<入れ替わり>昆虫おじさんと虫嫌いのわたし③~崩壊~(完)

昆虫好きのおじさんと入れ替わってしまった
大の虫嫌いの女子高生ー。

そして、その組み合わせの入れ替わりが
最悪の事態を生みだしてしまうー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

穂香の妹・和美から、
穂香は大の虫嫌いである、ということを知った
穂香(勲)ー

勲は、”穂香が虫嫌い”ということを
把握していなかったー。

穂香は恥ずかしさから”遅刻しそうで慌てていた”と
嘘の説明をしていたしー
勲は勲で”自分自身は虫が大好きだから”と、
穂香に対して”昆虫ショップをやっている”ということまでは
口にしなかったー。

虫が苦手な人がいる、ということぐらいは
もちろん、勲も理解はしているー。

しかし、虫カゴやケースなどに、それぞれの虫がしっかりと
入れられている”管理された状態”であれば
特に言う必要もないと思っていたのだー。

がー
和美から、穂香が想像以上の虫嫌いだと聞かされた
穂香(勲)は、慌ててスマホで勲になった穂香に連絡を入れながら
連絡がつかないため、勲自身の家に、慌てて駆け付けたー。

けれどーーー

”手遅れ”だったー。

勲の自宅兼店舗となっている建物内の
”昆虫”は、パニックになった勲(穂香)が、
殺虫剤をバラまいたことで
”全滅”してしまっていたー。

店舗部分の中央で、一人座り込んで泣きじゃくっている勲(穂香)ー。

そんな光景を見て、穂香(勲)は、
呆然とした様子で”自分の宝物”が、全滅している様子を見つめたー。

”売り物”であった昆虫たちが、
殺虫剤によって、全てダメになっているー

「ーー……あ…… ぅ…」
放心状態の勲(穂香)が、穂香(勲)が入ってきたことに気付くと、
勲(穂香)は「ーー…怖いー…」と、だけようやく言葉を
振り絞ったー。

あまりの数の昆虫に、穂香(勲)は今までにないぐらいに
パニックになり、そして放心状態になっていたー。

「ーー…そ、そんなー」
穂香(勲)は呆然としながら、
店舗部分の昆虫たちの無残な姿を、電気をつけて確認するー。

”売り物”となっていた昆虫たちは
もはや、全滅と言っていいー。

まだピクピクと動いている個体もいるが
こんな状態ではとてもではないが、
売ることはできないし、
時間の問題で動かなくなるだろうー。

そしてー
穂香(勲)は、「はっ!?」と、急に叫ぶと、
店舗部分の奥にある、自分の自宅部分に
駆け込んだー

自宅部分には”売り物”ではなく、
勲自身が大事に育てている”家族”とも言える
昆虫たちがたくさんいるー。

中には海外でしか手に入らないような高額な虫もいたし、
勲がとても可愛がっているような虫もいたー。

がー
そんな”家族”たちも”全滅”しているのを見てー
穂香(勲)は
「うっうわああああああああああああああああああああ~~~~!」と、
穂香の身体でこの世の終わりかのような悲鳴を上げ、
その場でしばらくの間、泣き続けたー。

虫嫌いの穂香の身体が、虫の死にショックを受けて
泣きじゃくっているー。

そんな奇妙な光景が広がるー

やがてー
涙も出なくなったのか、穂香(勲)は顔を上げると、
そのまま立ち上がったー。

勲はー
小さい頃から昆虫が大好きだったー。
とても穏やかな性格で、社交的で、友達も多かったし、
優しい性格で、同級生たちも
”勲が怒った姿は見たこともない”ぐらいだったー。

しかしー
そんな勲が一度だけ”激怒”したことがあるー。

普段は穏やかで、いつも笑っていて、優しいそんな勲が、
鬼のように豹変して、
周囲を震わせたことが、
一度だけあったのだー

それがー
小学生の頃、勲が大事にしていた昆虫を
クラスメイトの悪ガキが取り上げて
目の前で潰したときだったー。

勲は、怒り狂ったー。
先生でも止めることができないほどに、
まさに鬼のようにー
怒り狂ったー。

それ以降ー
クラスメイトたちは、二度と勲の昆虫に、酷いことをしないようにしようと
心に決めるほど、それは恐ろしい光景だったー。

「ーーーーごめん…なさい…」
勲(穂香)が泣きながら戻ってきた穂香(勲)に
謝罪の言葉を口にするー

しかしー

「ーーうああああああああああああああああっ!」
突然、怒りの形相で雄たけびを上げた穂香(勲)が、
勲(穂香)をグーで殴りつけてきたー。

泣きながら謝罪の言葉を繰り返し口にする
勲(穂香)ー

しかし、怒り狂っていた穂香(勲)はー
穂香の、今まで一度も人を殴ったことがないであろう、
その綺麗な手で、何度も何度も勲(穂香)を殴りつけてー、
胸倉を掴んだー

「ーー許さない…!僕はお前を許さない…!」
穂香(勲)の目は、完全に怒り狂っていたー

「わ、わたし…む、虫が苦手でー…」
勲(穂香)がそう言いかけると、穂香(勲)は
怒りの拳を叩きつけるー

「許せない…
 うああああああああああああああああっ!

 許せない!」

雄たけびを上げながら怒り狂っている穂香(勲)ー

「ー僕の家族を…僕の家族をー…!
 許さない…許せない…!
 仕返ししてやる…!

 僕は…僕は絶対にお前を許さないぞ!」

穂香(勲)が、穂香の顔を真っ赤にしながら
”ぶち切れ”しているー。

普段穏やかな勲は、自分の昆虫に危害を加えられると
人が変わったようにキレてしまうー。

それ以外で怒ることのない勲は、
いざ、噴火してしまうと、止めることができないぐらいに、
怒り狂うー。

「ーーーーー仕返ししてやるー」
怒りが収まらない、という様子でそう呟いた穂香(勲)は、
”自分が嫌なことをされたからー”という理由で、
穂香にも嫌がることをしてやろう、と考えたー。

そして、その場で穂香の胸を揉み始めるー

「ー僕の…僕の大事な家族を殺しておいて、ただで済むと思うなよ!」
穂香(勲)はそれだけ言うと、
狂ったように胸を揉みながら、
泣きながら笑い始めるー

「や…やめて…やめて!」
勲(穂香)が、胸を揉み続ける自分の身体を止めようとするー。

だがー、穂香(勲)は止まらずー、
片手で勲(穂香を押し飛ばすと、
そのままお構いなしに胸を揉み続けるー。

「はっ…♡ 許せない… 絶対に許さないー」
その場で服を引きちぎり始める穂香(勲)ー

とにかく
”大切な昆虫たち”を奪ったこの女を
滅茶苦茶にしてやらないと気が済まなかったー。

40代のおじさんが、女子高生に何をムキになっているのかー。
周囲はそう言うだろうー。

しかし、勲にとっては”ここにいる昆虫”たちが全てであり、
普通の人の感覚で言えば
”家族も友達も恋人も皆殺しにされたような”
そんな状態だったー

「ーーーーーや、やめて…!やめて下さい!お願いします!」
勲(穂香)が悲鳴を上げながら
穂香(勲)の行動を止めようとするー

だがー

「君を信じた僕がバカだった!
 大体、なんだ?あんなに慌てて走ってきて人にぶつかって
 謝りもせずに、しかも僕の身体で女子トイレにも入ったって
 言ってたよな?

 君は僕に何か恨みでもあるのか!?
 僕の大事なものを奪って僕を犯罪者にでもしようとしてるのか!?

 許せないー!
 絶対に許せない!」

穂香(勲)は、勲(穂香)を突き飛ばすと、
泣きじゃくる勲(穂香)の前で、
怒りを身体にぶつけるかのように、喘ぎ狂い、悲惨な光景を
勲(穂香)に見せつけたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがてー
二人にとって、地獄のような夜は終わりー
太陽が昇ってきたー。

穂香(勲)は、適当に服を着こむと、
そのままどこかへ向かおうとするー

結局ー
朝になっても身体が元に戻ることはなかったー

「待って…身体を…返してー」
勲(穂香)が言うと、
穂香(勲)はにっこりと微笑みながら振り返りー、
そして、勲(穂香)に言い放ったー

「じゃあ、僕の家族を返してくれるかな?」
とー。

「そ…それはー……
 その…お父さんとお母さんにもよく話をして、
 弁償しますからー」

勲(穂香)が泣きながらそう言い放つー。

「ーーー…弁償ー?
 何を言ってるんだお前は!!

 死んだ虫たちはもう帰ってこないんだぞ!!
 新しい虫を買えば、それで僕が満足すると思ってるのか?

 お前は妹を殺されて、”代わりの妹”を連れて来られたら
 それで はいそうですか! って言うのか??」

穂香(勲)は、
穂香が自分でも見たことがないような怒りの形相で叫ぶと、
「ー許さない!僕はお前を許さない!!!」と、
言い放ち、そのまま再び外に向かおうとするー。

「ー待って…!待ってください!」
勲(穂香)は必死に何度も何度もそう叫んだがー、
もはや、どうすることもできなかったー。

勲の自宅兼店舗内の動かなくなった虫たちを見つめるー。

それを見ているだけで、震えが止まらないー。

「ーーー…うっ…うっ…」
勲(穂香)はその場で一人泣き始めるとー、
やがて、”何も知らずに”昆虫ショップでもある勲の家に
やってきた常連客が、店内の悲惨な状況を見つけて
呆然とした表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーえっ……?」

妹の和美が呆然とするー。

さっき帰宅した”お姉ちゃん”の部屋から
ものすごい物音が繰り返し響き渡っているからだー。

妹の和美からしてみれば、
昨日、虫嫌いのはずだった姉が、突然、平然と蜘蛛を外に逃がし、
その後、慌てた様子で出かけていき、
一晩帰ってくることなく、
ようやく帰ってきたと思ったら部屋から激しい物音が聞こえているー…

と、いう、完全に理解不能な状況だったー。

「ーど、どうしたの?」
物音に気付いた母親も首を傾げるー

「わ、わかんないけど…」
和美はそう答えると、少し考えてから
「ちょ、ちょっと見て来るー」
と、困惑しながら2階への階段を登り始めたー。

そしてー
姉・穂香の部屋をノックしようとするー

しかしー

”ふざけるな!僕は、僕は許さないぞ!”
”全部滅茶苦茶にしてやる!全部壊してやる!”

穂香(勲)の怒鳴り声が聞こえてくるー

「ーー…お…お…お姉ちゃん…?」
部屋の扉を開けるかどうか、激しく迷いながらも、
窓ガラスが割れたような音がしたことで、
慌てて和美は扉を開くー。

姉・穂香の部屋に足を踏み入れた和美は、
呆然としたー。

部屋はあり得ないほど散かっていて、
壊れているものも多数存在するー

窓ガラスは割れてー
穂香(勲)は、髪を乱して鬼のような形相で暴れているー

「お…おねえちゃん…な、なにしてるの…?」
和美が震えながらそう言うと、
穂香(勲)は気が触れたかのように笑いながら、
半分割れている窓ガラスをグーで殴りつけたー。

ガラスが音を立てて割れて、
穂香の手から出血するー。

「あははははははっ!もうどうにでもなれ!あははははははっ!」
穂香(勲)はそう言いながら、さらに暴れー、
ついには自分の部屋から飛び出して、隣の和美の部屋にまで
押し入り、暴れ始めたー

「ちょっと!お姉ちゃん!何やってんの!ちょっと!!」

しかしー
制止しようとする和美も無視して、
「僕は家族を皆殺しにされたんだ!」と叫びながら
和美の部屋を破壊していくー。

あまりにも乱暴に暴れているため、穂香の身体も打撲が出来たり、
出血を繰り返したりしているものの、
そんなこともお構いなしー。

和美の部屋を破壊し、1階も破壊しー
家中を破壊しつくすと、穂香(勲)は、
服をびりびりに破り捨てて、そのまま半裸の状態で
外に飛び出して行ってしまったー。

「ーーちょっと!?!?お姉ちゃん!」

姉の暴走の理由が分からず困惑する和美ー。
しかし、穂香(勲)から答えを聞くことはできずー、
半裸状態で徘徊していた穂香(勲)はまもなく通報されて、
警察に取り押さえられたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

穂香になった勲は、警察に連行された挙句、
ネット上に、半裸で徘徊する姿が拡散され、
さらには家族との絆も壊れてしまったー

勲になった穂香は、あまりのショックで精神的に病み、入院ー。
当然、昆虫関連の仕事は全て失い、
”入れ替わった”ということも信じてもらえず
”ストレスから自宅と店舗の昆虫を全滅させた昆虫研究家”の
レッテルを貼られてしまったー。

二人は、
入れ替わりによって、その人生が大きく狂ってしまったのだったー。

おわり

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コメント

恐ろしい結末を迎えてしまいました…!

虫嫌いがもうちょっと軽ければ…、
こんなことにはならなかったかもですネ~…!

お読み下さりありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    二人は元には戻れなかったのか~。そして、凄く悲惨なことになっちゃいましたよね。

    まあ、理由はどうあれ、他人の大切な物を滅茶苦茶にした穂香が一番悪い気がするので、自業自得かな。どんなに大人しい人間にも、触れてはいけない逆鱗みたいな物ってありますからね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!☆!

      殺虫剤を撒いていなければ、きっと昆虫おじさんは
      ちゃんと元に戻る方法を見つけて、
      身体も返してくれた…★

      そんな気がしますネ~!