<寄生>連鎖するパラサイト~崩壊編~(前編)

突如として出現した謎の”パラサイト”ー

人間を支配するその謎の寄生虫は
支配した人間の体内で自らの子を繁殖させー、
支配した人間の立場を利用して
さらに”仲間”を増やしていくー。

そんな連鎖が続きー、
人類は崩壊の危機に追い込まれていたー。

※「連鎖するパラサイト」の続編デス~!
 先に本編のほうを見て下さいネ~!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そのパラサイトは、人間を支配するー。

「ーーククククー」
パラサイトに乗っ取られた人間は
完全のその肉体も、意識も支配されてしまうー。

「ーーねぇ、葵(あおい)ー」

そしてー、支配された人間は、
その立場を利用して、友達や家族ー
身近な人に”寄生”を広げていくー。

このパラサイトは
人間の体内の成分や栄養素をエサにすることで
繁殖するー。

繁殖の速度は1日に1匹が限度ー。

しかし、人間の身体の中で大量に繁殖すれば
宿主の身体が壊れてしまうため、
それは出来ずー、
一度に最大で”2匹”しか体内には存在することが出来ないー。

”その人間を乗っ取っている寄生虫”と、
”体内で繁殖した寄生虫”の2匹だー。

故に、1日に1匹の繁殖を”ストック”しておくことは出来ずー、
1日一人、寄生虫の餌食にしていくか、
あるいは、次の日の繁殖を休むかしなくてはならないー。

だが、そんな不便な繁殖でも、
”人間を支配し、支配した身近な人間から支配を広げていくー”
というやり方は、成功し、
今や、人類の過半数以上が”パラサイト”に支配されていたー。

乗っ取った人間の”脳”を使うことができる故に
記憶を読み取り、”元のその人物”に成りすますことも容易ー。
そのために、”宿主”にした人間の知り合いを中心に
”寄生”を広げていくことはとても簡単だったー

「お、お姉ちゃんー…なんか今日ー…変だよ?」
”葵”と呼ばれた子が、そう言葉を口にすると、
「ーふふーーそんなことないよ♡」と、
”お姉ちゃん”は言葉を口にするー

「ただ、ちょっとー」
”既に寄生されている”お姉ちゃんはー、
そう呟くと、
容赦なく妹の葵にキスをしたーー

「ーーひっ!?お、お姉ちゃん!?」
姉を振り払いながら、怯えた表情で叫ぶ葵ー。

「ー葵にも”仲間”になってもらうのー」
お姉ちゃんの”耳”から不気味な寄生虫がうごめくー

「ーーひっ…!?な、なにそれー…?」
葵が悲鳴に似た声を上げるー。

だがー、目の前にいる”お姉ちゃん”は
既に”お姉ちゃん”であって、お姉ちゃんではないー。

身体もー、声もー同じで、
”記憶”もあるけれどー
それはもう、”お姉ちゃん”ではないー。

「ーーい、いやっーー…!」
悲鳴を上げて逃げ出す葵ー。

しかしー、その両親も既に”とっくに”寄生虫の仲間になっていてー、
囲まれてしまうー。

元々、この家ではー、
母親がパート先の後輩から”パラサイト”を寄生させられ、
続いて夫が、妻からパラサイトを寄生させられー、
そして、”お姉ちゃん”が餌食となったー。

残っていたのは、葵だけー。

「み、みんな…どうしちゃったのー…?」
涙目で葵がそう言い放つと、
葵が大好きだった”お姉ちゃん”は笑みを浮かべながら
「どうもしないよー。これまで通り”仲良く”暮らしていくだけー」と、
クスクス笑いながら、妹にキスをして
容赦なく”パラサイト”を妹の中にも送り込んだー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”俺は、知っている”ー

大学にやってきた男子大学生・浜松 幸人(はままつ ゆきと)は、
表情を歪めながら周囲を見渡したー。

”気づいた時には”ー
既に、人類の過半数以上が”謎のパラサイト”に寄生されている状態だと、
幸人は気づいたのだー。

”パラサイト”は、身近な人間を中心に寄生していくー。
しかも、その記憶を受け継ぐために、
”まだ”寄生されていない人間は
そのことを知らない人間がほとんどだー。

だが、幸人は気づいたー。
”謎のパラサイトにみんな支配されつつあるー”
そんな、恐ろしい事態にー。

危ないところだったー。
何故なら、幸人が”そのこと”に気付いた翌日ー、
幸人の彼女である、樹里(じゅり)から
突然、”エッチなことしてみない?”と誘われたからだー。

奥手な性格の樹里は、今までそんなこと
絶対に言わなかったしー、
幸人自身もHなことにあまり強い感心はないために、
それでいい、と、ずっと樹里と付き合いを続けて来たー

すぐに幸人は気づいたー

”樹里も”パラサイトに寄生されているのだとー。

危ないところだったー。
樹里から誘われれば、”パラサイト”のことを知らなければ
幸人はそれに応じていたかもしれないー。

そしてー…
樹里から、幸人にパラサイトが送り込まれてー
自分も、恐らくはー

”くそっ、教授も山田も高橋もみんなパラサイトに寄生
 されてるじゃねぇか”

幸人は、教授や友達の名前を頭の中に浮かべながら、
ため息をついたー。

「ーー寄生されていない奴らの方が、少ないなー」
幸人は周囲を見渡しながらそう呟くー。

幸人が、”パラサイト”の存在に気付いたその理由ー。
それはー…
”自分自身が寄生されそうになったから”
だー。

幸人は少し前に高校時代の後輩の女子から
”大事な相談がある”と呼び出されたー。
既に”樹里”という彼女がいたために、
恋愛感情は全くなかったし、
仮に告白されたとしても”断る”という選択肢しか
幸人にはなかったものの、
高校時代、同じ部活の一員として、苦楽を共にしてきた後輩だし、
何か悩んでいるのなら相談に乗ってあげないと、ということで
その子と会ったー。

しかし、その”呼び出し”の目的は
”既に、パラサイトに寄生されていた後輩”が、
幸人を”仲間”にしようとして呼び出したものであり、
幸人はいきなり後輩にキスをされて、驚きのあまりそれを振り払ったー。

あまりに驚いて慌てて振り払ったために、
寄生虫がまだ中に入り込んでいなかったことー、
偶然、くしゃみをして、寄生虫が中に入り込むのが遅れたことー、
そして、幸人自身がすぐに異変に気付いて、口の中に飛び込んだ寄生虫を
掴むことに奇跡的に成功したことでー、
幸人は”寄生”を免れることができたー。

”正しく言えばー”
幸人の中に寄生虫は”いる”ー。

しかし、口の中に飛び込んだ際に、幸人が寄生虫を慌てて手で掴みー、
引っ張ったことで”パラサイトが半分に千切れて”、
半分しか幸人の身体に入り込むことが出来ずー、
結果、幸人を支配することはできないままの状態になってしまったー。

がー、
そんな”奇跡”のような条件が揃い、
幸人は自我を保ったまま
”周囲の人間”が寄生されているという事実に気付いただけでなく、
寄生虫同士”寄生済みかどうか知らせるシグナル”を発しているため、
幸人は他の寄生虫たちから”既に寄生済み”だと誤認されー、
獲物として狙われるようなこともなくなったー。

「ーー俺は幸運だったー
 けど…この状況、どうすりゃいいんだー?」
幸人は戸惑うー。

”パラサイト”の寄生未遂のあと、
寄生虫の半分が体内に宿っている故に
他の”寄生された人間”たちからは仲間と誤認されて
色々な話を聞くことができたー。

彼女の樹里から”幸人も仲間になったんだね”と聞かされた時には
心底驚いたー。

しかしー…

これは、”ラッキー”だったのかもしれないー。
あの日、後輩の女子による”寄生未遂”がなければ
恐らく幸人も今頃、樹里を始め、身の回りの人々と
全く同じ運命を辿ることになっていてー、
今頃は、身体も心も、あの気色の悪い虫に奪われていただろうー。

そう思うとゾッとするが、
今、この状況は”辛うじて”助かったと言える、
そんな、状況だったー。

”でもなぁ……だからと言ってー
 俺…どうすりゃいいんだ?”

困惑する幸人ー。
幸い、自分は寄生虫に支配されず、
しかも”周囲からは寄生虫の仲間扱い”される状況になったー。

これが、物語の中であれば
”俺が寄生虫から世界を救う!”と物語の主人公になれるかもしれない
レベルの奇跡だー。

がー…
幸人はただの大学生に過ぎないー。
寄生虫と戦うことなんてできないしー、
できるのは”自分の身を守ること”ぐらいだー。

「ーあ、いたいたー」
彼女の”樹里”が近付いてくるー。

もちろん、既に寄生されている樹里はー
もう、”樹里であって、樹里ではないー”

見た目も、声も、記憶も、表向きの振る舞いも樹里だがー、
”樹里”ではないのだー。

いいやー、
もしかしたら樹里と付き合い始めた頃から、
樹里はもう樹里じゃなかったのかもしれないー。

樹里が”いつ”寄生されたのかは分からないー。

最後にデートをした時の”樹里”は
本当の”樹里”だったのか、
それともパラサイトだったのかー、
それも分からないー。

声をかけて来た樹里が周囲を見渡しながら
”パラサイト”に寄生されている生徒しかいないことを
確認すると、
「昨日、”妹”も中身にしちゃった」
と、嬉しそうに樹里が言葉を口にしたー

「ーい、妹ー?あぁ、葵ちゃんー?」
幸人がそう呟くと、
樹里は「ふふー、そうー。せっかくだから”仲間”にしてあげなくちゃね」と、
笑みを浮かべたー。

元々の樹里は、妹の葵のことをとても可愛がっていたー。
その樹里が、嬉々として妹まで”寄生虫の餌食”にしてしまうなんてー、と
幸人は震える思いで樹里を見つめたー

「あれ?どうしたの?なんかリアクション薄くない?」
樹里が少し疑いの目を向けるー。

「ーー!」
樹里の耳から、少しだけパラサイトが顔を出して、
幸人のほうを見つめるー。

”本当に仲間なのか”を探っているようだー。

その間、樹里は少し虚ろな目になっているー。

「ーーーー…ふふーー」
樹里の耳の奥にパラサイトが戻っていくと、
樹里も目の輝きを取り戻して笑みを浮かべるー

「ーもっと、喜んでくれればいいのにー」
樹里がそう言いながら、幸人の肩をポンポンと叩くー

どうやらー
”パラサイトが発するシグナル”の確認をしていたようだー。

しかし、幸人の中には”千切れたまま”入り込んだ
寄生虫の一部がいるためー、
その”シグナル”は発されていて、
樹里は疑いを晴らした様子だったー。

実は”樹里”以外にもこういうことを何度もされているー。
その都度、幸人は恐怖を感じながらも、
”体内の寄生虫”のおかげでなんとか”仲間”と勘違いされて、
何もされない状態が続いていくー

「ーーでも、”人間”たちも愚かだよねー」
笑いながらそう呟く樹里ー。

その笑顔は”かつての樹里”の笑顔と同じようにも見えるー。
だが、もうその中身は樹里ではないー。
人間を侵略する恐るべき”パラサイト”の一味だー。

そうは分かっていてもー
どうすることもできないー

「あぁ、ははー…愚かだよなー」
幸人はそんな風に呟いたー。

それはー、ある意味、本心でもあったー。

こんな状況になるまで、人類は何の手も打てなかったー。
いや、”気づいて”すらいなかったー。

自分も含めて、だー。

だからー。
人類は”愚か”なのだとは思うー。

けれどー

”ーー愚かだからって、愚かな生き物にもそれなりの生活があるんだー!”
気付けば、幸人は拳を握りしめていたー。

樹里はそれに気づかず、笑いながら
「今日は誰を”支配”しようかなぁ」と、呟いて
立ち去っていくー。

幸人は、そんな”変わり果ててしまった”彼女の姿を見つめながら
悔しそうに拳を震わせることしかできなかったー…

<後編>へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

「連鎖するパラサイト」の続編が見たいというお声にお応えして、
続編を書いて見ました~!
(※続編が見たい!の声があってもかけない作品もあります~!ごめんなさい)

土曜日枠の作品なので続きは来週になってしまいますが、
(※土曜日のみ、私がその日に書く時間が確保できないので予約投稿デス)
楽しみにしていて下さいネ~!

コメント

タイトルとURLをコピーしました