<憑依>僕は先生の身体で奴らに復讐する~後編~

先生に相談しても、助けてもらうことが出来ずに
怒りに震えていたいじめられっ子。

そんな彼の”復讐AI”を手にしての復讐は
終わりを迎えようとしていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”ふふふー
 どうだい?女の身体には慣れたかいー?”

”復讐AI”のそんな言葉に
曽根崎先生は笑みを浮かべながら
「うんー。最初はドキドキしっぱなしだったけどー」と、
言いながら、自分の姿を鏡で見つめながら
色々なポーズを取っているー。

残るいじめっ子は杉島 渥美ただ一人ー。

自分の身体は今、昏睡状態に陥っていて、
両親は、意識の戻らない武信のことを心配している状態ー。

しかし、武信はその状況にも、喜びを感じていたー

”僕がいじめを受けていることを、心配もしなかったくせにー。
 少しは心配させてやるんだ!”と。

これも、復讐ー。

両親への復讐ー
曽根崎先生への復讐ー
そして、いじめっ子たち張本人への復讐ー。
それらを全て、”復讐AI”の力を借りて、果たすのだー。

”最後の復讐はサクッと終えようじゃないかー”
復讐AIがそう言い放つー。

「どういうことー?」
曽根崎先生がそう言うと、復讐AIは笑みを浮かべたー。

”元の身体に戻る前に、曽根崎先生に”傷”をつけておくのが
 最高の復讐だとは思わないかい?”

そんな復讐AIの言葉に、
曽根崎先生は不気味な笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

曽根崎先生になった武信は、
杉島渥美を屋上に呼び出そうとしていたー。

その目的はーー
”杉島渥美”を屋上から突き落とすためだー。

これが、復讐AIの提案した、最後の復讐ー。

表向きは優等生である渥美を、
最初に仕留めた孝義のように無理矢理停学に追い込んだりするのは難しいしー、
2番目の仕留めた高井戸健太郎のように、
色仕掛けで破滅させることも難しいー。

渥美が女同士のそういうことに興味があれば話は別だが
その可能性は低そうだー。

だからこその”実力行使での排除”

そしてー、
これが最後の復讐相手ー。
杉島渥美を葬れば、もう曽根崎先生の身体は必要ないー。

杉島渥美を”曽根崎先生”の身体で突き落とすことでー、
曽根崎先生に対しても”復讐”するのだー。

がー
予想外の出来事が起きたー。

曽根崎先生が渥美を呼び出す前に、
渥美側から”先生、お昼にお話があるのですが”と、屋上に
呼び出されたのだー。

困惑しながらも、曽根崎先生は渥美の待つ屋上へと向かうー。

屋上に到着すると、すぐに待ち構えていた渥美が姿を現して、
少し目を細めながら言葉を口にしたー。

「ーーー昨日、先生の話を聞きましたー」
とー。

「ーえ」
少し狼狽える曽根崎先生ー

「誰かとスマホで話してましたよね?
 誰と話してたんですか?」

少し脅すような口調で言う渥美ー。
普段は真面目に見える渥美だが、こういう”裏”の顔があるー

そう、武信を神室孝義らと一緒にイジメていた時の”顔”だー。

「ーーーべ、別にー。
 先生の仕事は色々忙しいのよ」

曽根崎先生として、そう誤魔化そうとする武信ー。

「ー本当に、そうですか~?
 わたしが聞いた感じだと、
 神室くんと高井戸くんをまるで”はめた”ような
 話をしてましたけど~?」

渥美がニヤリと笑うー。

「ー女の身体を使ってどう、とかー。
 高井戸くんをそうやって誘惑して破滅させたんですか?」

渥美のそんな言葉に、
曽根崎先生は「ーち、違う!」と、焦りながら叫ぶー。

先生としての振る舞いを忘れそうになりながら、
焦りの表情を剥き出しにするー。

「ーーーーーもう十分です。
 先生のこと、他の先生に伝えますから」

渥美はそう言い放つと、そのまま屋上から
立ち去って行こうとするー。

”憑依”のことまで感づいたわけではなさそうだがー、
少なくとも、神室孝義と高井戸健太郎の二人の停学処分に
”曽根崎先生”が絡んでいることまでは悟られたようだー。

まぁ、このまま放っておけば、神室か高井戸、そのどちらかから、
話は聞くだろうけれどもー、
こうして直接問い詰められるのは予想外だったー。

「ーあ、それと先生ー。
 電話で誰と話していたのかもー、
 ちゃんと、付き止めますから」

渥美が振り返りながらそう呟くと、ニヤリと笑うー。

「ーーえ… えっ… えー」
曽根崎先生の身体で、酷く狼狽える武信ー。

”復讐AI”のことまで知られてしまうのは流石にまずい。
最悪の場合”憑依”にまで、渥美がたどり着く可能性もあるー

「え、えっとー ちょ…ま、待って!」
曽根崎先生として、何とか言葉を吐き出したその時だったー

”落としちゃえ”

「ーーえ!?」
曽根崎先生が、思わぬ”声”に驚くー。

そうー
復讐AIの声だー。

”屋上にいるんだー
 大人の女と女子高生なら、君の方が力があるー。
 あの子を落としちゃえ”

復讐AIの恐ろしく残酷な言葉ーーー

”憑依がバレたら君はおしまいだー。
 けど、曽根崎先生の身体で杉島渥美を落としても、
 罪に問われるのは曽根崎先生だけ。
 そうだろうー?

 目を覚ましたら殺人鬼になってたー
 この先生にも最高の復讐になるじゃないかー

 そしてー
 その上、君は罪には問われないー

 どうだい?これ以上の方法はないはずだー。

 君の身を守りー、
 相談をしても気味を守ろうとしなかった曽根崎先生に”殺人鬼”の肩書を与えー、
 君をいじめていた杉島渥美もただでは済まないだろうー。

 後は君の気持ちひとつ次第だよ”

復讐AIが面白そうに笑うー。

「ーーーーー…僕はー」
わずかに迷いの色を浮かべていた曽根崎先生ー。

しかしー…
今までの憎しみー、その全てを思い出しー、
気付いた時には怒りの雄たけびを上げながら、
杉島渥美の腕を掴んでいたー。

「ーえっ!?ちょ、ちょっと!」
渥美が叫ぶー。

「ーうるさい!!!これはお前のような悪党に対する”指導”なんだー!
 お前を、裁いてやる!」

そう叫ぶと、曽根崎先生は強引に悲鳴を上げる渥美の腕を掴み、
屋上の端の方まで歩いていくー。

”そうだー。復讐だー!あはは!復讐を果たせ!”
復讐AIが嬉しそうに笑うー。

そんな声も耳に入らないぐらいに、
今までの憎しみを爆発させた武信ー
いいや、武信に支配されて怒り狂っている曽根崎先生はー、
渥美が悲鳴を上げるのをお構いなしに、
渥美の腕を引っ張り続けるー。

確実に、悲鳴も聞こえているだろうー。
けどー、罪に問われるのは曽根崎先生ー。

これは、”見て見ぬふり”をしようとした
先生に対する復讐でもあるのだーー

「ーこ、こんなことして!!ただで済むと思ってんの!?」
渥美が、先生に対する敬語も忘れてそう叫ぶと、
曽根崎先生は笑ったー

「別にいいのー。わたしは殺人女教師になるんだからーうふふふ♡」
冷たい目でそう言い放つと、曽根崎先生は、
下に人が集まっているのもお構いなしに、
堂々と渥美を突き飛ばしたー

「い…いやあああああああああ!?」
渥美の悲鳴が、身体ごと落下していくー
曽根崎先生は、思わずその場で狂ったように笑いだすー。

「復讐を成し遂げたー」
「僕は、復讐を成し遂げたぞー!」
「あは!あっはははははははは!あはははははは!」

目から涙がこぼれるぐらいに笑い狂うと、
「ーこれから、先生も大変ですねー。
 でも、僕がもし、あのまま復讐AIと出会わずに自殺してたら
 どっちみち先生は殺人を犯したようなものだったしー。
 これが、先生の罪ですからー」
と、冷静に呟いてー、
そのまま曽根崎先生の身体から抜け出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー」
満足そうな表情を浮かべる武信ー。

あのあと、自分の身体に戻った武信は
意識を取り戻したー。

だが、疑われないように”念のため”数日は
見知らぬ女子大生の身体で過ごしー、
存分にその身体を楽しみー、
自分の身体へと戻ったー。

一連の”いじめっコたちへの復讐”が終わった直後に
今まで意識を失っていた武信が急に目を覚ませば
万が一にも、疑われる可能性も0ではない。

そのため数日間、別の身体に憑依して
それから元の身体に戻ったのだー。

結局ー
神室孝義は自主退学ー、
イドケンこと、高井戸健太郎は停学後に退学となったー。
そして、杉島渥美は転落してそのまま死亡しているー。

当然、正気を取り戻した曽根崎先生はそのまま
殺人罪で逮捕され、先生としてそのまま職務を続けることは出来ずー、
学校からー、曽根崎先生といじめっ子三人は
それぞれ異なる形で”追放”されたのだったー。

”復讐AI”はあの後、声を掛けて来なくなりー、
憑依するためのアプリの機能も、勝手に停止されていたー。

女の快感を味わった武信は”もう憑依できない”という現実に
少し寂しい気持ちを覚えたものの、
何食わぬ顔で、自分の元の日常へと戻っていくのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

曽根崎先生は、身に覚えのない罪で、
刑務所暮らしとなり、絶望していたー。

「ーーーーーー」

だが、そんなある時だったー。

”やぁー”

ふと、声がしたー。

そこには、あるはずのないスマホが落ちているー

「な…なにこれー…」
曽根崎先生が呆然としながら言うと、
”僕は復讐AI!ここにスマホがある理由は言えないし、気にしなくていい”と、
そんな声が響き渡るー。

「ふくしゅう…AI?」
曽根崎先生が首を傾げると
”君を殺人鬼に仕立てた犯人を僕は知ってるー。
 そいつに、復讐したいとは思わないかいー?”と、
武信に語り掛けていたのと同じような口調で、静かにそう呟いたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1時間後ー

”やぁ、久しぶりだねー”

突然、スマホから復讐AIの声がして、
武信は「うわっ!」と驚きの声を上げるー。

”急に脅かせてすまないねー。
 ”憑依のテスト”に付き合ってくれたお礼に、
 一つだけ教えてあげようと思ってねー。”

復讐AIの言葉に、
武信は「おせっかいなAIだなー」と、笑いながら
スマホを見つめるー。

すると、復讐AIは言葉を口にしたー

”君は、間もなく殺される”
とー。

「ーえ?」

”僕を使った”曽根崎先生”が間もなく君に憑依して
 君を殺すー
 さっき、曽根崎先生が僕の力を使って幽体離脱したよー”

その言葉に武信は「えっ!?ど、どういうことだよ!?」と、
必死に叫ぶー。

するとー、復讐AIは笑ったー

”刑務所にいる曽根崎先生に本当のことを教えたー。
 そしたら、曽根崎先生は”復讐AI”を使って
 君に復讐することを決めたよー”

その言葉に、武信は
慌てた様子で「えっ…えっ!?ぼ、僕が憑依されるってことー!?」と、
叫ぶと、復讐AIは”そう”とだけ、答えたー。

「ーーえ…え… こ、困るよそれじゃ!ぼ、僕を助けてくれるよね!?
 何か、方法はー!?」
武信がそう叫ぶと、復讐AIは笑ったー

”ないよー。もう、”憑依”の実験は済んだー。
 君から得られるデータは、手に入ったー”

復讐AIが言うー。

これは、開発中の”憑依アプリ”の人体実験ー。
副作用などの調査ー、そして憑依アプリとは別に
人間は復讐心でどこまで”鬼”になることが出来るかー、
そういった部分も調査しているのだと、

そう、復讐AIは説明したー。

武信が復讐AIを見つけたのは偶然ではなく
復讐AIを開発する企業が、
”ちょうどいい相手”を見つけて武信に復讐AIを手にさせただけー。

「ーふ、ふざけるな!な、何が実験だ!え、AIのくせに!
 ぼ、僕を、僕を助けてくれよ!」
武信がそう叫ぶとー
復讐AIは笑ったー。

”僕さ、AIじゃないんだよねー”
とー。

「え…?」
武信は唖然とするー。

”僕はさ、復讐AIのアプリをダウンロードしたスマホのカメラを通じて
 君の顔を会社のオフィスで見ながら、ティーカップを口に
 君に毎日話しかけていただけだよー
 気付かなかったかな?”

復讐AIの言葉に、武信は「だ、騙したな!!」と叫ぶー。

”騙してなんかいないさ。僕の”あだ名”が復讐AIなだけで
 人間じゃないとは、確か一言も言ってないよね?”

とー。

「ーーーぅ… ぅ…と、とにかく僕を助けて!!!」
武信が泣きそうになりながら言うと、
”あはははーそのツラー、面白いね!
 じゃ、頑張って!”と、言葉が響き渡ると同時に、
”復讐AI”との会話は強制的に終了されー、
アプリも”痕跡”が残らないように、強制的に削除されてしまったー

”復讐AIを手にした曽根崎先生が、これから僕に憑依しに来るー”

武信が恐怖に襲われて逃げ出そうとするー。

だがーーー
もう、”復讐AI”の力で幽体離脱した曽根崎先生はー、
すぐ側に迫っていたー。

もちろん、武信には見えないー。

「ーーぁっ…」
ビクッと身体を震わせる武信ー。

次に目を覚ます時には、
あの世かー、それとも死の直前かー。
いずれにせよ、武信の未来はここで閉ざされたのだったー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最初のお話の時に少し書きましたが、
前に登場した”復讐AI”を使った作品を
また見てみたい!というお話を頂いたので
作ってみました~!☆!

今回も、結局破滅の結末に…★!

いつか、途中で気づくパターンを描いてみるのも
面白いかもですネ~!

お読み下さり、ありがとうございました~!

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