<入れ替わり>あなたを地獄に落としたい①~陰険~

同じ会社に勤務する二人のOL。

二人は互いに仲良しな先輩と後輩の
間柄だったー。

しかし、それは”表向き”の話ー。
裏では相手の不満ばかり口にしている二人が、入れ替わってしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー今日も部長、美穂(みほ)ちゃんのこと、すっごく
 褒めてたよ!」

美穂の1歳年上で、先輩の村野 結子(むらの ゆうこ)が
昼食を食べながらそう言葉を口にするー。

二人はまだ20代の若いOLで、
結子は、美穂より1年早く、この会社に入社していて、
歳も近いことから、美穂が入社した当初から
美穂の指導を任されているー。

結子自身も、入社2年目でいきなり指導役を
任されて戸惑っていたものの、
この部署には年齢が離れている人間が多く、
結子が一番適任であると判断されての結果だったー

「えへへ…ありがとうございます~!」
照れくさそうに言う美穂ー。

美穂はとても仕事ができて、
上司や先輩たちからの評判も良いー。
とても可愛らしい容姿もそうだが、
何より、”上司たちに対する振る舞い”がとても上手な子で、
本人は意図していない様子であるものの
どこか”ぶりっ子”のような感じもするタイプの子だったー。

一方の結子はとても落ち着いた雰囲気の女性で、
指には婚約指輪が輝いているー。
結子は既婚者で、若くして結婚して今に至るー。

とても頼れるお姉さん的存在であるものの、
一方で、堅苦しさがどこかにあるタイプで、
上司は、美穂の方を気に入っているような、
そんな印象を、結子は抱いていたー。

そんな二人は、結子が指導役に選ばれて、
入社当初から美穂のことを指導していたことやー
年齢が近い女性は、お互いに同じ職場には
ほとんどいなかったため、
とても仲良しだったー。

「先輩」「美穂ちゃん」と呼び合うような間柄ー。

しかしーー

それはー
”表面上”のことだったー。

二人はー
裏では”険悪”な関係だったー

二人とも決して表にはそれを出さないー

お互いにー
”相手もわたしを嫌ってるんだろうな…”と思いつつも、
大人の女性として、それを決して表に出すことは、しなかったー。
少なくとも、本人の前ではー。

「ーーあ~~~~あの子、ほんとにうざい!」
夜ー
帰宅した結子は、夫の航(わたる)に対して
愚痴を口にしたー

夫の航は、「まぁまぁ」と苦笑いするー。

結子は酔った様子で、
「ーあの子、周りにいい顔ばっかしてて、ホントにむかつく~~」
と、不満を口にするー。

航は、結子の口から出てくる暴言を
苦笑いしながら聞き流すー。

「ーーその子だって、そんなつもりじゃないかもしれないし、
 結子がそう思い込んでるだけかもしれないぞ?」
と、夫の航が言うと、結子は「あの子は絶対、わたしのことバカにしてる!」と
怒りの口調で叫ぶー。

怒りが収まらない様子の結子に
慰める言葉を掛けていると、ようやく結子の怒りは落ち着いたのか
「いつも愚痴ばっかりでごめんね」と、航の方を見て、
謝罪の言葉を口にしたー。

夫婦関係はうまくいっているー。
だが、どうしても後輩の美穂を見ると腹が立ってしまうー。
それがどうしてなのかは、結子自身にも分からなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーまたそんなこと言われたの~?」
結子の後輩・美穂の親友が、あきれ顔で呟くー。

「ーうん。なんか~棘があるって言うか、
 嫌な感じ。

 今日も”夫が” ”夫が”なんて、何度も言ってたし、
 まるで”結婚してるわたし、すごいでしょ~?”みたいな
 感じで、イヤになっちゃうー」

先輩の結子が、自宅で夫に愚痴を言っていたのと
ほぼ同時刻ー
後輩の美穂もまた、別の場所で自分の親友に対して
愚痴を呟いていたー

「ああいう、おばさん、絶対そのうち離婚するし!」
美穂が言うと、
親友は「おばさんって……確かその人、美穂の1つ年上でしょ…?」と
苦笑いするー。

「ーーあんな人、何歳だろうとおばさんよ!」
美穂はそう言うと、
「あ~~あの人、事故でも起こしてくれないかな~
 本当に嫌になっちゃう」と、不満を口にするー。

「ーーまぁまぁ…でも、普段は仲良くしてるんでしょ?」
美穂の親友が、そう言葉を口にすると、
「絶対あっちも表面上だけ!」と、
美穂は叫んだー。

先輩の結子も、後輩も美穂も
”表面上”は仲良くしているもののー
お互い、内心では相手に対して”最悪の印象”を抱いていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「おはようございます~!」
結子がオフィスに入ってくると、
美穂は既に、先輩の男性社員と楽しそうに雑談していたー

少し年上だが”イケメン”の男性社員に
まるで”媚びている”ように結子の目には映ってしまうー。

美穂が男性社員との会話を終えて自分の机に戻ると、
結子は「何を話してたの?」と、嫌味っぽくないように質問したー。

「ーあ、今度の資料、どんな風に準備すればいいか、
 相談してたんです」

「ーーそっか。わたしも手伝える部分があったら手伝うから、
 困ったことがあったら何でも言ってね!」
結子が笑顔で言うと、
美穂は「ありがとうございます!」と言いながらもー
そのあとも、その先輩男性社員の高橋(たかはし)に、
質問しに行っていて、結子を頼る様子はなかったー

”カチン”とする結子ー。

実際には美穂は、先輩に媚びたりしているつもりはなく
元々、誰にでも愛想が良いタイプの性格で、
先輩の男性・高橋に相談しているのも、
今、美穂がやっている作業に一番詳しいのが彼だったからー

と、いう理由だけだったー。
だが、結子には、それが別の意味に受け取れてしまうー。

昼休みになると、
結子は、机の上で”夫が作ってくれた弁当”を取り出したー。

夫も仕事をしているが、時々こうして弁当を作ってくれるー。
逆に結子自身が二人分の弁当を作ることもあり、
二人でうまく、支えあっているー。

「ーーわぁ、美味しそうな弁当ですね!」
美穂がほほ笑むー

”また自慢?幸せですアピールとか、うざすぎ…”
美穂は心の中でそう思いながらも、
表にはそれを出さずに言うー

「ーーふふふ、ありがと!
 夫もその言葉を聞いたら喜ぶかも!」

”そうやって、可愛らしく周囲にアピールして…
 ほんと、あざとくて、むかつく子…”

結子も心の中で毒を吐きながら、
二人でほほ笑みあうー。

お互いに心の中で相手に腹を立てながらもー
社会人として表では普通にー、
むしろ、周囲からは”仲良し”と思われているぐらいの間柄ー。

だがー
”それ”は起きたー。

夕方ー
翌日行われる社内の会議の会場を準備していた二人ー

その最中に、部屋の隅っこに積まれていた椅子に
美穂がぶつかりー、
積まれていた椅子がバランスを崩してー
近くにいた結子を巻き込みー
二人は椅子の雪崩に巻き込まれたー

・・・・・・

「ーーーう…」
起き上がる美穂と結子ー

「だ、大丈夫…?美穂ちゃんー」
結子が言うー。

「は、、はい…先輩…大丈夫です」
美穂が返事をするー。

「ーーーー!?」
二人は、そこで違和感に気づいたー。

「ーーえ?」
「ーー!?」

”大丈夫、美穂ちゃん?”と聞いたのは
結子ではなく、美穂で、

”先輩、大丈夫です”と答えたのは
美穂ではなく、結子だったー。

二人はお互いの顔を見合わせて、
お互いに驚くー

「な、なんでわたしが目の前に!?」
「せ、先輩が…!?えっ…!?」

二人はー
”身体が入れ替わってしまった”ことを自覚しー
戸惑いの声をあげたー。

「ーーと、とりあえずー」
美穂になった結子は、困惑した表情で呟くー。

二人で、”元に戻るため”に色々と試してみたが
結局、元には戻れず、時間だけが経過してしまったー。

「ーーこのまま…過ごすしかないってことですか?」
不安そうに言う結子になった美穂ー。

「ーずっとここにいるわけにもいかないし…
 かと言って、誰も”入れ替わり”なんて信じてくれないだろうし…」
美穂になった結子が言うー。

それに関しては結子(美穂)も同意見だったー。

一通り、元に戻れそうな方法は試したけれど、
元に戻ることはできなかった。
ずっとここにいても仕方がない。

そして、周囲に”わたしたち、入れ替わっちゃったんです!”などと
言っても、そう簡単に信じてもらうことができるとは思えないし、
むしろ、信じてもらえないだろう。
頭のおかしな二人と思われてしまったらたまったものではないー。

「ーーそうですね…」
結子になった美穂が言うと、
美穂になった結子が
「ー美穂ちゃんになら、わたしの身体任せられると思うし、
 入れ替わる相手が美穂ちゃんでよかった」
と、美穂の身体で言い放ったー。

「ーそうですね…わたしも、先輩が相手でよかったですー。
 変な人と入れ替わってたら大変なことになってたかもしれないしー」
結子(美穂)が言うと、
二人ともニコニコしながら、相手の方を見つめたー

”あんたを地獄に落とすチャンスー”
結子も、美穂も内心では、そんな邪悪なことを、思いながらー。

二人で、お互いとして生活するための情報交換をするー。

美穂は一人暮らしだから、家に帰ってしまえば
美穂になった結子はあまり困ることはないー。

「ーーあ、え~っと、できれば見ないでほしい場所があるんですけど」
結子(美穂)が言うと、
美穂(結子)は「うん!わかった」と言いながら
”全部見てやるわ”と内心で笑みを浮かべるー。

結子は既婚者であるために、子供はいないが、夫と同居している状態ー。
夫とのやり取りなどについて説明するー。

「こんな感じかな…航は意外と天然だから、これさえ気を付けていれば
 大丈夫だと思う」
注意点を説明し終えた美穂(結子)が言うと、
結子(美穂)は「はい…!先輩が恥をかかないように、気を付けます!」と、
素直な雰囲気で答えたー

”先輩に恥をかかせるチャンス!”と思いながらー

二人ともニコニコしながら相手を見つめるー。

「ーなんだか、美穂ちゃん、わたしの身体になって楽しそうー」
美穂(結子)が言うと、
結子(美穂)も笑いながら、
「そんなこと言ったら、先輩だってニコニコしててとっても楽しそうですよ!」
と答えたー。

ニコニコしながら、
困ったことがあったら連絡しあうことを約束する二人ー

スマホは、プライベートの観点や、他の人ともLINEやメールでの
やり取りなら、入れ替わった状態でも問題なくできる、
という理由から、”中身”のスマホを持ち帰ることにした。

先輩・結子になった美穂は、美穂のスマホを持ち、
後輩・美穂の身体になった結子は、結子の身体を持ち帰るー
という感じだ。

周囲から見れば”どうして他人のスマホを持ってるの?”という
状況になってしまうものの、
それは、見られないようにすれば良いだけの話だー。

”ふふふ…いつもぶりっ子ばっかりのあんたに
 ちょっとお仕置きしちゃお”
美穂(結子)は帰宅しながら笑みを浮かべるー。

”このおばさんに恥をかかせてやるから!”
1歳しか年上じゃない先輩・結子をおばさんと蔑んでいる美穂は、
結子の身体で、そう呟きながら笑みを浮かべたー

帰宅した二人は、
それぞれ笑みを浮かべるー

”あなたを地獄に落としたい”
そう、思いながらー

美穂の身体で帰りに購入したポテトチップスを食べ始めー
さらにはコーラを飲み始める結子ー
後輩の身体を不健康にしてやろう、と、そんな考えでー

結子の身体で帰りに購入した、コスプレ衣装を着て、
自撮りを始める美穂ー。
結子の身体だが、持っているのは、中身である美穂のスマホー
美穂のスマホに結子の恥ずかしい姿が保存されていくー

小さないやがらせー。
しかし、それは、やがてエスカレートしていくことを
二人はまだ知らなかった…

②へ続く

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コメント

陰険な女同士の戦いデス~笑
入れ替わった二人は、さっそく相手を貶めようとしていますネ~!

続きはまた明日デス!

コメント

  1. 匿名 より:

    これって結子の一方的な思い込みがきっかけになって、お互いに嫌悪感を抱くことになっちゃってるんですかね?

    一歳年上なだけでおばさん呼びは酷い。ぶりっこ云々は誤解としても、美穂の性格もあんまり良くはなさそうですね。

    それにしても二人とも相手を貶めようとして色々やるのはいいですが、元に戻れるとは限らないんだから、下手したら自分で自分の首をしめることになりそうな感じがします。

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      お互いに性格は良くないタイプ…!の設定ですネ~!
      コメントの最後の2行については…
      今後を楽しみにしていてください~笑