いじめを受けている男子高校生ー。
ある日、担任の美人教師にそのことを相談するも、
彼は雑に扱われてしまうー。
怒りに震える彼の前に飛び込んで来たのは
”復讐AI”と呼ばれる謎のアプリだったー…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーそれで?」
担任の美人教師・曽根崎(そねざき)先生は、
不愉快そうに表情を歪めたー。
若く、美人な曽根崎 優花(そねざき ゆうか)先生は、
男子生徒からの人気も高いー。
がー…その見た目とは裏腹に、愛想が全くなく、
いつもツンツンとした、そんな雰囲気を見せているー。
「え、えっと…その神室(かむろ)くんから
嫌がらせを受けていてー…」
気の弱そうな男子生徒、幸田 武信(ゆきた たけのぶ)は、
自信の無さそうな口調で、そんな言葉を口にする。
武信はー、
クラスメイトたちから”いじめ”を受けていたー。
いじめのリーダー格、神室 孝義(かむろ たかよし)
その神田の彼女である、杉島 渥美(すぎしま あつみ)、
神田の親友の、高井戸 健太郎(たかいど けんたろう)ー
主ないじめは、その3人からだー。
後は、時折その三人に加わってくる”たまにいじめてくる”のが二人ー。
その相談を、曽根崎先生にしている最中だったー。
が、曽根崎先生は大きくため息をついたー。
「はぁ、情けないー。
あなた、男の子でしょ?
そのぐらい自分で解決しなさい」
曽根崎先生のそんな言葉に、武信は戸惑いの表情を浮かべながら
「で…でも、僕ー」と、言葉を口にするー。
「ーーいい?
これから社会に出ていく上で、理不尽なことなんて
いくらでもあるの。
その都度、あなたはパパやママに縋るの?
上司に助けを求めるの?
そんなんじゃ、この先、あなたはやっていけない。
そのぐらい、自分の力で解決しない」
曽根崎先生にそう言われた武信は
反射的に「す…すみませんでした」と、謝ってしまうー。
「ホント、情けないんだから」
不機嫌そうにそう呟くと、曽根崎先生は、
もう武信に視線を向けることはなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちぇっ!なんだよ」
不満そうに廊下を歩きながらそう呟く武信ー。
いじめのことを相談しても、
これっぽっちも助けてくれないー。
先生なんて、信用した僕がバカだったー、と、
武信は自分で自分を呪うー。
モヤモヤした気分のまま、帰宅した武信は
”いじめっ子たちへの復讐”の方法を
ネットで検索しながらため息をついていたー。
がーーー
その時だったー。
”それ”が目に入ったのはー。
「復讐…AI?」
そんな、不思議な名前のアプリを見つけて、
表情を歪める武信ー。
「ははは…くだらない」
武信はそんな言葉を口にして、一旦はそのサイトから、
別のサイトに飛ぼうとしたー。
しかしー…
その手を、ふと止める。
「ーーーー…」
どうしても”復讐AI”と呼ばれるものが気になってしまった
武信は、今一度そのサイトを確認するー。
そこにはー
復讐AIのダウンロードボタンも表示されているー
「ーーー…… ーーーーー」
武信は、考え込むー。
普通に考えれば、”怪しい”ー。
得体の知れないサイトだし、
ウイルスとか、そういうものがダウンロードされてしまったり、
最悪の場合、個人情報を盗まれたりしてしまうかもしれないー。
しかしー
なんだかこの”復讐AI”なるものからは
不思議な魅力を感じるー
今まで、自分が感じたことのないような
不思議な魅力をー。
そう思いながら、武信は”復讐AI”のダウンロードボタンに手を近づけるー。
がー
直前で手を止めるー。
”やっぱり、怪しいものをダウンロードするのはやめておこう”
ーと。
「ー武信!ごはんできたよ!」
「ーーー!?!?!?!?!」
ビクッとして武信は慌てて振り返るー。
そこには、母親の姿があったー。
丁度、晩御飯の準備が出来たため
武信を呼びに来たのだー。
「ーあ、う、うんー。わかったー」
武信はスマホの”復讐AI”の表示に夢中で
母親が自分の部屋のある2階にまで登って来る
階段の音を聞き逃していたー。
そのため、急に扉が開いたような状況に
なってしまい、驚いたのだー。
「ーーはぁ…びっくりしたー」
母親が立ち去って行ったあとー、
武信が一人、そんな言葉を口にすると、
スマホの画面に視線を向けて、呆然とした表情を浮かべたー。
母親がいきなり部屋に入って来たことで
びっくりしたはずみに、武信の指がスマホの画面に
触れてしまい、
その際にはダウンロードボタンを押してしまったのだー
「うわっ…!うわうわうわ!」
スマホの画面では、既に”復讐AI”のダウンロードが
始まっているー。
慌ててそれを止めようとする武信ー。
しかし、ダウンロードを止めることは出来ずー、
ついに”復讐AI”はダウンロードされてしまったー。
「や…やべっ…ど、どうしようー」
武信はそんなことを呟きながらも、
「と、とりあえずごはん!」と、そのままスマホを
机に置いたまま、母親の待つ1階へと向かったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「”僕、復讐AI!君の復讐をサポートするよ!”」
部屋に戻って、慌ててスマホを開くと、
復讐AIと名乗る怪しげなアプリが既に起動していたー
「えっ…えぇっ…や、やばっ…」
武信は慌てた様子でスマホをいじり始めるー。
変なアプリを入れた結果、スマホがウイルスに感染してしまったー…
などとは、とてもじゃないが親には言えないー。
とにかく、どうにかしなくてはならないと、
慌ててスマホを操作していると、”復讐AI”が、
武信に語り掛けて来たー
”あはは、大丈夫さー。
僕はウイルスじゃないし、君のスマホを壊したりはしないー
いらない、と思ったらアプリを消してくれればいい”
復讐AIは、まるで生きているかのように、
そう、語り掛けて来たー。
「ーーー…ほ、本当ー?」
怯えたような表情を浮かべながら武信が
スマホを見つめつつ、そう言葉を口にすると、
”復讐AI”は”あぁ、本当だともー”と、答えたー。
「ーーーーー」
武信は少し迷った挙句に、
「僕、いじめられてるんだー」と、言葉を口にするー。
AI…つまり、機械を相手に
いじめの相談なんかしてしまっている自分が
惨めになってしまったけれど、
かと言って、他の誰かに聞いてもらうようなアテが
あるわけでもなく、武信は”復讐AI”に対して
自分の置かれた現状をはっきりと説明したー。
”なるほど。担任の女教師ってのもー
なかなか酷いもんだね”
復讐AIがそんな言葉を口にするとー
”じゃあさー。
いじめっコと、その助けてくれなかった先生ー
両方に復讐できてー、
かつ、いじめっ子たちに対しても効率よく復讐する方法ー、
教えてあげようか?”
その言葉に、武信は表情を歪めるー。
「そんな方法が、あるの?」
武信が不安そうに確認すると、
”あぁ、あるさー。
いじめっ子たちを一番懲らしめられる立場にいるのはー、
そう、”先生”だー。
親でもいいけど、いじめっ子が複数の場合”自分の子供”以外の
子供には、なかなかダメージを与えにくいからね”
復讐AIのそんな言葉に、
武信は「た、確かにー」と、言葉を口にすると、
復讐AIは少しだけ面白そうにしながらー、
言葉を続けたー。
”そうだなぁ…君に酷いことを言った担任の女教師の
身体を奪って、いじめっ子たちに復讐するのが
一番、いいんじゃないかな?”
とー。
「ーー身体を、奪うー?どういうこと?」
武信が困惑した表情で、”復讐AI”に対して
言葉の意味を問いただすー。
すると、復讐AIは笑いながら答えたー
”そうだよ!憑依だ!憑依でその女の身体を乗っ取っちゃえ!あはは!”
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
武信は、半信半疑のまま”復讐AI”に提案された通り、
スマホを操作するー。
すると、自分の身体が一瞬にして透明になったー。
あまりにも非現実的な出来事に、
武信は驚きを隠せないー
「え…ぼ、僕ー…?」
”はははー、すごいすごいー!
大丈夫大丈夫、君が持っているスマホも一緒に
透明になってるから、周囲からは
”スマホが浮かんでいる”ように見えたりしないから
安心しなよ”
復讐AIがそう言うと、
武信はゴクリと唾を飲み込むー。
本当に、透明になれたということはー
恐らくー、”本当に”憑依できるー…ということ。
”今日が君の復讐の旅の始まりだー。
早速そのまま学校に行って、君の担任の先生ー、
そう、曽根崎先生に憑依するんだー。
憑依の方法はー言わなくても何となく想像がつくだろう?”
そんなAIの言葉に、
武信は満面の笑みを浮かべながら、
「き、君は最高のAIだよ!ありがとう!」と
何度も何度もお礼の言葉を口にしたー。
そしてー
そのまま学校へと向かうー。
学校に到着してからも、誰も武信に気付く様子はないー。
元々、積極的に他の生徒から声を掛けられるような
タイプではないのも事実だが、
どう考えても、”周囲から”見えていない状態ー。
「すごいやー…」
思わず、感心した様子でそう呟いた武信は、
復讐AIに言われた通り、そのまま職員室へと向かうー。
そして、職員室に到着すると、
朝の準備をしていると思われる曽根崎先生の姿を見つめながら
ゴクリと唾を飲み込んだー
”はははー想像してたよりもきれいな先生だね”
復讐AIが笑いながら言うー。
「AIの癖に、感情豊かだなぁ」
武信は苦笑いしながらそう言葉を口にするー。
”周囲には自分の声は聞こえていない”
それはさっき、学校に来るまでの間に確認済みだー。
”さぁ、曽根崎先生になって、いじめっ子たちに復讐しよう!”
復讐AIはそう言い放つと、
武信は「うん!」と、頷いて、曽根崎先生の身体に入ろうと、
その身体に手を伸ばしたー
「ーーうっ!?」
曽根崎先生がビクッと震えるー。
「ー先生?」
職員室にいた別の先生が、曽根崎先生の異変に気付き、
そんな言葉を口にするー
「あ…… え…な、なにこれー?」
戸惑いながら、曽根崎先生が自分の身体に手を触れるー。
”あははー、ほら、早くひと思いに入らないと!
ゆっくり憑依してると、周囲に怪しまれるよ!”
復讐AIのそんな言葉を聞きながら、
武信はその言葉の通りに、曽根崎先生の身体に
自分の霊体を”捻じ込む”ような形で、
無理矢理中へと入れるー。
「っっ… ぁっ!」
ビクンと震えて、曽根崎先生が声を上げるー。
「せ、先生ー?」
他の先生は、曽根崎先生のそんなおかしな態度に
呆然とした様子を見せるー。
だがー
すぐにー
「ーー…え…えへへ…だ、大丈夫ですー
すみませんー
おほ、おほほほほー」
明らかに怪しい雰囲気で曽根崎先生に憑依した
武信はそのままそそくさと職員室から立ち去っていくー。
そしてーーー
すぐにトイレに駆け込むと、
鏡の前で自分が曽根崎先生になったことを改めてその目で
確認しー、笑みを浮かべたー。
「ーす…すごい…僕が本当に、本当に
曽根崎先生になってるー
へへ… へへへへ すごいや」
いつも愛想のない曽根崎先生が、鏡の前で
とても嬉しそうに笑みを浮かべているのを見てー、
ドキドキとしながらー、曽根崎先生に憑依した
武信はにやりと笑ったー。
「よ~し!じゃあ、神田くんたちに、
先生がお仕置きしちゃおっかな~?」
邪悪な笑みを浮かべる曽根崎先生ー
”あははーいいね。
でもさ、その前に一つ”
復讐AIがそんな言葉を口にすると、
続けて、こう言い放ったー。
”ーーーそこ、男子トイレだけど?
今、君は”女性”なんだから、気を付けないと”
その言葉に、曽根崎先生は「やべっ!」と、言いながら
慌てて男子トイレから飛び出しー、
そのまま女子トイレへと入り込んだー
「~~~~~~~~」
いくら身体が”女”とは言えー、
武信は女子トイレに入った、という現実にドキドキしながら
「ーぼ、ぼ、ぼ、僕は復讐するんだ!」
と、改めて決意の言葉を口にしたー。
~中編~に続く
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コメント
「身体ごと会社を乗っ取ります」という作品に登場した
”復讐AI”の設定を使った作品をもう一度見てみたい!というお声を
頂いたので、書いてみた作品デス~!
続編ではないので、↑の作品を知らなくても全然問題はないので
楽しんでくださいネ~!
いつも通り、土曜日の作品なので(土曜日のみ予約投稿の都合上)
続きは来週の土曜日になります~!
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