知り合いから、知り合いへ…。
人間の”繋がり”を利用して
連鎖的に寄生を広げていくパラサイトー。
そんな、パラサイトを前に”唯一”、
狙われない身となった彼の運命はー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
幸人は帰宅すると、部屋に飾られている
彼女の樹里との写真を見つめながら
悔しそうに、その名前を呟いたー。
樹里は”パラサイト”に支配されてしまっていたー。
気づいた時にはもう、”やつら”の一員になっていたのだー。
いいや、樹里だけではない。
既に、実家で暮らす幸人の両親も、
友人の山田も高橋も、教授もー、
みんなみんなパラサイトに寄生されているー。
寄生されていない人間は、日に日に減っているー。
今、世界はどんな状況なのかー。
テレビに映っている芸能人や、政治家ー
そういった人々は、本当にその人なのかー。
このままでは恐ろしいことになる、と、
思いつつ、どうすることもできないー。
”ーーけど、テレビ越しじゃ、パラサイトのシグナルを
感じることもできないしなー”
パラサイトが寄生している人間は、
パラサイトにだけ分かるシグナルを発していて、識別できるー。
以前、寄生虫に寄生されかけて、
パラサイトの”千切れた半分”だけが自分の中に存在している幸人は
パラサイトに支配されることなく、シグナルを識別できるようになったー。
だが、実際に本人と合わないと、
そのシグナルを識別することはできない。
だから、”テレビに映っている有名人”は無事なのかどうか、
それは分からなかったー。
「ーーー…」
幸人は、大学内で”まだ”パラサイトに寄生されていない人物を
頭の中に浮かべるー。
「ーーそうだー…俺に出来ることだってあるー」
自分は、英雄ではないし、
物語の主人公のような存在ではないー。
これが、アニメなら
”唯一パラサイトを見破ることができる主人公”として
世界を救うための戦いを始めるのかもしれないー。
でも、幸人はただの大学生。
そんなことは、できないのだー。
「ーーーまだ寄生されていないやつらに、このことを伝えることぐらいは、できるー」
そう思いながら、大学にやってきた幸人は、
早速、同じ大学内で、まだ寄生されていない後輩ー、静江(しずえ)に声をかけたー
いつも読書をしている静江は、幸人に声を掛けられて
不思議そうに、眼鏡越しに幸人を見つめたー
「ーーーパラサイトー?」
明らかに、幸人のことを”頭のおかしなやつ”を見る目で
見つめている静江ー。
「ーわ、分かってるー。急にそんなことを言われても
そう簡単に信じることはできないってことぐらいー
でもー…」
そこまで言うと、近くに”別の生徒”の気配を感じて
幸人は口を閉ざすー。
静江は、”奇妙な物”を見る目で、
「ーー何言ってるか、よく分からないー」と、言いながら
そのまま立ち去っていくー。
静江は、あまり友達がいないー。
故に”まだ”寄生されていないのだろうー。
しかし、パラサイトに寄生された人間は
”誰が寄生されているのか”を見分けることができるー。
それはつまり、”静江”が狙われるのも時間の問題だー。
「ーーお、なんだなんだ?あの子も”仲間”にしてあげようとしてたのか?」
友人の一人、高橋が幸人にそんな言葉を口にするー
「ーは、はははー、まぁな」
幸人が苦笑いしながら言うと、
高橋は「ーもうすぐ”みんな”俺たちの仲間になるんだからなー」と、
嬉しそうに笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
「んっ… くっ… ぁ」
廊下の影から呻くような声が聞こえたー。
ハッとして、その場に駆け付けると、
彼女の樹里が、静江に抱き着いて、キスをしていたー。
女の子同士のそんな姿に一瞬ドキッとしながらも、
幸人は”また、救えなかったー”と、表情を歪めるー。
”まだ寄生されていなかった静江”が、
既にパラサイトの支配下にある樹里にキスをされている、
ということは”もう手遅れ”ということだー。
やがてー、
樹里が顔を赤らめながら振り返ると、
「あぁ、幸人ー…また”仲間”が増えたよー」と、
嬉しそうに微笑んだー
静江は涎を垂らしながらよろよろと起き上がると、
「ー今日から、わたしも仲間ー」と、耳から寄生虫を垂らしながら
笑みを浮かべたー。
「ーーは、ははははー…
これで、仲間だなー」
幸人は”本当は支配されてない”ということに気付かれないように
そんな言葉を口にするー。
”あのパラサイト”をどうにかする方法はないのだろうかー。
せめて、大事な人だけでも救うことはできないだろうかー。
そんなことを幸人は考え始めるー。
そしてーーー…
”自分と同じような状況”にすればー、
と、思い始めるー。
幸人は、寄生虫が自分の体内に入っていく直前、
寄生虫の本体を掴み”半分ほど”に寄生虫が千切れたため、
中に入り込んだ寄生虫が死んだか何かして、
”支配されずに”済んだー。
しかし、中に寄生虫が宿っているために、
”寄生されているシグナル”は発されていて、
周囲の”寄生された人間”からは敵視もされない、
そんな状態になっているー。
もしー、もしも…
彼女の樹里も”同じ状況”にすることができればー
もしかしたらー…助けることもできるかもしれないー。
(そうだー…樹里だけでもー…)
拳をぎゅっと握りしめる幸人ー。
”俺と同じ状態になればー、
他のパラサイトたちにも狙われずに済むー
あんな樹里ー…もう、これ以上見たくない”
そう思いながら幸人は樹里を救出する方法を考え始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”奴らは、油断をしているー”
幸人は、そう思ったー。
樹里を救うと決意してから1か月近くー。
もはや、幸人の通う大学にはほとんど”普通の人間”はいないー。
街中でも同じだー。
しかも、”残っているわずかな人間”も、
パラサイトに支配されつつあることに気付いていないー。
誰もが、”一見すると普通の生活”を送っているのだからー。
このパラサイトたちの最終目的が何かは分からないー。
しかしー、
もしかしたら”人間の文明をそっくりそのまま奪い取る”
ことなのかもしれないー。
そんな風に思いながら、観察を続けていた幸人は
パラサイトたちの”油断”を感じ取ったー。
前よりも”パラサイト”の本体が宿主である人間の身体から
顔を出すことが多くなったのだー。
耳から、鼻からー、口からー、
パラサイト本体の一部が身体の中から出て来るタイミングー。
それが、チャンスだー。
あの時ー
幸人が寄生されそうになったあの時ー、
寄生虫を手で引っ張ったことによって、
幸人はなんとか支配されることを免れたー。
樹里のパラサイトを何とか取り除くことができればー…
そして、樹里を助けることができれば
少しずつ、少しずつでも、周囲の人間を助けていくことができるかもしれないー。
幸人は、樹里を救うためー
大学内で、できる限り樹里と行動を共にしたー
”樹里の中からパラサイトが顔を出した瞬間”
かつー、
”周囲に誰もいないタイミング”
その2つの条件がそろう時をひたすらに待ったー。
そしてーーー
ついに、その時が訪れたー。
樹里の耳から、”パラサイト”が顔を出すー。
少し虚ろな目になった樹里がニヤニヤと笑いながら
「人間も、あと少しで完全にー」と、言葉を口にするー。
”ーー誰もいないー…よし、今だー!”
幸人はそう心の中で呟くと、
素早く行動に出たー。
樹里の耳から飛び出していたパラサイトを指で掴みー
それを引っこ抜こうとしたのだー
「ーなっ!?何をする!?」
樹里が突然のことに驚いて叫ぶー。
慌てて樹里の中に戻ろうとするパラサイトー
だがーーー
ぶちっ…!
樹里を支配していたパラサイトの半分ほどが千切れてー、
幸人の手でうごめくー。
半分ちょっとは、樹里の中に引き返したがー、
幸人と同じ状態になればー、
これでー…
「ーーー樹里!」
幸人が周囲の様子を気にしながら叫ぶー
がーー…
「ーぁ…」
樹里は虚ろな目になって、その場で膝をつくと、
涎を口から垂らしながら、呻くような声だけを時々発する状態になってしまったー。
「じ…樹里…?おい、樹里ー?」
パラサイトを完全に取り除くことはできなかったが、
樹里が正気を取り戻すことを期待していた
幸人は唖然とするー。
パラサイトからは解放されたように見えるー。
しかし、肝心の樹里が虚ろな目のまま、口を半開きにして
涎を垂らしているー。
「ーーじ…樹里…しっかり、しっかりするんだー」
樹里の肩を掴み、樹里を揺さぶるー。
それでも、樹里は力なくガクンガクンと、揺らされるままに揺れてー、
そのまま力なく倒れ込むー。
まるで、意思のない人形のように、
ぐったりとした倒れ方ー。
幸人は困惑しながら「じ…樹里ーお願いだから、目を覚ましてくれー」と
声を上げるー。
だがーーー
その時だったー
「あれれ?何やってんの?」
背後から、”この前までは正気だった”
大人しい性格の女子・静江の声がしたー。
既にパラサイトに支配されている静江が
ぐったりしている樹里を見つめるとー、
千切れたパラサイトを見て、首を傾げたー
「何があったの?
人間の仕業?」
静江の言葉に、幸人は「え…あ、いやー」と、呟くー
恐らく、いつものように幸人は”仲間”だと思われていて
疑われていないのだろうー。
静江は幸人にあまり興味がない様子でー、
地面の千切れたパラサイトの残骸を見て、
「あ~…この”身体”、支配から解放されちゃったのかなぁ」と、微笑むー。
「ーー…に、に、人間の仕業かは分からないけどー
き、急に樹里がー」
幸人は”パラサイト”のフリをして、静江から”樹里の状況”を聞こうとするー。
すると、静江は笑ったー。
「大丈夫、安心してー」
とー。
「一度”わたしたち”に寄生された人間は、仮に中のパラサイトが死んだり、
取りぞ退かれちゃったりしても、”もう元には戻らない”から、
反撃される心配はないよー」
そんな言葉を口にする静江ー。
その静江の言葉がー、
幸人に”絶望の言葉”となって、突き刺さるー。
”樹里はもう元には戻らない”ー
パラサイトは、そう言っているのだー
「な…なんでー…?」
幸人が震えながら言うと、
静江は微笑んだー。
「なんでってー?
だって、わたしたち人間の”こころ”をエサに成長するんじゃん?
忘れたの?」
静江がそれだけ言うと、自分の身体を触りながら
笑みを浮かべたー
「わたしたちパラサイトに必要なのはー、
人間の身体と、記憶だけー。
”こころ”はいらないー。
だから、寄生したあとに心は少しずつ吸収して養分にしちゃうー。
ーーー常識でしょ?」
静江の言葉に、震える幸人ー。
樹里は座り込んだまま、涎を垂らしてうめき声を上げているー。
「ーー”寄生”されて時間が経った人間は
もう、元には戻らないってことかー?」
幸人が、妙に冷静にそう聞くと、
静江は頷いたー
「そ。心を失った人間は、もう抜け殻ー
元には戻らないー」
その静江の言葉に、幸人は”キレ”たー。
今までずっと冷静にやってきた自分の中での
何かが壊れたー。
怒り狂って叫び声を上げながら、
静江に近くの机を叩きつけてー、
静江の身体の中から寄生虫を引きずり出しー、
何度も何度も何度も踏みつけて、踏みつぶしたー
粉々になるまで粉砕したー。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
幸人は、寄生虫を引きずり出すために、
ボロボロにしてしまった静江と、もはや跡形もなくなっている
パラサイトの前でうなだれたー。
「ーーーーおいおい、何してるんだ?」
「ーーあれぇ?”裏切り者”?」
「仲間の反応は出ているんだけどなー」
”パラサイト”に寄生された同級生たちが集まって来るー。
もう、終わりだー。
幸人は、泣きながら一人、狂ったように笑うと、
乗っ取られたクラスメイトたちのほうを見つめたー。
「クソパラサイトどもー…!
呪われろ!!!」
と、そう叫びながらー。
取り押さえられる幸人ー。
だが、幸人は”改めて”パラサイトを捻じ込まれる
最期の瞬間までー
パラサイト達に対する呪いの言葉を吐き続けたー。
おわり
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コメント
連鎖するパラサイトの後日談でした~!!
考え始めた時には”どんな結末にするか”まだ決めていませんでしたが
どう考えてもハッピーエンドに転んでいくのは無理な気がしたので
バッドに突き抜けました~!☆
”寄生虫の寿命は2年だったー”
みたいな強引な展開にすればハッピーエンドもできたかもしれませんケド…笑
お読み下さりありがとうございました~~~!
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