”母親”ー
子供にとって、それはかけがえのない存在ー。
しかし、
その母親が歪んでしまったらー?
闇に、染まってしまったらー?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーママ!ママ!ママ!」
「ーうるさい!あんたなんか産まなきゃよかった!
この出来損ない!」
とある家庭ー
母親が実の息子にビンタして、
辛辣な言葉を投げかけているー。
「ーーーーり、璃子…!なんで!」
夫と思わしき人物が困惑をしているー。
その家の棚の上にはー
優しく微笑む母と、父と、息子の姿が写った
写真が置かれているー
”今の母親の姿”からは想像もつかないほどにー
穏やかな笑顔の母親の姿が、
その写真には写し出されているー
「ーーーーやめて!やめてよママ!」
泣き叫ぶ息子ー
何度も何度も、その息子をビンタしながら
狂ったように笑う母親ー
優しかった母親の豹変によりー
その家庭は、崩壊したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーうひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
小柄で陰険そうな目つきの男が、
イスに座ったまま、足をバタバタさせて大笑いしているー
「ママ!ママァ!やめてよママァ!」
男はそう叫ぶとー、
モニターを見つめながら笑みを浮かべるー。
モニターの中の子供が、豹変した母親に対して
泣き叫んだ言葉を、彼は茶化すような口調で
物真似したのだー。
「ーーーぁ~~~~~あ、たまんねぇ
優しいママが、闇に堕ちるのは、
ホント、最高だよー」
そう呟くと、男は笑みを浮かべるー
男はー
ピンチに陥った家庭の母親を巧みに騙しー
”洗脳”し、
闇に落としてその光景を見てー、
楽しむ悪趣味な人物だったー。
”ママ…ママ… ママ…もうやめてよぉ”
泣きじゃくる子供の姿が、彼の見つめているモニターに
写し出されるー
「ーーママァ~~~もうやめてよぉぉ~~
うひゃひゃひゃひゃひゃぁ!」
下品な笑い声をあげると、男はそのまま
豹変した母親によって、家庭が崩壊していく姿を、
嬉しそうにー
まるで、感動的なドラマを見つめるかのように、
見つめ続けたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーごめんー」
とある家ー。
二児の子を持つ父親、
天澤 和彦(あまさわ かずひこ)は、
そう言いながら頭を下げたー。
「ーーううん…あなたが悪いんじゃないんだしー」
妻の深雪(みゆき)は、少し悲しそうにしながらも、
夫の和彦に対してそう言葉を投げかけたー。
和彦はー
会社の急激な業績の悪化により”リストラ”されてしまいー、
失業してしまったのだったー。
まだ若い部類であるものの、
勤務先が大企業であったことからか、
それなりに給料は高くー、
人間関係も、仕事も上手く行っていたために
退職するつもりなど毛頭なくー、
それ故に”和彦の収入はこれからも同水準であることを想定した”
生活をしてしまっていたー。
「ーーーーこれから、苦しくなっちゃうかもしれないけどー
俺もすぐに、仕事を探すからー」
和彦がそう言うと
深雪は「ーわたしもできることは何でもするからー
一緒にがんばろ?」と、優しく微笑んだー。
「ーーあぁ…本当にすまないー」
和彦はそれだけ言うと、
子供部屋で寝ている二人の子供のほうを見つめたー。
長女の麻紀(まき)は、1年生ー
そして、長男の翔(かける)は、まだ幼稚園に通っているー。
これから、成長していくにつれてお金もかかってくるだろうしー、
正直、今、このタイミングでリストラされてしまったのはかなり厳しいー
将来安泰とも言われている会社だったが、
社会の急激な変化によって業績が急激に悪化、
リストラせざるを得なくなってしまい、
その一人に和彦が選ばれてしまったのだったー。
「ーー…翔と麻紀のためにも、頑張らないとなー。
もちろんー…深雪のためにもー」
和彦がそう言うと、
深雪は心配そうに「わたしも頑張るからー、一人で抱え込まないでね」と、
優しく、言葉を呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
現実は厳しかったー。
和彦はすぐに新しい仕事を見つけたものの
給料は大幅に下がり、
それでも家賃や税金は、容赦なく、
天澤家からお金を持ち去っていくー。
妻の深雪も、子育てに、パートに、
必死に和彦を支えようとするも、
正直”限界”が近づきつつあったー。
「ーーーーー」
家計簿を見つめながら頭を抱える深雪ー。
夫の和彦も必死に働いているー
けれど、それでも赤字になり、
貯金を切り崩すのにも、限界が訪れかけていたー。
「ーーーーどうしたらー?」
深雪は”何とかしなくちゃ”と、
ネットで色々なサイトを見つめながら
ため息をつくー。
その時だったー
”新薬の治験”
そんな、広告が目に入ったー。
しかもー
”ごく短時間で終わる治験”で、
報酬も高いー。
一瞬、怪しいと思ったものの、
大手製薬会社の名前が書かれており、
今月も家計が苦しい状況の中、
深雪は”その治験”を受けることにしたのだったー。
後日ー
治験の会場に足を運ぶ深雪ー
そこにはー
優しそうな医師が待ち構えていたー。
「ー今回の治験へのご参加、ありがとうございますー」
医師はそう挨拶をすると、
手短に、分かりやすく治験の概要を説明したー。
「ーーあの、本当に1回でこれだけの報酬をー?」
深雪が、治験に参加することで得られる費用が
あまりに高額なことで少し不安を感じるー。
その金額は、たった1回で、100万円だったからだー。
しかしー
”家計のピンチに焦っていて正常な判断力を失っていたこと”
”大手製薬企業の名前が書かれていたこと”
さらには、ネットで”治験に使われる薬”について調べたところ、
治験を受けた人間の口コミがあってべた褒めだったこと、などから
深雪は今日、ここにやってきていたー。
「ーーえぇ。なるべく早く色々なデータが我々としても欲しいのでー
そのために高額な報酬を用意させていただきましたー。
安全性についても、既に基準はクリアしておりますので、
多くの場合、心配はございません」
医師は優しくそう説明すると
”治験”について詳しくない深雪は納得してしまいー、
藁にもすがるような思いで、その”治験”を受けることを
了承したー。
”ドンロール・イトマコン錠”
聞いたことのない薬だー。
治験中だから、当たり前かもしれないー
「ーこれを服用して頂き、1時間の健康観察の後、
問題なければお帰り頂いて大丈夫です」
医師の言葉に、
深雪は「わかりました」と言うと、
迷いなく、ドンロール・イトマコン錠をそのまま
口にしたー
”クククククー”
医師は、心の中で笑うー
”家計のピンチに苦しんだ母親を騙すのはー
たやすいことだなー
子を守りたいという母性本能が
警戒心を薄めー、
このような怪しい治験にも手を出してしまうー”
そんな医師の心を知る由もなく、
薬を飲み終えた深雪は、
健康観察のための部屋に移動し、
そのままその部屋で待機を始めるー
だがー
深雪の目の輝きは次第に失われていきー、
やがてー
先程の医師とは別の男が
部屋に入ってきたー
「ケケケケケ…!
気分はどうかなぁ?」
小柄なイヤらしい目つきの男がそう言うと、
深雪は「とてもいい気分ですー」と、
虚ろな目のまま呟いたー
「ーうひゃひゃひゃひゃ!そうだろう?
お前は今日から俺たちのしもべだー」
男が言うと、
「はいー」と、深雪は答えたー。
「ーーへへへへ いい子だー
おっとそうそう、”治験中”だったなー
ちゃんと効果が出ているか、確かめさせてもらうぜ!うひゃひゃひゃ!」
そう言うと、男は深雪に近付いて突然、深雪の胸を触り始めたー
だがー、
深雪は嫌がる素振りも見せず、
男に胸を触られているー
「ーーんっひゃ~~~!
いいおっぱいだなぁ!
ほら、俺に揉まれてるんだぜ!
喜べ!笑え!うひゃひゃひゃひゃ!」
男が言うと、
深雪は突然笑顔になって、
男と同じように「うひゃひゃひゃひゃ」と笑い始めるー
「へへへへっ!はい、治験成功ぅ~!
ご苦労さんー」
それだけ言うと、男は
手に持っていた
”ドンロール・イトマコン錠”を見つめたー
「これは脳に特別な信号を送り込み、
俺たちの意のままに洗脳するための特殊な薬さ!
へへへ!すげぇ効き目だろ?」
男の言葉に、深雪は嬉しそうに微笑むと、
「ー家計に苦しむのって辛いよな…へへ、分かるぜ分かるぜ」と、
言いながらイヤらしい手つきで深雪の髪を触るー。
髪を触られても、深雪は幸せそうに微笑むだけで、
何も抵抗する素振りを見せないー。
「ーーーさァ、約束の100万円だー。
その代わり、見せてくれよー?」
男は、そう言うと、ニヤリと笑みを浮かべるー。
「ーこの俺に、”家庭崩壊”ショーをー」
男はそう言いながら、深雪にキスをすると、
深雪は「はい…♡」と、嬉しそうに微笑んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夫である和彦が帰宅すると、
息子の翔が困惑した様子で、
玄関の所にやってきたー
「ーーパパー…」
まだ幼稚園に通っている年齢の翔の困惑した表情に
和彦は「どうしたんだ?」と、優しく微笑むー
すると、翔は困惑した表情で言い放ったー。
「ーごはん、まだ…?」
とー。
「え?」
和彦は少し困惑しながら、玄関近くの廊下にある時計を見るー。
既に時間は20時ー。
いつもなら、子供たちと、深雪のご飯は
とっくに住んでいる時間帯だー。
「ーーご飯、まだ食べてないのか?
ママは?」
和彦が優しい口調でそう言うと、
翔は首を横に振ったー。
「ーーーそ、そっか、ごめんなー
ちょっと待ってて」
和彦はそう言うと、家の中に入り、
キッチンのほうを確認するー。
確かに、食事を食べた形跡はなくー、
姉の麻紀も困惑した様子で本を読みながら
「パパ…?」と首を傾げたー
「ーごめんなー、今、ご飯の準備するからー」
和彦はそう言いながら、
てっきり、深雪はいないのだと思い、
慌ててご飯の準備を始めるー。
「ーーママはどこに?」
子供二人が、ママ、パパ呼びのため、
子供の前では妻のことをママと呼んでいる
和彦は、戸惑いながらそう言うと、
「ーーママはずっと上にいるよ」
と、姉の麻紀が答えたー。
「え?ママ、いるのか?」
和彦がそう言うと、麻紀も翔も不安そうに頷くー。
「ーー……そ、そっかー」
和彦は、深雪が体調不良だと解釈して、
「心配だなー」と、呟くと、
そのままご飯の準備を終えて、
麻紀と翔に「ごめんな~遅くなっちゃって」と、
声を掛けてから、二人にご飯を食べさせ始めるー。
二人が晩御飯を食べ始めたのを確認すると、
仕事のスーツから着替えて、2階にいる妻の深雪の様子を
確認しにいく和彦ー。
「ーー深雪~?大丈夫か?」
体調不良だと思っている和彦は、
心配そうに2階の深雪の部屋に近付いていくー。
しかしー
深雪の部屋に近付くにつれてー
和彦は首を傾げるー
気持ち良さそうにー
喘ぐ深雪の声が聞こえるのだー。
「ーーー……え」
和彦は困惑するー。
いったい、深雪は何をしているのかー
しかも、子供たちが普通にいる時間帯に、何をー?
そう思って部屋をノックするー。
だが、深雪の喘ぎ声は止まらないー。
しかもー
「ーー!」
深雪の声だけではなく、男の声まで聞こえて来たー。
「ーーー…!?!??!?!」
和彦が「み、深雪!?」と部屋の外から
再度名前を呼びかけるも、返事がないー。
困惑した和彦は、部屋の扉をやむを得ず開けるとー、
そこには深雪が、知らない男と、
今まさに”お楽しみ”の最中の光景が広がっていたー
「ーな、な、何をやってるんだ!?」
和彦が戸惑いながら叫ぶと、
深雪は「あ~~~ ふふふふ…見て分かるでしょ?浮気♡」と、
開き直った様子で笑みを浮かべたー
「ーーえ??え!?」
チャラそうな雰囲気の男の方が、寧ろ気まずそうにしている中、
和彦は、あまりの光景に言葉を発することも忘れ、
表情を歪めることしかできなかったー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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洗脳されて闇に堕ちてしまったママ…!
果たして家族の運命は…?
続きはまた明日デス~!
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