秘密裏に潜入捜査を行う、
”潜入捜査班”
ある日ー
”憑依された女性たちが集まる女子会”の情報をキャッチした
潜入捜査班はー、
裏社会で流通している”憑依薬”の出元を突き止めるため、
女性捜査官が”憑依された女子”のフリをして、
”憑依女子会”に参加することに…!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー憑依女子会?」
潜入捜査官の一人、熊井 健太郎(くまい けんたろう)が
声を上げるー。
「あぁ」
”班長”を務める男、村沢 肇(むらさわ はじめ)が頷くー。
警察内に組織されている秘密の部署
”潜入捜査班”。
村沢班長率いるこの部署では、
”表沙汰にすることのできない事件”を、
秘密裏に解決しており、
時には潜入捜査や、犯人を射殺することなどー
”法律的にブラックなこと”までこなす部署だー。
最近、この部署では”憑依薬”関係の事件を
重点的に調査していたー。
現在、裏社会では”憑依薬”と呼ばれる薬が出回っているー。
信じられないかもしれないが、
それを飲むことにより”他人の身体を乗っ取る”ことができるようになる、
というもので、実際に既に憑依されて乗っ取られてしまった人間が
一定数存在するのだー。
もちろん”憑依薬”の存在を明るみに出すことはできないー。
”他人に身体を乗っ取られてしまう”などということが
明るみに出れば
当然、それを悪用する人も増えるだろうし、
社会的に大混乱が起きてしまうー。
だからこそー
この”潜入捜査班”が中心となって、
憑依薬に関係する事件を追ってきたー。
そして、今回ー
”憑依されて乗っ取られた女子たちが集まる”
「憑依女子会」の存在を突き止めたのだー
「何でも”女の身体を乗っ取った男たち”が
集まる女子会のようでー
都内某所で定期的に開催されている、という情報を突き止めた」
村沢班長の言葉に、
がさつそうな捜査官・熊井の横に立っていた
若い女性捜査官が表情を歪めるー。
「ーー…許せない…」
彼女はー
この部署に所属する女性捜査官の一人、
八崎 翔子(やざき しょうこ)ー。
まだ若いものの、
”潜入捜査”という特性上、
幅広い年齢の男女を所属させておく必要があり、
若いながらも冷静な判断能力を兼ね備えた翔子も、
この部署に抜擢されていたのだったー。
「ーー次に開催される”憑依女子会”は
3日後の木曜日であることもわかったー。
憑依されてる人間同士の会話から、
”憑依薬の入手ルート”を掴むことができるかもしれないー」
これまでにも、”憑依事件”をいくつか解決してきた
潜入捜査班ー。
しかし、”憑依薬”の入手ルートについては
これまで捕まえたすべての人間が口を閉ざしておりー
”捕まえた”後に吐かせることは難しいと判断していたー
「ーーなるほど、憑依女子会とやらに突入して
参加者を全員、しょっ引くってわけだ」
がさつな男性捜査官の熊井が笑うー。
だがー
熊井捜査官の言葉に、村沢班長は首を振ったー。
「違う、そうじゃない」
とー。
「ーーー…?」
熊井捜査官が首をかしげると、
村沢班長は少しため息をついてから、
続きを言い放ったー。
「ー憑依女子会に潜入するー
その女子会に参加している
”女に憑依したやつら”から、
憑依薬の入手ルートを聞き出すんだ」
その言葉に、
捜査官たちはゴクリと唾を飲み込んだー
”周囲は全員、憑依された女子”
集まる人数は、毎回少人数のようだったものの
周囲は全員”女を乗っ取った男たち”ー
つまりは、女性の身体をしているものの
中身は”他人の身体を乗っ取るような邪悪な存在”であると、
そういうことなのだー。
かなりの危険を伴う潜入捜査ー。
しかもー
「ーーーー」
”憑依女子会”に潜入する捜査官は、
当然、女性捜査官でなくてはならないー。
「ーーーわたしが、やります」
翔子が意を決して、そう呟くと
村沢班長は「危険な捜査だ…本当にやってくれるのか?」と
申し訳なさそうに呟くー。
最悪の場合、翔子自身も憑依されてしまう可能性は否定できないー
だからこそ、非常に危険な任務なのだー。
「ーーそれでもー
わたしが適任だと思います」
翔子の言葉に、村沢班長は「わかったー」と静かに頷くー。
女性捜査官は他にもいるー。
だが、翔子が適任なのは
”自他ともに認める事実”だったー。
何故ならー
”憑依被害”に遭っている女性の年齢層は
これまでの傾向的に”若い女性”が多いからだー。
時折、男性が憑依被害に遭っていたり、
おばあさんが憑依被害に遭っていたり
することもあるものの、
全体的な傾向として、被害者は若いことが多いー。
悲しいことに”憑依対象としての需要”が高い状態なのだろうー
”憑依女子会”と呼ばれる集まりにも
当然、若い女性が集まっていることが安易に予想できたー。
だから、最年少の女性捜査官である翔子が適任なのだー。
他の女性捜査官はみんな、翔子よりも年上で、
あまり年齢層が外れていると
”本当は憑依されていない”と、
憑依女子会の他のメンバーから
発覚してしまうリスクが高まるー。
「ーーくれぐれも、無理はするなよ」
村沢班長の言葉に、翔子は静かに頷いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー……ここね」
翔子は、仲間の捜査官の協力も得て
”憑依された女性”という設定で
憑依女子会に参加する手はずを整えたー。
わざと短いスカートの黒タイツー、
肩を出した格好ー、と
”憑依された女性”を装うために、
過去に捕まえた”憑依された女性”の事例を元に
服装も決めたー。
「ーーー」
息を大きく吸ってから、”憑依女子会”の会場に足を踏み入れるー
そこは、高級なレストランだったー。
「ーーいらっしゃいませ」
店員がやってくると、翔子は、憑依女子会の代表者の名前を告げるー。
すると店員は、一つの個室に案内してくれたー。
既に、テーブルには三人の女性が集まっていたー
みんな、とても綺麗な女性だー。
しかし、この三人は全員、男に憑依されていて
自分の意志とは関係のない行動を取らされている
”被害者”たちだー
「ーーへへへへ…またエロい女が来たぜ」
今回の憑依女子会の主催者・花森 円花(はなもり まどか)が
ニヤニヤしながら笑うー。
「ーーそんな言葉遣いしちゃだめだよ~♡」
ツインテールの可愛らしい女性、金尾 姫梨(かなお ひめり)が、微笑むー
残る一人、まるで男のようにしか見えない真崎 愛(まざき あい)は
ガムをクチャクチャと音を立てながら噛み、机の上に肘をついていたー。
「ーーーよろしくお願いしますー」
頭を下げる翔子。
わざと男っぽく、不慣れな様子で椅子に座ると、
円花は「これで揃ったな へへへへへ」と、海を浮かべるー。
「ーー第8回 憑依女子会をはじめまぁ~す!」
円花はそれだけ言うと、グラスを手に、乾杯を促したー
翔子は落ち着かない様子でお酒を少しだけ
口に運ぶと、他の三人の状況を確認したー
翔子も”憑依されている女”という”設定”でここに来ているー
これが、今回の”潜入捜査”だー。
憑依されている女性が集まる女子会に
”憑依されていない”翔子が潜入ー
さりげなく、憑依薬の入手ルートを聞き出すのだー。
花森 円花ー
平気で男のような仕草をしている、今回の憑依女子会の
中心人物である彼女は、
このあたりの大学に通っていた女子大生ー
1か月ほど前に突然大学に退学届けを提出して、
その後は家族との連絡も絶っているー。
金尾 姫梨ー
ツインテールで、女子高生のような振る舞いをしているこの女性はー
サラリーマン・金尾 武志(かなお たけし)の夫ー。
突然子供を残した状態で姿を消し、
半月前から捜索願も出されていたー
真崎 愛ー
男のような容姿にしか見えないこの女性は、
女子高生ー
数日前に家出して、こちらも捜索願が出されていたー。
憑依される前の資料を見る限り「とても可愛らしい女子高生」に見える。
三人とも”憑依”被害者だー。
「ーーじゃあ、まずは自己紹介をー」
中心人物の円花が言うと、
ツインテールの姫梨が笑みを浮かべたー
「は~い!わたしは、姫梨だよ~♡」
笑いながら手を振る姫梨ー。
「ーーはははは、20後半の女が、
夫と子供を捨てて何をしてるんだか」
ニヤニヤしながら言う円花ー。
ツインテールの姫梨は”人妻”だが、
乗っ取られたあとは、身体の年齢を無視した
振る舞いを繰り返しているー。
「ーーふふふふふふ~
だって、人妻がこんなことしてるなんて
興奮するじゃん!ふふふ」
姫梨の言動に、翔子は嫌悪感を感じながらも、
それが表に出ないようにするー。
「ーー乗っ取ったこの身体で、かわいいを満喫してま~す!
ほら、見て見て!」
姫梨はそう言うと、嬉しそうに
自分の”裏垢女子”としてのアカウントを見せるー
エッチな自撮りを繰り返し投稿していて、
既にそれに惹きつけられたファンもできている様子だったー
「今度、AVにも出演しようと思って~♡」
姫梨は”女”にしかできないことを欲望のままに
堪能している様子だったー。
「ーーじゃ、次は俺だな」
憑依女子会の主催者・円花が笑うー。
身体は”女子大生”だが、
中身が男であることを隠そうともせずに、
その仕草も完全に男のものだー。
「ーーー俺はー…っと、いけねぇいけねぇ、
本名を名乗りそうになっちまったー」
「ーーー…」
翔子は、そんな円花の様子を観察するー。
これまでにも”憑依”された人間を何人も見てきたが、
完全に”身体”のことを無視した振る舞いは、
見ていて気分が悪いー。
円花のような、可愛らしい雰囲気の女子大生が、
明らかに見た目と中身がズレている振る舞いをしている姿を見るのは、
翔子にとって、不愉快極まりない光景だったー。
”男っぽい女子大生”は当然、憑依されてなくてもいるー
だがー
”自分の意志で男のような振る舞いをしている女子大生”と
”乗っ取られて自分の意志とは関係なくそうさせられている女子大生”では
その振る舞いに”大きな差”が出るのも、
また事実だったー。
「ーー毎日オナりまくってるけどさぁ…へへへっ ひひ
この身体マジでたまんねぇよ」
円花が表情を歪めながら言うー。
どうやらこの男は、欲望のままに身体を楽しんでいるタイプのようだー。
女子として楽しむ姫梨と、
欲望を楽しむ円花ー
そして、もう一人の男のような見た目の女子高生・愛は、
ガムをくちゃくちゃ噛みながら
翔子のほうを見つめたー。
どうやら、愛は自己紹介をするつもりはなさそうだー。
「ーーーー…」
円花と姫梨が翔子のほうを見るー
「ーー」
心の中で深呼吸する翔子ー
”乗っ取られた女”のフリをするのは、
嫌悪感があるー。
けれどもー
これは、潜入捜査ー。
ここにいる円花、姫梨、愛の三人のように
”憑依被害”に遭う人間を減らして行かなくてはいけないー。
「ーーー”僕”の身体はーー
翔子ーー。
その辺を歩いていたOLの身体だよ…へへへへ」
自分でそう言いながら
翔子は、”嫌悪感”を感じるー。
それでもー
憑依薬の入手ルートを突き止めるためーーー
と、その場で三人によく見えるように、自分の胸を揉んで見せたー。
「へへへへへ あとで揉み合おうぜ」
円花がそう言うと、”憑依女子会”の自己紹介は終わりー
いよいよ本番が幕を開けるのだったー。
②へ続く
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コメント
憑依女子会に潜入…!
果たして、憑依薬の入手ルートは
突き止められるのでしょうか~?
続きはまた明日デス~!
コメント
うひょー楽しみです!
コメントありがとうございます~!
ぜひ続きも楽しんでくださいネ~~!
憑依女子会って、ずっと前の憑依被害者の会の話の逆パターンの憑依加害者の会みたいなモノですね。
「憑依被害者の会」懐かしいですネ~!
確かに加害者版みたいな感じデス~!