知り合いや友達を通じて
”連鎖”的に広がっていくパラサイトー。
その支配の拡大は、止まらないー。
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「ーーそれで~コイツとコイツはもう”支配”したんだけど」
楓が笑いながらクラスの集合写真を指さすー。
「ー昭雄(あきお)くんはさ~
この女のこと好きだったから、まぁ、ほら、
告白してやったら呼び出すのは簡単だったよね」
楓のそんな言葉に、
茉莉花は「楓ってば~!悪い子!」と、笑うー。
寄生虫にはー
人間に寄生するまで、あまり”個性”というものが存在しないー。
どちらかと言えば本能に沿って行動しているー。
しかしー、人間に寄生し、人間の脳を支配し、
色々な感情が芽生えー、
やがて、個性が生まれるー。
性別すらも曖昧な寄生虫はー、
乗っ取った人間をベースに、己を確立させていくー。
「ーーそっちはどう?」
楓が言うと、茉莉花は「昨日、”わたし”のお父さんを仲間にしたよー」
と、嬉しそうに笑うー。
本来の茉莉花であれば、自分の父親にまで
”寄生”を広げることを、こんな風に嬉しそうに語ったりは
絶対にしなかっただろうー。
しかし、今の茉莉花は、もう、寄生虫に完全に
支配されてしまっていて、
身も心も、寄生虫のものだー。
「ーへ~やるじゃん!わたしは家族は”まだ”だよ」
楓がそれだけ言うと、
茉莉花は「早くみんなに寄生虫を紹介してあげないとね」と、
笑みを浮かべたー
「あ!」
そんなことを呟いていると、茉莉花は
スマホにメッセージが届いたことに気付き、スマホを手にするー
「ーどうしたの?」
楓が、首を傾げると、茉莉花が
「ううん!ほら!中学時代の友達から!
昨日、”久々に今度の土曜日、遊ばない?”って
メッセージを送ったの!その返事!」
と、スマホの画面を見せながら笑うー。
「あ~…!その子を”仲間”にするんだね」
楓はそう言いながらクスッと笑うと、
「この女も、中学の時の友達からだったね~」と、
自分が乗っ取られた時…
つまり、楓の中にいる寄生虫が楓を乗っ取った時を
思い出しながら微笑むー
「ふふふふ♡ そういえばそう言ってたね」
茉莉花はそう言うと、
「ー今度、お姉ちゃんにも”わたしたち”のこと、
紹介しようと思ってるしー、
今夜は、お母さんかなー
ふふっ」
と、ニヤニヤしながら語るー
「ーふふふ 茉莉花ってばー
そんなに頑張っちゃってー
わたしも負けてられないね」
楓はそう言うと、
「今日はお兄ちゃんを仲間にしよっと!」と、
笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・
夜ー
入浴中の母親がシャワーを使っている最中に、
突然背後からやってきた娘・茉莉花がキスをするー
「ーー!?!?!?」
母親が驚いてシャワーを落とすー。
シャワーが上に向かって水しぶきを上げる中、
茉莉花は「お母さんもーーわたしと一緒」と、
母親の中に入っていく寄生虫を見つめながら微笑むー。
やがてー
母親は笑みを浮かべるとー
「ーーえへへへ…♡」と、シャワーを拾って
そのまま再び髪を洗い始めてー
茉莉花は服を濡らしたまま浴室から
外に出ると、そのまま自分の部屋の方へと向かって行ったー
「ーーーーー……!!」
姉の愛里は、偶然”妹の茉莉花が浴室に入ってきて、すぐに出て来る”
という謎の光景を見つめてしまい、首を傾げたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”なんか最近、茉莉花の様子がおかしい気がするのー”
愛里はそんな不安を、彼氏である恭輔に伝えるー。
”おかしい?”
恭輔が首を傾げるー。
”う~ん…その、何て言ったらいいのかなー…
何となくなんだけど、得体の知れない違和感があるっていうかー”
昔から、”カン”がするどい愛里は、
妹の茉莉花にここ数日、何となく違和感を感じていたー。
いやー、茉莉花だけではない。
両親にも、だー。
”何がおかしいと感じるのか”
そう聞かれてしまうとハッキリと答えることはできないー
そんな、朧気な違和感ではあるのだけれどもー。
”ーー違和感かぁ”
彼氏の恭輔が困惑した様子で返信をしてくるー。
茉莉花が”お兄ちゃん”と呼ぶほど懐いている恭輔ー。
”姉の彼氏”ではあるものの、
姉の幼馴染でもあり、小さい頃から面識のある茉莉花は
そんな恭輔によく懐いていたー。
恭輔も茉莉花のことは妹のように可愛がっていたし、
愛里も、そんな二人の関係は微笑ましく見守っていたー
そんな、間柄だー。
”ーまぁ、何か具体的に起きていないなら
心配する必要はないんじゃないかー?
悩み事とかありそうなら、相談に乗ってあげるとかー
そういう感じでもいいと思うし”
恭輔のそんな言葉に、愛里は「うんーそうだね」と、
安心した様子で返信をすると、
そのまま彼氏とのメッセージのやり取りを終了したー。
来週の日曜日には、恭輔が久しぶりに
愛里の家に遊びに来て、茉莉花とも会うことになっているー。
その時にでも、どさくさに紛れて悩みがないか、
茉莉花に聞いてみようー。
そう思いながら、愛里は静かにスマホを握りしめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー先生ー
質問があるんですけどー」
数日後ー
理科の授業が終わった後に、理科室に引き返した楓は、
白髪頭の理科の先生の元にやって来るー。
「ーーん?何かな?」
理科の先生がそう答えると、楓は耳から飛び出した
”寄生虫”を見せ付けながら
「この生き物…名前は何て言うんですかぁ♡」と、笑みを浮かべてー
そのまま理科の先生に、体内で生み出した寄生虫を寄生させたー。
起き上がった理科の先生は
「パラサイトだねぇ」と、ニヤニヤしながら立ち上がるー。
相手が男女どちらでも、
赤ん坊だろうと老人だろうと関係ないー。
寄生虫は、乗っ取った人間の人脈を使いながら
ジワジワと人間を支配していくー。
「ーやるじゃん」
それを見ていた茉莉花が笑いながら言うと、
楓が「茉莉花も頑張ってるからねー。わたしも負けないよ」と、
笑みを浮かべたー。
茉莉花も楓も、もう”本人の自我”は完全に封じ込められていて、
今の二人は、身体は茉莉花と楓であっても、
中身は”茉莉花と楓の記憶を引き継いだ別の存在”だー。
こうして、”表向き”は
本来のその人間の振る舞いを継承してー
そのまま生活に溶け込むー。
だからこそ、人間がジワジワ乗っ取られつつあるこの状況にも
多くの人は気づくことができないままー
やがて、パラサイトはさらにジワジワと拡散していくー。
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「ーやめてってば!!!」
中学生時代の同級生が叫ぶー。
茉莉花は「やめない~~!」と、言うと、
その子にも寄生虫を寄生させて、
満足そうに笑みを浮かべるー。
「ーーもう、さっき叩かれたの、痛かったんだからね」
茉莉花が、”中学生時代の同級生”に抵抗された際に
叩かれた頬を触ると、
支配された同級生が「ーごめ~ん!許して!」と、微笑むー。
茉莉花はそんな会話をしながら、
”明日はお姉ちゃんの番ー”と、笑みを浮かべるー。
”寄生”は1日に1回が限度ー。
その理由は、”体内で寄生虫自体が繁殖するスピード”が、
1日に1体が限界だからだー。
人間を支配した寄生虫は、人間の体内の栄養素や環境を利用して
繁殖するー。
そして、体内で繁殖した寄生虫を、キスで別の人間の身体に移すことで、
寄生を拡散させていくー。
だが、繁殖の速度には限度があり、
1日に1匹が限界ー。
人間の身体に、寄生虫を増やしすぎてしまうと、
今度は宿主が壊れてしまうために、
最大でも、体内に入っていられるのは、
”その身体を乗っ取っている寄生虫”と、”中で繁殖した寄生虫”の2匹のみー。
そのため、その日は誰にも寄生せずに、
体内の寄生虫ストックを増やしておくようなことはできないー。
寄生を拡大させなかった日はー、
増やすぎで”宿主”が壊れないように繁殖を止めるため、
例えば”昨日”、誰にも寄生を広げなかったとしても、
”今日”2人に寄生できるわけではないー。
よってー
毎日一人、欠かさず1年間、”仲間”を増やしたとしても、
寄生された人間一人ごとに、増やせる”仲間”は1年で最大365人となるー。
「ーーー明日はー”お姉ちゃん”の番ー」
茉莉花はそう呟くと、不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
姉・愛里の彼氏である恭輔が遊びに来たー。
恭輔と愛里が楽しそうに話しているのを見つめながら、
茉莉花も”いつものように”「恭輔お兄ちゃん!」と呼びながら
恭輔と話を続けたー。
だがー
恭輔は「ー茉莉花ちゃん、何か、前と印象変わったね?」と、
少し疑うような視線を茉莉花に向けて来たー
「ーーえっ…?」
茉莉花が少し表情を歪めるー。
だが、すぐに茉莉花を支配している寄生虫は
”普段の茉莉花だったらどう反応するか”を読み取りー
「わたしだってもう高校生ですから~!」と、笑いながら
ドヤ顔をしてみせたー。
だがー、
恭輔は茉莉花のほうを見つめるー。
「ーーー愛里ー…やっぱ、愛里の言う通り、茉莉花、何か変だなー」
そんな言葉に、隣にいた愛里も不安そうに頷くー
「ー茉莉花ー…最近、なんかこうー…
”いつもと違う”気がするんだけどー…
何か悩みとかあるの?」
愛里のその言葉に、
茉莉花は「な、ないよ~!悩みなんて~!」と笑いながら
誤魔化すー。
しかしー
恭輔は茉莉花を見つめるとー
「ー例えばーそうだなぁー…
幽霊に憑かれたとか!」と、笑いながら言うー
「ないない、ないですよぉ~」
茉莉花は余裕の表情で否定するー
二重人格ー
実は恋人が出来たー
学校でいじめられているー
などなど、恭輔が色々あてずっぽうで言葉を口にするとー
最後にこう言い放ったー
「寄生虫に寄生されているとかー?」
その言葉にー
茉莉花は目を見開くー
あてずっぽうかもしれないー。
けれどー
「ーーうぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
茉莉花が目を見開き、口から突然寄生虫を飛び出させると、
「茉莉花!?」と、悲鳴を上げる姉の愛里を無視してー
恭輔を押し倒したー
「お兄ちゃんも、仲間になるんだ!」
低い声で茉莉花はそう言い放つと、無我夢中で恭輔にキスをしようとしたー
だがー、恭輔は茉莉花を蹴り飛ばすと、
「愛里!」と、愛里を守るようにして呼び寄せてー
「ま、茉莉花ちゃんー」と困惑した様子で茉莉花のほうを見つめたー
愛里が妹の口から半分顔を出している不気味な生き物のほうを見てー
困惑の表情を浮かべるー。
茉莉花は表情を歪めながらー
”寄生”を広げることに失敗したことに焦るー。
「茉莉花ちゃんー」
恭輔がそう言葉を口にするとー
愛里のほうを見て、こう呟いたー
「ー寄生は、手際よくしないと」
とー。
「ー!?」
「ー!!」
茉莉花と愛里が同時に驚くー。
恭輔が、愛里に突然キスをしてー
茉莉花の姉・愛里はビクンと身体を震わせてもがき始めるー
もがく愛里を見て、茉莉花は困惑するー
「ーえ…お兄ちゃんもー”仲間”ー?」
とー。
茉莉花が言うと、恭輔は「そう」と、微笑むー
「ー俺はもう、半年以上前に”寄生”されてるからー
先輩だなー」
と、笑ったー
「ーじ、じゃあ、なんで”信号”出してないの?」
不満そうに言う茉莉花ー
寄生虫同士は”特殊なシグナル”を発して、
”寄生済みの人間かどうか”相手に知らせているー。
だが、恭輔はそれをしてなかったのだー
「ん~~~? ははっー
君みたいな”驚く顔”を見るのが好きだからさー」
恭輔はそう言うと”シグナルは意図的に出してない”と、
説明したー。
「もう~びっくりしたよぉ~」
茉莉花がそれだけ言うと、
「ーその身体を支配したのは最近だよなー?
どうりで、あまり手際がよくないわけだー」と、
恭輔は笑うー。
「ーーーーーふふふふ…人間のー身体ー」
たった今、寄生虫に支配された姉・愛里が立ち上がるー。
「ーーはははー、また一人、同志が増えたな」
恭輔は満足そうにそう言うと、
「ーそのまま”カップル”続けるかー」と、
愛里に笑いながら言い放ったー。
「うん!じゃあそうする~!」
愛里の記憶を引き継いだ寄生虫が愛里の身体で
面白そうにそう返事をするー
茉莉花も嬉しそうに「これでみ~んな仲間だね!」と、微笑むと、
愛里も恭輔も不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・
乗っ取られた人間がー
家族を、友達を、恋人を
連鎖的に支配していくー。
交流を元に、”寄生虫”は次第に広がりー、
やがて、人類はーーーーー
だが、人々がその危機にもし気付いたとしても、
その時にはもう、人類はほとんど”パラサイト”に
とって代わられているのかもしれない…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
寄生モノのお話でした~!★
昔の友達に急に会いたい!と言われた時は
皆様も注意しましょうネ~笑
今日もありがとうございました~!
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