”ナンパの魔術師”が操る
寄生虫によって奪われてしまった彼女ー。
その先に待ち受ける結末は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーどうしても、ダメー?」
悲しそうな表情でそう言葉を口にするのは、
”寄生された琴音”に理由も分からないまま裏切られて
傷ついた将司と、その後に親しくなった
同じ大学の学生・三木谷 萌ー。
以前にも一度、将司に告白して断られているものの
大学卒業の日が近付いてきていたこのタイミングで
諦めきれない彼女は、今一度”これが最後のチャンス”として
告白を試みたのだったー。
がーー
「ーごめんー…
三木谷さんが悪いんじゃないんだけどー…
もう、俺は彼女は作らないって決めたからー」
将司が苦笑いしながらそう言葉を口にするー。
”わたしは将司一筋だからー”
そう言われた直後に、”裏切られた”将司は
女性不信に陥っていたー。
それ以降、”もう彼女は作らない”と心に決めていてー、
その後に親しくなった萌にも、そう説明しているー。
「ーーわたしは… わたしは絶対にそんなことー……」
萌はそう言いかけて、大きくため息をつくー。
「ーって、言っても…
高藤くんからすればー、信じられないよねー…
そんなことがあったんだからー」
萌はそれだけ言うと、
寂しそうにしながらも「ー彼女にはなれなかったけどー、
卒業しても応援してるから、頑張って」と、そう言葉を口にする萌ー。
「ーー本当にごめんなー。
三木谷さんにはきっと、いい人が見つかるよー。じゃ」
将司はそれだけ言うと、そのまま立ち去っていくー。
一人残された萌は、寂しそうに将司の後ろ姿を見つめると、
少し離れた場所を偶然通りがかった
”琴音”たちの方を睨みつけたー。
派手な服装で、”ナンパの魔術師”の異名を持つ宗太郎の腕に
しがみつくような仕草をしている琴音ー。
”ーー何よあの女ー……
高藤くんをあんなに傷つけてー…”
萌は不満そうにそう呟くと、琴音の方を見つめながら、
”ああいう浮気する女…同じ女でも信じられない!”と、
心の中でそう吐き捨てたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーへへへ…それで、大事な話ってなんだよー?」
その日の夕方ー
宗太郎は”彼女”の一人である琴音から呼び出されていたー。
「ーーふふふふふー
話があるのは”わたし”じゃなくてー…」
琴音がそう言うと、
宗太郎は「?」と、首を傾げるー。
そしてー
次の瞬間ー
宗太郎の中に寄生していた”寄生虫の王”が、宗太郎の耳から
突然顔を出して来たー。
「ーー!?!?!?!?!?!?
ぐっ… い、いててててててっ!」
耳から、突然顔を出した寄生虫ー。
宗太郎はかつて家族で海外旅行に行った際に、
洞窟でこの寄生虫に寄生されー、
それ以降、持ちつ持たれつの関係で
これまで寄生虫を増やして来たー。
寄生虫の王からすれば、”寄生”を広めることができー、
宗太郎からすれば、寄生された女子たちを支配し、ハーレムを作ることができたー。
互いにWin-Winの関係ー。
だがーー
「ーーーがっ…お、お前のような醜悪な人間よりも、
女の方が、より寄生を拡大しやすいー」
宗太郎の口が”勝手に”動き始めるー。
「ーーー…ぐ…な、な、なにを言ってー…?」
宗太郎がそう叫ぶも、すぐに宗太郎の口が、
耳から顔を出している寄生虫の王に主導権を奪われて
勝手にしゃべり始めるー。
「ーお前には感謝しているぞ人間ー。
だからこそ大学卒業まではこうしていい思いをさせてやったんだー。」
宗太郎がもがきながら、自分の口でそう言葉を口にするー。
琴音はそんな様子を見つめながら
「宗くん…えへへへーなんか、すごい状態だね!」と、無邪気に笑っているー。
寄生虫に支配され、
自我と寄生虫の意識が混じり合い、
琴音本人の自我も完全に失われているわけではないものの、
既に元に戻ることはできない状態ー。
琴音は”大好きな宗くん”が、捨てられそうになっている光景を見てもなお、
笑っていたー。
「ーー乗り飽きた車は廃車するー
より、良い車にー、より自分好みの車に
乗り換えようとするー
それが、人間と言うものだろう?」
宗太郎の口が、勝手にそう喋るー。
宗太郎は耳から血を流しながら
「ーーが……お、俺は…俺は車じゃねぇ…!」と、
もがきながら反論するー。
だがーー
「ー我々には同じことー」
寄生虫の王に冷たくそう言われてしまった宗太郎ー。
そしてー、
宗太郎の口が勝手に動くー。
「琴音ー。
今から俺の耳から飛び出る”寄生虫”を食うんだー
これからは、お前が新たな王になるのだー」
寄生虫の王が、”宗太郎”の口で、
そう琴音に命じると、
琴音は「宗くん…わかった♡」と、嬉しそうに微笑むー。
次の瞬間ー、
宗太郎の耳から寄生虫の王が飛び出すー。
激痛が宗太郎を襲い、
子供のように泣き叫びながら、その場をのたうちまわるー。
琴音は宗太郎から出てきた寄生虫の王を嬉しそうに拾うと、
そのまま自分の口の中に、
まるでチョコレートでも食べるかのように放り込んだー
琴音の目が一瞬赤く染まるーーー
「ーーふふふふふふ」
手を動かしながら「この身体であれば、より効率よく人間を支配していけるー」と、
笑みを浮かべる琴音ー。
「ーーーー」
しかし、笑みを浮かべていた琴音がすぐに不思議そうな表情を浮かべるー。
”元の寄生された状態の琴音”の意識が、
自分の中にもう一つの意識ー、”寄生虫の王”の意識が入り込んできたことに
少し違和感を感じている様子だったー。
「ーふふふふ…これからはお前が女王だー
嬉しいだろう?」
琴音の口で、そう琴音に語り掛ける寄生虫の王ー。
既に”一般の”寄生虫に寄生されている琴音は
その言葉をとても嬉しそうに聞くと、
「ーわたしが…わたしが…女王ーー…? ふふっ♡」と、
とても嬉しそうに笑い始めるー。
「そうだーこれからはお前が女王だー。」
琴音の口で寄生虫の王はそう言葉を口にすると、
琴音は「ふふー…わたしが女王ー」と、満足そうに
笑みを浮かべたー。
そしてーーー
「ーー…宗くんー」と、
心配そうに床を転がり回っている宗太郎の方を見つめる琴音ー。
”寄生虫の王”に寄生されて二重寄生状態になったとは言え、
まだ”宗太郎が好き”という意識は刻まれたままー。
がーー
”アイツはただの下僕だー。好きという感情は捨てるがいい”
寄生虫の王は琴音の心の中でそう囁くと、
琴音の目がまた、一瞬赤く光ってから琴音は不気味な笑みを浮かべたー。
「ーークククク…ー
ねぇねぇ、今、どんな気持ちー?
ハーレムの王から、無様なゴミに転落した気持ちは?」
琴音は、ニヤニヤしながら宗太郎に近付くと、
宗太郎を痛めつけながら笑みを浮かべるー。
「ーー本当は、宗くんー処分する予定だったみたいだけどー、
わたしの下僕として生きるなら、生かしてあげるー
どう?」
琴音がそう言い放つと、
宗太郎は痛みに耐えながらも、無駄に高いプライドからか、
「ーお前はっ…お前は俺の女のくせにー!」と、叫ぶー。
がーーー
その言葉と同時に、琴音の足が宗太郎を襲うー。
宗太郎の急所を足で攻撃する琴音ー。
そんな琴音を前に、情けない泣き声を発する宗太郎ー。
「ーーー下僕になる?死ぬ?」
琴音の言葉に、宗太郎は泣きながら「げ、げ、下僕になる!なるから!」と、
そう叫ぶー。
「ーーふ~ん…ふふふふー なら、宗くんはこれからわたしの下僕ね?」
琴音は、そんな言葉を言い放つと、宗太郎の方を見て笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大学卒業の日ー。
首輪をつけられた宗太郎は、
”女王”になった琴音と、元々自分が寄生虫を寄生させていた女たちに
囲まれて、痛めつけられていたー
「ーふふふふふー
宗くんを生かしてあげてるのは、何でだか理解できてる?」
さらに派手な雰囲気になった琴音がクスクスと笑うー。
寄生虫の王に寄生された影響だろうかー。
琴音自身の意識にもさらに強い影響が出て、
まるで女王のような、そんな振る舞いをするようになってしまっていたー。
「ーーす、すみませんー 申し訳ありません!」
情けない泣き声を上げる宗太郎ー。
琴音から頼まれた”寄生させるのにちょうど良さそうなやつを数人
連れてきて”という仕事を果たすことができず、
宗太郎は琴音や、元々”ハーレム”を構成していた女たちに
散々に痛めつけられていたー。
「ーーふふふふふふふふふふ…」
琴音はそんな宗太郎の方を見つめながら笑うと、
寄生虫の王が、琴音の耳から顔を出したー。
虚ろな目つきになった琴音は呟くー。
「ーー我の宿主だったお前が、落ちぶれたものだなー」
虚ろな目のままにやりと笑う琴音ー。
「ーー……お…ぉ… おぉぉぉ」
泣きながら宗太郎は琴音の耳から出てきた寄生虫の王を見つめると、
「も、も、もう一度俺の中に戻って来てください!お願いします!」
と、泣きながら叫ぶー。
だがー、寄生虫の王はそれを無視して琴音の中へと戻っていくと、
宗太郎を見て、笑みを浮かべたー。
「下僕としてすら使えない宗くんはー、処分しちゃお♡」
琴音のその言葉に、宗太郎は青ざめながら、
子供のように大泣きし始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
大学の卒業式も終わり、
無事に卒業した将司は親友の恭一と雑談を交わしていたー。
がーーー
「ーん?あっちで何か騒ぎになってるなー」
恭一が、ふと大学のごみ置き場の方が騒がしいことに気付き、
将司に「行ってみようぜ」と、そんな言葉を掛けるー。
将司も頷き、騒ぎになっている場所に駆け付けるとー、
そこには、服も身に着けていない状態の
”ナンパの魔術師”・宗太郎が赤ん坊のように泣きながら、横たわっていたー
「ーーげぇっ…!ナンパ野郎じゃねぇかー…何やってんだこんなところで?」
恭一の言葉に、将司も表情を歪めながら、琴音に裏切られた時のことを思い出すー。
程なくして、宗太郎は大学の職員に連行され、
救急車で運ばれていったものの、
寄生虫に”脳”を破壊された宗太郎は正気に戻ることなく、
そのまま何も語らず、赤ん坊のように泣き続けることしかできなくなってしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
将司は大学を卒業後、とある企業に就職して、
真面目に働いていたー。
だが、どんなに同期と仲良くなっても、
どんなに同期以外の会社の人間と仲良くなっても、
決して誰とも付き合うことはなく、
女性相手に対しては、常に”一定の距離”を置いていたー。
大学時代に仲良くだった萌とは、
大学卒業後も、主に萌から連絡が来ていたために、
交流はあったものの、
将司は決して、萌とも必要以上に仲良くなろうとせずに、
結局、だんだんと疎遠になってしまったー。
「ーーーー
以前、彼女にこっぴどく裏切られたことがあって、
もう恋愛はいいかなって思ってるんですー」
入社から数年が経過したタイミングで、
将司は、入社時から世話になっている先輩に
そんな言葉を口にしたー
「そっかぁ…そういうことなら、仕方ないのかもなぁ…」
先輩も、将司の言葉に納得した様子でそう言葉を口にするー。
”女性は怖い”
将司の中に、そんな想いが刻み付けられー、
将司は琴音と別れて以降、誰とも付き合うことはなかったー
そして、ある日ー
「ーーーえ…?」
将司は呆然とするー。
帰宅して、何となくテレビのニュースを眺めていた将司ー。
すると、そこには、
”交際していた彼氏の命を奪い、逮捕された女”の
ニュースが報じられていたー。
”天野 琴音 容疑者はー、
”本当に何も記憶がないんです”と、供述している模様ですー”
そんなニュースを目に、唖然とする将司ー。
「ーーアイツ…ー人殺しまでー…」
そう呟くと、将司は「あの時、裏切られて良かったのかもなー」と、
”真相”に何一つ気付くこともないまま、
自虐的な笑みを浮かべると、
そのまま、興味を失ったかのようにニュースを消して、
小さくため息をついたー。
”寄生虫”は今もどこかで拡大しているー
”ナンパの魔術師”から”女王”へー、
そして、今も別の肩書を手に、新しい身体を乗っ取り、暗躍しているー…
おわり
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コメント
”寄生虫を飼う男”の後日談でした~!☆
彼氏は最後まで何も気付かず…!
でも、今更気付いてももう手遅れなので
彼にとってはこの方が幸せなのかもしれませんネ~…!
お読み下さりありがとうございました~!☆
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