”故郷を救いたい”
元は、そんな純粋な思いから企業したのにも関わらず、
欲に支配されて、暴走してしまった女社長。
そんな彼女に憑依して、
その身体ごと、街を手に入れた悪魔のような男ー。
その行く末はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
街は、完全に”赤城社長”に支配されてしまったー。
赤城社長の狙い通り、
純恋の生まれ故郷であった街の地下には、
滅多に取ることのできない貴重な資源が
大量に眠っていたー。
それを採掘させ、世界中に売り飛ばすことで、
赤城社長は、莫大な利益を上げたー。
表向き、”純恋の生まれ故郷”であった街は、
今ではまるでその姿を変え、
”スミレ・ランド”なるテーマパークが街まるごとに
存在しており、
利益はほとんど出ていないものの、
街の地下に眠る資源が、外部から狙われないように
カモフラージュする役割を担っているー。
純恋の会社”スミレ・ドリーム”は、
赤城社長が大好きな”赤”を名前に組み込み、
”赤き夢”に改名、
突然、まるで別の社名に変更されたことで、
スミレ・ドリームの商品やサービスを利用していた人々からは
戸惑いの声と不満が爆発したー。
赤い派手なドレス姿で、まるで
”この身体も、この会社も僕のものだ”と、誇示するかのような
振る舞いを繰り返す純恋に憑依した赤城社長ー。
元々、スミレ・ドリームが運営していた
”女子向けのSNSアプリ”も、大幅にその内容を変えて、
ユーザー数は急激に激減していたー。
しかし、そんなことは赤城社長にとって問題ではなかったー
赤城社長が欲しいのは、スミレドリームという会社ではないしー、
純恋の身体でもないー。
確かに、スミレドリームは短期間で成長を遂げた素晴らしい会社だー。
だが、世界の大富豪たる赤城社長には、
純恋の会社よりも素晴らしい会社がたくさん”手持ち”にあるー。
スミレドリームなど、どうなってもいいのだー。
欲しいのは”純恋が支配していたこの街の地下の資源”なのだからー
「ーー社長ー。今日も”神永社長”への不満で溢れていますよ」
側近の男が笑いながら言うと、
赤いドレス姿の純恋がワインを口にしながら、
「どうせ、評判が落ちるのはこの女だー。僕には関係ないー」と、
笑みを浮かべるー。
「ーそれに、スミレ・ランドは一応は好評だろうー?」
純恋がそう言うと、側近の男は笑いながら「そうですねー」と、頷いたー。
「ーこの街の地下には天然の鉱物がたくさん眠っているー
それこそ、採掘しても採掘してもなくならないほどにー。
それを手に入れた僕は、さらに高みに上ることができる」
純恋は笑みを浮かべるー。
元々の純恋が最終的に”なに”を目指していたのかはもう分からないー。
故郷の街を最終的にどうするつもりだったのかは分からないー。
口ではきついことを言いながらも、きつい振る舞いをしながらも、
もしかしたら、最終的には故郷を救うことだけを願っていたのかもしれないー。
けれどー、もう”純恋”はいないー。
今、ここにいる純恋は”憑依された純恋”ー。
身体は純恋でも、その想いも、目的も、何もかもが変わってしまったー。
「ーーーところで、”例の約束”はー?」
側近の男が笑いながら言うー。
この男は、赤城社長が大富豪になる前から苦楽を共にしてきた男で、
赤城社長も信頼を置いているー。
そのため、赤城社長に対しても”それなりに”発言することもできるー。
「ーこの身体と遊ばせてやる約束ーか?」
純恋が自分を触りながら言うと、
側近は少し顔を赤らめながら「そうですー」と、頷くー。
「ーははは、君は気が早いなー
だが、”お楽しみ”はもう少し先だー。
この街の地下からの採掘態勢が万全になり次第、
僕はまた次に目をつけているビジネスに移るー
その時には、この身体でたっぷり遊ばせてやるー」
純恋はそう言うと、
側近の男の手を掴んで、そのまま自分の胸を触らせたー
「ーーま、揉むぐらいなら、今でもいいぞー」
そう言いながら、顔を赤らめる側近を揶揄うと、
純恋は笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー純恋と、どんな話をしたんですかー?」
街を追放されてしまった純恋の両親は、
高本町長ーーいや、”高本 元・町長”の元を訪れていたー。
純恋の突然の豹変ー。
もちろんー
”それまでの純恋”も十分に豹変していたー。
しかし、ここ最近の純恋の様子は、明らかにおかしいー。
純恋がおかしくなる直前に、
高本元町長が頻繁に純恋と会っていたと聞かされた両親は、
高本元町長のもとを今日、訪れていたのだー。
「ーーそ、それはー…
そのー、色々とー」
高本元町長が不安そうに言うー。
「ー純恋があんな風になった理由、何か知ってるんですか!?」
純恋の母親が叫ぶー。
「ーあんた!何を隠してるんだ!」
純恋の父親が叫ぶー。
だがー、高本元町長は、不安そうに震えながら、
口を堅く閉ざしたままー。
”「それを、世間に晒したいのであれば結構ー。
好きにするといいでしょう。
それを僕に止める権利はありませんー
ただーーー…
先日見た、ツインテールの孫娘さんー
可愛かったですね?」”
そんなー、純恋に憑依した赤城社長の
”悪魔のような言葉”を思い出すー。
あの目は本気だったー。
本気で、孫をーー
「ーー言えないー」
歯ぎしりをする高本元町長ー。
元はと言えば自分が、あの”悪魔”を
純恋に憑依させてしまったー。
あの時、赤城社長の悪だくみに気付きー、
何とかそれを阻止していればー…
いいやー…
もし、高本町長が赤城社長による”憑依”を拒んでいたとしても、
赤城社長は勝手に純恋に憑依しただろうー。
赤城社長に目をつけられた時点で、
あの町も、純恋自身も、命運は尽きていたのかもしれないー。
”スミレ・ドリーム”は、消えたー。
”赤き夢”という社名に変わり、
純恋の夢も、何もかも、消えたー。
故郷の、希望でさえもー。
「ーーー高本さん!何を隠してるんだ!」
純恋の父親の怒声を浴びながらも、
高本元町長が口を開くことはなかったー。
”言えばー”
孫娘は、ほぼ確実に憑依されるー。
いや、それだけではないー。
純恋の両親も、憑依されてしまうかもしれないー。
言えば”被害者を増やす”ー
そう思いながら、高本元町長は
「本当に、申し訳ないー」と、
何度も何度も言葉を繰り返したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーふふー。
全て計画通りー」
1か月後ー
純恋は、赤いドレスを身に纏い、
満足そうに”純恋の故郷”の地下に作りあげた
採掘場を見つめていた。
ここから、無限の富が生まれるー。
「ーーさて、僕はそろそろー」
純恋はそう呟くと、”スミレ・ドリーム”いいやー、
今は”赤き夢”と名前を変えた会社の本社に戻り、
笑みを浮かべながらパソコンの画面を見つめる。
そこには”次”に目をつけたビジネスの数々が
表示されているー。
赤城社長自身は、別に純恋のような美女が相手であっても、
別に他人に憑依する趣味はないー。
”憑依”もあくまでも”金”を稼ぐための手段の一つ。
彼はを突き動かすのは、そう、ただ”金”のみー。
”この街の事業は安定したー
これからも安定して金を生み出し続けるだろうー。
次はー…”
純恋はそう思いながら、
パソコンの画面を見つめつつ、
”次”のビジネスの準備のために、赤城社長自身の会社の本社にいる
副社長と連絡を取ろうとするー。
その時、部屋をノックする音が聞こえて、
純恋は「どうぞ」と、穏やかに言葉を口にするー。
中に入って来たのは側近の男ー。
「ーおぅ、君かー」
純恋はそう言いながら立ち上がると、
「僕はそろそろこの身体から抜けて、今度は欧州の製薬企業をー」
と、言葉を口にすると、
思い出したかのように「分かってるさー。この女とヤリたいんだろ?」と、笑うー。
「約束だからなー。
今夜、時間を作るー」
そんな純恋の言葉に、側近の男は「はははーありがとうございます」
と、静かに笑みを浮かべたー。
「ーーーどんな格好がいい?
何でも一つ、お前の願いを叶えてやる」
純恋は、そんな言葉を口にしながら、
”ビジネス”のために見つめていたノートパソコンを閉じると、
側近の男のほうを見つめたー。
「ーひとつ。 ひとつだけでしょうか?」
側近の男が笑いながらそう言うと、
純恋は「クククー仕方のないやつだな」と笑いながら
「君の好きな服を3つ、選ぶと良い」と、
純恋に憑依した赤城社長は、そう言い放ったー。
しかし、その言葉に側近は首を横に振ったー。
「ーーーその必要はありません」
とー。
「?」
純恋が表情を歪めるー。
「ーー私がいつでも好きな服を着て、
好きなようにその身体を楽しむのが、一番手っ取り早いですからー。
3つじゃ満足できないー。
毎日、毎日、毎日、好きな服を着て、
好きなようにその身体を楽しみたいー」
そう言うと、側近の男は、赤城社長が運営する研究施設で開発された
”憑依薬”を手に、笑みを浮かべたー。
「ー!?!?!?!?」
純恋は驚きの表情を浮かべるー。
「ひ、ひ、ひ、憑依薬ー…?
どうして、それをー!?」
純恋がそう叫ぶとー、
側近の男はすぅっと息を吐き出してから言葉を続けたー。
「私は赤城社長の側近ですからー
苦労しましたが、あなたに悟られないように
こうして”憑依薬”を持ち出すことができましたー」
その上で、側近は笑うー。
「ーー私は、あなたの全てを奪いたいー
あなたが、そうしてきたようにー
その美貌も、身体も、立場も、何もかもー」
「ーーー!!!」
純恋は驚いた表情を浮かべるー。
側近の男は、内心のどこかでずっと不満を感じていたー。
彼は、赤城社長が大富豪になる前から、ずっとずっと赤城社長を
支えて来た人物ー。
もちろん、最初はそれでも良かったー。
しかし、巨万の富を目の当たりにして、
”こんなにすぐ近くに”巨万の富があるのに、
自分には手にすることもできないー、というその状況に
強く、嫉妬のような感情を抱いていたー。
そしてー…
”全てを奪う”チャンスをずっと伺っていたー。
少し前までは”会社”から赤城社長を追い出し、自分がトップに立つことを目論み、
その計画を準備し続けていたものの、
”赤城社長が純恋に憑依して、スミレ・ドリームの会社ごと乗っ取った”のを
目の当たりにして、彼は思ったー
”私も、こうすれば良いのだ”
とー。
赤城社長が、純恋に憑依して、全てを奪ったことでー、
新たなる”悪魔”を赤城社長は育て上げてしまったのだー。
「ーーーあなたの全てを頂きますー。赤城社長。その、身体ごとー」
そう言いながら、側近は憑依薬を飲み干したー。
「ーーーま、待て!分かった!お前にも特別な待遇をー!」
純恋はそう叫ぶも、側近の身体が煙のようになって霊体になるのを見て、
”説得できない”と判断、純恋の身体を捨てて脱出しようとするー。
しかしー
間に合わなかったー。
”純恋に憑依した赤城社長”は、
さらにその上から、側近の男に憑依されてしまいー、
その意識は途切れたー。
「くく…くくくくくくー」
よろめきながらも、笑い始める純恋ー。
「くくくー…はははは!ついに、ついに手に入れたぞー」
純恋は嬉しそうに笑うー。
「ー赤城社長ーあなたの”富”も”地位”も全てー
そしてーー
この女の会社も土地も、美貌も、全部ーー」
純恋はそう叫ぶと、
嬉しそうにスミレ・ドリームの社長室から
窓の外を見つめるー。
「ーーそうだー…ぜんぶー…全部全部、この私のものだー!」
”全て”を手に入れたー。
純恋は早速笑いながら、赤城社長が用意していたメイド服に着替えると、
嬉しそうに胸を揉み始めるー。
何もかもを手に入れたー
これからは、何でも”私の想いのまま”ー
しかも、この女に飽きたらー
また、別の女に憑依することもできるー。
「ふふふ…
ふふふふふふ…あはははははははははは!」
”救世主”は、”悪魔”だったー。
しかし、その”悪魔”が、また”新たなる悪魔”を生み出してしまったのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!★
大きな力は、それを狙う人を引き寄せ、
それを狙う人の欲望を増幅させてしまうものなのデス…!
お読み下さりありがとうございました~!
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