平和だったルーン村に突如としてやってきた
謎の占星術師・ゼア。
ゼアの手により、村が支配される中、
一人の青年は、必死に抗っていくー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーー」
占星術師・ゼアは、水晶玉で
”洗脳した人間”の視点を見つめていたー。
”まだ、自分に逆らう人間がいるー”
サイモンら、村の一部の人間は、
ゼアが”洗脳術”を用いていることに気づいているのか、
ゼアに近付こうとしないー。
洗脳した村人たちを使って、強引に実力行使をしてもいいが、
”村人たちを洗脳していること”を自白するようなものだし、
万が一反撃を受ける可能性もあるー。
「ーーリリアよ お前の母親に毒入りの薬を作らせたー。
それを使い、邪魔者共を排除するのだー」
ゼアがそう命じると、
ジンの家で休んでいたリリアは
虚ろな目で「はいーーー」と答えたー。
ジンが寝ていることを確認すると
リリアは立ち上がりー
そのままリリアの家に向かうー。
「ーーはい、ゼア様のためにしっかりねー」
同じく洗脳されているリリアの母親から”毒の薬”を受け取った
リリアは笑みを浮かべるー
「ーゼア様のためにーわたしは逆らう者たちに罰を与えますー」
リリアはそう言うと、再びジンの家に戻って行ったー。
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翌日ー。
ジンたちはサイモンの家に集まっていたー。
「ーーーサイモンさんーちょっと」
ジンが言うと、サイモンがジンの話に応じるー。
そうこうしているうちに、
”洗脳されていない村人たち”が集まってくるー。
サイモンの家を拠点に、ジンたちは
”占星術師・ゼア”への対策を話し合っているのだー。
「ーお待ちどうさまでした~!」
サイモンの妻・ミーアが、村人たちに料理を振る舞うー。
「ーーークククククー」
リリアはそんな様子を見ながら笑みを浮かべるー。
ミーアの料理を手伝っていたリリアは、
密かにスープに”毒”を盛ったのだー。
「ーー(ゼア様に逆らうお前たちに死をー)」
完全に支配されてしまっているリリアは、
幼馴染のジンを殺すことにも、何のためらいもなかったー。
ジンが「リリアのスープ、美味しいんだよな」と、呟きながら
それを口にしようとするー。
スープの”毒”は1時間ほど経ってから効果が出るようになっているー。
それを飲めば、全員ー
「ーーほら、冷めちゃうぞ、スープ…!リリアも」
ジンがリリアにもスープを飲むように促すー。
だが、リリアは笑顔で首を振ったー。
「わたし、ちょっと食欲がなくてー。
だからみんな、どうぞ召し上がれ」
村人たちに向かって微笑むリリアー。
ジンは心配そうに「ーー大丈夫か?」と、呟くー。
リリアは「うん。ちょっと体調悪いだけだからー」と
いつものような笑みを浮かべながら答えたー。
村人たちは、スープを飲みー
サイモンの妻・ミーアが作った食事を食べながら
”ゼア”の対策を話し合うー。
「ーーチッー」
”ゼア様”に対する不満の言葉を聞き、思わず舌打ちしてしまうリリアー
「ーー(でも、あんたたちは死ぬのよ)」
リリアは笑みを浮かべるー
ゼアへの忠誠心に支配された今のリリアは、
もはやリリアなどではなかったー。
「ーーうっ…!」
ジンが苦しみ出すー
「ーーーどうした?ジン… ぐぁ…」
サイモンも苦しみだし、
サイモンの妻、ミーア…、
それ集まっていた村人たちも苦しみだし、
その場に倒れ込むー。
サイモンとミーアの子供たち二人も、
その場に倒れるー。
「ーーーくく…ふふふ…ふふ…あはははははははっ!」
笑い出すリリアー。
「ーゼア様に逆らう愚かものども!これがお前たちにふさわしい、最後だ!」
リリアとは思えないような声で、リリアが大声で叫ぶとー
サイモンの家に、占星術師のゼアが入ってきたー。
「ーーよくやったな。リリアよ」
ゼアが言うと、リリアは嬉しそうにゼアの前に膝をついたー。
そしてー
リリアは「ご覧くださいゼア様!」と言うと、
笑いながら、うつぶせに倒れているジンを乱暴に足で蹴り飛ばしてー
ジンを仰向けにさせたー
「ーこの無様な死にざーー」
リリアはそこまで言って言葉を止めたー。
致死性の高い毒で、死んだはずのジンがーー
目を開いていたー
「リリアー…」
悲しそうに、そう呟くジンー。
「ーーお、、お前…なんで!?」
リリアが怒りの形相で叫ぶー。
倒れていたサイモンが突然起き上がり、
ゼアの目を見ないように、ゼアに襲い掛かるー。
「ーひぃっ!?」
サイモンが隠し持っていたナイフで、斬りつけられたゼアは、悲鳴を
あげながら逃げていくー
「待てっ!」
サイモンが叫ぶー。
ゼアは慌てて逃亡を始めるー。
「ーーくっ!離せ!離せぇ!」
ジンに拘束されて叫ぶリリアー。
「ーーリリアちゃんー」
サイモンの妻・ミーアも立ち上がって、
”信じられない”という様子で、リリアを見つめるー
リリアを拘束したジンは、
「ーご協力、ありがとうございましたー」と、
ミーアや、他の村人たちに伝えるー
「ーママ~”死んだふり”もうおしまい~?」
サイモンの息子が、母親のミーアに向かって呟くー。
ジンはー
昨晩、リリアの様子に違和感を感じー
”寝たふり”をしていたのだー。
そして、リリアが夜中に母親のもとに向かい
”薬”を手に帰ってきたことに気づいたジンは、
早朝のうちにサイモンに報告ー。
”リリアも洗脳されている可能性があるー”
そう考えたサイモンは、”死んだふり作戦”を考案、
予め、妻・ミーアに”スープ”を作っておいてもらいー、
料理を食卓に並べる直前、リリアに気づかれないよう、
スープをすり替えておいたのだー。
スープの味が違っても
”毒入り”なら、リリアは理由をつけてスープを飲まないはずー。
だから、バレる心配はないと判断したー。
「ーーリリアを頼みます!」
ジンは、拘束したリリアを、ミーアや他の村人に託すと、
サイモンの後を追ったー。
「--お前はいったい、何者だ!」
サイモンの声が聞こえるー。
木々を抜けた先で
占星術師のゼアは追い詰められていたー。
「サイモンさん!」
ジンが駆け付けるー。
サイモンは、ゼアの目を見ないようにしながら、
ジンのほうを見て「ジン!」と叫ぶー。
「ーーく…」
追い詰められた占星術師・ゼアは、表情を歪めながら、
「ーーわ、私は王国から送り込まれた人間だぞ!?
私にこんなことをして、いいと思っているのか?」と、叫ぶー。
「ーーー……”本当に”そうなのか?」
サイモンが冷たい声で問いただすー。
ゼアは「私を斬れば、この村はおわりだ!」と叫ぶー。
ジンとサイモンは互いに顔を見合わせてー
考えた末に、ジンが、ゼアを拘束し、縛り付けたー。
「ーー村人たちに、何をした?」
サイモンが問うー。
ゼアは「正しきに、導いたのみー」と、答えるだけー。
「ーーふざけるな!みんなを元に戻せ!」
ジンが叫ぶー。
しかしー
それでもゼアは、要領を得ない返事をするだけだったー。
ジンとサイモンは今後について話し合うー。
村人たちは以前として大多数がゼアに心酔し、
ゼアに洗脳された状態のままー。
だが、ここでゼアを斬り捨ててみんなが元に戻る保証もないー。
ゼアの正体も不明で、
もしも仮に王国が送り込んだ人物であれば、
王国の女王・ライラに、ゼアの悪事を信じてもらい、
その上で処罰をしなければ、
ゼアがあれこれ嘘をつき、
ルーン村が”反逆者”にされてしまう可能性があるー。
「ーーレビンが戻るまで、待つしかないなー」
サイモンは険しい表情でそう呟くと、
捕らえたゼアをジンがサイモン家の倉庫に隔離しー
その上で、”正気の村人”を2か所に集めた上で、
それぞれジンとサイモン、戦える村人数名を分けて配置ー
レビンの帰りを待つことにしたー
「ーーークククー
お前たちはゼア様に裁かれるんだ…!」
拘束されているリリアが笑いながら叫ぶー。
「ーーリリア…必ず、元に戻すからなー…」
ジンは悲しそうにリリアに話しかけるー。
「ーーこれが本当のわたしよ!」
リリアはそう叫ぶー。
本当のリリアなわけあるものかー。
ジンは、誰よりもリリアを知っているー。
リリアは、こんな人間じゃないー。
だがーーー
”悲劇”は起こったー。
隔離されて拘束されているゼアは一人、笑っていたー。
”私をこのような目に遭わせても、無駄だー”
ゼアは笑みを浮かべるー。
”一度洗脳した相手に対しては、いつでも命令を送ることが
できるのだからー”
最初に洗脳するときは、相手の目を見る必要があるー。
だが、一度洗脳して支配下に置いてしまえばー、
もはやその必要など、ないのだー。
「予定変更だー」
”殺し合えー”
ゼアが命令を送るー
”破壊しろー何もかも”
この村を支配するつもりだったがー
仕方がないー
”死ぬわけにはいかぬー”
このままでは、ジンやサイモンに殺される可能性もあるー。
占星術師・ゼアは、己が逃亡するために、
”ルーン村”を破壊する決意をしていたー。
「ーー外が騒がしいな」
家にいたサイモンが不安そうに呟き、
妻のミーアに「少し見てくる」と、告げるー。
「ーー俺が戻るまで、絶対に扉を開けるな」
サイモンはそう言うとーー
外に出て、目を見開いたー。
村から火の手が上がっているー。
村人同士が争っているー。
男もー
女もー
子供もー
殺し合っているー。
「なんだ、これはーーー」
サイモンが驚きの表情で”地獄”のような光景を見つめるー
「ーーひひひひひひ…」
よろよろとリリアの母親が包丁を手にやってくるー。
「ーー…お、、おい!」
サイモンが驚いてとっさに剣を構えようとするも、
リリアの母親に刺されてしまうー。
「ーーがっ」
”そうだーー
殺せ
壊せ
焼き尽くせ”
サイモン家の倉庫に隔離されている占星術師のゼアは
”破壊”の命令を村人たちに送るー。
洗脳した村人たちにより、倉庫から解放されたゼアは、
そのまま逃げ出そうとするー。
「ーーゼア様」
「--ゼア様」
「--ゼア様」
”操り人形”と化した村人たちに
「クズども!お前たちは殺し合っていろ!全てを破壊しつくすのだ!」と、
叫ぶと、そのままゼアは、村の外に向かうー。
「ーーサイモンさん!」
倒れているサイモンを見つけて、ジンが叫ぶー
サイモンは血まみれで「ーー妻と、、、子供はーー」と、苦しそうに
呟くー。
ジンはサイモンの家の方角を見つめるー
既に、サイモンの家からは炎が上がっているー
「ーーー……」
ジンは、サイモンがもう助からないことを悟り、
サイモンの手を強く握るー。
「ーー大丈夫ですー。大丈夫ですー」
ジンが悔しそうに、けれどもせめてサイモンを安心させようと
そう言い放つと、サイモンは「よかった…」とだけ呟いて
そのまま動かなくなるー。
ジンは村人たちが暴徒と化した様子を見て、
慌ててリリアを拘束している自分の家に向かうー。
しかしー
リリアは、既に姿を消していたー。
「ーーくそっ!」
村が炎に包まれるー
そこら中から聞こえる笑い声ー。
「ーーーゼアああああああああああああ!」
ジンは、村の出口から外に飛び出しているゼアを見つけて、
そう叫んだー
「ーーーー!」
ゼアが振り返るー。
ゼアはすぐに村人たちに”こいつを殺せ!”と命じたー
だがー、遅かったー。
ジンがゼアの胸倉を掴み、ゼアを殴り飛ばすー。
”ゼアを殺せば元に戻るかもしれないー”
そう、信じてー
ジンは悲鳴を上げるゼアに、刃を突き立てたー。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーーーーーーー」
翌日ー
ジンは、焦土と化したルーン村を見つめていたー。
ゼアが死んでも、
ゼアが死ぬ直前の命令を村人たち実行し続けー
村は焼き尽くされたー。
村人たちは殺し合い、一晩明けた今日、
もう、誰もいないー。
「ーーーー」
ジンは、リリアを見つけることもできないまま、
悔しそうに首を振ったー。
王国に向かったレビンも、戻ってこないー。
「ーーー王国で、何か起きているのかー」
ジンは、”どうして自分だけが洗脳されなかったのだろうか”と
考えてみるー。
だが、その答えは見つからないー。
「ーーーーーー」
ジンは、悲しそうに焼けの野原と化したルーン村を見つめながらー
そのまま、王国の中心へと、歩みを進め始めたー。
その先に、全ての答えがあると、信じてー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー女王様ー」
王国ー。
女王・ライラは、うつろな目で玉座に座っていたー。
その背後に立つ女が静かに告げるー。
”先日、捕らえたレビンという男を、処刑しなさい”
とー。
女王ライラは、抜け殻のような状態で「はい…」と静かに呟いたー
おわり
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ファンタジー世界のごく普通の村を舞台としたお話でした~!
お読みくださり、ありがとうございました!!
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