その街は、とある企業によって発展を遂げたー。
しかし、その企業のトップである女社長は、
今は私利私欲に溺れて、気に入らないやつを
排除するようになっていたー。
そこに現れた”カリスマ経営者の男”は言ったー。
”彼女に憑依して、この街をよりよくしてあげよう”
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その街は、元々小さな田舎町だったー。
若者たちが都心部に移住し、
年々、住人たちは高齢化ー。
しかし、大した対策を打ち出すこともできないまま
さらに高齢化は進み、
この田舎町は、やがて消え去るー、そんな運命にあったー。
だがー。
この田舎町で育った少女ー、神永 純恋(かみなが すみれ)は、
そんな故郷を見て、”わたしの生まれ育った町を救いたいー”と、
そう思うようになったー。
幼いころから”優等生”として有名だった彼女は、
それに奢ることなく、必死に勉強し、
大学在籍時には、”企業”したー。
ネットの事業と、彼女が大好きなアクセサリーや小物などの販売を
行う事業ー、その2つを軸に、純恋は驚くべきアイデアを
次々と発進ー、
大学在籍中には既に”現役女子大生カリスマ社長”として
紹介されるようになっていたー。
しかも、純恋本人が”とても可愛い”容姿であることからか、
社長本人の人気も出て、その業績は物凄い勢いで伸びていたー。
そしてー、
純恋は”小さい頃からの夢”であった”故郷を救いたい”という願いを
叶えるために、自分の生まれ育った田舎町に本社を作り、
過疎化が進んでいた生まれ故郷を急速に発展させたー。
純恋の会社・”株式会社スミレ・ドリーム”のおかげで、
直営店から、ちょっとした観光スポットのような場所までー、
あらゆるものが、町の中に完成しー、
今では、遠くから足を運ぶ人もいるほどになったー。
町長からも、純恋は何度も感謝状を贈られたり、
町のイベントへの出席などもお願いされ、
その都度、”わたしの故郷を、なんとか守りたい、そう思って今まで頑張ってきました”
というようなことを嬉しそうに話していたー。
がーーー
それから5年ー。
純恋は変わってしまったー。
「ーーあいつ、クビにしておいて」
派手な風貌になった純恋は、
部下にそう言い放つと、ドレス姿のような格好で、
町の中の”店”を視察するー。
「ーーーねぇ、責任者は誰?」
高圧的に言い放つ純恋ー。
「ーーーここ、わたしの理想と違うー。
全部今日中にやり直して報告して」
純恋は冷たく言い放つと「可愛くない」と、不満そうに
店から立ち去っていくー。
「ーそうだ。町長呼んでおいて
わたしの言いつけ、全然守ってないー」
「ーーあ、あの家、立ち退きさせておいて
あそこにイベントの会場作るからー」
純恋は、次々と側近にそう言い放つー。
そうー
純恋は”力”に溺れてしまっていたー。
金、地位、名声ー
そういったものを手に入れ、
さらには故郷の人たちから、チヤホヤされ続けー、
”女神”などともてはやされた結果ー、
かつての”ピュア”な心は失われて、
傲慢で高飛車な女社長に変わり果ててしまっていたー。
しかしー、
”街”は、”株式会社スミレ・ドリーム”にもはや掌握された状態ー。
スミレ・ドリームなしでは生きていくことが出来ない状況にあり、
誰も純恋に口出しすることができない、そんな状態に陥っていたー。
絶望する人々ー。
今では、純恋の両親すら、純恋には口出しできないー。
「ーお母さんは素人でしょ。経営に口出ししないで」
純恋が、この日も説得に来た母親にそう言い放つー。
「ーお母さんたちの雇用、生み出してるのは誰?
わたしよ。
わたしがいなければ、この街はいずれ消えてる運命だったの
分かるでしょ?
だから、邪魔しないでくれる?」
純恋はそれだけ言うと、
側近らしき男に「ーこれ違う!頼んでいたものと違う!」と、
不満そうにそう叫びながら、母親を無視して立ち去って行ったー。
やりたい放題の純恋ー。
いつしか純恋は”この街はわたしの街だから”と、
そんなことまで言い始めるようになってしまったー…。
この街にとっての幸せはー
ほんの一瞬だったー。
純恋が帰ってきてー、
純恋が毎日嬉しそうにしてー、
そんな”束の間の日々”ー
その、わずかなひと時だけだったー
今の純恋は、”私利私欲に溺れた悪女”としか
言いようのない、そんな状況だったー。
だがーー
この街に”そいつ”はやってきたー。
「ーー僕が、この街を救いますよ」
物腰柔らかな中年の男ー。
彼ー、赤城 慶(あかぎ けい)は、
今や世界的大企業の社長ー。
世界中に広がるSNSサービスのひとつを運営する企業のCEOで、
あらゆる分野の会社を買収ー、
それを立て直し、業績を押し上げて来た”カリスマ”経営者だー。
そんな赤城 慶が、この街に現れたのだー。
「ーーほ、ホントですかー?」
町長の高本(たかもと)が、そう言うと、
赤城社長は「ええ」と、穏やかな笑みを浮かべたー。
「スミレ・ドリームはとても素晴らしい会社で可能性に満ちていますー。
ですが、現社長の神永社長は、この街の皆さんを苦しめていると聞きました」
赤城社長のその言葉に、高本町長は、
少し周囲を見渡しながら、「えぇ」と、頷くー
「純恋ちゃんも、昔はいい子だったのですがー」
高本町長がそう言うと、赤城社長は
「”力”を手にすると、人は”力”に溺れますからねー」と、
寂しそうに呟いたー。
「ですが、どうやって、我々を救って下さるんですかー?」
高本町長のそんな言葉に、
赤城社長は「ー神永社長のスミレ・ドリームは今、世間でも若者を中心に
熱狂的な支持を得ている会社ですー。」と前置きした上で、
「もちろん、僕のグループの力を使えば、会社を買収することは簡単ですが、
それをすれば、僕の会社は猛バッシングを喰らうことになるでしょうー。
それに、神永社長の会社を奪うようなことをすれば、
神永社長から会社を奪えたとしても、”その後”、何らかの報復があると
考えて間違いありません」と、そう説明するー
「ほ、報復ー?」
高本町長が困惑の表情を浮かべる。
「えぇ、そうですー
”わたしはこの街を助けてあげたのに、この街の人達に裏切られた”と
彼女はそう思うでしょうー。
そうなれば、彼女から会社を取り上げることができても、
彼女は、町長ー、あなたたちの街を道連れにすることぐらい
平気でするはずです」
赤城社長の言葉に、高本町長は表情を曇らせるー。
「で、ではー…いったい、どうするおつもりですか?」
高本町長がそう言うと、赤城社長は言ったー。
「ー”身体ごと”会社を頂きますー」
とー。
「え?」
高本町長が驚いて立ち上がるー。
「ー僕のグループ企業で作り上げた”憑依薬”と呼ばれる薬を使い、
神永純恋さんの身体を頂きー、そのまま、神永純恋として
僕が会社を経営しますー。
そうすれば、世間は”スミレ・ドリーム”はそのままだと考えるでしょうし、
僕の会社がバッシングされることもなければ、
僕自身が神永純恋さんになるわけですから、
彼女による報復の心配もありませんー」
そこまで言うと、高本町長は「そ、そんなことー、本当にできるんですか?」と、
表情を歪めたー。
「ーえぇ。」
赤城社長は頷くー。
「ーーーーいや、しかしー…ひ、憑依薬などとー?」
あまりにも現実離れした話に、高本町長は困惑するー。
いきなり”憑依”などと言われて、”それはすごいですね”などと
即座に納得する人間などそうはいないー。
そんな、非現実的な話を信じることはできないー。
「ーーあ、おじいちゃん!」
ちょうどー、そこに可愛らしいツインテールの子が入って来るー。
「ーーーーーまぁ、言葉で言っても信じることはできないでしょう」
赤城社長がそう言うと、突然、その場で煙のような姿になると同時に、
ツインテールの子が「ぁ」と、声を上げてピクリと震えるー。
「ーーどうです?これが憑依です」
ツインテールの子ー…高本町長の孫娘がそう言いながら笑うー。
「ーなっ…!」
目の前で”憑依”を見せ付けられて呆然とする高本町長ー。
その身体のまま、
「この力を使えば、神永純恋さんごと、会社を手に入れることができます」
と、ニヤニヤと笑うー。
赤城社長は純恋の会社を買収したりするのではなくー、
”身体ごと乗っ取る”と、そう宣言しているのだー。
”この街を救う”ためにー。
「ーこの街は今の何十倍も発展しますー。
どうでしょう?町長ー」
孫娘に憑依した赤城社長の言葉に、高本町長は少し考え込むー
孫娘が憑依されてしまったことにも当然、動揺はしていたが、
それ以上にー、
”純恋”のことを彼自身も小さい頃から知っているからだー。
しかしー
最近の純恋の横暴を思い出しー、
高本町長は”分かりましたー”と、頷くー。
穏やかな笑みを浮かべる孫娘ー。
神永純恋に憑依して、
女社長としての立場を手に入れれば
”そのまま”会社を手に入れることが出来るー。
世間から、赤城社長のグループがバッシングされることもなく、
会社を奪われた純恋本人からの報復が起きることもなくー、
それでいて、純恋の横暴を止めることが出来るー。
街を我が物にして、横暴な態度を取る純恋ー。
権力と金を手に入れて変わり果ててしまった純恋ー。
その純恋を止めてくれるのであればー…
高本町長は
”純恋”の身を案じてはいながらも、
”町長として、この街を守ることが優先だー”と、
純恋一人よりも、町全体を守る決断を下し、
赤城社長の提案を全面的に飲み込むのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日ー
高本町長から呼び出された純恋がやって来るー。
「ーーなに?わたし、忙しんですけどー」
高級なブランド品ばかりを身に着けた純恋が
不機嫌そうにやってくると、
「ーーこの街は”わたしのおかげで”、やっていけてるんだからね?」と
釘を刺すように嫌味を言ってくるー。
高本町長は「ー忙しい中、本当にごめんなー」と、
申し訳なさそうに言うと、
緊張した様子で昔話を始めるー。
「ーそういうのいいから。わたしはもう、子供じゃない」
純恋がさらに不機嫌そうにそう言うと、
そこにー、憑依の準備を終えた赤城社長が入って来たー。
「ーーーえ?ーあなたー…確か有名なー」
純恋が部屋に入って来た赤城社長に気付くと、困惑の表情を浮かべながら
赤城社長のほうを見るー。
赤城社長は穏やかな笑みを浮かべると、
「ーあなたの会社を、頂きますー。その、身体ごと」と、
静かに言葉を口にして、純恋がその意味を理解する前に、
煙のような状態になり、純恋めがけて突進し始めたー。
「ーえっ!?な、なに!? ぁっ… ぁあっ!?!?」
純恋の口の中に飛び込む赤城社長ー。
純恋がビクッ、ビクッ、と震えるとー
やがて、純恋は少し、はぁはぁと荒い息をしながら
笑みを浮かべたー。
「ーーーはは…憑依成功ですー」
純恋がそう言うと、高本町長は悲しそうな表情を浮かべるー。
横暴な女社長になってしまった純恋ー。
しかし、小さい頃の純恋を知る高本町長からすると、
その子が目の前で憑依されて乗っ取られる光景は、
辛いものがあったー。
「ーーこれで、スミレ・ドリームは僕のものー。
街の皆さんを苦しみから救い出すことができますー」
純恋に憑依した赤城社長はそう言い放つー。
”横暴な経営者”はいなくなりー、
”新たな経営者”が、やってきたー。
高本町長は、そんな”救世主”の出現に希望を抱くー。
だがー
高本町長はまだ知らないー。
”純恋のほうがまだマシだったー”
そう、思うような地獄がこれから始まることをー。
純恋の身体を乗っ取った赤城社長の方が、
さらに、”悪魔”のような存在であることをー…
純恋の身体で、スミレドリームの本社に戻った
赤城社長は、社長室のイスに座り、
妖艶に足を組むと「これでこの街は僕のものー」と、不気味な笑みを浮かべたー。
②へ続く
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コメント
救いの手が差し伸べられたと思ったら、
前よりもっと悪化してしまった…
そんな状態のとあるモノ見ていたら、
浮かんだ憑依モノですネ~(笑)☆
純恋が純恋だった頃よりももっと恐ろしい未来が、
この先待ち受けているのデス…!
続きはまた明日~!☆
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