<入れ替わり>あなたを地獄に落としたい③~地獄~(完)

入れ替わった状態のまま、
相手の人生に傷をつけていこうとする
”表面上は仲良し”な二人ー。

二人の陰険な争いの末に、待ち受けている運命は…?

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帰宅した結子(美穂)は、笑みを浮かべていたー。

”元に戻る方法”を
先輩・結子になった美穂は、既に見つけていたー

”先輩には、きっと見つけられない…”
入れ替わった直後から、ネットを中心に”元に戻る方法”を
探し続けていた結子(美穂)ー

しかし、そんな方法がそう簡単に見つかるはずもなく、
結子(美穂)は困惑していたー。

そんな時に、偶然思い出したのが、
大学時代の友人の一人の存在だったー。

大学時代に、異様なまでにオカルト系の話題が好きな子がいたー。
その子に、それとなく相談してみたところ、
”入れ替わり薬”なる、怪しげな薬の存在を教えてくれたー。

後輩の美穂と、先輩の結子が入れ替わった原因は、
その”入れ替わり薬”ではないが、
他人と入れ替わる薬があるのであれば、
それを使うことで、元に戻れる可能性は高いー。

もちろん、あまりにも非現実的な話で、
”本当に入れ替わり薬なんてものがあるのか”という
問題はあったものの、
こうして自分が入れ替わっていることや、
その入れ替わり薬が販売されているサイトの情報などから、
結子(美穂)は本物と判断したー。

既に、その入れ替わり薬は”手元”に届いているー。

これを使えば、いつでも元に戻ることができるー

けれどー

「ーーー」
結子(美穂)は、鏡を見つめるー。

先輩である結子が、
首輪をつけて、不敵に微笑んでいるー。

「ー先輩を地獄に落としたら…
 ちゃ~んと、この身体を返しますからね…」
結子(美穂)は不気味な笑みを浮かべるー。

先輩である結子のことを、元々嫌っていた美穂は、
結子の身体と入れ替わった当初は、
”結子の身体で恥ずかしい格好をして、それを自撮り”して、
元に戻ったあとに、
”先輩があまりにも綺麗だったので、つい…”と、
悪意のない風を装っていやがらせするつもりだったー。

しかし、入れ替わり状態が数週間続いたことで、
それがエスカレートしてしまい、
今では結子の身体で、仕事帰りに男を捕まえては浮気を繰り返し、
先輩・結子の夫である航との関係を破壊しようとまでしているー。

さらにはー
ツイッターでエッチな衣装の自撮りまで始めているー

”とある会社に勤務しているエッチなOLです”
などというプロフィール文と共に、
何枚も何枚も写真を投稿してしまった結子(美穂)ー。

先輩との陰険な争いは、
もはや引き返せないところまで、エスカレートしてしまっていたー。

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一方、美穂になった結子も、それは同じことだったー。

結子になった美穂とは”異なる”嫌がらせを実行に移していた
美穂(結子)ー

結子は、美穂の身体で”不健康な生活”を繰り返していたのだー。
元に戻ったあとも、言わなければ分からないしー、
”気を付けていたつもり”ということにしてしまえば、
美穂も強く文句は言ってこないだろうー。

そんな風に考えていたー

そしてー
美穂になった結子もまたー
”元に戻る方法”にたどり着いていたー。

”もうちょっと、この生意気な後輩を懲らしめてあげなくちゃね”

ポテトチップスの袋から、ポテトチップスを取り出し、
狂ったように食べ続ける美穂(結子)ー

美穂の身体は、明らかに入れ替わる前よりも太っていて、
肌や髪も傷んでいたー。

灰皿には、煙草の吸殻の山ー。
煙草など、結子も吸ったことはなかったが、
こうして、美穂の身体で吸ってみると、なかなかいい気分にもなってくるー。

そしてー
美穂の身体で吸っている分には、
結子自身、自分の身体に対する健康上の影響はないし、
依存するのも、美穂の身体だー。

「ーーあはははは…いい気味…!」
美穂(結子)は鏡を見つめながら笑うー。

「ーーわたし、仕事できるんですよ~!みたいな態度とか、
 男に媚びを売るような態度とか、ホント、腹立つ…!

 二度とそんな態度ができないようにしてあげるから!」

美穂(結子)は、鏡に映る美穂に向かってそう叫ぶと、
クスッと笑みを浮かべたー。

「ーー先輩…わたし…先輩に不愉快な思いばっかりさせちゃって
 本当に、ごめんなさいー」

美穂の姿のまま、美穂に謝らせる美穂(結子)ー
美穂の身体になっている自分がそうしているのだが、
まるで、美穂が自分に対して謝罪しているような
錯覚を覚えてー
美穂になった結子は狂ったように笑うー

「ーーいい気味…!いい気味…!
 もっと土下座しなさい…!もっと!」
美穂(結子)は自分でそう言うと、嬉しそうに何度も何度も
土下座し始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・

それからさらに数日が経過するー。

”今日、話があるんだ”
美穂(結子)は、自分が持っている結子のスマホを手に、
夫である航からのメッセージを見て、表情を歪めたー。

一方の結子(美穂)も、自分の身体ー…美穂(結子)が、
だんだんと太ってきていることには、さすがに気づいていたー。

”ーー先輩も、わたしの身体で何かしてるー”
”美穂ちゃん、わたしの身体で何してるの…?”

暗い表情を浮かべる二人ー。
このままでは元に戻った時に大変なことになるかもしれないー。

そしてー
来週には会社内の大事なプロジェクトも控えており、
入れ替わったままそれをこなすのは、少し難しい。

「ーーねぇ美穂ちゃん」
「ーー先輩!」

二人がそろって相手に声を掛けるー。

「ーー元に戻る方法、見つけたから、明日の朝、早めに会社に来れる?」
美穂(結子)が休憩室でそう呟くと、
結子(美穂)も、作り笑いを浮かべながら
「あ、先輩!奇遇ですね!わたしも元に戻る方法、見つけたんです!」
と、微笑むー。

そして、二人は向かい合いながら、
満面の笑みで、
「元に戻る方法を見つけるタイミングも一緒だなんてー」

”わたしたち、仲良し”と、
陰険な笑みを浮かべながら、お互いに囁いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ーさぁ、仕上げよー

明日、元に戻るー
結子(美穂)も、美穂(結子)も考えることは同じだったー。

身体を返す前に、この身体をもっと、傷つけてやるー。

”先輩を地獄に落としたい”
”美穂ちゃんを地獄に落としたい”

帰宅した美穂(結子)は、袋から取り出した、スナック菓子・酒・煙草を
見つめて、狂ったように笑い始めたー

美穂の手が震えるー。

連日、お酒を大量に飲ませていたことで、
美穂(結子)の身体は、お酒を強く求めるようになっていたー。

ニヤニヤとしながらお酒を飲み始める美穂(結子)
ポテトチップスを貪りながら、美穂(結子)は、クスッと笑うー。

「あははははっ!」
焼酎の容器に口をつけて、笑いながらそれを飲み干す美穂(結子)ー

「美穂ちゃんを地獄に落としてやるわ!」
嬉しそうに、そう叫びながら、美穂(結子)は、ウイスキーの容器にも手を掛けたー。

一方ー、
結子(美穂)は、男遊びを再びすると、
そのまま遅い時間に、帰宅したー。

「ーーなぁ…」
夫の航が、結子(美穂)のほうを見つめるー。

”今日、話があるって言ったのに”
航の言葉に、
結子(美穂)は、一瞬”?”と思いながら首をかしげるー

結子のスマホは、美穂になった結子が持っているため、
結子(美穂)は、航からの連絡の内容を知らないー。

美穂(結子)からその話も聞いていなかった結子(美穂)は
戸惑ったものの「あはは!どうせくだらない話でしょ!」と
笑みを浮かべながら、航を無視して、自分の部屋に
入っていこうとしたー。

しかしー

「ーーこれについて…結子の話が聞きたい」
航は、写真を机の上に置いたー。

そこには、結子(美穂)が、
誘った男と一緒にホテルに入っていく写真とー、
美穂が勝手に結子の身体で作った、
結子のツイッターアカウントの画面の写真が置かれていたー。

「ーーこ、これはー」
結子(美穂)は表情を曇らせるー。

「ーー俺、がっかりだよー…
 結子のこと、信じたかったけどー…」

夫の航は言うー。
最近、連日夜遅くに帰ってくることに、疑問を抱いていた航は、
結子を信じたいと悩みながらも、明らかに様子がおかしかったため、
結子のことを調べた、と。

その結果ー
男遊びをしていることや、
ツイッターでエッチな自撮りを晒していることを
知ってしまったのだとー。

「ーー今更気づいたの?」
結子(美穂)は、
”これ以上やったら、先輩の人生が壊れちゃう”と、
少し引け目を感じながらもー
もう、自分でも自分を止められなかったー

先輩を地獄に落としてやりたいー
とー。

「ーーーわたしは、そういう女なの」
結子(美穂)が言うと、夫の航は、心底ショックを受けたような
表情を浮かべたー。

「ーー文句あるの?文句あるなら離婚しましょ?ほら、、ほら!」
結子(美穂)が、調子に乗った様子で叫ぶと、
航は「結子にも、何か理由があると思って、話を聞こうと思ってたけど…」と
呟くと、離婚届を机の上に出してきたー。

「その様子だと、もはや話を聞く必要もなさそうだね」
航は”失望した”という様子で離婚届を結子(美穂)に突き付けたー。

「あはっ…!あはははははっ!」
結子(美穂)はおかしくなって笑ってしまったー

先輩を地獄に落とすことができたー。

離婚届に署名すると、
結子(美穂)は笑いながら荷物をまとめ始めるー。

「--結子…」
家出の準備を始める結子(美穂)を見て、夫の航は困惑するー

そしてー

「ーーえ…」
航は、表情を歪めたー。
離婚届に記入された、結子の名前のー
”筆跡”が全然違うのだー。

「ーちょ!結子!待て!」
航は叫んだー。

だがー
結子(美穂)は既に玄関から飛び出したあとだったー。

・・・・・・・・・・・・・・

入れ替わり薬を持ち出した結子(美穂)は笑うー。

「あ~あ!先輩の人生、壊れちゃった!」

さすがにやりすぎたかもしれないー。

”でも”
元に戻ってしまえば、こちらのものだー。

誰も”入れ替わり”なんて信じないー。
あまりにも非現実的すぎるし、
仮に元に戻った先輩が”美穂ちゃんに!”と叫んだとしても、
美穂自身が否定すれば
”頭のおかしな女”と、先輩・結子が扱われて、
身を滅ぼすだけだー。

”先輩も、わたしの身体で色々してるんだろうけどー”
結子(美穂)は思うー。

最近の自分自身のー、”美穂の身体”の状態を見る限り、
暴飲暴食でも繰り返しているのだろうー。

「ーでもね、先輩、それだけなら、わたしは、すぐに元に戻れますからー」

そう思いながら、結子(美穂)は
美穂の家のインターホンを鳴らすー

しかしー
美穂(結子)が出て来ないので、
合鍵を使って、その中に入ったー

「先輩!ちょっと早いですけど、元に戻ーーー」

結子(美穂)は、美穂の家に踏み込んで、
表情を歪めたー

煙草臭いー
酒臭いー。

笑顔を浮かべていた結子(美穂)が一転して険しい表情を
浮かべるー。

「先輩…わたしの身体でいったいなにをーーー」
玄関から、中に入ると、
そこには、青ざめた美穂(結子)が机に顔を伏せて、
倒れ込んでいたー。

「ーーえ…ちょっと…!?えっ…!?」

近くには、ウイスキーの容器や、お酒の容器が並んでいるー。

「ーーー…え…え…?」
結子(美穂)は、美穂(結子)の身に異常が起きたことを
察知して、すぐに救急車を呼んだー。

だがー
美穂(結子)は助からなかったー。

急性アルコール中毒と診断されたー。
美穂の身体のまま、結子は予期せぬ事故で
死んでしまったのだー。

「ーーーーーうそ…」
呆然と座り込む結子(美穂)ー

”自分の身体に戻れるからこそ”
色々なことをしたのだー。

夫と離婚しー
住む家すらなくー
ネット上には、自分のエッチな写真を自ら載せて拡散された状態ー
さらには、複数のヤバそうな男と関係を持っているー

”結子の身体”でこれから先の人生を送ることはー
”地獄”を意味していたー。

自ら地獄に落とした先輩の人生を、
自分自身が送ることになったと思い知らされた結子(美穂)は、
その場でしゃがみこんで、悲鳴を上げたー。

おわり

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コメント

地獄行きと生き地獄…
二人とも破滅することになってしまいました……

入れ替わりの使い方には要注意デス!

お読みくださりありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    この結末は予想外。まさか片方が死ぬとは思いませんでした。嫌がらせのためにやってたことで命を落としたり、自分が破滅するなんて、馬鹿みたいな話ですね。

    やっぱりこのタイプの話はハッピーエンドにはなりませんね。二人共、因果応報、自業自得ですが

    でもよく考えたら死んだ結子と違って生きてる美穂は入れ替わり薬があるから、誰かと入れ替わればどうにかなりそうな気がしますね。

    う~ん、それにしてもせっかく珍しく、入れ替わり薬とか出さずに入れ替わった話なのに、後から元に戻る手段として、入れ替わり薬を出すのはどうなんでしょう?

    入れ替わり薬があるせいで美穂は破滅のようで破滅じゃない気がします。

    あと、この結末は結末で面白いけど、個人的には『僕がお姉ちゃんだよ』みたいに二人共、元の記憶を失って、大嫌いな相手そのものになる展開が見てみたかった気もします。それだとお互いに元の自分を罵倒するという、なんとも倒錯的な結末ですよね。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      この手のお話は破滅エンドになることが多いですネ~!

      入れ替わり薬を出すかどうかと、
      結末をどうするかは色々迷った末に、
      このような結果にしましたが、
      色々な案もあったので、それらもいずれ、別の作品の時に
      使ってみたいですネ…!

      「入れ替わり薬」が美穂の手元にある…
      鋭いですネ…!
      これは…今はまだ何もコメントできません笑

      お読みくださりありがとうございました☆!!