのに、あの喜びようは一体何なのか。

雅美にしてもそうだー。
雅美とは、同じクラスだったこともあり、”それなりに”話すことはあったー。
しかし、あくまでもそれだけであり、
”普通のクラスメイト”の間柄だー。
彼女と彼氏の関係ではなかったし、”女友達かどうか”と言われると
正直、そこまでの間柄である自信はない。
向こうはどう思っているか分からないけれど、
少なくとも、向こうからも特別な感情を抱かれていたとは思えない。

が、あの喜びようだー。
まるで、遠距離恋愛の彼氏と久しぶりに会ったかのような、そんな勢いにも思えたー。

”ーー…いったい、なんなんだろうなー…”
幸人はそう思いながら、静かに眠りにつくー。

”この街”に起きている恐ろしいことを知らずにー。

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数日前ー

「ー洗脳ライト”キ・ド・アイ・ラク”?」

サングラスをかけた男が不思議そうにそんな言葉を口にするー。

「えぇ、えぇ、このライトは、相手の感情をコントロールするタイプの
 洗脳装置でしてねー
 赤は怒りー、黄は喜びー、緑は楽しいー、青は哀しみー
 つまり、人間の喜怒哀楽を増幅させる力を持つライトです。」

商人風のうさん臭い髭の男がそう言うと、
サングラスをかけた男は「ほぅ」と、興味深そうに頷くー。

「この横のバーで、どのぐらいのレベルで感情を増幅させるかどうか
 設定も可能でしてー、
 0~5レベルまで用意されています。
 ただ、5の横に髑髏マークがついていることからもお分かりいただけると思いますが、
 5は、あまりにも強くその感情を引き出してしまうため、
 何が起きるかは、保証しかねます」

「ーーほぅ。それでその黒いライトは?」
サングラスの男が確認すると、「これは、相手を意のままに操るライトでございます」と、
商人風の男はそう言葉を口にした。

「なるほど。感情を操るだけではなく、純粋な洗脳もできるということだな」

「左様でございます」

そんなやり取りを終えると、
商人風の男は言うー。

「どうですー?ツカモト様ー
 このライト、お気に入りいただけましたかー?」

商人風の男の言葉に、サングラスの男は笑みを浮かべると、
「1000」
と、言葉を口にするー

「はい?」
商人風の男は首を傾げるー。

「”1000”買おうと言ったんだ。用意できるか?」
サングラスの男の、あまりにも莫大な数の要求に、
商人風の男は一瞬気圧されながらも、
「は、は、はい、喜んでー…し、しかし、そんな数、何に使うおつもりでー?」と、
すぐに準備を始めながら言葉を口にするー。

すると、サングラスの男は笑みを浮かべたー。

「なに。そのキ・ド・アイ・ラクとやらを”上空”から使えるように
 カスタマイズしようと思ってなー。
 そのために、数が必要なのだ」

「じ、上空からー?」

商人風の男が、うさん臭い表情に”恐れ”の色を浮かべると、
サングラスの男は、サングラスの越しでも、
その悪意がハッキリと伝わるように微笑んだー。

「ーーーヘリコプターから、そのライトを街中に照射してー、
 ”街ごと洗脳”するのだー」

とー。

そしてー…
この取引の数日後、それは実行されたー。
1000にも及ぶライトを分解、改造し、ヘリコプターに搭載ー。
ヘリコプターから、街に向かって照射することで、
街の住人の大半を”洗脳”してしまったのだー。

ちょうどー
”それ”が行われたのが帰省した幸仁の”故郷”の街ー。
幸仁が帰省する前日に、
”キ・ド・アイ・ラク”の”黄色”のライトが街中に照射され、
街の住人は”喜”の洗脳を受けたー。

幸仁との再会を、本屋のおじさんや元同級生の女子が
”異様に喜んでいた”のはそのためだー。

そしてー

「ーーツカモト様ー…”赤”でお間違いないですか?」
ヘリのパイロットがそう言うと、
「あぁ、問題ないー」と、
サングラスの男が笑みを浮かべるー。

”赤”は、怒りの感情を引き出すライトー。

「ーーー…”レベル5”に設定しろー」
ツカモトはそう呟くと、ニヤリと笑うー。

それはー、
暴走の危険性がある”破滅のレベル”
洗脳の力を最大限まで高めた、禁断のレベルー。

”このライトの威力をじっくり試させてもらおうー
 効力によっては、我ら”ガルフ”が、世界各地でこのライトを利用しー、
 敵対組織を丸ごと壊滅させることもできるかもしれぬー”

ツカモトは、そんなことを思いながら
この街を、入手したライトの実験台とすべく、赤いライトをヘリコプターから
照射したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー!?」
寝ていた幸仁は、異変を感じて目を覚ますー。

「ーーーえ…?」
”窓の外”から、赤い光が差し込んでいるー。

「ーーなんだ…これ…?」
幸仁は目を細めるー。

「ーーー……」
見えにくそうに、右目だけを何度もこする幸仁ー。

窓から覗く限り、上空のヘリコプターが
赤いライトを街中に照射しているようだー。

そしてー…程なくして、夜中だというのに、
街中から怒鳴り声や悲鳴ー
色々な声が聞こえ始めたー。

「ーーな、なんだー?」
そう声を上げながら、幸仁が家の外に出るとー
そこでは、街の住人たちが殴り合いや喧嘩をしている光景が目に入ったー。

「ーーこのクソ女が!いつも可愛い子ぶりやがって!」
「あんたこそ!なんなのよ!」

目の前でカップルが殴り合いをしているー。

とても優しそうな雰囲気に見える二人ー。
彼女の方が、彼氏の頭を鞄で殴りつけて、
彼氏が、彼女の首を絞めているー。

「お、おいっ!」
幸仁が慌てて声を掛けるー。

がー、幸仁の呼びかけを無視して、彼女は彼氏の急所を
蹴り飛ばすと、今度は彼氏の首を絞め始めるー。

「ーーーな、なんなのー!?」
背後から、母親の声がしたー。
騒ぎを聞きつけて、父親も出て来るー。

しかしー
直後、二人も赤いライトを浴びてー、
突然、豹変したー。

お互いに罵倒を始める二人ー。

「ーか、母さん!?父さん!?
幸仁は驚きながら二人を止めようとするー。

が、最初に止めようとしたカップルの乱闘も止まらないー。

いや、それだけではないー。
街中が、地獄と化しているー。

夜中の時間帯で寝ている住人も多かったものの、
”騒ぎ”を聞いて、外に出たり、外を覗いたりして
”洗脳ライト”の餌食になってしまい、あっという間に洗脳は広がっていくー。

何が起きているのかも理解できないまま、
幸仁は、困惑した表情を浮かべることしかできなかったー

②へ続く

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コメント

”洗脳ライト”によって、街中が洗脳されてしまうお話デス~!

今のところ、幸仁くんは、何も起きていないみたいですケド…★笑

続きはまた明日デス~!!

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MC<喜怒哀楽の狂う街>

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