<寄生>連鎖するパラサイト①~支配~

寄生された人間が、友達や家族を「紹介」することで、
さらに”仲間”を増やしていくー。

連鎖的に広がっていくパラサイトに支配される人々の物語ー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーあ、土曜日はごめん!今週は予定があってー!」

友達の楓(かえで)が申し訳なさそうに呟くー

「ーー中学生の時、仲良しだった子と久しぶりに会う約束をしてるから、
 今週はごめんね!」

楓の言葉に、茉莉花(まりか)は「ううん!全然大丈夫!」と、微笑むー。

二人は、毎週のように一緒に出掛けるほど仲良しな間柄ー。

だが、今週は楓が
中学時代に仲良しだった友人・千乃(ちの)と会う約束をしていてー、
そのことをちょうど伝えている最中だったー。

「ーーー本当にごめんね」
楓が再び申し訳なさそうにそう呟くのを見て、
茉莉花は笑いながら「ーううんー。久しぶりに友達と会うんだもんー
そっちを優先してー」と、穏やかに言い放つー。

「ーーわたしとは、今は毎日のように顔を合わせるんだし、
 学校変わっちゃうと、なかなか会えないもんね!

 だから気にしないで」

そんな茉莉花の言葉に、楓は少し安心したような表情で
「ありがとう」と答えたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

彼女たちは知らないー

いや、普通の人間は知らないー

数年前から、人類は”侵略”されていることをー。
どこからともなく現れた”パラサイト”がジワジワとー
人類の支配を進めていることをー。

そうー
今日も、また一人ー。

「ーあっ… うっ…? あっ…」

”久しぶりに会った”友人の千乃にキスをされて、
ビクンビクンと震える楓ー

千乃がニヤッと笑うー。

「ーわたしたちの”仲間”になぁれー」
とー。

咳き込む楓ー。

千乃は笑みを浮かべながら床に手をつく楓のほうを見つめるー。

久しぶりに中学時代の友人・千乃と会った楓ー。
しかし、千乃は中学生の時とは別人のようなー
派手な風貌に変わっていてー
中学時代の”読書好きの千乃ちゃん”のイメージが嘘かのようにー
変貌していたー。

その理由はー
”パラサイトー”

この世界には数年前から”人間に寄生する謎のパラサイト”が、
徐々に人間の支配を進めているー。

人間に寄生しー、
人間の体内で繁殖ー、
繁殖した寄生虫を”口移し”で、別の人間に寄生させ、
どんどん人間を支配しているのだー。

人間の体内には様々な栄養素があり、
また、外敵から身を守ることもできる上に、
このパラサイトたちにとっては”偶然”、人間の体内の温度なども
”繁殖に適した最適な環境”だったー。

人間に寄生したパラサイトはまず、その人間の肉体と意識を完全に支配するー
そして、”その人間の脳”も使うことができるためー、
普段は乗っ取った元々の人間として暮らしながらー
体内で”パラサイトを繁殖”させー
”宿主”の友人や恋人、家族に”パラサイト”を広げていくー。

中学校卒業以来、一度も千乃と会っていなかった楓に
”久しぶりに会いたい”と呼び出したのもそのためー。

千乃本人の意思ではなくー、
千乃を乗っ取ったパラサイトが
”千乃の交友関係”を利用して寄生を広げようとしているのだー

「ーーち…千乃……ちゃん…?? あ、あなたーーいったいー…?」
楓が苦しみながら顔を上げると、
千乃は、耳から”パラサイト”の一部を見せつけながら
笑みを浮かべたー。

「ーーーこの人間はー
 俺の宿主だー」

寄生虫が、耳から半分飛び出した状態の千乃は
虚ろな目でそう呟くー

口を半開きにしたままー
輝きを失った目ー

「ーーち…千乃ちゃんから離れーー…」
楓がそう言葉を口にしようとしたその瞬間ー
激しい頭痛が楓を襲ったー

千乃は、目の輝きを失った無表情の状態のままー
口元だけに笑みを浮かべて言葉を続けたー

「ー楓も、わたしたちのなかまー」

とー。

楓は、必死に抵抗しようとしたものの、
やがて、パラサイトに完全に支配されて、
そのままその意識は途切れたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あれ?今日は暇そうだね~?いつも土曜日は出かけてるのに」

友人の”楓”が、パラサイトに支配されてしまった頃ー、
何も知らない茉莉花は、
家の中で姉の愛里(あいり)に声を掛けられたー

「あ、お姉ちゃんー」
茉莉花が愛里のほうを見ると、
「ーあ~今日はね、友達が久しぶりに中学校の同級生と会うらしくてー
 だから、予定が無くなっちゃってー」と、笑うー。

「ーふぅん、そうなんだー」
愛里はそれだけ言うと、
他の話題に切り替えて、茉莉花と色々な雑談を交わすー。

姉の愛里は現在大学生ー。
昔から茉莉花とは仲良しで、
茉莉花が高校生になった今でも、小さい頃のように、
一緒に出掛けたこともする間柄だー。

「ーそういえば最近、お兄ちゃんはー?」
茉莉花がふと、そんな言葉を口にするー

茉莉花に”兄”はいないー。
”お兄ちゃん”とは姉の愛里の幼馴染で、現在は彼氏の”恭輔(きょうすけ)”のことだー。

小さい頃から姉の愛里と仲良しでよく遊びに来ていたことから、
茉莉花にとっては実のお兄ちゃんのような存在で、
今でも”お兄ちゃん”などと呼んでいるー。

「ーあ~確かに最近茉莉花と会ってないね~
 恭輔も茉莉花のこと、気にしてたし
 今度また家に連れて来るよ」

愛里のそんな言葉に、茉莉花は嬉しそうに
「やった~!恭輔お兄ちゃんと久しぶりに会える~!」と、
嬉しそうに言葉を口にするー。

茉莉花も恭輔もお互いに恋愛感情はなくー
本当に、兄と妹のような間柄ー

二人の関係性がそうだと分かっているからこそ、
姉の愛里も、何も心配することなく茉莉花と会わせることが出来るー。

そんな、穏やかな土日を過ごした茉莉花ー。

だがーーー

月曜日ー

「あ、おはよ~!」
楓がいつものように学校に登校してくるー

茉莉花が「あ、楓!おはよ~!」と、笑いながら返事をするとー
すぐに”異変”に気付いたー。

いつもポニーテールにしている楓が、
今日はポニーテールではなく、髪を下ろした状態で
登校したのだー。

”入学から今まで”恐らくずっと
学校にいる時はポニーテールだったはずの楓が
髪を下ろしているため、茉莉花だけではなく、
他の生徒も興味深そうに髪型の話をしているー

「ーーあ、髪型?」
楓が笑いながら自分の髪を指さすと、
茉莉花が「う、うんー、随分イメージ違うなぁって」と、笑うー。

楓はすぐに
「たまには気分転換~って思って」と、微笑むと、
茉莉花はそれ以上、楓の髪型の変化については
気にしなかったー。

”本当の理由”も知らないままー。

楓がニヤッと笑みを浮かべるー

”まずは、こいつを”仲間”にしようかなー”
とー。

寄生虫に支配された楓はー、
寄生虫の支配に必死に抗おうとしてー、
口から侵入した寄生虫をなんとか取り除こうとしたー。

あまりに必死にもがいてー
首筋を爪でかきむしった際に、傷が出来てしまったー。

だからー
こうして髪でそれを隠しているー。

「ーーー」
そんな理由も知らず、茉莉花はいつものように楓と楽しそうにしていると
楓が「あ!そうだ!今日の放課後なんだけど、少し時間ある?」と
茉莉花に話を持ちかけるー

「え?どうして?」
茉莉花が不思議そうに首を傾げると、
「ちょっと、どうしても見せたいものがあってー」と、
楓は穏やかな表情で微笑んだー。

楓と強い絆で結ばれている茉莉花は
そんな言葉にも何の疑いも持たないまま
「うん!わかった」と、笑顔で返事をするー。

”パラサイト”は乗っ取った人間の記憶も読み取っているー

そのためー、
”楓のフリをしている楓”におかしな部分はないー。

髪型以外は”いつもの楓”だー。

記憶をも引き継げるパラサイトは
”乗っ取った人間の元々の振る舞い”をそのまま引き継ぐことが出来るー。

だからこそー
茉莉花はそれに気づくことができなかったしー、
土曜日に中学時代の友人・千乃を通じて寄生虫に乗っ取られてしまった
楓も、それに気づくことができなかったー

”いつもの楓”

そんな風に思ったままー

いやー、むしろ
”何も疑問を感じないまま”茉莉花は放課後を迎えたー。

放課後ー
楓と合流した茉莉花は、
「ちょっと見せたいものがあるの」と、楓に連れられて、
どんどん学校の敷地内の”人の気配がない場所”へと向かっていくー

「ーか…楓? こっちって、もう使われてない倉庫しかない場所だよね?
 こんなところに何かあるの?」

茉莉花が楓の後ろを付いて来ながら、不思議そうにそんな
言葉を口にするー。

楓は「ついてからのお楽しみ」と、
何の悪意も読み取ることが出来ない口調で
そう言葉を返したー。

「ーーえ~?まさか誰かが死んでるとかないよね?」
茉莉花が少し不安そうにそう呟くと、
楓は「そんなことあるわけないでしょ~!それならとっくに
先生に伝えてるよ!」と、笑うー。

「そっか~そうだよね~」
茉莉花がそう呟くと同時に、楓は立ち止まったー。

”誰にも見られる心配がなく、”寄生”することが出来る場所に”

「ーついたよ」
楓の言葉に、茉莉花がキョロキョロと周囲を見渡すー。

既に使われなくなった倉庫の場所の前ー。
かつて、体育館が建て替えされて場所が移動された際に、
元体育倉庫だったこの場所はそのまま放置されていて、
この一角には生徒も先生もほとんど来ることがないー。

そんな場所だー。

「ーそれで、見せたいものって?」

茉莉花が何気ない口調でそう言うと、
楓は振り返って笑みを浮かべたー

「ーーふふふ…見せたいものはねーー」

そう呟くと、楓が大口を開いて、
口の奥から寄生虫が顔を出すー。

「ーーひっ!?!?!?!?」
茉莉花が恐怖してその場に尻餅をつくと、
楓は茉莉花をそのまま地面に倒して笑みを浮かべたー

「ま~~り~~か~~~
 いっしょに、”仲間”になろ?」

楓が狂気の表情を浮かべながら言うー。

「ーひっ…!?か、楓ー!?えーー…
 そ、それ…?なにっ!?」

寄生虫のほうを指さしながら言う茉莉花ー

しかし、楓は明確には答えずに、
こう返事をしたー。

「ーとっても気持ちいいよー これ…!
 人間の身体って最高だもんー!」

とー。

「ーな、なにを言ってるの!?ちょっと!?やめて!」
茉莉花が悲鳴を上げるー。

楓は、そんな茉莉花の口を塞ぐと、
「うるさいなぁ」と、呟いてから、茉莉花にビンタをお見舞いしたー

「ーー抵抗するなよー人間の癖にー」
楓の口調がおかしいー

茉莉花は目から涙をこぼしながらもがくもー
何もすることができないまま、楓にキスをされてしまったー

キスをされて、楓の体内で生まれた寄生虫が、
茉莉花の中へと入り込んでいくー

じたばたと足を動かす茉莉花ー
しかし、楓に身体を押さえつけられて、
口を塞がれたままー

やがてー、茉莉花は大人しくなったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーただいま~!」

茉莉花が帰宅するー。

「ーーあれ?なんか制服汚れてない?どうしたの?」

姉の愛里が、茉莉花の制服が汚れていることに気付き、
それを指摘すると、
茉莉花は「えっ?」と、制服の汚れを少しわざとらしく確認してからー
「ー昼休みに転んじゃって」と、苦笑いしたー

「ドジだなぁ~」
愛里は笑いながら、「大丈夫?」と、だけ確認すると、
茉莉花は「うん!大丈夫!」と、微笑んでそのまま部屋の方へと
向かって行ったー。

妹の茉莉花が”寄生されたことを姉の愛里は当然知らないー。

そしてーーー
寄生された茉莉花は”家族を仲間にする”ことに決めてー、
不気味な笑みを浮かべながら自分の部屋の方へと向かって行ったー。

パラサイトの”寄生”は連鎖的に広がっていくー。
止まることなくー、
人類は次第に、支配されていくー…。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

どんどん拡散していく寄生虫のお話ですネ~!

乗っ取った身体の親しい相手を中心に拡散していくので
厄介な存在デス~!!

続きはまた明日~!☆

コメント