幼馴染のあの子には、2つの人格ー。
そんな彼女の”黒い”人格の方に彼は
いじめを受けていたー。
そして、ついにー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー
梨々花が空き教室にやってくるー。
克樹は、ついに梨々花に全てを打ち明けようとしていたー。
しかしーーー
「ーー!?」
空き教室にやってきた梨々花は、突然、克樹にキスをしてきたー
「えっ…!?!?えっ…!?!?!?!?」
克樹が顔を真っ赤にすると、
梨々花は「今まで、ごめんねー」と、甘い声を出しながら
克樹にまた、キスをしてきたー。
制服のボタンを外しながら、下着を少しだけ見せ付けて
甘い笑みを浮かべる梨々花ー
「ーな、な、なーー…?え???」
克樹は顔を真っ赤にしながら、近付いてきた梨々花に
腕を掴まれて、胸を触らされてしまうー。
「ーちょ!?!?!?」
「ーーふふふ…今までごめんなさいー
お詫びに、黒田くんを気持ちよくさせてあげようと思ってー」
梨々花がそう言うと、克樹はすぐにハッとして、
「ーーき、き、北森さんじゃないな!?」と、叫ぶー。
「ーーーーーチッ」
梨々花は舌打ちをすると、
「ーな~んだ、梨々花のこと好きなんでしょ?
だったら、そのまま楽しめばよかったのにー」と、不満そうに呟くー
「ーー…き、北森さんの身体でそんなことするな!」
克樹が勇気を振り絞って叫ぶー。
「ーん~?梨々花が、梨々花の身体をどうしようと、梨々花の勝手でしょ?」
梨々花のそんな言葉に、克樹は「ふ、ふざけるな!」と、叫ぶー。
梨々花は、制服を手で乱しながら笑みを浮かべると、
「この状態で、わたしが悲鳴を上げながら
ここから飛び出して、誰かに助けを求めたらー
あんた、どうなると思うー?」
と、言葉を口にするー
「ーーー……!!」
克樹は青ざめるー。
”どうなるかー”
それは、何となく想像できたからだー。
それにー
”北森さんが勝手に!”と、否定して信じて貰えたとしても、
そうしたら、梨々花が悪者になってしまうー。
「ーーーあんたは、悪者ー…」
邪悪な笑みを浮かべる梨々花ー
とても、同じ人間とは思えないー。
「ーーーそ、そうやって、北森さんの身体を勝手に使ってー…!」
克樹が悔しそうにそう言い放つと、
梨々花は「昔は仲良しだったのにー」と、不満そうに笑うー。
「ー仲良しだったのはお前じゃない!」
克樹がそう叫ぶと、梨々花は少しだけ克樹を見つめてから
言葉を口にしたー。
「ーだったら、梨々花が”ひとつ”になれば満足ー?」
とー。
「ーーー…それは、どういうこと?」
克樹が聞き返すと、
梨々花は「人格の統合って知ってるでしょ?」と言葉を口にするー。
二重人格や多重人格ー
その状況を解消するための方法の一つに、
医師の治療により、”人格を統合させていく”という方法があるというのは
克樹も調べて知っていたー。
「ーーー…梨々花、もう疲れちゃったから~、
別に消えてもいいと思ってるんだよね~」
梨々花が笑いながら言うー。
「ーーー」
克樹は、少し考えてから「何を企んでる?」と、不安そうに言葉を口にするー。
”梨々花に身体を返す”…人格統合の意思があるなら
自分で病院に行けばいいー。
何故、克樹に言ってくるのかー。
何か、企みがあるとしか思えなかったー
そのことを指摘すると、
梨々花は笑ったー
「ー統合するには、”あいつ”もそれに納得してないといけないしー
”あいつ”に、梨々花は”二重人格”って、教えないといけないでしょ?
でも、梨々花と”あいつ”は直接話をすることはできないし、
誰かが説明しないといけないー。
だから、”あいつ”と仲良しなあんたの力が必要ってわけー。
これで理解できる?」
梨々花が刺々しい感じでそう言い放つと、
克樹は困惑しながら、頭の中で考えるー。
”あいつ”とは、普段の梨々花のことだー。
確かに、この”黒い梨々花”と直接話はできないのかもしれないし、
できたとしても、梨々花と黒い梨々花の話し合いがまとまるとは思えないー。
克樹が、梨々花を説得して、”統合”のための治療を始めるー。
それは、確かに黒い梨々花の言う通りに、克樹の力が必要に思えたー。
「ーーー…ホントに、何も企んでないの?」
克樹がそう言うと、
梨々花は答えたー。
「ーもちろん。梨々花は本気で統合したいと思ってるしー、
第2人格は消えるべきでしょー
そんなことは分かってるからー
それにー
あんたのそのツラー
うざいから、もう見たくないー」
梨々花はそう言うと、克樹は困惑しながらも
「じゃあー…北森さんを出してー話し合うから」と、言葉を口にしたー
「ーーーはいはい」
梨々花は不貞腐れた態度を取りながらも、
その場で”普段の梨々花”と交代するー
「ーーーぁ…… えっ!? えぇっ!?」
乱れた制服に気付き、顔を赤らめる梨々花ー
「ご、ご、ごめん!こ、これはー!」
克樹は慌てて全てを説明すると、梨々花はとても驚き、
とても申し訳なさそうにしながらも
”統合”の治療を始めることに納得してくれたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「本当に、ごめんねー」
梨々花が申し訳なさそうに言うー。
「いや、いいよー。
ほら、僕だって、北森さんが無事に治ったら
いじめられなくなるしー」
笑う克樹ー
「ーーうんーそうだね」
梨々花は、克樹、そして両親と一緒に探した
”二重人格の治療”をできる医師を見つけ、
診察を進めていたー。
人格同士を対話させたり、話を聞いたり、
少しずつ、二つの人格を”統合”へと向かわせていくー。
「ーーふん」
診察室から出て来た梨々花は”黒いほう”に変わっていたー
「っていうかさ、彼女でもない梨々花のために
あんたも物好きよね」
梨々花は不満そうにそれだけ言うと、
「ーじゃ、お疲れ」と、克樹を置いてそのまま立ち去ってしまうー。
「ーー…」
人格がコロコロ変わる梨々花に振り回されながらも、
克樹はそれに耐えながら、梨々花の治療に付き添い続けたー。
学校では、相変わらず”いじめ”が続くー
「ーーあんた見てるとー、ムカつくのー」
”黒い梨々花”が言うー。
「ー梨々花さ~中学の時、あんたみたいな子を助けたら
逆にいじめのターゲットになっちゃったの!
理不尽すぎでしょ?
あんたを見るたびに、梨々花、アイツのこと思い出してー
すっごくむかつくの!」
”黒い梨々花”はそんなことを言っていたー。
克樹を目の敵にするのは、
どうやら”中学時代に守ってあげた子”を思い出すからー、という理由のようだったー
梨々花はどう思っているのか知らないが
”黒い梨々花”は、自分がいじめのターゲットになってしまったのは
その子のせいだと、恨んでいる様子だー。
「ーーー…ーーー」
でも、”この人格”は北森さんを守ってくれた人格でもあるのだろうー。
そうでないと、梨々花の心は壊れてしまったー。
だから、この人格が生まれたー
克樹は複雑な表情を浮かべながら”いじめ”に耐えるー。
そして、ついに”統合”の日を迎えたー
「ーーわたし、少し怖いー」
梨々花が診察に入る前に言うー。
「ーー…大丈夫ー。元の北森さんに戻るだけだし、
怖いことなんてないよ」
克樹がそう言うと、梨々花は少しだけ微笑むー。
「ーーーー」
医師は今日、主人格一つに戻すための統合の最終段階の治療を
行う、と言っていたー。
”統合”ー。
統合したあと、自分はどうなるのか、
どんな影響が出るのかー、
少し不安に思いながらも、
梨々花は頷くー
そしてーーー
「ーーねぇ」
梨々花は診察に入る前に振り返ると、
少しだけ微笑んだー
「ー無事に終わったら、ーーーそのーー」
恥ずかしそうに言葉を詰まらせる梨々花ー。
やがて、少し間を置いてからー
「ーーー…そのー……告白、していいー?」
と、言葉を吐き出すー
「え、えぇっ!?」
顔を赤らめる克樹ー
「ーーあ、返事はあとで!今はだめ!」
笑う梨々花ー。
そのまま梨々花は照れくさそうに診察室へと入っていくー。
克樹は、顔を赤らめたまま、
まだ、梨々花に言われた言葉にドキドキしていたー。
梨々花の治療の成功を祈る克樹ー。
梨々花の人格の統合が済めば、
いじめも無くなるだろうしー、
梨々花本人も不安を感じなくて済むだろうしーーー…
もう一人の梨々花…”黒い梨々花”には悪いけれどー、
でも、人格の統合は”消える”わけではなく、
元の人格の中で、もう一つの人格も生きている、って先生も言っていたしー、
そんなことを考えながら、克樹が治療が終わるのを待つー。
これまで、続けて来た治療の最後の仕上げー。
それが終われば、梨々花は一つになるー。
どれほどの時間が経過しただろうかー。
やがて、梨々花が診察室から出てくると、病院の先生は
”彼女の人格は無事、一つに統合されました”と、説明したー。
色々な説明を受ける梨々花ー。
最後に、克樹のほうを病院の先生が見つめると、
「ーそうだー。彼女、君に”ありがとう”って言ってましたよ」と、
そう言葉を口にしたー。
「ーーえ、そ、そうですかー」
照れくさそうに言う克樹ー。
”僕を散々いじめて、ありがとうなんてー”と、内心で苦笑いしながらも、
”黒い方の北森さんも、ずっとこうしたかったのかな”と、
少しだけ寂しそうに空を見上げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人で帰路につくー。
その最中ー。
梨々花が口を開いた。
「ーーーー色々ありがとう。おかげで”一つ”になれたー」
とー。
「ーーうん。どうしたしましてー」
克樹がそう言うと、
「ーこれで、”梨々花”の好きなようにできるねー」
と、梨々花がニヤリと笑みを浮かべたー
「え……」
克樹は、梨々花の顔を見て、”希望”から”絶望”に突き落とされるような
感情を抱くー。
「ーーーなに驚いてるの?
”主人格”に別人格を統合してー、
”梨々花”が一つになったんだよー?」
梨々花のそんな言葉に、
克樹は「え……? え…?まさか、統合の影響でー…?」と、
表情を歪めるー
”梨々花”と”黒・梨々花”が統合したー。
医師から”主人格に後から生まれた人格が統合される”と、
梨々花も克樹も説明を受けていたがー、
まさか、”黒い梨々花”が統合されたことによって
梨々花に悪い影響が出てしまったのだろうかー。
そう思い、そう言葉を口にすると、梨々花は笑いだしたー
「ーーあははははは!違う…!違う違う!
黒田くんさぁ、何勘違いしてるの?
主人格は”梨々花”のほうー。」
梨々花が邪悪な笑みを浮かべながら自分を指差すー。
「ーー黒田くんを守ってたほうは、
”後から生まれたもう一人の梨々花”!!
でも、梨々花一人じゃ、あの子と話は出来なかったし、
統合のための治療も、梨々花一人が望んだだけじゃできなかったから、
黒田くんに説得してもらって、あの子をその気にさせて、
治療を受けさせたの!
どう?梨々花、天才でしょ?」
梨々花のそんな言葉に、
克樹は「え…う、嘘だー…」と、震えるー。
”主人格”は、克樹の言う”梨々花”ではなく”黒い梨々花”のほうー。
確かにー、
”勝手に決めつけていた”だけで、黒い梨々花が後から生まれた人格だとは、
本人たちは一言も言ってなかったー
「ー邪魔なあの子を消してくれて、ありがとうー」
黒い梨々花が笑うー
「ーじ…じ…じゃあー…ぼ、僕が昔、仲良しだったのはー?」
克樹がそう言うと、梨々花は「ーあの子じゃなくて、梨々花のほうだよ?」と、
自分を指差しながら笑ったー。
梨々花は、克樹の態度を見て”自分の方が別人格だと思われている”と理解し、
騙せると踏んで”統合”の話を持ち掛けたー。
その結果が、これだー。
克樹は思い出すー。
”「ーーーそ、そうやって、北森さんの身体を勝手に使ってー…!」”
と、言った時にー、
”黒い梨々花”は確かにこう言っていたー
”「昔は仲良しだったのにー」”
とー。
”昔”のことを知っているー。
そう、黒い梨々花こそ、小さい頃に一緒に遊んだ梨々花ー。
「ーーーで、でも…なんでー…中学の時のいじめが原因で、
別の人格が生まれたんじゃー…?」
克樹は、梨々花の中学時代の友人・紗友里から聞いた話を説明すると、
梨々花は笑ったー
「ーあはははーそれは、梨々花が自ら変わっただけ!
自分で勝手に悪い子になったの!」
中学時代ー、
いじめられっ子を守ったことで、自分がいじめられるようになってしまった梨々花は
歪んでしまったー。
自分を守るために、反撃して、いつしか自分がいじめグループの一員になって、
その上位に立ったー。
そうすることでしか、あの地獄のような日々を抜け出すことはできなかったー。
そして、性格は歪んでしまったー。
克樹はこの時”気の強い黒・梨々花”が生まれたと間違った解釈をしていたものの、
この時、梨々花が二重人格になったわけではないー。
梨々花の中学時代の友達・紗友里が言っていた
”梨々花は変わっちゃった”というのは、梨々花自らの意思で変わっただけー。
「ー梨々花の中に、”もう一人の梨々花”が生まれたのは高校に入る直前ー」
梨々花は言うー。
”梨々花の第2人格”ー
克樹を守ってくれていた方の人格は
高校入学前に、梨々花が”こんな風になりたくなかった”と心のどこかで
強く強く後悔の念を抱いていたことにより、生まれたー。
”本来、こうありたかったわたし”を模した人格ー。
だから、歪む前の梨々花そっくりの性格でー、
まるでお手本のように優しく、そしていじめられっ子を心配し、
声をかけてあげるようなー、
”かつての自分”を模した性格をしていたー。
”こんな風に歪みたくなかった”と後悔する梨々花が、
”こんな風なわたしでいたかった”という理想の自分を心の中に生み出してしまったー。
それが、もう一人の梨々花ー。
だから、梨々花は、学校にいるうちは、彼女が表に出ていることを基本的に容認し、
そのままスルーしていた。
”理想のわたし”が、勝手に学校生活を送ってくれるなら、それはそれでいいー、と。
けれど、克樹のいじめを食い止めようとする彼女がだんだん邪魔になりー、
こうして、統合という形で排除したのだったー。
「あの子、自分の方が消える立場だって、最後の最後に気付いたみたいー。
泣きながら、黒田君に”ありがとう”って、伝言を残してたー」
梨々花はそう言いながら笑みを浮かべるー。
「ーーそ、そんなー…」
絶望する克樹ー。
「ーーふふ。じゃ、そういうことだからー
梨々花のために頑張ってくれてありがとうー
じゃあねー、黒田くんー」
梨々花はそう言うと、笑いながら立ち去って行ってしまったー
克樹は、その場に座り込んで
しばらく、何もすることもできないまま、
呆然としていたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数週間後ー
「ーおはよ~!ーどうどう?今日の梨々花の髪型、似合ってる?」
梨々花が普段あまりしないツインテール姿でやってくると、
笑いながら克樹に声を掛けて来たー
「ーーま、まぁー…うんー」
克樹がそう言うと、梨々花は「ーーもっとマシな感想言ってよね」と、
言いながら立ち去っていくー
”梨々花”は変わったー。
確かに、”黒・梨々花”ー主人格だったほうがベースだけれどー…
”統合”の影響だろうかー。
”いじめ”は、パッタリと止んだー。
相変わらず、一人称は梨々花だし、ワガママだし、気も強いけど、
いじめはなくなり、優しさのようなものも見え隠れするようになったー
もちろん、いじめられていたことは忘れないし、
許せないことある、ということには変わりはないー。
しかしー
それでも、”あの優しかったもう一人の梨々花”は、消えたわけではなく
梨々花の中に生き続けているのだと、克樹はそう思ったー。
実際ー、
よく考えてみると、統合を終えたあの日から、
”あんた”じゃなく、”黒田くん”と、梨々花には呼ばれているー。
きっと、あの優しかった梨々花が、歪んでしまった梨々花を、
ほんの少しだけ、本来の梨々花に戻してくれたのだと、
そんな風に思うー。
だからー
「ーーーぼ、僕にそういう感想は難しいんだよ!」
克樹がそう”反論”すると、
振り返った梨々花は
「ーーじゃあー、感想言ってくれるまで、毎日髪型変えて来るからー」
と、少し不満そうに笑いながら、
そのまま座席へと戻って行ったー。
だからー、
この先も、彼女の側にいたいと思うー。
どんな関係になっていくのかは、分からないけれどー。
おわり
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コメント
すごく久しぶりな二重人格モノの最終回でした~!★
”黒”の方が主人格…
途中で気づけた皆様は鋭いですネ~★!
お読み下さりありがとうございました~!!!
明日は、いつものあのジャンルが登場デス~!
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