平和を謳歌していたルーン村。
しかし、そこに王国から派遣された
占星術師・ゼアがやってきて、
村は崩壊を始めるー…
変わりゆく村人を前に、村の青年・ジンは…?
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睨み合うジンとゼアー。
「ーー話は聞いたー
お前が村長さんに何かしたんだな?」
ジンが言うと、ゼアは、「クックックー」と
不気味な笑みを浮かべるー。
「ー私が何かしたという証拠でも、あるのかな?」
ゼアは禍々しい指輪をつけた手を動かしながら笑みを浮かべるー。
”こいつー…何故私の洗脳術が通用しないのだ?”
ゼアは内心でそう思いながらも、冷静を装いながら
ジンのほうを見つめるー。
「ーー村長さんは、自殺するような人間じゃないー」
ジンがそう言うと、ゼアは笑ったー
「ーそれが、証拠、とでもー?」
それだけ言うと、ゼアは立ち上がり、
ジンの周囲を歩き出すー。
「人間など、分からぬものだー。
人が何を考え、何を望んでいるのかー
”言葉”で語ることはできても、
”真意”を知ることはできぬー。
言葉と、真意は違うー。
その人間の真意など、
本人にしか、分からぬものなのだー。」
ゼアの言葉に、ジンは「それでも、村長さんは自殺などしない!」と
ゼアを睨みつけるー
その時だったー
隣の部屋から、ゼアに洗脳されたリリアの母親ー
道具屋の店主でもあるリリアの母親が姿を現したー
「ーーこら!ジンくん!失礼じゃない!」
リリアの母親にそう言われたジンは
「お、おばさんー」と、戸惑うー。
リリアと幼馴染のジンは、リリアの母親にも
小さいころからよく可愛がってもらっていたー。
「ゼア様…申し訳ありませんー」
リリアの母親が申し訳なさそうにゼアに頭を下げると、
ゼアは「構わぬ」と、リリアの母親に向かって言い放つー
「お、、おばさん…い、いったいどうしたんですか!?
こいつは、村長をー」
確証はないー
だが、聞いた話では、この占星術師のゼアと村長が
個室に入って、しばらくしたタイミングで村長が
自殺したのだというー。
村長は意味もなく自殺するような人間ではないー
この占星術師のゼアが、何かをしたのだー。
そうとしか、考えられないー。
「ーーー夫は自殺したの!」
背後から声がするー。
ジンが振り返ると、そこには村長の妻がいたー
「ーー…そ、そんな…!」
ジンは戸惑うー
村長の奥さんまで、夫である村長は自殺だと言い放ったのだー
「ーーゼア様は、わたしの夫の代わりに、
村を導いて下さるのー。
そんな失礼なこと、言わないで頂戴!」
村長の妻にきつく言われて、ジンは戸惑いを隠せないー
「ーーーおやおや…皆さんは、こう言っておられるが?」
占星術師のゼアが笑うー。
「ーーーみ、みんな…どうしちゃったんですか!?」
村長の妻とリリアの母親を見て言うー。
「ーおかしいのは、ジンくんよー。
どうしてゼア様をそんなに目の敵にするの?」
リリアの母親にそう言われたジンは、さらに困惑するー。
ゼアが不敵な笑みを浮かべているー。
ジンは、ゼア・リリアの母親・村長の妻を見つめてからー
今ここで、これ以上何をしても、状況は変わらないと判断して、
そのまま会釈だけして、その場から立ち去っていくー。
「ーーーー本当に、申し訳ありませんでした」
村長の妻と、リリアの母親が、ゼアの前で土下座をすると、
ゼアは、その二人を無視して、窓の外を見つめたー。
”あの者ー…どうして我が洗脳術が通じないのだ?”
そう思いながら、ふと呟くー
「ーあの者とこの村で一番親しい者は誰だ?」
ゼアが、土下座している二人に背を向けたまま言うと、
リリアの母親が「わたしの娘…リリアと親しくしております」と、
頭を下げながら呟いたー。
「ーーーそうか。では、そのリリアも我がしもべにするとしようー」
ゼアがそう呟くと、
リリアの母親は「ありがとうございます」と、深々と頭を下げたー。
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「ーーーー占星術師・ゼアかー」
サイモンの家で、ジンとサイモン、リリア、そして
数名の村人がテーブルを囲み、話をしていたー。
暖かい飲み物を持ってくるサイモンの妻・ミーア。
ミーアは幸い、占星術師・ゼアから嫌な雰囲気を感じたため、
ゼアには近づいておらず、洗脳はされていなかったー。
既に寝静まっている二人の子供たちも、同じだー。
「ーーリリアのお母さんも、村長さんの奥さんも、
様子がおかしかったー」
ジンが言うと、
サイモンは「ーー…ライト村の村長も亡くなったと言っていたな」と呟くー。
「ーーーまさか、アイツがー」
ジンがハッとして声を上げるー
しかし、サイモンは首を振るー
「あくまで憶測だー。そこまでの確証はないー」
とー。
ライト村の村長が、少し前に倒れたー、と言う話は
ジンもサイモンから聞いているー。
もしも、このルーン村で今、起きていることと
関係があるのであればー
あの、謎の占星術師・ゼアの仕業である可能性も高いー
「ーお前は、何ともないのか?ジンー」
サイモンが心配そうに聞くー
話を総合する限り、占星術師のゼアは、
”村人たちに何らかの術のようなものを使って、操っている”
可能性が高いー
自分を心酔するように、仕向けているのかー、
それとも完全にコントロールしているのか、それは分からないー
だがー
「ーーえぇ…俺は何もー」
ジンがそう返事をするとー
サイモンは少しだけ考えてから、
「とにかく、あの占星術師にはなるべく近寄らないようにするんだ」と、
リリアや、妻のミーア、集まっていた他の村人たちに向かって
言い放ったー。
「ーーこれから、どうするんです?」
ジンが言うと、サイモンは「他の村に状況を確認してみたほうがいいなー」と呟くー。
「それと、本当にやつが”王国から派遣された人間”なのかどうかも
確認したいー
俺が王国に直接行ってー」
サイモンがそう言いかけると、
集まっていた青年の一人が手を挙げたー
「あの、俺が行きますー」
とー。
「ーーレビンー。いいのか?」
サイモンが言うと、
レビンと呼ばれた若者は「サイモンさんは、この村でみんなを守ってやってください」と
力強く返事をするー。
サイモンは、村のみんなから頼りにされる存在ー。
有事にサイモンが村から離れることは、不安を招くことにもなるー
「わかった…頼むぞ。レビン」
サイモンの言葉に、レビンは頷くと、
ジンは「俺は明日、また色々、あの占星術師のことを探ってみます」
と、サイモンに伝えたー。
「ーーリリアは、俺の家に泊まるか?」
サイモンの家を出たジンは、リリアにそう声を掛けるー。
リリアの母親は、ゼアに洗脳されている可能性が高いー
そうなれば、リリアを家に帰すのは危険だと、ジンは判断したのだー。
「ーーえ、でも…」
申し訳なさそうにするリリアー。
「ーーはは、遠慮するなって。どうせいつも不法侵入してるだろ?」
ジンが、リリアが朝、勝手にジンの家に入って起こしに来ることを
引き合いに出して笑うと、
リリアは「ふ、不法侵入じゃないもん!」と頬を膨らませながらも、
「じゃあ…お願いしますー」と、急に、申し訳なさそうに頭を下げたー。
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翌朝ー
「おはよ~~~!」
リリアにいつものように起こされたジンは、
「ーもう少し寝かせてくれよ~」と言いながらも
朝ごはんの準備をするリリアを見ながら
”まるでお嫁さんみたいだなー”と、苦笑いをするー。
ジンとリリアは穏やかな朝を過ごすー。
ーーはずだったー。
しかし、外から村人たちが騒ぐ声が聞こえてきてー、
やがて、ジンは、聞こえてくる村人たちの会話から、
村の中心で騒ぎが起きていることに気づき、
家を飛び出したー
「やめてくれ!やめてくれ!」
村人3人が、村の中心で、縛り付けられて、
リリアの母親がそれに火をつけようとしているー。
占星術師・ゼアもその場に立ち、笑みを浮かべているー。
「ーーおい!何してるんだ!」
ジンが叫ぶー。
縛り付けられている三人の中には、
昨晩、サイモンの家に集まっていた村人の姿もあったー。
「ーこやつらは、咎人(とがびと)よー」
ゼアが三人を指さすー。
「くそっ!このペテン師め!」
縛り付けられた村人の一人が反応するー。
サイモンは、現在、村の入口付近まで、
王国に向かうレビンの見送りに行っていて不在ー。
「ーーこの三人は、ゼア様の命を狙ったのよ」
リリアの母親が怒りの形相でそう呟くー
三人は、村長の仇として、
占星術師・ゼアを暗殺しようとしー
その結果、失敗してしまったのだー。
「ーーゼア様に逆らうものは死罪だ!」
「ーーゼア様に逆らうものには死を!」
「ーーゼア様!こいつらに裁きを!」
周囲にいる村人たちが、まるで暴徒のように叫んでいるー。
普段穏やかな村人もー
若い女性の村人もー
子供もー
凶暴な言葉を口走り、まるで人が変わってしまったかのようー。
「み…みんな…や、やめてよ!」
ジンの後に、家から飛び出してきたリリアが、村人たちの前に姿を現すー。
「ーーリリアちゃんには関係ねぇ!」
「ゼア様に逆らうものには死を!」
リリアが飛び出しても、村人たちの様子は変わらないー。
「ーーリリア。そいつらは咎人よー。
どきなさい」
リリアの母親が高圧的な口調で言うー。
「-お母さんも!どうしちゃったの!?
わたしたちは、いつも話し合いで解決してきたでしょ!?
こんなの…おかしいよ!」
リリアが必死に叫ぶー。
周囲にいる村人の何人かは”まだ正気”なのだろうかー。
リリアの意見に賛同する様子を見せているー。
ジンも駆け付けて、「そうだ!みんな!どうしたんだよ!」と叫ぶー。
占星術師・ゼアはその様子を見つめながら心の中で思うー
”ーーーこの者だけはなぜか洗脳することができないー”
とー。
「ーー……だがー」
ゼアは笑みを浮かべたー
「ーーまぁまぁ…落ち着きなさい」
ゼアが水晶玉を手に、一歩前に出ると、
ゼアに従う村人たちが、途端に静かになって、頭を下げるー。
「ーーーお母さんー…」
その姿を見て、リリアは悲しそうに呟くー
「ー私とて、村の対立を深めることが目的ではないー。
この三人は、厳罰に処するのが、死罪だけは避けることにしようー」
ゼアの言葉に、ジンはゼアを再び睨みつけるー。
「ーー本当に、あんたは王国から派遣されてきたのか?」
ジンがゼアを睨みながら言うと、ゼアは「いかにも」と答えるー。
こんな人物を、王国は派遣してきたというのだろうかー。
それともー?
しかし、いずれにせよ、レビンが王国に確認に向かっている。
レビンが戻ってくれば、分かることだー。
リリアが、火あぶりにされそうになっていた三人を
救出しているー。
ゼアに洗脳され、従っている村人たちは、
その様子を不満そうに見つめているー。
そしてー
「ーーお嬢さんー」
ゼアが、さりげなくリリアに近付きー
「ーーえ?」
目を赤く光らせてー
リリアをーー
”洗脳”したー
一瞬ビクンと震えるリリアー
”ーー普段通りに、振る舞うのだー”
ゼアがそう命じると、リリアは何事もなかったかのように、
村人を救出して、ジンの元に戻っていくー
ジンも、ゼアの行動を見ていたが、あまりにも一瞬の出来事で、
リリアがこの時、洗脳されたことに気づけなかったー。
やがてー
レビンの見送りに行っていたサイモンが戻りー
ジンは、あった出来事を話すー。
サイモンは”ゼアには絶対に近付かないように”指示をし、
”洗脳されていない村人”を数か所に集めて
なるべく外出しないようにしよう、と、提案したー。
ジンの家ー
サイモンの家ー
そして、他2か所を拠点に、レビンの帰りを待ち、
状況次第では、”ゼア”を暗殺するー。
サイモンは、そう、ジンたちに話したのだったー。
しかしー
既に洗脳されているリリアは、サイモンの話を聞き終えると、
笑みを浮かべながら静かに囁いたー。
「ーゼア様に逆らう者には、死をー」
とー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
滅びに向かう村ー。
続きはまた明日デス~!
今日もありがとうございました~!
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