<憑依>三人で異世界転生したのに身体はひとつ!?②~意識~

謎の虹色に輝く石から放たれた光によって、
異世界の巫女に憑依してしまった三人ー。

三人で異世界に飛ばされたのに、身体は一つしかない…
そんな彼らの運命は…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

村の宿場に到着すると、
巫女・ソニアと一緒に行動していた男が、
宿場の一角のテーブルのところまでやってくると、
そのままそこに着席したー。

ソニアは、巫女服に落ち着かない様子を見せながら
着席すると、手に持っていた錫杖のようなものを
近くに置いたー

「ーー”記憶”がハッキリしないって言うのは、本当かい?」
男が言うー。

「ーーあ、はいー… えっとー、そのー
 自分の名前ぐらいしか、分からなくてー」
ソニアの身体で、早緒莉がそう言うと、
男は考える仕草をしながら、
「やはり、さっきのー…」と、言葉を口にするー。

「ーさっきの?」
ソニアが聞き返すと、
「ーーあぁ…さっき、”魔晶石”を破壊しただろ?」と、
男は言うー。

”魔晶石ってなんだ?”
”さぁ…”

寛太と兄の隆也がソニアの身体の中でそう言葉を交わすと、
早緒莉はソニアの身体で「ごめんなさいー…それも覚えてなくて」と、
”記憶喪失したソニアのフリ”をして、言葉を口にしたー。

「ーーーーそ、それも覚えてないのかー」
戸惑う男ー。

すると、男は「僕のことも?」と、
言葉を口にするー。

ソニアは頷くと、男は苦笑いしてから、
「そっかー」と、少し寂しそうに言葉を口にしたー。

「僕はティム。各地の魔晶石を破壊するために各地を回っているー」

青年はそう名乗ると、細かく状況を説明してくれたー。

この世界は、やはり寛太たちのいた世界とは別次元のようでー、
最近は各地で魔物が狂暴化しており、
その原因となっているのが、世界に5か所ほど確認された
”魔晶石”ー。
しかし、各地では魔物による事件が多発していて、
王宮騎士団はその対処をするのがやっとの状態ー。

そこで、王国は各地にいる傭兵たちに魔晶石の破壊を依頼、
ティムも、そんな依頼を受けた傭兵の一人で、
先程、この地方に存在する魔晶石の破壊に成功したのだと言うー。

が、時空を切り裂いて出現したと言われている魔晶石は、
破壊した際に膨大なエネルギーを発し、
一瞬、光に包まれたのだと言うー。

「ーーてっきり、何の影響もないと思ってたけどー、
 ソニア、君が記憶を失ってしまったのは、
 魔晶石を破壊したことが原因だと思うー」

ティムがそう言うと、
ソニアに憑依している早緒莉は言葉を口にしたー

「そ、その魔晶石ってもしかして、虹色だったりしますか?」
ソニアの言葉に、ティムは「ーーそう!そうだよ!記憶が戻ったのか?」と
嬉しそうに言うー。

「あ、いえー…」

「ーー虹色ー…寛太が拾った石と同じ色だなー」
寛太の兄・隆也がソニアの口で呟くー

「ーーお、俺のせいー!?」
寛太がソニアの口で戸惑うとー、

「ーちょっ!今は静かにしててー」
と、早緒莉がソニアの口で言うー。

ソニアが小声でボソボソ言いながら、
表情を奇妙に変えているのを見て、
ティムは表情を歪めるー。

「ーーあ、いえ!なんでもないです!」
ソニアの身体で早緒莉が慌てて言うと、
「ーそれにしても”いつもの君”とは全然別人だなー」
と、ティムは寂しそうに言うー。

「え、あ!はいーーごめんなさいー
 記憶がー」

早緒莉は”巫女さんってこんな感じかな?”というイメージで
話をしていたが、どうやら”普段のソニア”とは全然違ったようだー

「ーーーえ…じゃあ、こんな感じだったりするのか~~?」
ソニアの身体で隆也が触ろうとするー

「おい!兄貴!バカッ!」
そう言いながらソニアの身体で、ソニアの頭を叩く寛太ー。

「ーーいてて…冗談だってー」
「ー冗談言ってる場合じゃないだろー?」

ボソボソと言葉を口にするソニアに、
ティムは唖然としていると、
「ーーご、ごめんなさいー あはははは」
と、早緒莉はソニアの身体で言葉を口にして、誤魔化したー。

「ーとにかく、ソニアの調子が戻るまでは
 しばらくここで休もうー。
 魔晶石の破壊には、君の力も必要だからねー」

ティムはそんな言葉を口にすると、
ソニアは戸惑いながらも静かに頷いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

宿場の部屋で、
ソニアが嬉しそうにウロウロしているー

「いやぁ~すっげぇなぁ~!マジでRPGゲームみたいだ」
ソニアの身体で嬉しそうにしている寛太の兄・隆也ー。

「ーおいおい、兄貴はお気楽だなぁ~
 元の世界に帰る方法も考えないといけないのにー」
急に笑顔を消して、ため息を吐くソニアー。

「ーでも、なんかこういうところに泊まるのはちょっとワクワクするかも!」
ソニアがまた急に笑顔になって、早緒莉がそう言い放つー

「えぇっ!?早緒莉まで!
 試験も近いのに、こんな世界にいつまでもいるわけには…!」
笑顔から困惑の表情に戻ってそう言い放つソニア。

さっき、ティムから聞いた限りでは、
ソニアとティムの出会いは、
”森で魔物に襲われている最中”の巫女・ソニアを
偶然通りがかったティムが救出したことによるものだったようだー。

ソニアは、森の中で、病気の母親の治療をするための
薬草を摘んでいる最中だったのだと言うー。

「ーーー…早く、このソニアちゃんにも身体を返してあげないとねー」
ソニアの身体で、早緒莉がそう言うと、
「自分のことを、他人みたいに呼ぶやつ、興奮するぅ!」と、
ソニアの身体で、隆也がそう叫んだー。

時間が遅くなりー、
夜を迎えるー。

”寛太”が寝て、”早緒莉”が寝て、”隆也”が寝てーーー

「ーーーーー」
いやー
”隆也”だけは寝たふりをしていたー

二人の意識を感じられなくなったタイミングで、
ソニアはむくりと起き上がると、
笑みを浮かべるー。

「は~~巫女服の美少女とか、エロすぎるだろー」
鏡の前に向かっていくと、巫女服姿のまま
ソニアはニヤリとするー

思わず、じゅるりと涎を垂らしながら
下品な笑みを浮かべると、
そのまま両胸を揉み始めるー

「えへへっ…今なら揉み放題ー
 わたしのおっぱい揉み放題ー
 えへへへー」

ソニアが笑いながらそう言い放つー。

「ーーソニアだよ♡」
可愛いポーズをしながら甘い声を出してみるソニアー。
今、残りの二人は寝ている状態ー。
この状態なら、好きなだけ楽しむことができると隆也が
ニヤニヤとしているその時だったー

”変態!”

そんな声がソニアの口から漏れ出したー。

「ーーえっ!?!? えっ!?」
ソニアの身体で隆也が狼狽えると、
「変態!変態!へ~んたい!」と、
ソニアが何度もそんな言葉を口にしたー

「ーーう…さ、早緒莉ちゃんだよなー…?
 こ、これは、そのー」

そう言いかけると、
ソニアの口から「さおり?」と、言葉が漏れたー

「ーち~が~う!早緒莉なんて名前じゃない!」
ソニアの言葉に、
隆也は首を傾げながら、ソニアの表情を歪めると、
少し考えてから言葉を口にしたー

「じ…じゃあ、寛太かー?」
弟の寛太の名前を口にするー

「は~~~?あんたバカ?
 わたしはこの身体の持ち主!!所有者!!!」

ソニアの口から怒りの言葉が吐き出されるー。

「し、しょゆうー…
 ま、まさかー…!」

ソニアの口で、隆也が驚いた様子で叫ぶと、

「ソ・ニ・ア! 本物のソニア!!!」
と、ソニアは言葉を口にしたー

「ーーげげっ!」
怒りの表情を浮かべていたソニアが、
急に焦りの表情に変わると、
「ーこ、こ、こ、これは、その、ですねー」と、
ソニアの身体で勝手にHなことをしようとしていたことを
どう言い訳しようかと、必死に頭の中で考えるー

「大体、人の身体の中にドシドシと土足で入ってきてー
 あんたら、何なのー?

 まぁ、面白いからずっと黙ってみてたけどー」

ソニアの言葉に、
隆也はソニアの身体で
「え…?え、最初から意識あったんですか!?」
と、言葉を口にするー。

「ーうん。なんか、面白そうだなって思ってー。
 ティムの反応も笑えたしー!」

ソニアが笑いながら言うー。

「ーーティムってば、あのぽか~んとした顔見た?
 あははっ!思い出すだけで笑えちゃう!
 あははははっ!」

ソニアが夜にも関わらず、平気で騒がしく笑い始めたことに驚きー、
隆也は、慌ててソニアの手を動かして口を塞ぐー

「むぐ…な、な、何するのよ!」
不貞腐れた表情のソニア。

「な、何って…い、今は夜だろ…?静かにしないと!」
隆也がソニアの口でそう言うと、
「ふ~ん…夜に勝手にわたしの胸を揉もうとしていた人に
 言われたくないんだけど~?」と、
嫌味っぽくソニアに返されてしまったー。

「ーぐぐぐ…」
頬を膨らませていたソニアが、急に悔しそうな表情を浮かべるー。

相変わらず、色々な人間が思い思いに身体を動かしている故に、
その表情は安定しないー。

それからも、ソニアと子供のような言い合いを続ける達也ー。
やがてー、ソニアの身体に憑依している弟の寛太と、
寛太の彼女の早緒莉も目を覚ましてしまうー。

「ーえっ!?そ、ソニアさんー!?」
早緒莉がソニアの口で驚くー。

「ーご、ご、ごめんーお、俺たち、好きで君に憑依したんじゃないんだー
 これは、事故でー」
ソニアの口で、寛太もそう言葉を口にするとー、
「まぁ、ずっと話を聞いてたから、大体、そんな感じだってことは
 察しはついてるけど」
と、ソニアはため息をつきながら言葉を口にしたー。

これでー、ソニア本人を含めて、
4人の意識が、ソニアの身体に居座っている状態、ということになるー。

ソニアと寛太、寛太の兄の隆也、そして寛太の彼女の早緒莉ー。
4人で、一つの身体ー。
生活には大分支障が出るし、かなり無理があるー。

ソニアに、事情を改めて詳しく説明する寛太たちー。

夜の宿場で、一人ボソボソと喋り続けているソニアは、
事情を知らない人間から見れば
”かなりヤバい巫女”にしか見えないー。

話しているうちに、寛太も、隆也も、早緒莉も
昼間にティムが言ってた言葉を思い出すー

”「ーそれにしても”いつもの君”とは全然別人だなー」”

そんな、言葉をー。

見た目は大人しそうで、清楚な雰囲気なのにー、
こんな、明るくて人を揶揄うようなタイプの子だとは思わなかったー。

「ーーな…なぁ…君、見た目と中身が全然違う気がするけどー、
 本当にこの身体の持ち主ー?」
寛太の兄・隆也が思わず苦笑いしながらそんな言葉を口にするとー、
「は、はぁ!?人を見た目で判断しちゃダメでしょ!?」と、
ソニアは自分の頭をぽかぽかと叩いたー

「いたっ!」
”自分の中にいる隆也”を叩いたつもりが、
自分が痛みを感じながら、ソニアは
「ーこれでも、わたし、ちゃんと巫女としての力は強いんだからね!」と、
不満そうに言葉を口にしたー。

そしてーーー

「ーー魔晶石のせいで、わたしたちの世界に来て、
 わたしの身体に入りこんじゃったならー、
 また別の魔晶石の所に行けば、わたしの身体から出て、
 元の世界に戻れたりするんじゃないかなぁ」

と、ソニアは言葉を口にするー。

「た、確かにー!
 話を聞いた感じ、俺が学校帰りに拾った綺麗な石は
 魔晶石の破片っぽかったしー…」

ソニアの口で寛太が言うー。

”魔晶石”には膨大な魔力が込められているー。
破壊の際に時空が歪んで、破片の一部が
寛太たちの世界の方に飛んでしまい、
それを拾ったことで、寛太たちがこっちの世界に
飛んでしまったのではないか、と、ソニアは説明したー

「ーー君ー、意外と頭いいなー」
隆也が、ソニアの口でそう言うと、
「それは失礼ですよー…お兄さんー」
と、寛太の彼女・早緒莉が呆れ顔でーー…
もちろん、ソニアの身体で言葉を口にしたー

「げげっ!早緒莉ちゃんー…」
弟の彼女の指摘に、隆也は落ち込んだ様子でそう言うと、
ソニアは「まぁ、とにかく、明日!ティムに相談してあげるから!」と、
得意気な表情を浮かべながら、
「ーソニアさんに任せておきなさい!」と、
ドヤ顔をしながら言い放ったー。

翌朝ーーーー。

ティムは「えぇっ!?」と、驚いた表情を浮かべるー。

だが、ソニアの言葉に納得したのかー、
「ーじゃあ…昨日、僕と話をしていたのはー
 ソニアに取り憑いてた別のひとー?」
と、困惑の表情を浮かべるー。

「騙すようなことして、ごめんなさいー」
ソニアの身体で早緒莉が謝ると、
「いやいやいや、気にしないでくれー」と、ティムは
遠慮がちに言ったー。

「ーちょうど、3日ぐらいの距離の所に”2個目の魔晶石”があるー。
 そこに行けば、元の世界に戻る方法も見つかるかもしれないー。」

そんな言葉に、
ソニアは「よーし!早速行っちゃおー!」と、嬉しそうに声を上げるのだったー。

③へ続く

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コメント

4人で一つの身体を利用…★
なんだか、とっても大変そうですネ~笑

明日が最終回デス~!!

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